緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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金達と援軍

内閣特別警護官……そんな役職は表向き存在しない。だが飽くまでそれは表向きだ。殆ど一般的には都市伝説扱いをされ、稀に噂になるがそれだけと言えばそれだけ……よく聞く陰謀説と同じようなものだ。

 

何をしているのか……どうやったらなれるのか……そもそも存在してるのかも全てが謎。

 

だがそんな噂程度の役職の男が目の前にいる……と言うのに三人は驚きを隠せなかった。

 

「さて……神崎 H アリアに用はないんや。ワイが用があんのはお前ら二人でな」

 

そういって郷田 龍騎と名乗った男はキンジと一毅を見た。

 

「ふん。よう似とるのぉ……金叉はんと一明はんに」

「っ!父さんを知ってるのか!?」

 

郷田の口から語られたのは父の名前……その言葉にキンジは思わず反応する。

 

「よう知っとるわ。これでも前は武装検事やってたんや。若い頃にお前らの父親には世話になったんよ」

 

そう言いつつ郷田は懐から煙草を取り出し一本出すと次はライターを取り出して火を着けた。

 

「せやからほんまに心が痛むわ……」

そう言い郷田は煙草を加えたまま刀の鯉口を切る。

 

「お前らを今から始末するんやからな」

『え?』

 

三人が声を漏らした次の瞬間!キンジの目の前に郷田が刀を抜きつつ迫った!

 

「キンジ!」

 

一毅は咄嗟にキンジと郷田の間に入り殺神(さつがみ)を鞘から半分抜いて(と言うか抜ききる暇がなかった)防ぐ。

 

「ほぉ?中々ええ反応するやないか」

「ぐっ!」

 

ギリギリと押し合いを演じるが一毅は郷田の押してくる力に圧倒されないように必死だった。まだ傷が全快してないとは言えここまで圧倒的な力を感じるのは呂布以来のことだ。

 

「ふむ……なら少し力いれよか」

「っ!」

 

そう言った郷田の上腕がミキミキと隆起し力を込めてくる。

 

「ぐっ!」

 

必死に押し返そうとするが郷田は子供を抑えるかの如く一毅を押し始めた。

 

「一毅!」

 

そこに一毅の後ろからキンジが飛び出しハイキック……が、

 

「むっ!」

 

パシッとそれを簡単にキャッチし止める。更にその間も片手で一毅を押すことを止めることはない。

 

言っておくが、一毅は両手で押し返している……

 

「この!」

それを見かねたのかアリアがガバメントを抜こうとした。そこに!

「っ!」

 

ビシッ!っと地面に何かがめり込みギクッとアリアが動きを止めた。

 

「アリア女史。お前は動くななのです」

 

チャリ……と手の中で金属が擦れたような音をならしながらアリアを見るのは銭形だ。

 

「内閣特別警護官の仕事は基本的には政治家……特に内閣総理大臣を筆頭とした与党幹部の護衛……と詠ってはいますが実際は事前に日本の不利益となる存在の抹殺も許されているのです。しかもそれは警護官個人の裁量でも決めてよいとなっています。武装検事や公安0課も殺しの自由が与えられていますがあくまでも向こうは証拠を揃え、且つそれなりの手続きが必要……でもあいつらは違う。完全に自由に殺しを許可された……いや、寧ろ殺せと言われている存在。それがあいつなのです。あいつに邪魔と判断されて間違って殺されたら始末書じゃすまないのですよ」

 

そういって二人は睨み合う。銭形は身なりこそ幼く見えるが有事の際には自己を守る術をきっちり持っている。少なくともアリア自身が逃げても追いかけ半ば強制的にでも自分を連れていくと言う手を選択肢に入れられるくらいには……

 

「さぁアリア女史!お前はこっちにくるのです!そいつらの始末は日本の問題なのですから!」

「ふざけんな!」

 

二人が言い合いながら隙を伺う中でも一毅とキンジは郷田一人に苦戦を強いられる。

 

「この!」

 

一毅は腰から神流し(かみながし)も抜き二刀流となると郷田の体を狙う。

 

「ふん!」

 

だがそれを郷田は体を捻って躱しながら掴んだキンジの足を振り一毅にキンジをぶつける。

 

『カハッ!』

 

そのまま後方に吹っ飛ばされた二人だがキンジの方が先に体を起こしベレッタを抜く。

 

「なんや?」

 

パンパンと乾いた音が響くが郷田は刀を軽く振って弾く。

 

「ダメか……」

「当たり前やろ?こんな曲芸誰でもできるわ」

 

そういってキンジの呟きに律儀に返した郷田は刀を持ち直し爆走。間合いを一気に詰めた……その次の瞬間だった。

 

「あん?」

 

プップー!とクラクションが鳴り入ってきた1台の車に郷田は吹っ飛ばされのだ!

 

「乗って!」

 

そして郷田を轢いた車のドアが開くと中にいたのは、

 

『理子!?』

 

キンジと一毅が思わず驚いてポカンとするが理子の声で正気に戻される。

 

「急いで!逃げるよ!」

「っ!分かった!アリアも行くぞ!」

「うん!」

キンジは素早くアリアにも指示を飛ばすと一毅を押しながら理子が持ってきた車に飛び乗った。そして、

 

「捕まってて!」

 

グン!っと理子はアクセルを踏むと一気に加速する。

 

「……」

 

キンジが後ろを振り替えるとそこには地団駄を踏む銭形と車に轢かれてもピンピンしてる郷田が立ち上がるところだった。

 

「マジで化けもんだな……」

 

キンジはそう呟きつつ前の運転席で運転してる理子の方を見る。

 

「しかしよくここが分かったな」

「と言うかみんな急に三人が消えるから探し回ってたんだよ。そしたら理子が偶々見つけたの!」

と、プンプンと言う効果音が似合いそうな口調で言う理子にキンジはスマンスマンと素直に謝るしかない。

 

「今度理子の買い物に付き合ってもらうからね」

「わかったわかった……って、アリアなぜ俺をにらむ……」

 

キンジは助手席から態々振り替えって睨み付けてくるアリアに若干ビビるが平静を装う。

 

「しかし銭形 乃莉かぁ……」

「なに理子、あんた知り合いなの?」

「ん~?パパの代でちょっとね」

 

そう言って理子は苦笑いを浮かべる。これを見る限り相当な、なにかがあったようだが突っ込まないでおこう。

 

そう理子以外の三人が思った次の瞬間!

 

『っ!』

 

ビシィ!っと突然リアガラスにヒビが走り、四人は慌てて振り替える。そこには……

 

「待つのです!アリア女史ぃいいいいいいい!」

『いぃ!』

 

パルルルルルル!とエンジン音を響かせ爆走する銭形 乃莉がいた。

 

「あいつら足も用意してたのか!」

「逃げるななのです!」

 

キンジが驚愕してる合間にも銭形はなにかを投げつけてくる。

 

「うぉ!」

 

遂にリアガラスは完全に割れ、風が舞い込んで来た。さっきからなにを投げつけているんだ?等と思いつつもそれを調べる余裕はないためキンジはベレッタで応戦する。

 

だがピンチと言うのは立て続けに来るようで……

 

「なっ!」

 

ドン!っと上から音がしたかと思えば次の瞬間刀の刀身が突き破ってきた!

 

「ぐっ!」

 

咄嗟にキンジと一毅は体を捻って回避しつつ、体を窓から出して車に飛び乗った郷田を視界に収めた。

 

「悪いが満員だ!」

 

そう言ってキンジがベレッタを向け発砲……だが、

 

「むっ!」

 

刀を引き抜いた郷田は軽くその弾丸を弾く……しかしその隙があれば、

 

「悪いな!」

「ぬっ!」

 

今度は一毅が郷田のズボンの裾を掴み引っ張った。さらに!

 

「落ちろぉ!」

 

グィン!っと理子がハンドルを右へ左へと回し車体を振る……流石にここまでやられれば郷田も体勢を保てず……

 

「くっ……」

 

車から落ちた。

 

「今だ!もっと飛ばせ!」

「もう限界だよ!」

 

郷田が落ちたのを確認してからキンジは理子に指示を飛ばしたが既に車は限界速度に達している。幾ら叫んでも速度は変わらない。しかし、

 

「ん?」

 

一毅は新たに別の音が近づいてくるのを聞いた。それは車のエンジン音ではなく……

 

「ヘリだ!」

『っ!』

 

そう。ヘリのローター音だ。素早く他の3人も一毅の視線の先を見ると、その先には確かにヘリが飛んできていた。

 

「おい!撃ち落とせないのか!」

「無茶言うな!」

 

一毅にそうキンジは返しつつヘリを睨み付ける。そしてそのヘリは一気に速度を上げるとキンジ達の進行方向に着陸する。

 

「ちっ!」

 

流石に突っ込み訳にはいかず、理子が急ブレーキをかけてとまる。遠心力でぶん回されそうになりながらもキンジはヘリの方を見る。

 

ヘリから降りるのは黒いコートに身を包んだ明らかにただ者ではない男……

 

「ヤバイわね……」

 

完全に動きを止めた車で先に口を開いたのはアリアだった。

 

「多分MI6の奴よ……前に見たことがあるわ」

「おいおい……俺達を追い掛けるだけで随分お迎えが丁寧過ぎやしないか……」

 

そう言いつつキンジとアリア……それに続くように一毅と理子も外に出た。

 

「で?どうするの?」

「こうなったら今はやるしかないか……外交問題待ったなしだけどな」

 

そう言ってキンジはベレッタを構える。しかし、

 

「おい、後ろのやつらも追い付いてきたぞ……」

 

一毅がキンジと背中合わせになりながら見るのは追いかけてきた郷田と銭形までいた。

 

「おいおい……MI6が何しとんねん。ここは日本やで?」

「ふん……何を今更。我々は神崎 H アリアを連れ戻しに来ただけだ。そちらこそ随分本気じゃないか……総理最強の懐刀言われるお前が出張るとはな」

 

顔見知りだったらしい二人は他愛のない?会話をするが隙がない。こちらが動けばすぐにでも攻勢に移るだろう。

 

「流石に大ピンチって奴よね……」

「あぁ……」

 

アリアの言葉にキンジが返す。どうにかしてこの場面を逃げ切らねば自分達は殺され、アリアは連れ戻される。理子風に言うならバットエンドと言うやつだ。そんな事をさせるわけにはいかない……

 

そうキンジが思った次の瞬間!

 

「ふふ、お兄ちゃん……助けに来たよ?」

「え?」

 

背後から聞こえた言葉にキンジは思わず振り替える。すると突然バチバチと音をたて、目の前に姿を現したのは……ボブカットのクリッとした眼をした可愛らしい顔立ち……見間違いじゃない。彼女は、

 

「かなめ!?」

『え!?』

 

キンジの声に他の三人もなぜかなめが?と驚き、その方向を見た。

 

「私だけじゃないよ?」

 

そうかなめが言うとまた背後の方でドゴン!っと言う音と共に地面が振動するような感覚……今度はあっちかと振り向き直すとそこにいたのは……機械?

 

「何者だ……」

 

突然現れた物に警戒心を抱くMI6の男に、機械は高らかに宣言する。

 

「I am USA!」


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