番外編 ライカの心
アドシアードから早くも数日…一毅は現在Tシャツの上にポロシャツを羽織、下にはジーンズと言う普通の高校生くらいが着そうな服で駅前に居た。
今日は約束通りにライカと出掛ける予定だ。本当はレキも来るはずだったかがここに来る途中で突然現れたあかりと辰正がレキを連れていってしまったのだ。その直後に電話が来てレキには急用ができたとよくわからない事を言っていたが大丈夫だろう。
すると…
「あ、一毅先輩。すいません遅れました」
「おうライ…カ?」
一毅は驚いた…ライカとは何時も武偵高校の制服でしか会ったことがない。
だが今のライカはワンピースにチェックのミニスカート…首には敢えて目立たせないネックレス。髪は卸していて凄く女の子の服装だ…派手ではない…だが何と言うか…そう!自分を良く分かっている。自分に似合う服を良くわかった上で着ている。
ワンピースはライカの細身の体を際立たせ…スカートからは暴力的なまでに細くて長いが同時に鍛えている健康的な足が…だがそれを全て包み込んでしまうきれいな金髪を卸した髪…
レキの体は柔らかいと言うか…マシュマロ…と言った感じだがライカのは…何と言うか…チョコレート?自分でも訳がわからないがギャップだ。
最終的にそこに帰結した。ライカは女の子ではあるがまず最初に後輩の…と言うのが着く。だが今は女子だ…女の子…ではなく女子…のが付かないだけだが意味合いが大分違う。
「一毅先輩?」
「お、ん?ああ…悪い悪い。見とれてた」
「っ!」
一毅は事実をありのままに伝えた…こういう辺りは結構天然ジゴロなのだ。良いと思ったことをさらりと伝えたり、女の子にとって気を使ってお洒落をしたりする場所を一毅は結構マメに気がついてそれを真顔で誉めたりする。
他にも重たいものを持っていれば分け隔てなく持ってやったり頼まれた仕事をきっちり責任持ってやりきるなど好感をもたれる事が多く、更にヤクザ顔と称される位目付きは悪いが決して醜男ではない。この辺の気遣いなんかは実家で培われたのだがこういった辺りが一毅がレキと言う彼女がいると言うのにモテる理由でありレキを怒らせる原因でもあるのだが一毅は全く気づいていない…
「じゃあ行くか?」
「あ、はい…」
ライカは顔を真っ赤にして一毅について行った…
因みに完全に余談だがライカの今日の服装…三日三晩悩みに悩んで決めた服だ…そりゃ誉められれば嬉しい筈である。
最初は服を選ぶとのことだ。
ライカは基本的にちょっと格好いい系の服を選ぶが…眼は可愛い系の服を見ている。大方自分には似合わないとか考えてるのだろう。確かにライカは170近い身長で可愛い系の服では丁度良いサイズの服が余り無い。だが無いわけでもない…折角なのだから着てみれば良いのだが…
「こう言うのはどうだ?ライカ」
「え?」
ライカは一毅が手に取った服を見るとブンブン横に振る。
確かにサイズは良さそうだがそんな可愛い系の服は似合わないと思っているからだ。
「似合わないですよ…そんなの…」
「…………」
すると一毅は服をライカの体に当てながら見る…
「うん…やっぱり似合うよ」
「お世辞ですか?」
「俺は世辞が言えるほど器用な人間じゃねぇよ」
「あ……」
ライカは自分でも分かるほど頬が熱くなった…更に心臓の鼓動も早くなる…こう言うときに思い知らされる…
(この人が好きだなぁ…)
結局服は一毅の薦めで買うこととなった…そして次は約束通り焼き肉である。うら若き男女が焼き肉である。大事なことなので二回言うがうら若き男女がである。
とは言え全く気にせず二人は肉を焼いていた。
「いやぁ美味しいですね。何て言う店でしたっけ?」
「韓来だよ、ここはお持ち帰りもあるだけど前に特選牛カルビ弁当を山ほど買っていく女の人見たことあるぞ」
「何者なんですか?」
「フードファイターかなんかだと思うが…」
それから腹を膨らました二人はカラオケに来た…
「持ち歌とかあるんですか?」
「【意地桜】とか…やっぱり…【馬鹿みたい】とかかなぁ…」
「し、渋いですね…高校生が歌う歌じゃ無いですよ」
「あ、最近【MachineGun Kiss】とかも歌うぞ」
「一気に歌の雰囲気変わりましたね…」
「ライカは何歌うんだ?」
「その時々って感じですかね…何かデュエットしません?」
「おう」
結局二人で【神室純恋歌】を歌った…
「お!」
「きた!」
その後ゲーセンのクレーンゲームでぬいぐるみとか取ったりしてると、
「あ、太鼓の達人ですね」
「あー…昔やったな~」
「じゃあうまいんですか?」
「まあそこそこ…って所だな」
「見せてくださいよ」
「んー…」
ライカにせがまれ100円いれて数分後に一毅は裏オニ(太鼓の達人には簡単、普通、難しい、オニ、裏オニと存在し裏オニに近づくほど難しくなっていく。作者はオニ所か難しいでも出来るか怪しい…)で開始しフルコンボ(一度もミスをせずにクリアすること)を軽く達成した。
「滅茶苦茶やり混んでるじゃないですか!?」
「ふ…」
因みにその後ホッケーもしたがそこは
「あー楽しかった!」
一日中遊んだため近くの公園のベンチに座る。
「しっかしあのホッケーは疲れたぞ…」
「終わった後動けなくなりましたもんね」
そう言って笑う。
「今日はありがとうございました…」
「別に良いよ…今度はレキと来ようかな…」
一毅は何気なく行ったつもりである。と言うか、今度は彼女と来る…と言うのは普通でありそんな特別なものではない……それが行為を向けてる相手が言わなければ…ではあるが…
「…………」
ライカは自分の心臓が痛むのを感じた…ズキン!っと…同時に広がる苦味のような感覚…
(別に普通だろ?ただ彼女と来るって言ってるだけじゃん…)
ライカはそう自分に言い聞かせる…あかり達にはああ言ったが本当はどこかでは分かっているのだ…本当は二番目にだって成れない…桐生 一毅は誰にでも優しいが反面誰かに甘えるところを一人しか見たことがない。そう、レキには甘えているのだ。
弱くて頼りない部分だってある…でもそれを見せるのはレキだけなのだ…
愚直で馬鹿が着くくらいの一途っぷり…
そう思ったらライカの何かが崩れた気がした。
「一毅…先輩…」
「ん?」
「追加報酬……貰っていいですか?まあ私があげるんですけど…」
「?…まあ良いけど何がいい?」
「目を…瞑ってください…」
「おお…」
一毅は目を瞑る。
「一毅さん…」
「え?」
チュッと一毅の唇と何か柔らかくて暖かくて…それでいて非道く情熱的な物…ライカの唇がくっ付いた。
レキとは違う…レキも柔らかくて暖かい…でも静かに…ずっと吹き続けるが直ぐに無くなってしまう風のような儚さがある。だがライカのはそれとは反対…燃え上がるような…例えるなら火のような熱いキス…
『ぷは…』
ほんの十秒にも満たないだろう…だがえらく長く感じた…
「う…え…お…?」
一毅は混乱した…あれ?これ報酬になってなくね?
だが一毅の内心は分かったらしく。
「なりましたよ…私のファーストキスが一毅さんだった…それだけで十分です…」
そう言ってライカは立ち上がる。
「さようなら…」
一毅が茫然としてる間に行ってしまう…
「ええと…ライカって俺の事好きだったの?」
気付くの遅すぎである。
(待てよ…じゃあレキと仲悪かったのってその辺が原因!?もしかしてレキは気づいていたのか!?)
レキだけではなく好かれてる本人以外周知の事実である。
(こ、こう言うときってどうすればいいんだ?ライカの思いに答える?無理だ…レキがいる…やっぱレキが好きだし…でもさよならってもう会わないってか?それってすげぇモヤモヤする…あーでも俺モテた事無いからどうすればいいかわからん!!!!よし、こう言うときはハーレム王のキンジに…ん?電話?)
「ハイもしもし?」
【私よ私…レキーさん…あなたの後ろにいるの…】
「いい!?」
一毅はベンチから飛び上がりながら背後を振り替える。
「れ、レキ…」
一毅は先程の一件で脂汗が止まらない…
「何とか逃げてきましたよ…ライカさんは…」
一毅はビクッと震える。
「ああ、あそこの入り口から逃げたんでしたね…」
「そ、そう…」
多分…見えていただけだ…そうに決まってる…
「アーツカレタ…でしたっけ?」
「はぐ!」
一毅は完全に固まる…最初から見られてた。
すると再度電話が鳴った…
「どうぞ?現世最後の会話を楽しんでください」
(や、殺られる…)
とは言えそれだけの事かもしれない…してきたのはライカ…だがそんな言い訳をする気はない。
「もしもし…」
【あ、桐生先輩ですか!?谷田です!レキ先輩がそっちに…】
「ああ…もう目の前でドラグノフ狙撃銃に弾を込めて俺の眉間に狙い定めてる」
【え?】
「俺…帰ったら結婚するんだ…」
【それ死亡フラグ…】
一毅は電話を切る。
「逃げないんですか?」
「言い訳はしない…」
「そうですか…一応救命措置はあげますよ?明日からライカさんとは他人のように振る舞うこと…それで撃つのは勘弁してあげます」
「レキ…俺はお前が好きだ…それは嘘じゃない…だけど…あそこまでされてこのままサヨナラってのはできねぇよ…断る何なりで決着は着けるべきだ…」
「違います…あれがライカさんなりの決着なんです。貴方はライカさんにはもう会わずライカさんが貴方を過去の恋と思えるようにするのが本当の優しさです」
「それができるやつならとっくにそうしてるんじゃねぇか?」
一毅は鈍感だ…女心に対しては…だがライカとの付き合い昨日今日ではない…そんな風に簡単に割りきれるやつじゃない。自分が振ると言う形にしなくては…いけないタイプだ。
「出来るんですか?」
「え?」
「ライカさんに言えるんですか?貴女は異性として見れない…と…」
「レキ…」
「私が居るから…というのは無しですよ?きちんと言えるんですか?」
「…………」
「無理ですよね?貴方は優しすぎる…残酷な位にね…」
「ゴメン…」
「……時間切れです…目を瞑ってください」
「……ああ…」
バットエンド…と言う奴か…まあゲームと違いリトライ無いけどな。
そんなことを考えつつ一毅は目を瞑る…
「……………」
がいつまで待っても来ない…と思った瞬間ペチンっと一毅の頬に軽い衝撃が走った…
「あ…」
「でも私もバカですね…それでも貴方が好きです…優しくて人を突き放せない…そんな貴方が…」
「レキ…」
「ですから一つ提案があります」
「え?」
「なので明日まで待っていてください」
「え?え?」
そう言ってレキはどこかに行ってしまう。
「……し、死ぬかと思った…」
今回はレキなりに考えがると言うことだとう…だが自分が考え無しに浮気なんぞすれば…
(次は死ぬな…)
浮気だけはしない…一毅はそう誓いつつ寮に帰った。
次の日…結局レキは帰ってこず寝坊した…それから一日授業を受けて終わると特に依頼も受領せずに帰ってきた…
(レキどうしたんだろう…ライカも探してみたけどいないし、あかりたちも居ないし…)
するとキンジとアリアが来た。
「よぅ。今日はレキが一日居なかったけどどうしたんだ?」
「知らん」
「あかりたちも居ないしどうしたのかしら…」
「さぁ?」
一毅としてはレキやライカ…どっちも意味合いは違えど大切だ…レキは恋人として…ライカは大切な後輩として…
「はぁ…」
(一毅が悩みごとなんて珍しい…)
キンジとアリアの思考がシンクロした。
そして二人と別れ一毅は部屋に入る。
『あ、お帰りなさい』
すると段ボールを片付けているレキとライカがいた。
「何してんだ?」
「ライカさんが越してきたので荷物の整理です。すみませんが飲み物くれます?」
「ああ…ライカは何がいい?」
「牛乳で」
「了解…」
一毅はボーッとコップを二つ取りレキにはカロリーメイトジュース(レキしか飲まない)と牛乳を注いでいると…
「ん?」
やっと違和感に気付いた…お陰で牛乳を溢したがそんなのに目も暮れず、
「ライカァ!?」
「あ、やっと気づきました?」
「なん…で?」
「それは私が説明しましょう」
レキが手をあげる。
「こうすれば一毅さんはライカさんとの縁を切らずに済む、ライカさんは一毅さんと一緒にいられる。私はライバルが目の前にいるため監視がしやすい…良いことずくめです」
「まさか今日一日中やってたのか?」
「驚かそうと思って…なのに一毅さんとボーッとしてて気付かないし…」
「と言うわけで…」
ライカが正座をして…
「不束者ですがよろしくお願いします」
「あと一毅さんは平等に愛してくださいね?それを破ったら撃ち抜きます」
一毅は後ろにぶっ倒れそうになった。何がどうしてこうなった?
「へへ…」
「ふふ…」
すると二人は一毅の腕に絡み付くと頬にキスした。
『好きですよ!一毅(さん)(先輩)』
「…はぁ…降参だよ。参った参った」
一毅が肩を竦めるとライカが笑いレキも少し微笑む。
一毅の部屋に同居人が一人増えた瞬間であった。
やっちまった…だが後悔はない!《キリ…》
と言うわけで次回からライカも一毅の部屋に居ます。
可笑しいな…当初の予定ではデートだけして終わりだったのに筆が乗って全然違う位置に着地した…まあいいか!龍が如くでは桐生さんキャバ嬢複数人落としてたし…も、文句とか言わないで…でも無言で石も投げないで…だってライカ不遇で終わらせるの可哀想だったんだもん…
さて、今回一毅たちが歌ってた歌ですが全部龍が如くの歌です。特に一毅の持ち歌は全部桐生 一馬さん…と言うか黒田崇矢さんが歌ってます。聞いた事ないよと言うかたは是非聞いてみてください。すごくかっこいいです。
さて最後ですが…お気に入り登録50人突破…いやいや結構これ快挙なんです。リメイク前はこの辺りだとまだ二十人ちょっと位だったはず…それと比べれば多い多い。
と言うわけで次回から本編です。では!