【一毅VS宝蔵院】
『らぁ!』
一毅の
「しっ!」
一毅の横凪ぎを宝蔵院は槍で受ける。だが一毅は更に、
「二天一流・秘剣!!!
渾身の振り抜きで宝蔵院の槍を弾きガードを崩すと、
「
勢いを更に付けた一閃が宝蔵院の胴を凪ぐ。
「がっ!」
浅かったものの宝蔵院はたまらず後退するが一毅は追撃の手を弛めない。
一毅は宝蔵院を追って走る。だが、
「この!」
宝蔵院は崩れた体勢から槍を突き出す。
「ウッラァ!」
だが一毅はスウェイでそれを横に躱し椅子を台に跳ぶ。
「二天一流・秘剣!!!
この技は一馬之助が高空から一気に落下し獲物を捉える燕の動きから天啓を得た技で使える場所は限られているがこうやって使えば相手の攻撃を躱しながら斬ると言う事を行える。
「ぐぉ!」
宝蔵院は槍を引き戻して弾こうとするが懐に入られれば槍の方が不利だ。防御が間に合わず一毅の刃が遂に完全に届き斬られる。
「くそ…さっきは手加減してたのか!?」
「ちげぇよ…さっきは俺は時間を稼がなくてはいけなかった…だが今は違う。俺はテメェに勝って理子をぶっ飛ばしたキンジと合流しなきゃ行けないんだ…それだけだ」
「おい、あいつが勝つと思ってるのか?」
馬鹿にするように宝蔵院は聞いてくる。
「当たり前だろ」
それにたいし一毅は怒りも何もなく極自然に…まるで太陽は東から上るのは当たり前だと言うように当たり前のように言う。
「何でそこまで信じられる」
「親友だからだよ…それだけだ」
一毅は
「来いよ…もうお前の槍は当たらないだろうがな」
「こんの!舐めるな!!!」
宝蔵院は槍の突きを放つ。だが一毅は次の瞬間宝蔵院の真横を一瞬ですり抜け一閃する。
「がはっ!」
「二天一流・秘剣…
一毅は相手の攻撃の当たると踏んだ瞬間に高速の一閃を与える技…閃の太刀を放つ。
これは相手の攻撃に対するカウンターと言性質上非常にタイミングに関してはシビアだがそれを可能とするのは桐生の一族が代々得意とする先の剣に加え同時に修行により後の剣を会得し、研磨し続けた故だ。ダがやられた宝蔵院は何が起きたのかすらも分かっていないだろう。
「俺がただやられていたと思っているのか?そんなわけ無いだろ。お前の槍の一突き一突き…それをバスの上とこの飛行機の中で全て見た…もうお前の槍は見切った」
「っ!」
宝蔵院は愕然とする。
あれだけ優位に立ってると思っていた…なのに一毅にしてみれば既に見極め切った単純な槍術だと暗に言われてるのだ。
とは言え当たり前なのだ。二天一流は昔から様々な者達から技を教えてもらい…それを己の技としてきた。純粋に見切ってその技を使うと言うことに関しては二天一流は数多く存在する剣術の中でもトップクラスだろう。
「ふ、ふざけんなぁあああああ!!!!!!」
だがそれを宝蔵院は認められなかった。否、認めたくなかった。まるで子供だな…と一毅は溜め息一つ吐くと体から
「うらぁ!」
宝蔵院は槍を横に凪ぐ。
「ちっ!」
一毅はそれを打ち上げるように弾き上げると一毅は叫ぶ。
「勝機!!!」
「なっ!」
一毅はすれ違い様に胴を一閃する。
「くっ!」
それを槍で受けるが一毅は更に振り返りながら宝蔵院を打ち上げた。
「…二天一流……秘奥義!!!」
この秘奥義は一馬之助が槍使いを相手取った時に使った技…その名も、
「
そのまま飛び上がった一毅は渾身の力で刃を振り下ろし槍を砕きながら宝蔵院を床に叩きつけた。
【キンジVS理子】
「ウォオオオオ!!!!!!」
キンジは疾走する。
「シャア!!!」
キンジは理子の脇腹を狙ったミドルキックを放つ。
「くふ!」
理子はそれを軽く後ろに跳んで躱すと髪を操りナイフを振るう。
「ちっ!」
キンジはそれをバタフライナイフと黒いガバメントで迎撃する。
「ひゃっほう!」
だが理子はそこに二丁拳銃を撃ちキンジを追い詰める。
「くぉ!」
キンジは顔を歪めるが防弾制服のお陰で致命傷にはならない。
「うらぁ!」
更にキンジは撃たれつつも蹴りを放つ。
「うわぉ!」
だがやはり理子は遊ぶように動いて躱すと舞うように飛び上がり髪を操りキンジを狙う。
「くっ!」
キンジはスウェイで躱しながら下がるが次々とキンジの首を締め上げようと狙ってくる。
「うっらぁ!」
その隙を突きながら銃を撃つが理子は射線から外れながら髪を操る。
通常人間を相手取る場合両手や精々足に注意すれば良いが理子の場合は髪がある。まるで手が四本あるかのような感覚があるため非常に戦いにくい。
「ほらほらぁ!そんなんじゃ当たらないよ!」
「ちっ!」
キンジはスウェイで躱しながら、
「スウェイアタック!!!」
牽制として躱しながらのキックを放つ。
「捌!」
だが理子は脛で受けると流れるように平手をキンジの体に添える。
「っ!」
「やぁ!」
ズン!っとキンジの腹部に衝撃が走りる。
「ウブ!」
キンジは嘔吐感を抑えながら後ずさる。
「発勁…か…」
「うん♪イ・ウーの仲間に教えてもらったんだ~」
理子は見事なまでの中国拳法の構えを取る。
「でも流石だね、咄嗟に後ろに跳んで発勁の勁力を逃がすなんてさ…」
「まあな…」
キンジは嘔吐感治まったのを確認しながら構え直す。
「うん、これなら良いかな」
「?」
理子は勝手にウンウン頷き、それを見たキンジは首をかしげる。
「ねぇ、キンジもイ・ウーに来なよ。良いよ~イ・ウーは…」
「折角の女性の誘いだが遠慮しておこう。俺は犯罪集団の仲間になる気はない」
「金一がいても?」
「っ!」
キンジは自分の血が凍りついたような感覚が走った。
「何を言っている…兄さんは死んだ…いや、殺されたんだ…君にな」
「H.S.S…だっけ?金一はヒステリアモードのことをそう呼んでいたよね?」
「何故…それを…」
キンジはグルグルと頭がこんがらがって行く…
「だって教えてもらったもん。だからおいでよ…久々の兄弟の再会だよ?ねえキン【チュイン!】え?」
理子の口から間の抜けた声が漏れた。それとは反対にキンジの体からは微かに紅いオーラが出始める。
「人を馬鹿にするのも大概にしろよ理子…」
遠山 金一という男は…自分の兄だ…兄は優しい人だった。優しくて…怒ると怖くて…とある立てこもり事件で報酬はお握り一個で言いと言って解決したこともある筋金入りのお人好し…そして自分とは違い才能に溢れていた。ずっと越えられない壁…と言う表現が正しいかもしれない。それ故に死んだと聞いたときの喪失感は大きかったし…桐生 一毅と言うお節介な友人とその彼女が居なければもっと自堕落に生きてたと思う。
だから許せない…今の理子の言葉は兄への…そして今まで支えてくれた一毅やレキへの冒涜に他ならない。
「ど、どう言うことかな?事実を言った【チュイン!】うわ!」
誰よりも優しくて…誰よりも義を大事にした兄が…犯罪集団の仲間に成るわけがない。
「お前は…言ってはならないことを言ったんだ!理子!!!!!!」
キンジの体からは深紅のオーラが現れる。これは一毅風に言えば【二天一流 絶技・怒龍の気位】いや、キンジが使うのだから【レッドヒート】言うべきだろう。
激しい激情により現れる人間の肉体の限界以上軽く引き出すヒートの極地。
元々ヒステリアモードは性的興奮とは言え感情をトリガーとしている。そういう意味では同じく感情をトリガーとするヒートは相性抜群なのだろう。その為か一毅と比べ強い力を感じる。
「行くぞぉおおおおお!理子!!!!!!」
「っ!」
キンジは床を踏み抜きそうな勢いで駆け出す。
「くっ!」
理子は銃を発砲する。だがキンジはスウェイで躱す。
「なっ!」
今のスウェイは横に動きつつも上体を逸らし更に側転も加えるというサーカスの劇団員のような動きだ。これはキンジの得意の蹴り技とその際に使う鮮やか且つ身軽な動きを支えている強靭な足腰と柔軟性の高い体を使った新たな回避技…名付けて【アストラルスウェイ】。次々と銃弾が飛んでくるがそれを全て避けきってしまう。幾らVIPルームで飛行機の中でも広い場所とは言え普通ではあり得ない。だが神経系強化されるヒステリアモード、更に人間の限界以上の力を引き出すレッドヒート…この二つが発動している今のキンジにとって銃弾は止まっているも同然だろう。
だが…次の瞬間理子が笑う。
「っ!」
一瞬の浮遊感と共に機体が大きく揺れキンジは体勢を崩す。
「バイバイ♪」
理子の言葉と共に銃弾がキンジの眉間を寸分違わず狙い迫る。避けるのは無理…耐えるのはもっと無理…ならば、
「はい?」
理子は本日2どめの間の抜けた声を漏らした。
「
なんとキンジはバタフライナイフで理子の放った銃弾を真っ二つに切ったのだ。確かに一毅などは銃弾を刀で弾くが刃渡りが圧倒的に短いナイフで切り飛ばすなど尋常ではない反射神経と動体視力に加えとんでもない胆力もいる。
理子ですら驚愕させた咄嗟の荒業を披露しながらキンジは理子との間合いを積める。
「ちぃ!」
理子の髪で操るナイフが迫る。だが、同時にキンジの目が細まり獲物を捉えると確信した鷹のような目となる。
「勝機!!!」
そのままキンジは上体を逸らしナイフを躱しながらバク転しながら理子を空中へ蹴りあげる。
「ぐっ!」
だがそれだけではおわらない。いや、本番はこれからだ。
「ウォオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」
キンジは共に飛び上がると空中で凄まじい速さでの連続蹴りを加える。
その速さは尋常ではなくその風圧と理子を蹴るときの反動でキンジの落下速度は明らかに落ちてるし蹴られ続けているため理子も落ちない。まるでマシンガンのような蹴りの嵐に理子は為す術も無く蹴られ続ける。文字どおり反撃を許さないキンジの三つ目の新技にして後までキンジが信頼を持って使うことになる技…その名も、
「【エアストライク】!!!」
キンジは空中で止めの蹴りを放ち理子を吹っ飛ばした。
「がは!」
理子は地面を2、3回バウンドしてから止まる。
「う…がは…」
だが理子は嘔吐きながらもキンジに銃を向ける。しかし次の瞬間別の銃声が響き理子の2丁拳銃が吹っ飛ぶ。
「残念だったわね理子…」
いつも変わらぬアニメ声を発しながらアリアは荷物棚から這い出るとキンジの隣に立つ。そして、
『峰 リュパン 理子、殺人及び殺人未遂、そして危険物所持の現行犯で逮捕する!』
キンジとアリアの勝利宣言がその場に響く…
「へぇ…オルメスはそこに隠れていたんだ。確かにその小柄さを最大限利用した場所だね」
理子はどこか余裕を持った雰囲気でキンジ達を見る。
「なんだその余裕は…」
「忘れちゃった?私は…武偵殺しの前に…【爆弾魔】ですから」
チョイっと理子はスカートを上げるとなにかが落ちてくる…次の瞬間凄まじい閃光と音がその場を包む。
「ぐぁ!」
フラッシュグレネードだと気付いたときには既に理子は消えていた。
「大丈夫か?アリア」
「ええ…でも聴覚と視覚どっちも駄目だわ…少し休憩すれば大丈夫…だからあいつを追って」
「…分かった」
キンジは走り出した。
その頃一毅も爆音を聞き付けその方に向け走っていた。無論宝蔵院は手錠と更にロープでグルグル巻きにしておいた。逃げられはしないだろう。
それから扉を開けるとタイミングよく理子と会う。
「理子…」
一毅は
「やっほーカズッチ」
理子はどこかふらついた足取りで搭乗口に凭れる。そこにキンジも追い付いてくる。
「もう逃げ道はないぞ…」
一毅が睨み付ける。
「ねぇ…最後に聞くけどキー君イ・ウーに来ない?カズッチも良いよ~」
理子が誘ってくるが、
「断る。俺は武偵だぞ」
「レキが居ないから嫌だね」
正反対の答えだがイ・ウーには入らないという意思が帰ってくる。
「そうか…じゃあ仕方ないな」
するとドアが爆発と共に落ちていき理子もそれにあやかって落ちていく。
『んな!』
キンジと一毅は慌てて外を見るが理子は制服のリボンを引っ張るとパラシュートとなりゆっくりと落下していく。
「くそ!」
一毅はイラつき半分に椅子を蹴っ飛ばしその時の振動で上においてあった荷物が一毅の頭に直撃する。
「仕方ない…後はうまく降りて…」
『なっ!』
キンジと一毅が驚愕した次の瞬間飛行機の翼にミサイルが直撃する。
『うぉ!』
大きく機体が揺れ、翼は破損した。
「おいおい…ヤバイんじゃないか!?」
「一度コックピットに行くぞ!」
二人は駆け出した。
「遅いわよ!」
「すまない」
既にアリアが操縦していた。足元には何故か箱と…髪?
「これ使って遠隔操作してたのよ、道理で理子の良いように揺れると思ったわ」
そんな話をしてる間にキンジも操縦席に座る。
「一毅、武藤に電話を掛けてくれ」
「ん、了解」
スマホを弄って電話を掛けるとワンコールででた。
「一毅!キンジとその彼女のアリアが…」
「ああ、目の前にいるよ」
スピーカーにしてやると、
「おいキンジ、お前の彼女が…」
「え!?ちが!」
するとキンジは人差し指でアリアの唇を押さえて黙らせると会話を続ける。
「彼女じゃないがアリアはいる。あと一毅だ」
「俺はオマケかよ」
さて、緊張も適当に解いたところで、
「それで武藤。先程攻撃を受けて内側の二基が壊された」
「燃料系は?」
「どんどん減っていっている」
「クソッタレ…盛大に漏れてるぞ…」
「とりあえずこれから羽田に戻る。安心しろ」
だがその時通信が入る。
「こちら防衛省航空監理局…羽田の使用は許可しない」
『なっ!』
キンジたち3人とそれを聞いた武藤は驚愕する。
「待ちやがれ!今燃料が漏れてんだぞ!」
「安心したまえ…」
すると飛行機と並ぶ様に飛ぶ戦闘機が四機ほど来る。
「安全な場所まで案内する。誘導機について【バチ!】」
「き、キンジ?」
「これは嘘だな。大方海の上で落とす気だろう」
キンジの言葉にアリアは驚く。
「ま、まちなさいよ!これには一般人も…」
「都内に落ちられるよりはマシ…と言った所か?」
「だろうな…おい武藤」
「なんだキンジ」
「今の風速は?」
すると向こうで人が入れ替わった音が聞こえる。
「南南東41メートルです」
「レキ…」
「大丈夫ですか?怪我はないですか?してたら犯人撃ちます」
「だ、大丈夫だって」
それからまた武藤と変わる。
「この雨の中止まるんだったらどれくらい距離がいる?」
「そうだな…2000mもあれば行けると思うが…濡れてるからもっといるかもな」
「ギリギリ…だな」
キンジはなにか思い付いたらしい。
「よしアリア…これからだ
「何!?待てキンジ!学園に突っ込む気か!?」
「違う。もうひとつあるだろう?必要と思ってたら実は要らなかったから放置されてる空き島が」
向こうで息を飲む音が聞こえる。
「お前本当にキンジか?」
「当たり前だろ。そうだろう?アリア」
「そ、そうね」
キンジにウィンクされアリアはミルミル顔を赤くしながら答える。
「だがキンジ…空き島文字どおり何もねぇんだぞ…誘導灯も何もねぇ」
「ならアリアと一毅で心中だ」
「あんたとなんて真っ平ごめんよ」
「同じく」
するとキンジは笑う。
「初めてアリアと意見があった。俺もアリアを死なせたくない」
(俺は良いのか?おいこら)
そんなやり取りでアリアの頬を真っ赤にさせると、キンジは機内通信を入れる。
「これより緊急着陸いたします…皆様はシートベルトをお付けになってお待ちください」
最後の大博打の開始だ…
それから十分ほど飛びつづけると空き島が…見えなかった。そこに広がるが漆黒の世界…闇に塗りつぶされ何があるのかわからない。キンジすらも呆然としている。見えにくいことは百も承知だったがここまでとは…
「どうする?」
「こうなったらできるだけ被害が少ないように…ん?」
すると突然空き島をなぞるように光が現れる。まるで誘導灯のようにだ。そこにいたのは武藤…レキ…他にもバスジャックの時に出会った皆がライト片手に居た。
「仲間を信じ…仲間を助けよ…か…」
一毅が呟くとキンジとアリアもニッと笑う。
「行くぞぉおおおおおお!!!」
次の瞬間凄まじい衝撃が走る。だがこのままでは止まらないぞ…と思っていると見えた…あれは風力発電用のプロペラ機。お情け程度に作ったそれに飛行機は翼をぶつけ急速に減速し…止まった……