アメリカ……世界経済の中心にして様々な民族が集まる巨大国家。
自由の国と言われ、車の数も多くその上ばか高いビルも多い。因みに今自分が足を踏み入れたビルはGⅢが所有しているビルらしい。
GⅢ曰くこんだけビルがあるなら自分のビルがあってもおかしくないだろうとのこと……我が弟ながら羨ましい限りである。あとこんな感じでGⅢ派が占める地域にはこんなビルや建物を持ってるらしい。
「しかしGⅢ派ねぇ……」
これはアメリカに着いてからGⅢに聞いたのだが何でもアメリカにはGⅢに味方をするGⅢ派と、GⅢと対立する反GⅢ派が存在し地域ごとにそれぞれ違うらしい。ここに来るときも反GⅢ派の地域は避けながら来るほどで、味方も多いが敵も多いようだ。
何て思いながらビルの中に入ると、まずはエントランスに来たのだが、そこにはなんと大量の手形が壁や床に天井までびっしり張り付けてある。
「なんだこりゃ……」
と一毅まで目を点にしているとGⅢはフフンと鼻をならすと、
「ここにあるのは俺が100%勝てないと認めた奴の手形さ」
偉そうだなおい……とキンジは思わずひきつった笑みを浮かべながら見てみるが、成程……これはあのパワードスーツで戦う社長に盾がトレードマークのあの人や蜘蛛をイメージした全身タイツのヒーローに段ボール愛好家で有名なあの人とか……お、ヒノバットのもある。
こうやってみてみると結構知った名前もあるなと見ていくと……ん?
「おいGⅢ……」
「ん?どうした兄貴」
「これは何だ?」
と、キンジが指差すとそこにはエントランスの一番目立つ場所にあったのは手形はないが名前の部分に【Kinji Tohyama】と刻まれている金属の板であった。因みに隣には一毅のもある。
「そうそう。兄貴と桐生も後で手形とらせてくれよ」
「アホか!なんで態々そんな危ない有名人リスト入りせねばならんのだ!さっさとはずせ!」
そう言ってキンジはGⅢに抗議を始めていると、両目の左右で色の違う銀髪の少女が顔を出した。
「おうロカ。何かなかったか?」
「なんかウロチョロしてたやつらがいたけど多分マッシュの手先かな」
と返すロカと呼ばれた少女を見ると、ネクラそうだが中々服装はお洒落だ。
「ネクラはあんたの代名詞でしょ」
「え?」
何て思っていたらいきなりそう言われポカンとキンジはしてしまう。そして思い至ったのは、
「お前
「あんたの悪い頭でもそれくらいはわかるのね」
ふんっと鼻を鳴らしながらロカは奥にいってしまう。その後ろ姿を眺めていると、
「何だ随分嫌われてんな」
と、一毅がやって来て話しかけてくる。それにたいしてGⅢは苦笑いした。
「あいつはどうも人間嫌いだからな」
とGⅢが言うとキンジはうちの高校にも心が読める先輩がいたのを思いだす。あの人も結構人間嫌いだったし、心が読めると言うのは人間の汚い部分も見なければならないと言うことだ。そりゃひねくれもするか……と、キンジが思うとGⅢは更に続けてくる。
「だがあいつが12歳の時にロシア連邦保安庁……旧KGBの命令で俺を殺しに来た奴でよ。今までで一番俺を追い詰めた」
「へxぇ、そりゃすげぇじゃねぇか」
そうキンジが言うとGⅢは肩を竦めながら、
「殴り合いなら負ける気がしねぇが
それは同感……と、キンジと一毅は頷きながらGⅢに案内されて歩いていく。
「因みにアトラスは元
「もしかしてアンガスさんも……」
「アイツは元
なにこの弟……部下が全員揃ってやベェやつじゃねぇか。しかも全員GⅢには高い忠誠心を持っているようだし……
うちのように間違っても桃まんを買いにいかせたり蹴ったり殴ったり発砲したり人の家を占拠したり服置き場にしたり刀ぶん回したり……あぁもう!挙げていくと切りがないがそんなことはしないだろう。
ホント金も人望もあるし何が俺たちを分けたのだろうか……
「あ、そうだ兄貴、桐生」
『ん?』
すると、GⅢは何か思い出したように声を出すと、
「ついて早々悪いがまずは体型を図らせてもらうぜ?」
GⅢはそう言うと、ニッと笑ったのだった。
「ふむ、キンジ様は流石サード様のご兄弟。少しの調整ですみそうですな。桐生様もアトラスのを元に弄ればそこまで難しくはないでしょう」
と、アンガスさんに言われながらキンジはGⅢがつけているようなプロテクターの着心地を試していた。
他にもブーツや、オロチのような前腕甲もあり、全部つけてみるが驚くほど軽い。と言うか軽すぎて着ているのが分からない。 更に勿論防弾製で
まあちょっとメタルヒーローっぽくて人前で着るのが恥ずかしいものの、それを除けば滅茶苦茶良いじゃないか。隣で着ていた一毅も同じ感想のようで、さっきから軽く腕を振ったり蹴りを出してみて動きを阻害しないか試しては驚いていた。
「なぁ、ものは相談なんだがこれを服の下に着れるようにできないか?」
だがやはりこのメタルヒーローっぽさは慣れそうになれないのでアンガスさんにそう聞くと、
「可能ですが少々防御力を削ることになりますが宜しいですか?」
「どれくらい落とすんだ?兄貴は俺の
そうキンジに変わってGⅢが聞くと、
「マッハ2までなら大丈夫でしょう」
とアンガスさんが返した。因みにマッハ2は過剰すぎだ。桜花はマッハ1が限界である。
「……」
試着を終え、作業に移ると言ってアンガスさんがどこかに消えたあと、一毅はキンジ達と別れ自室として宛がわれた部屋に戻ってきた。
キンジはGⅢの仲間達と話すと言っていたが、それを辞退してきた。まあちょっと色々あってな。と言うわけで部屋に入る。それから、
「おいレキ。出てこいよ」
一毅はそう言うと、一毅の視線の先の空間がわずかに歪み、そこからフード付きマントのレキが出てきた。
「よくわかりましたね」
「んまぁ、何となく?」
このフード付きマントは見た目とは裏腹にかなりの高性能だ。
「それでどうしましたか?一毅さん」
「まあちょっと話したかったんだ。二人でな。日本だと二人ではできないし」
そう一毅が言うと、レキは一毅の言いたいことを分かっているようだったが、
「何でしょうか?」
レキがそう言うと一毅は口を開く。
「少し前から疑問だった。俺の勘違いかもって思ってたんだけど考えれば考えるほどやっぱりおかしいなって思うんだ。だからさ、一つ聞いても良いか?」
一毅の問いにレキは黙って頷き、更に一毅は一呼吸置いてから続けた。
「あのさレキ。ウルス……いや、璃璃神はなんで俺を選んだんだ?」
そう口にすると、レキは口元をわずかに固く結ぶ。だが一毅はそれでも言葉を続ける。
「俺に告白したのは強い血をウルスに取り込むためで風の命令だったんだよな?でも改めて考えると変だろ?だって俺の強さとお前の種類が違いすぎる。俺は近接戦闘特化だしお前は遠距離からの狙撃だ。いくら強い血を求めてたとしてもそんな手当たり次第良さそうなのをかき集めたって中途半端になるだけだ。だったら狙撃が得意なやつや、もっとお前達に役立つ能力を持ってるやつは武偵高校の中に限定したっている。なのになぜだったんだ?」
そう一毅が一気に言うと、レキは暫し口をつぐんでいたが、やがて口を開いた。
「風が璃璃神と言うのはキンジさんの入れ知恵ですね?」
「ああ」
そう、これはキンジがレキと真面目な話をといったときに察してくれたのか教えてくれたことだ。
まあ色々小難しい理屈があるらしいのだが、他の神と言う話になった後でキンジなりに推理していたらしい。それがレキの昔言っていた風が璃璃神なのではないかと言うことだ。他にも情報はあるらしいが一毅の頭にはさっぱりわからなかった。
だがとにかく璃璃神がいる……それははっきりした。これはアリアを助けるのに役立つ。さて、次はなぜ自分だったのかを聞こうではないか。
「何故一毅さんだったのかでしたね?確かに一毅さんの力は私たちにものとは違います。全くの別物です。色んな力を取り込んで……何て言うのは漫画やアニメだけで実際は本当に強い血を取り込んでいくにしてももっと範囲を絞った方がいい。そういう意味では一毅さんではダメです。一毅さんも分かってるようですが改めていっておきます。確かに本当の目的は貴方をウルスに取り込むことではありませんでした。いえ、正確には今もですが……」
そう言ってからレキは少し息を吸うと、一毅の目を改めて見直してから言った。
「本当は一毅さん。貴方を……歴代で最も狂気を受け継いだ強い桐生である貴方を……」
また少し息継ぎをして、レキは最後の言葉を続ける。
「