緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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ブラドとに戦いに決着……


龍と吸血鬼 後半戦

(くそ!何が起こってやがる!)

 

一毅痛む肋骨を抑えながら地面に座ったまま体を引きずって距離を取る。

既に立つ体力も残っていない。

 

「すげぇ……すげぇぞこりゃあ!」

 

ブラドは歓喜の声をあげる。

だが幾らなんでもどういう事なのか分からない。ブラドに何が力を与えたのか……全く分からない。

 

「くそ……」

 

キンジが呻いた。

他の皆も動く……良かった生きてるようだ。

 

「何だ……生きてたか……」

 

ブラドは避雷針を片手にキンジ達の方に向かう。

 

「っ!辞めろ!!!!!」

 

一毅が叫ぶがブラドは一毅を見ると……

 

「後でお前も殺してやるから安心しな」

「っ!」

 

一毅は一瞬体を強張らせると殺神(さつがみ)を地面に突き刺し立ち上がる。

させるわけにいかない。親友のキンジを……そのパートナーのアリアも……敵である理子も……大切なレキとライカを……殺させるわけにいかない。

 

「ウォオオオオオオオ!!!!」

 

肋骨が痛み……軋みをあげるが関係なかった。だが、

 

「邪魔だよ」

 

回し蹴り……それ以上でもそれ以下でもない。単純且つただの蹴りだ……だが次の瞬間ベキィ!!っと言って一毅の左足がへし折られた。

 

「ア゛ガ!」

 

あまりの痛みに一毅は地面に転がる。

 

「う……ぐぅ!はっ!」

 

歯を食い縛り耐えるが、

 

「ふん!」

「っ!ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」

 

ブラドに折られた足を踏まれ一毅は声をあげた。

 

「人間風情が……下等な生物が俺様に喧嘩を売るからこう言う目に遭うんだよ!分かったか!?ええ?」

「か…は……」

 

一毅は意識が遠くなっていくのを感じた。体が震え……自分でも体が冷えていくのを感じる……死ぬのかもしれない。

 

「おらよ!」

 

一毅をブラドは蹴っ飛ばす。

 

「が!」

 

一毅は地面に2、3回バウンドしそのまま止まる。

 

「ちょうど良い……そのまま殺してやるよ!!!!!」

 

ブラドがこっちに来る……が、

 

「シャア!」

 

キンジがブラドに飛び掛かり歩を止めさせるが、

 

「あめぇよ!!!!!」

 

ブラドに簡単に外され、

 

「おら!」

「ごっ!」

 

キンジの腹にブラドの拳が沈む。

 

「ごぼ……」

 

キンジが吐血した。内臓が傷ついたかもしれない。

 

「キンジ!……こんのぉおおおお!!!!!」

 

アリアが疾走……銃を乱射しようと銃を構えたがそれより前に避雷針を投げつけ怯ませるとブラドはアリアを掴み……

 

「ふん!」

「が!」

 

壁に叩きつけて意識を刈り取った。

 

「やめろ……」

 

一毅は呻くが届かない。

ドクン!っと心臓が跳ねた気がした……

 

「ブラド!」

 

理子が髪でナイフを取ると動かしブラドを狙う。だが、

 

「おせぇ!」

 

逆に髪を捕まれ理子を空に放りあげた。

 

「しまっ!」

 

理子は慌てるが遅い……

 

「らぁ!」

 

ラリアット……プロレスなどで見られる腕を振って相手に打撃を加える技だ……ブラドのパワーでそれの直撃を理子は喰らい血を吐きながら吹っ飛んだ。

 

「くそ……」

 

一毅は拳を握る……このままでは皆やられる。だが自分ではどうすることもできない。この折れた足とさっき蹴られて更に折れた肋骨……意識すら遠くなってきた今の状況ではなにもできない。

 

「ウォオオオオオオオ!!!!!」

 

ライカが特攻……それをレキが援護するが、

 

「しっ!」

「何だ?その蚊の止まったような攻撃は」

 

先程の不意打ちのダメージがあるため確かにライカの一撃に速さがない。そのため簡単に掴まれライカをレキに投げる。

 

「くっ!」

 

レキはライカをキャッチする。だがその隙が命取りとなり……

 

「っ!」

「死ね」

 

レキとライカの二人をブラドは力任せに地面に叩き付けた。

 

『がっ!』

 

ドロリと血が地面に流れ出る。

 

「っ!」

 

一毅は自分の血が凍ったような感覚に陥った。

だが同時に体の芯の部分が熱くなって頭の方でプチンと何かが切れたような気がした……自意識が……沈んでいく……

 

「や……めろ……」

 

一毅の体からブルーヒートが現れる。

 

(殺して……やる……)

 

「あ?」

 

ブラドは一毅の方を見た。

足の骨はへし折ったし肋骨も折れてる筈だ。なのに一毅は立つ。

 

「なんだ?お前」

 

ブラドは怪訝な目で見た。

 

「ぶっ殺してやるよ」

 

一毅はそう言うと次の瞬間ブルーヒートが霧散した。

 

「え?」

 

キンジは驚く。ブルーヒートを解除するなど死ぬ気かと思ったからだ。ただでさえ動くことすらままならないのに何をする気か?

他の面々もキンジと同感だった。だが……次の瞬間その意識は消えた。

 

【ミキ……】

 

と音がした。

最初は何処からか分からなかった段々気付く……

 

【メキミキ……ゴキ!】

「オォオオオオ……」

 

皆は一毅を見た……この音……一毅から鳴っている。

 

 

【メキミキゴリゴキバキ!】

「はぁ!うぐ!」

 

一毅は暫し痛みに耐えるとブラドを見た。

 

「治ったぜ……」

『え?』

 

全員が唖然としたが一毅は無視して左足でケンケンする。確かに……治っている。

一毅が行ったのは二天一流 修羅の気位(しゅらのきい)……瀕死の状態でのみ行える起死回生の技である。

だが一毅はこの技を父から習っていない。理由は後々説明するがあくまでこれはその場凌ぎの面もある。だが何故か一毅は使えた……とっさに頭に掠め、無意識に使っていた。

だが足と肋骨は治したがあくまで動ける程度でしかなく本来なら入院した方がいい。更にこれを使うと一時的にホワイトヒートとブルーヒートが使えなくなる。だが今の一毅には関係なかった。

今の一毅は戦えればいい……そしてブルーヒートとホワイトヒートが使えずとも……一毅には三番目のヒートが現れていた。キンジも幾度となく使ったヒート……レッドヒート……一毅流に言うなら、

 

「二天一流 絶技……怒龍の気位」

 

一毅の全身から深紅のオーラが溢れ出す。

 

「お前は俺が殺す……」

 

一毅は二刀流の構えを取る。

 

「上等だ」

ブラドも避雷針を構えた。

 

「いくぞブラドおおおおおおお!!!!!」

「グゥウウラアアアアアアアア!!!!!」

 

二人は疾走した。

 

 

 

 

 

 

「オラァ!」

 

一毅の殺神(さつがみ)とブラドの避雷針が火花を散らしてぶつかる。

 

「なっ!」

 

ブラドは驚愕した。

何故なら自分の力と拮抗しているからだ。完全に互角……押し合い……押し返し合い……完全に互角の押し合いは一毅が早く動いた。

 

「らぁ!」

 

神流し(かみながし)の切り上げをブラドは躱すが更に殺神(さつがみ)を横に凪ぎ脇腹に切り傷をいれた。

 

「ぐぉ……」

 

咄嗟の痛みに避雷針をブラドは手放す……だが一毅は止めず

 

「二天一流 必殺剣!」

 

ブラドを打ち上げた……キンジと違い腕力も高い一毅でなければ無理な話ではあったが……

 

「おろち渦!!!!!」

 

地面に落ちないように連斬を決めて吹っ飛ばした。

 

「がは!」

 

だがブラドは笑う。

避雷針が一毅の頭上目掛けて降ってきたのだ。

しかも一毅は気付いていない。完全に死角だしブラドに意識がある。

キンジたちも気づいたが遅かった……はずだった。

 

「ふん!」

 

一毅は見もせずにスウェイで躱した……

 

「え?」

ブラドは今の出来事が信じられず間抜けな声を漏らした。

 

「……ああ、避雷針が降ってきたのか……」

 

一毅は今気付いたようだがさして興味もなさそうな顔をしてからブラドを再度見た。

 

「いくぞ……」

「ひっ!」

『っ!』

 

ブラドは一毅の闘気に当てられて後ずさる。

キンジたちですら背中は寒くなった……雨が降り……髪が張り付きながらもその眼光に陰りはない。

そしてその瞳に映るのは圧倒的な殺意……そして怒気……

キンジですらここまでキレた一毅を見るのは一年前レキが撃たれた時以来であった。

 

「…………」

 

その中ゆっくりと一毅は歩を進める。

 

「く、くるな!」

 

ブラドが今度は尻を地面に着けたまま後ずさる。

ブラドの目には一毅の背後に龍が居るように見えていた。

 

「二天……」

 

一毅は二刀を仕舞い殺神(さつがみ)の鯉口を切る。

 

「一流……」

 

一毅は身を低くすると一気にブラドとの距離を詰める。

この技は二天一流の絶技シリーズのうち秘剣に属する技……

怒龍の気位で超強化された身体能力からの疾走から繋げる剣撃……

 

「く、くそ!」

 

ブラドは走ってきた一毅に対抗するため地面を殴りコンクリートを幾つか手に取り取ると力の限り一度に全て投げた。

ブラドの渾身の投擲は一粒一粒が弾丸のような速度と鋭さで一毅に弾幕を張るように襲いかかる。

 

「甘い!」

 

だが一毅は頭がピリッとしたかと思うとその弾幕を全て回避した。

 

『な!』

 

傍観していたキンジたちも含め驚愕する。

それにしても頭がピリッとした時の一毅は無意識に回避している。どういう事なのか分からないが今はどうでもいいことだ。

これで決める。

 

「絶刀!!龍牙一閃(りゅうがいっせん)!!!!!!!!!!」

 

殺神(さつがみ)の横一文字……更に唐竹割り、切り上げとブラドに次々と必殺の居合いを叩き込んだ。その間およそ3秒……叩き込んだ剣筋は何と14ヵ所……レキ……ライカ……キンジ……アリア……理子……全員の分を自分の分も入れて二倍にして返してやった。

 

「あ……が……」

 

ブラドは倒れる。一毅もただ14ヵ所斬ったわけではない。その全てが腱や筋……斬られれば動けなくなるのが間違いない箇所だ。

 

「よぅ……」

「ぐ……ぅ……」

 

動ける者と動けない無い者……両者は立場が逆転していた。

 

「言ったよな?殺すって」

「っ!」

 

一毅は殺神(さつがみ)を振り上げる。

 

「ま、まて!武偵は殺人を禁じている筈だ!」

「悪いな……忘れちまったよ」

 

一毅は刀を握る手の力を強くする。

 

「あばよ」

「ま……」

 

ブラドの言葉を聞く前に一毅は殺神(さつがみ)を振り下ろそうとし……

 

『駄目!』

「あ……」

 

止められた……

 

「レキ……?ライカ……?」

 

一毅は腰にレキを、腕にライカを着けて止まる。

 

「駄目です一毅さん……それは駄目です」

「そうですよ一毅先輩……らしくないです」

「…………」

 

一毅はrレキを優しく下ろしてライカを離すと殺神(さつがみ)の刃を返す。

 

「そうだな」

「がっ!」

 

峰打ちでブラドを戦闘不能にすると一毅は刀を仕舞う。

そして……

 

「一毅さん!」

「一毅先輩!」

 

そのまま一毅は意識を失った……


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