緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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金と巫女

「はぁ…はぁ…」

 

キンジは先程から白雪の写真を見せながら行方を追っていたが一向に行方はつかめない。

 

「くそ!」

 

キンジは苛立つ…何で気づけなかった…注意しておけば分かっていた筈だ…くそ…

すると地面に穴が開いた。

 

「なっ!」

 

するとそこに電話もかかってきた。

 

【どうもキンジさん】

「レキ…すまないが今は話してる暇は…」

【分かってます。よく見てください】

 

見てみれば…矢印?

 

【白雪さんの行方は先程から捕捉済みです】

「レキ…」

【急いでください…嫌な予感がしま

す】

「分かった…この方向だな?」

【はい、正確に言えば地下倉庫(ジャンクション)の中です」

「なっ…マジかよ…」

【こんなときに冗談は言いません】

 

待ったくその通りであった。

 

 

 

 

 

地下倉庫(ジャンクション)とは外向けのための優しい言い方だ…本来の使用用途は弾薬や爆弾の宝庫…つまり危険物系の武器庫なのである。

 

「ここ…か?」

 

キンジは地下倉庫の入り口にあるナンバーを入力しロックを解除…すぐさまその中に飛び込んだ。

 

(ん?声?)

 

キンジはそっと音を立てないように歩いて近づきバタフライナイフだけ抜く…周りには火薬や爆薬が大量に置かれている…発砲しようものなら跳弾した際に引火して爆発するかもしれない。

それから覗いてみれば白雪と声だけだがもう一人誰かがいる。

 

「何で私なの?私なんか対したことのない魔女(マツギ)だよ?」

「ふ…随分謙遜するのだな。謙遜は日本人の美徳だがそうするものじゃない。事実お前はこの学校の中でも指折りの実力者だ…そういうダイヤの原石を探しているのだよ…我々イ・ウーはな…」

 

イ・ウーの名を聞いた瞬間キンジは自分落ちが熱くなるのを感じた…だが敵の姿も確認できないまま飛び出すのは愚の骨頂だ…今は出れない。

 

「随分苦労させられた…中々思ったようには遠山キンジと神崎 アリアは喧嘩しない…険悪になってもあの桐生 一毅がうまく宥めてしまう」

「そうだね…カズちゃんは昔からそういう男の子だから…」

「だがやはりアドシアード本番は簡単だったな…貴様を呼び出すのは…」

(つまり白雪は自分からいったのか!?)

 

キンジは驚愕する。

 

「改めて歓迎しよう星伽 白雪…我らは君が欲しいのだ…必要なのだよ…」

「……………でも…」

「何を迷う…遠山 キンジは神崎 アリアと上手くやっていくだろう…あの男にとって貴様はもう用済みなのだよ…」

「………そう…だね……キンちゃんは…」

 

白雪は自らの足で歩き出す…ダメだこのままでは…白雪が行ってしまう。

 

「白雪!!!!」

「え?」

「ほう…来ていたようだな」

 

キンジは白雪を見据える。

 

「何処行く気だよ白雪…」

「キンちゃん…今さら何か用?」

 

白雪の目には感情がなかった…

 

「俺はお前の護衛だぞ…守りに来て何が悪い」

「じゃあもうその依頼取り消すね?それに私は自分の意思で行くの…ほぅっておいて…」

「させるかよ…お前を犯罪集団の仲間になんかさせるか…」

 

キンジはナイフを構える…

 

「シャア!」

 

一瞬の交錯…だが気付けばキンジの首筋には白雪の刀…イロカネアヤメが突き付けられていた…

 

「っ!」

「無駄だよ…キンちゃんじゃ私には勝てない…」

「くっ!」

 

キンジはナイフで弾くとミドルキックを放ち白雪を牽制…白雪はそれを後ろに跳んで躱す。

 

「うぉおおおおおお!!!!」

 

キンジは走り出すとナイフを振るう。

だが全て白雪には見切られ掠ることもない…

 

「はぁ!」

「がっ!」

 

白雪の突きが防刃ネクタイに当たり後ろにキンジは吹っ飛ぶ…

 

(これが…白雪の本当の実力…)

 

キンジは咳き込みながらも立ち上がる…

 

(だが…集中しろ…よく見れば見えないこともない…意識を研ぎ澄ますんだ…)

 

キンジは目を細める。

 

「キンちゃん…」

 

白雪は駆け出す。

 

「うぉおおおおおお!!!!」

 

キンジも駆け出すと飛び蹴りを放つため飛び上がろうとする…だが、

 

「え?」

 

突然足が凍りつき動けなくなった…

 

(まさか白雪?若しくは魔剣(デュランダル)の力か!?)

 

白雪の刃が迫る。

 

(し…ぬ…?)

 

だがそれは別の刃で弾かれた…

 

『え?』

 

キンジと白雪は驚く…そこには、

 

「何でお前らが戦ってんだ?」

「一毅…」

「そうだよ一毅だよ…ここのところ全く出番がレキと一緒に無い主人公…桐生 一毅だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ…」

 

白雪は下がる…だがそこにピンクの物体が突っ込み白雪に小太刀を振り抜いた。

 

「アリア!」

「人の相棒に何してんのよ!」

 

アリアは小太刀を躱されたため一度距離をとる。

 

「ふん…一度撤退するぞ」

魔剣(デュランダル)の声と共にその場を光が包み目が眩む。

気付けば白雪は居なくなっていた。

 

「大丈夫か?」

 

一毅は刀で氷を砕いてキンジを救出する。

 

「お前アドシアードは良いのか?」

「替え玉おいてきた」

 

 

その頃アドシアード会場では…

 

「さっきの桐生先輩一蹴って感じだったね」

「でも桐生先輩は関節技はあんまり使わないよね?」

 

あかりと辰正は二人で廊下を歩いていた。

 

「そうだよね…桐生先輩一回戦目とかはいつも通りだったのに…なんで急に寝技とか使ったんだろう…」

「それになんでお面着けて出てきたんだろう…天狗の…」

「あれ?桐生先輩じゃない?」

 

一毅?はその声が聞こえたのkビクッと体を震わせる。

 

「桐生先輩先程はおめでとうございます」

「あ、ああありがとな、あか…じゃなくて間宮」

「?何か声おかしくないですか?」

「そ、そそそんなことは無いぞたつま…じゃなくて谷田…」

『……………』

 

何か怪しい…二人は本能的に感じた…何かを隠してる…

 

「なにか疚しいことでもあるんですか?」

「い、イヤダナー…ソンナコトナイヨ…」

 

(怪しい…)

 

二人は一毅?をみる…良く見ると黒髪の隙間からちらほらと金髪が出てるような…それにこの身長…良く見てみれば一毅にしては低い気がする…近くで見たことがあるから一毅はもっとがっしりしてる…確かに背は高いがそれでも低いしなにより細い気がする…更に良く考えてみるとこの声に聞き覚えがある…まさかとは思うが…

 

「じゃ、じゃあな…」

「ねぇライカちゃん。報酬はなんだったの?」

「え?今度買い物に付き合って…」

 

だんだん語尾が小さくなるがしっかり答えた…

 

『何やってんの!?ライカ(ちゃん) !!!!』

「い、いやぁ…」

 

隠しても仕方ないため一毅?改め火野 ライカは天狗のお面をとる。

 

「一毅先輩何か急用らしくてさ…頼まれたんだ」

『ふぅん…』

「ほ、ほら。先輩が困ってるんだ。助けてやるのが優しさだろ!?」

 

二人の呆れた目にライカは言い訳を重ねる。

 

「本音は?」

「え?」

「ライカ…本音は別でしょ?」

 

辰正とあかりはがっしり服を掴むとペンライトを取りだし目に付けたり消したりしながら尋問する。これは実は結構精神的に圧迫されるのだ。

 

「そ、そんなものは…」

『あるでしょ?』

 

こう言うときに息がピッタリなのは流石幼馴染みと言うところか合わないで欲しかったがライカの思い虚しくピッタリなのだ…

 

「…うぅ…」

「言った方が良いよ?」

「田舎のおっかさんが泣いてるよ?」

 

辰正とあかりは更に圧迫をかける。

 

「うぅ…そうだよ!一毅先輩が今度買い物に付き合ってその後でお茶も奢ってくれる約束したんだ!何かデートみたいだって思ったら諸手を上げてOKしたよ!なにか問題あるか!!!!」

「最初からそう言いなよ…」

 

二人はライトを仕舞う。

 

「ライカちゃんって桐生先輩が好きなんだねぇ」

「あんだよ…文句あるのか?」

「いやまさか。僕だって尊敬できる人だと思うし…でも…」

 

辰正は頬掻くと…

 

「あの人彼女持ちだよ?」

「まあ好きになっちゃったらそういうのどうでもいい感じにはなるとは思うけどね…」

「………別にいいんだ…」

『え?』

 

辰正とあかりは己の耳を疑った。

 

「あの人は一途だから難しいとは思う…でも良いんだ…週に三回…いや、一、二回で良いんだ…多くは望まないからそれくらい愛してもらえれば…」

「ま、待った待ったライカ!自分で何言ってるか分かってる?」

「自覚してる…一番にはなれないけど…二番目でいい…ってやっぱ虫が良いのかな…」

(虫がいいと言うよりは…)

「で、でもあたしの方が胸とか大きいし色気だったら上だと思うんだ…それならゴニョゴニョとかもレキ先輩より絶対上だと思うんだよ!」

『いやいやいや…』

「大丈夫…別に認知とかしなくてもいいし…」

『ダメでしょ!』

「あ、あんまり痛い奴じゃなきゃあたし大概平気だし…外とか…紐とか…ああでも一回目はやっぱりムードとか大事にしたいし…」

「あ、あのライカさん?」

「ん?なんだよ辰正」

「君それで幸せ?」

「うん」

 

ライカはあっさり頷いた。

 

(愛人だ…愛人気質の人だこの人…)

 

あかりと辰正は残念と言うよりはトンでもない境地に進み始めてる友人を見て頬をひきつらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

さてその頃地下倉庫ではライカの思いを知るよしもない一毅とその仲間達が追い掛けていた。

 

「ハァックション!!!!」

 

一毅は盛大にくしゃみをする。

 

「風邪…ではないわね」

「なぜ確定する…」

「馬鹿は風邪引かないって言うからだろ」

「何!?」

 

アリアとキンジの言葉のダブルブローに一毅はショックを受けた。無論噂の内容を聞いたら更なるショックを受けるだろうが…

すると目の前に…

 

「白雪…」

 

白雪は刀を構えキンジ達を見据えていた。

 

「しつこい男は嫌われるんだよ」

「今さらお前がそれを持ち出すか」

 

そう言ってキンジが前に出る…すると次の瞬間パイプが破裂し水が出てくる…どんどん水が貯まってくる。

 

「アリア…バレてるぞお前がカナズチだってこと…」

「う、嘘でしょ!」

 

アリアは半狂乱だ…

 

「仕方ねぇ…一毅とアリアは先に行けよ…」

「お前は?」

「後で白雪つれていく…」

「…気を付けろよ」

 

一毅とアリアは先に向かう。

 

「行くぞ…白雪…」

「勝てないよ…キンちゃんじゃ私に…」

「勝つ…それくらいの意地(プライド)はおれにもあるんだよ!」

 

キンジは疾走した。

 

同時に一毅とアリアも奥にあるコンピューターの管理などをする部屋に突入し魔剣(デュランダル)に追い付く。

 

「しつこい奴等だ…」

 

魔剣(デュランダル)はローブを脱ぐ…その下には雪の様な銀髪を揺らし…両手剣と呼ばれる剣を持つ少女だ…

 

「氷を抱いて眠らせてやろう」

「あんたちゃんと武器向けられるんでしょうね?」

「俺は武偵だぜ?幾ら女に向けたくないと思っていたって…」

 

一毅は殺神(さつがみ)を抜く。

 

「捕まえるときに手加減はしねぇよ」

「それは助かるわ」

 

アリアも銃を抜く…ここなら機械は壊れても引火はしない…

 

「行くわよ一毅…」

「ああ!」

 

一毅とアリアも走り出した…


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