『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!!!!!!!!』
何度殴りあっただろう……互いに顔は腫れ上がり……口の中は切れてグチャグチャで顔の腫れで目が見えにくいし膝も笑っている。
キンジと一毅を動かすのは気迫のみで精神が肉体を凌駕している。
「オッシャア!」
キンジのハイキックが一毅の体を揺らす。
「オッラァ!」
一毅のボディがキンジの体をくの字に曲げる。
「テメェに……」
一毅は吠えた。
「テメェに何が分かんだぁあああああああああああああ!!!!!!!!!!」
失ってから分かった好意……その時に喪失感も……悲しみも……分かる筈がないと一毅は叫ぶ。
「分かるさ!兄さんを失ったとき俺は悲しかった。泣きたいのに涙もでなかった!!!!!武偵なんか辞めたくなるくらいだったよ!それにアリアが狙撃されたときだって胸になんか穴が開いたみたいで喪失感が胸を支配した!俺の方はどっちも生きてたけどそれでも分かるさ!」
「じゃあ何で辞めなかったんだよ!!!!!」
「お前を見つけたかったからだ!!!!!」
キンジだって後悔していた。親友大切な何かを失い、何処かに消えたとき……なぜ一緒に居てやれなかったのかを……そしてその親友が犯人を殺したときになぜ自分は体を張って止められなかったのかを……
キンジもifを考えてそんなのあり得ないと思うことが何度もあった。
だがそれでもキンジが諦めなかったのはロボットと呼ばれた少女が死の間際に託した願いを叶え……言葉を一毅に届けなければならなかったから……
「下らねえ下らねえ言って……お前は【今】を見てねえだけじゃねえか!!!!!」
「っ!」
「死んだ人間を何時までも想ったって死んだままなんだよ!生きてるやつの幸せこそが死んだやつの望みなんじゃねえのか!」
「アアアアアアアア!!!!!」
一毅はガムシャラに拳を突き出す。それを全てキンジは受けきった。
「テメェに!!!!!なにがわかるんだぁああああああああああああ!!!!!」
「テメェこそレキが何を想って死んだと思ってんだよぉおおおおおおおおお!!!!!」
レキは……死に際にキンジに託した……
雨が降る中レキは胸から血を流しながらキンジに言った。
「一毅さんに……ごめんなさい言ってください……優しくしてくれてありがとうとも」
「え?」
「そして……拉麺美味しかったと……」
「あ、あのなぁ……そう言うのは自分で言えよ!」
「言いたいですよ……でも言えそうにないです……だからキンジさんに託します……愛してました……と」
レキの体から力が抜ける……
「レキィイイイイイイイイイ!!!!!」
「アイツはなぁ……ちゃんと人間だったんだぞ!俺じゃない!お前が人間にしたんだ!」
「だったらなんだよ!」
何度も殴り会う。
「アイツはお前に感謝してたんだぞ……」
「だからなんだぁああああああ!!!!!」
キンジはここまでいっても分からないのかと歯を噛み締め……
「テメェは今の姿レキに見せて胸張れんのかぁあああああああああああああ!!!!!!!!!!」
「っ!」
バキィ!っとキンジの後ろ回し蹴りが一毅の顔に決まる。
「ごほ……」
「アイツは言ったんだぞ!拉麺うまかったって!優しくしてくれて嬉しかったって言ったんだぞ!それなのにお前は落ちぶれやがって!」
「っ!」
「何時までもウダウダ落ち込んでんじゃねえよ!」
「だけどさぁ……」
泣いていた……止めどめなく一毅に目から涙が溢れた。
「そしたらレキが俺の心からも死んじまうじゃねえか!!!!!」
「死なせてやれよ!じゃなきゃ成仏できねえだろうが!」
「んな器用な生き方出来るとおもってんのかよぉおおおおおお!!!!!!!!!!」
「出来るかじゃねえんだよ!やるんだ!それが生きてるやつの義務なんだよ!供養なんだよ!」
キンジも泣いていた……一毅の辛さ……心の傷……それがどれだけの物だったか正面から向き合って今分かる。
『ウォオオオオオオオオアアアアアアアア!!!!!!!!!!』
一毅とキンジの拳が
「お前……強くなったな…」
「あれからどれだけ特訓したと思ってやがる……」
キンジは背を向ける。
「レキからの伝言だ……」
「え?」
「ごめんなさい……」
「っ!」
「優しくしてくれて嬉しかった」
「っ!」
「拉麺美味しかった」
「っ!」
「最期に……愛していました」
「………………」
一毅は呆然と聞いた……
「レキはなぁ……好きだったって笑ったよ。すっげえ可愛い笑顔でな」
「………あ……あ……うぐ!」
一毅はボロボロ涙腺が決壊したように涙を流す。
「…………行こう」
キンジはアリアをつれて
「あ……ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!」
一毅は絶叫にも似た声を出す。
周りにあるものを殴り壊し、投げつけて壊し、蹴り壊す……
周りにあるものを破壊しつくし一毅はうつ伏せに倒れ息を整える。
「……はぁ……はぁ…はぁ」
一毅は歯が軋むほど噛む。
「ふぅ……はぁ……」
一毅は息を吐く。
それから立ち上がると走り出した……胸を張れるように……
「がっ!」
キンジは地面を転がる。
「その程度かい?」
「キンジ!」
「ぐ……がは!」
一毅との戦いのダメージがあるキンジは終始劣勢を強いられる……そこに、
「よう、苦戦してんなキンジ……」
一毅が駆けつけた。
「お前はいつも遅いんだよ」
キンジは立ち上がるとニッと笑う。
「行けるか?」
「絶好調だ」
なら……と二人は腰を落とす。
「行くぞ
「ああ、
二人は駆け出した……
「はぁ……」
一毅は爆発して崩れていく船を見ながら座り込む。
どうやって
「あ~くそ……体いてぇ」
久しぶりに刀振って……久し振りに本気で戦った。
「レキ……」
一毅は眼を閉じようとし……
【一毅さん】
「っ!」
慌てて開く。目の前にはレキがいた……病院で見た死に顔を同じ服だ……
「レキ?」
【はい】
生きてる……筈はない。確かに確認したのだ。
【知ってますか?
「……そうか」
そうだったのか……残念だ。
「なあ……やっぱり不幸だったと思うか?」
【まさか……私の人生の中で幸せだと思えました……いや、貴方を悲しませたことは不幸でしたが】
「……」
一毅は一度息を吸う。
「レキ……好きだったよ」
【私も……愛してました】
一毅なりの別れの言葉……さよならとはやっぱり言えなくて……過去にすることでしか示せない。
【約束……してもらえませんか?】
「ん?」
【誰か私じゃない人を好きになってください。幸せになって子供つくって……下さい】
「……ああ」
【次に元気で暮らしてください。健康に気を付けて】
「………ああ」
【最期に……笑ってください。笑顔で生きてください……】
「…………ああ」
一年笑うことはなかった一毅は不器用な笑みを浮かべた。
【一毅さん……お元気で】
最期にレキは綺麗な笑顔を浮かべ……消えた……
「お前も……な」
一毅の足に最後の一滴の雫が落ちた……
その後どうなったかはこれを見た人の想像に任せよう。ただ一つ言えることは夏休み明けの名簿に……【
と言うものが記されていた。
この話はあくまで作者の妄想であります。
なのでこれって矛盾あるだろ!とか言わないで下さい。あくまであったかも……と言うものです。
これでは基本的に部分部分を取り出して書くと言う書き方でした。はじめての書き方でしたがまあシリアスは難しかったです。
さて、次回からは本編の夏休み編へと突入します。そこでレキも元気ですしお楽しみください。