緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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第三章 篭の鳥と魔剣
龍と新たな騒乱


キンジと一毅の喧嘩とキンジとアリアが改めてパートナーとなった日の三日後…

 

「ようキンジ」

「よう一毅」

 

キンジはアリアを、一毅はレキを連れてドアから出てきたところに鉢合わせる。

何故アリアも一緒かと言うとアリアが言うにはキンジの力には秘密がありその力はパートナーである自分は把握しとく必要がある。その為一緒に住んで調べると言ってキンジの部屋に住み着くことになったらしい。

のだが…

 

「うわ!なに一毅…あんたも顔凄いことになってるわよ…何て言うか…ヤクザの抗争の後みたい」

「やかーし」

 

そう、一毅とキンジは三日前互いにボロボロになるくらい殴りあったと言うかキンジの場合は蹴っ飛ばしてきたと言うべきだがとにかく一毅とキンジは顔が腫れてしまっているのだ。

 

「そう言えばアリア」

「何よ一毅」

「お前シャーロック・ホームズの曾孫なんだってな」

 

一毅の言葉を聞くとアリアは眉を寄せる。

 

「随分腕の良い情報屋と知り合いみたいね」

「まぁな。て言うか否定しないって言うことは肯定と受け取るぞ」

「別にいいわよ。どうせあんたとレキにも言おうと思ってたし」

 

そういうとアリアも一毅を見る。

 

「でも私もあんたが宮本 武蔵の子孫だと聞いたときは驚いたわよ」

「そうか?」

「そりゃあ宮本 武蔵って言ったらイギリスでも有名よ?東方の剣豪(EAST SWORD MASTER)、世界最強の剣豪…他にもその戦いぶりは畏怖と尊敬の年を込めて小さな国の伝説(SMALL COUNTRY LEGEND)って呼ばれてるわ」

 

自分の先祖がそこまで買われていると言うのはどうもむず痒い気がしてしまう。

 

「ま、俺はその男の子孫ってだけで別段意味はないがな」

「それに関しては同意するわ」

 

アリアに同意される。恐らくそう言った意味でのプレッシャーは一毅なんか火じゃないだろう。しかも一毅の姓は桐生だ。殆どバレることはない。

 

「それにしてもキンジさん少しスッキリした顔になりましたね。憑き物が取れたみたいです」

「そうか?」

「その分腫れやアザで酷いですが」

「お前の彼氏にやられたんだぞ」

 

そうこうしてる間にバスに着くとクラスメイトの武藤が居た。

 

「うぉ!何だその顔はよ一毅!ヤクザの抗争の後か!?」

「確かにヤクザに知り合いはいるが違う!」

 

 

 

 

その夜… 今日は豚カツだ。

小麦粉と卵を絡め最期にパン粉をまぶして熱した油の中に潜らせる。

ジュワっと音を立て気泡と共にパン粉がきつね色に変わっていく。

その間にキャベツの千切りと添えるプチトマトの輪切りを皿に置くとカラリと綺麗に上がった豚カツを切って置く。

 

「レキ~ご飯だぞ~」

「はい」

 

クイズ番組を観ていたレキは箸を並べたりご飯と味噌汁を置いたりする。

そして今回のメインディッシュの豚カツを置く。

 

『いただきま【バカキンジィ!(バキィ!)】す…』

 

隣の部屋から派手な音が出た。

 

「今日はジャーマンスープレックスかな?」

「ですねぇ」

 

これから毎日こう言った騒音が起こるのか…等と思っていると、【ジャキン!】となにかを切った音が響く。

 

「居た!泥棒ネコ!!!」

「む?」

 

この声…何処かで聞いたことがあるような…

 

「キンちゃんの前から居なくなれ!天誅ううううう!!!!!!」

 

次の瞬間ドッタンバッタン騒音が聞こえ始め更に銃声とそれを鋼で弾く音が聞こえ出す。

 

「………一毅さん。この声は恐らく…」

「だよなぁ…」

 

一毅は豚カツを口に一つ放り込んでから殺神(さつがみ)を片手に外に出るとレキを引き連れ隣の部屋に入る。

 

「か、一毅!止めてくれ!」

「一毅!この意味わかんないバカ女を斬りなさい!」

「カズちゃん!この泥棒ネコを斬って!」

「…………何してんだよ…」

 

上から順にキンジ、アリア…そして、キンジと一毅の幼馴染み…

 

「白雪…」

 

星伽 白雪だ…

 

 

 

 

久しぶりの登場なので改めて紹介しよう。星伽 白雪は黒髪にロングストレート…さらに性格は品性でいまだに男の3歩後ろを歩き特技は料理と裁縫。部活はバレー部と放送部とか諸々の部長を兼任しつつ生徒会長もやっている。まさに慎ましやかで大人しく何処か儚げで巨乳の今時の絶滅危惧種といっても過言ではない大和撫子である。しかもキンジにホの字。

等々女として非常に高ランクな人なのだがキンジに女の影がチラついた時は違う。まさにその時の暴走状態は狂戦士(バーサーカー)で歩く核弾頭…危険性もトリプルSの女性なのだ。

 

「しかし凄いですねぇ。アリアさんと至近距離で喧嘩とは…鬼道術でしたっけ?」

「ああ」

 

先程からギャーギャー言いつつもアリアと白雪は刀や銃弾に鎖分銅やアリアのお得意のバリツの技が飛ぶ。

因みに普段は運痴の白雪だが所謂、超能力者でありその力によって身体能力を引き上げているらしい。

その力は凄まじく一度痴漢をバスの中から反対車線を飛び越え歩道の方までブッ飛ばすところを目撃したときがある。流石にあの時は目が飛び出すかと思ったが…

 

「超能力…ねぇ…」

 

キンジもすっかり傍観者となり一毅とレキと三人で並んで座っている。

 

「胡散臭いとか思っちゃダメですよキンジさん。最近は超能力と言うのは結構ポピュラーなものになってきてますから」

「そうだぞキンジ。だから超能力捜査研究科(SSR)何てものもあるんだぜ?」

「とは言えやっぱ良くわかんないな…ヒートみたいなもんか」

「いや、あれは体質みたいなもんだ。ちっと畑が違う」

「そうか…」

 

そんな話をしているとアリアと白雪が座り込む。

 

「無駄に…タフ…何だから…泥棒…ネコ…ゼィ…」

「何…なのよ…あんた…ハァ…」

 

見たところ両者戦闘不能と言ったところだな。

 

「やっと終わったか…」

「キンちゃんさま!」

 

そに白雪はジャンピング土下座をした。

 

「キンちゃんゴメンね!私が臆病だったばかりにそんな顔にされちゃうなんて…でも大丈夫!もうキンちゃんの綺麗な顔をそんなフルボッコにするピンクの悪魔は私は祓うから!」

「ちょ!待ちなさいよ!キンジのその顔はあたしじゃなくて一毅とキンジが喧嘩してなったのよ!」

「まあ間接的にはアリアさんも関係してますけどね」

「レキは黙ってなさい!」

「うるさい毒婦!キンちゃんと恋仲になったからってそんな逆なら羨ま…じゃなかった、そんないけない関係になるなんて!」

「こ、恋仲!?違うわ!そんなんじゃないわよ!恋なんて憧れたこともないしこれからもない!」

 

またこんがらがってきた…仕方がなくキンジは白雪の肩を掴むと少し強気な目で、

 

「白雪…この顔は同意の上での喧嘩だったから恨みはないしアリアとはパートナーなだけだ」

「でもキンちゃん!ハムスターも一緒の籠に雄と雌を入れておくと子供出来るんだよ!」

「飛躍しすぎだ!白雪…」

 

キンジは白雪を見詰める。

 

「俺の渾名を知ってるだろ?」

「女嫌い」

「そうだ」

「後…昼行灯」

「それは今は関係ない」

 

キンジは息を一つ吸い…

 

「俺が信じられないか?白雪…」

「そ、そんなことは…」

 

意識してやってる訳じゃないだろうがキンジ…女は意中の男にそんな顔近づけられて低い声で囁かれたらクラっと普通は来るからな…

 

「じゃあ…してないんだよね?」

「なにをだ?」

「キス…とか…」

「おいおい白雪、そんなまさ…か?」

 

一毅は笑ってそんなわけ無いと言おうとするがキンジとアリアが石像のようになり…え?したの?

 

(まさかお前ら…俺が命掛けで戦ってる最中イチャイチャチュッチュしてたと言うのかオイゴラァ…)

 

一毅の額から青筋が浮かび上がる。

とは言えキンジはそっちには気づかない。

 

「し、白雪…確かにしたかと言われればしたんだろうが…あれは云わば生きるか死ぬかの瀬戸際で生き残るためには仕方無くでだな…」

「した……の…ね…」

 

白雪はまるで幽鬼のように顔をあげる。

 

「した…のね…」

 

間違いなく今はR指定の白雪…いや黒雪が誕生した。

 

「ちょ、ちょっと待って!あの後ね…気になったから調べたんだけど…」

 

アリアが今度は息を一つ吸い…

 

「子供は出来てなかったから!!!」

『………っ!』

 

アリア以外のその場の全員が驚愕し白雪がぶっ倒れた。

 

「白雪!」

 

一毅が駆け寄る。

 

「キ、キンジ…お前なぁ!キスに飽きたらず何してんだよ!人が命掛けで戦ってる最中によ!せめて避妊くらいしろよ!」

「それともあれですかキンジさん。あなたはそう言うシチュエーションじゃないと燃えない人ですか?私と一毅さんも色んなシチュエーションでしたことはありますけど流石にそう言うのは無いと思います。ドン引きです」

「ちっげぇよ!子供ができるようなことはしてねぇ!アリア!何で子供なんだよ!」

「あんたこそ何言ってんのよこの無責任男!これでも悩んでたのよ!」

「何でだよ!」

「お父様が小さい頃言ってたわ!キスしたら子供ができるって!」

(そ、そう言うことですか…)

 

一毅が納得すると、

 

「アリアさん。キスでは子供出来ませんよ」

「そ、そうなのレキ」

「ええ、子供と言うのはキスのその先の行為によってできます」

「そ、その先…」

「はい、これは私と一毅さんの実体験ですがモゴ」

「ストーップレキ!それ以上は俺が羞恥死ぬから辞めろ」

 

一毅はレキの口を塞ぐ。

 

「そんなに気になるならキンジに聞けよ、それこそ詳しく教えてくれるぜ?手取り足取り」

「するか馬鹿!!!」

 

キンジの蹴りが飛ぶ。

 

「あれ?」

 

するとアリアが周りを見渡す。

 

「あの変な女は?」

『え?』

 

周りを見ると確かに白雪が消えていた…

 

 

 

さて次の日だがアリアと白雪の行動の明暗ははっきり別れた。

あれほど甲斐甲斐しく世話を焼いていた白雪はキンジを避けるようになり、アリアはレキ先生と共に書物を読み、雄しべ雌しべレベルから学習し自分の知識が天動説並みに違うことを学びキンジを見ると顔を真っ赤にして慌てると言う奇行(後でレキに聞いたがアリアにマニアックなプレイの数々を教えたらそれをキンジとやるのを想像してるらしい)をしていたが昼休みにはそれも成りを潜め(忘れたとも言う)キンジをまた奴隷扱いしていた。

すると食堂で一毅、キンジ、アリア、レキの四人でいると、

 

「おうキンジ、ちょっと話聞かせろ、でなきゃ引いてやる」

 

そう言ってキンジの近くに座った武藤(バカ)と、

 

「やあ遠山くん。少しいいかな」

「不知火」

 

武偵高一の人格者にして強襲科(アサルト)のAランク武偵…不知火 亮が来た。

彼はナイフ、銃、徒手空拳の三つともレベルが高く更にイケメンで座学成績も良いとモテ要素が満載の男である。なので当たり前だが女子にモテモテなのだが何故か噂が一つも立たない。変な奴だ。

 

「ちょっと面白い噂があってね」

「噂?」

 

一毅はご飯をがっつきながら聞き返す。

 

「何でも昨日星伽さんと喧嘩したんだって?神崎さんが」

「それがどうかしたのか?」

「いやほら、遠山くんと星伽さんって付き合ってんじゃないの?」

「っ!」

 

アリアが盛大に桃饅を詰まらせる。

 

「それとも…愛が冷めちゃったとか?」

「むぐっ!」

 

またアリアが詰まらせたため一毅が水を飲ませる。

 

「アホか。白雪とはそんなんじゃねぇよ」

「そうなの?じゃあよかったね神崎さん」

「はぁ?」

 

アリアが首をかしげる。

 

「いつも遠山くんの話してるし…ねぇ桐生くん」

「そうだな」

 

聞きもしてないのにキンジがあーだったこうだったとそりゃあもう…

 

「あ…う…あ…」

 

アリアは顔を真っ赤にしてしまう。そして、

 

「エロキンジ!」

 

八つ当たりにぶん殴った。

 

「べ、べべべ別にあんたのことなんてなんとも思ってないわよ!」

「理不尽すぎるだろ!」

 

キンジは不知火の手を借りて立ち上がる。

 

「そう言えば遠山くんアドシアード何に出るか決めたの?」

「いや…不知火は?」

「僕は拳銃射撃競技(ガンシューティング)補欠かな。神崎さんは代表になってたよね?」

 

アドシアードとは武偵高校で行われるオリンピックのようなもので人によっては選ばれている。レキも狙撃競技に選ばれてるし一毅も剣道の代表に選ばれている。

 

「まあ私は辞退したわ。面倒だしそれよりもやることがあるわ」

 

母親のことだろう…すると、

 

「アリア先輩!」

 

そこに丁度ミニアリア…もとい、あかり、ライカ、辰正の三人がやって来た。

 

「この前はどうもすいませんでした!」

「良いって」

 

辰正は頭を下げてきた。

 

「あ、一毅先輩。今日また組み手良いですか?」

「ああ、良いぞ」

「……」

 

何故かレキに睨まれた。

 

「あ、レキ先輩。ちょっと一毅先輩借りますね?」

「ええどうぞ…」

 

バチバチとレキとライカの間に火花が散る。 ほんと仲が悪いな…

「いやぁ…桐生くんも何だかんだでモテるもんねぇ」

「へぇ~意外じゃない…顔に似合わずね」

 

不知火とアリアはウンウン頷く。

 

「まあ本人全く気が付いていないんだよね~意外と多いんだよ?桐生くん狙ってる子」

「マジかそれ!?」

「彼女持ちでも良いって子が結構ね」

「ほんと意外だわ…」

 

会話に武藤も加わり出すが一毅には全く分からなかった。

そうしていると、

 

「あ、志乃ちゃーん!こっちこっち!」

 

あかりが手を振ると長身の白雪に似たあかりの同級生と思われる少女がお盆を手にやって来た。

 

「何だ志乃、遅かったじゃねぇか」

「あ、ゴメンねあかりちゃん」

 

すると、一毅と目が合う。

 

「あ、どうも…探偵科(インテスケ)の佐々木 志乃です」

強襲科(アサルト)の桐生 一毅だ。宜しくな」

 

そう言うと志乃の表情が固まる。

 

「き…りゅう?」

「そうそう、桐生って言うんだ。そんなに珍しうぉ!」

 

次の瞬間一毅は椅子から転がるように避ける。

 

「し、志乃ちゃん?」

 

あかりを含め周りが全員唖然とする。

そりゃそうであろう。いきなり名を名乗ったら志乃が腰から剣を抜いて一文字一閃である。周りは同時に静かになり志乃がお盆を落とした音が自棄に大きく聞こえた。

 

「成程…貴方が桐生ですか…」

「お、おい…どうしたんだよ急に……俺はキンジと違って女に恨まれる心当たりはないぞ…」

「そうですか…じゃあ名乗り方を変えますね…初めまして、【巌流(がんりゅう)】佐々木 志乃…」

「【巌流(がんりゅう)】……だと」

 

一毅は眉を寄せた……


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