日本に帰ってきて数日……一毅は一人で出歩いていた。レキとライカとロキは学校に用事があったらしく居ない……だが今回はありがたかった。
一毅はひとつ気になったことがあったのだ。こればかりはレキ達は勿論キンジたちにも相談できなかった……推理力はある方じゃない……寧ろ皆無と言っても過言じゃない一毅だがふとしたときに思い至ったことに珍しく思考を使っていた……
多分誰も疑問には思わないだろう……だが考えてみれば可笑しいことだった……
「うーむ……」
ブスブスと煙が出そうなほど考える一毅……お陰でまた知恵熱が出そうだ……だがあの事はなにも意味がないとは思えんのだ……自分の正体というかルーツのこともあるし……折角今日あった
「難しそうな顔をしているな」
「っ!……お前は……」
一毅が目を見開いた……そりゃそうである……目の前に居たのはなんと……
「閻……」
「奇遇だな……桐生」
190近くある自分ですら見上げなきゃならないほどの巨躯を持つ鬼……今は帽子を被って角を隠しているが見間違う筈がなかった……幾ら消耗が激しかったとは言え一毅とキンジ二人がかりでも圧され気味だった相手だ……忘れる筈もなかった。
「なんでお前がここに……」
「少々用事でな……」
そいつは穏やかとは思えんな……と思いつつ一毅は腰に手を伸ばし舌打ちした……どうせ少し町に出るだけだからと刀等は全部おいてきたのだった……下手すれば素手で閻とやりあう可能性が出てきた……
そう思った瞬間閻が少し待てと手を伸ばす……
「今やりあえば無事ではすまんぞ……」
一毅は歯を噛む……閻の言う通りだった……ここでやりあっても怪我ではすまない……服装だった何の改造もない普通の服だ……
「それより桐生……お主に聞いておきたいのがある」
「何だよ……」
一毅は警戒しながら聞くと……
「何でも人間の間では、【すたば】と言うのが流行っているらしい……今度覇美様を連れていきたいのだが場所もわからぬ。案内せよ」
「……………………………………」
一毅がずっこけたのは言うまでもなかった……
「ふむ……変わった飲み物を人間は嗜むのだな……」
そんなこんなで一毅と閻はスタバで飲み物を飲んでいた……飲み物は適当に一毅が買ってきたものだが閻はなんだかんだ言いつつもお気に召したらしい……
しかし一毅と閻が面と向かって席を座っているので周りの客の視線が地味に痛いが仕方ない。
「んで?なんでここにいるんだよ……」
「用事だと言っただろう」
「その用事がなんだって話だ」
一毅が言うと閻は目を細めた……
「何だよ……」
「いや……やはり似ていると思っただけだ」
「あぁ、お前の仲間だった俺の先祖にか?」
「うむ……あやつは強かった……変わり者ではあったがあやつ以上の
「三人?」
「一人はお前の先祖……一馬之介だ。とは言え……その領域への扉を開いた直後にあの男は死んでしまったがな……」
「じゃあもう一人は?」
「亜門 丈鬼だ」
一毅は唾をのみこんだ……名前しか聞いたことはない……だがキンジに聞いたときには……細胞レベルで対峙することを拒んだと聞いた……キンジが言うのだから並外れた者なんだろう。
「あやつは強い……恐らく一番近く……そして下手すればあやつすらも時を経れば上回るかもしれん武才の持ち主だ……」
「そんなに強いのかよ」
「我でも勝負にならんだろう……腹立たしいが覇美様もあの男には届かん……」
「その覇美……さまってやつの強さが知りたいんだが……」
覇美と呼び捨てしそうになったところで閻に睨まれたので言い直すと閻は口を開いた。
「我が七鬼居っても覇美さまには敵わんよ」
十分その覇美ってやつも化けもんじゃねぇかよ……と一毅は冷や汗を垂らした。
「だがお前とて我らの領域に足を踏み入れているのだぞ?」
「え?」
閻の言葉に一毅は唖然とした……
「お主が時折用いた緋色の力……あれこそその証拠だ。我らに近づきつつあると言うな」
「その内角とか生えねぇよな……」
「それはないが……力を使い続ければ徐々に肉体的な変化が起きるだろう。例えば髪色が我らと同じ朱色に近づいたり眼が金を帯びたりしてくるだろう……亜門もそうだ。それを隠すためのあの格好らしいからな」
初めてあったときのあんたの服装も趣味がいいとは言えないぞとは言わないのが花だな……だがつまり
「だが良いことばかりではない。無論寿命は人のままだし肉体にかかる負担は大きい……所詮は弱い人間の肉体だ」
「そうですかい」
こいつは基本的に人間を脆いと思っているらしいな……まぁ鬼よりはそりゃ堅くはないだろうが……って重要なのはそこじゃない。また話が逸れた……
「用事ってのはなんだ?」
「ふむ……流石にそこまで馬鹿でもないか……」
やっぱり話を逸らすつもりだったんだなと一毅が思っていると閻は口を開いた。
「緋緋神様の目覚めが近い……それを見に来た」
「っ!」
一毅は驚愕して席を立ちそうになった。馬鹿な一毅でも理解できない話ではなかった。
「何を驚く……お主も感じてたはずだ……」
「そもそも緋鬼と緋緋神にどんな関係があるんだよ……」
「難しい話ではない。昔緋緋神様が降臨されその時に子を成した……長い月日を経てそれは我ら緋鬼と呼ばれる種へと変貌した……それだけよ」
一毅は唾を飲んだ……つまり緋緋神と緋鬼は親子みたいなものなのだろう……つまり……自分と緋緋神と言うのもまた……いや、それも重要だが……
「アリアに何かする気か?」
一毅の問いに閻は目をパチクリさせる……
「それは違う……様子を見に来ただけだ……封印が緩んでいるようだからな……だが降臨されるようなら……してもらえた方がいいのだが?」
それがなにか?といった感じだ……こっちとしては降臨されちゃ困るのだが鬼たちからすれば降臨してほしいようだ……そうなると……
「じゃあ殻金返せって言っても聞いちゃくれないよな……」
「そうなるな」
「なら力ずくで奪い返すぞ」
一毅がそういうと閻の眼が据わった……
「それは覇美さまに危害を加えると判断していいんだな?」
「好きにとれよ……」
一毅がそういった瞬間閻の纏うオーラの質が戦闘体制に入りその身から
だが一毅も素手とは言え前回のように不調じゃない……伊座となれば
「仕方ない……覇美さまに危害を加えると言うのなら……ここで片付けておいた方がよいか……」
「易々やられるかよ……」
二人が次の瞬間拳を握ろうとした瞬間……
「あ……」
「ん?」
一毅の携帯が鳴った……それにより二人の闘気も霧散する……
「その電話とやらには出た方がいいのではないか?」
「……ちっ」
一毅はポケットから携帯を引っ張り出すとキンジからの着信だ。
「もしもしキンジか?どうした?」
【一毅!今どこだ!】
「出先だけど……どうしたそんなに慌てて……」
【アリアが倒れた!】
「なに!?」
一毅は携帯を落としそうになったが慌ててキャッチして会話を続ける。
「病院には?」
【もう連れてった。病院には俺も向かうんだが嫌な予感がする……お前も一緒に来てくれないか?】
「分かった。病院の地図を送ってくれ!すぐに向かう!」
一毅は携帯を切る……そして閻を見ると……
「悪いが用事ができた」
「そのようだな。行くといい」
閻はあっさりと見送ってくれた。一毅は急いで荷物をまとめる……それから、
「アリアを狙うなら覚悟しておけよ……俺もいる……バスカービルもいる……それに何より
「そうまで言うとはな……」
「俺はアリアが絡んだあいつとは死んでも戦いたくねぇ……あいつは普段から無茶苦茶だがアリアが絡むと拍車が掛かるからな」
キンジがその場にいたら否定するだろうがそいつは今は居ない……
「だが、ただの人間に我は遅れをとらぬ」
「残念だがアイツは人間(仮)だからな……それ人間の男は惚れた女のためなら上限なく強くなれるんだぜ?」
「何ゆえ?戦いに惚れたは関係がないはずだ」
閻には理解できないようだった……まぁ……そこは価値観が違うのだろう……だが一毅は笑っていった。
「【愛】だろ?」
そう言って一毅は閻を置いて走り出した……その背を閻は見送る……
「愛……とはなんぞ?」
閻はその背を見つつ二人が発した闘気によって人がいなくなったスタバで飲み物を飲んだのだった……
どうも本日アリアのアンソロジーとイラストブックをゲーマーズで買ってご機嫌の咲実です。
つうわけで今回冒頭から一毅がなにかを推理しようって言う謎行動……あ、だから今週末天気が荒れるって言う話なのか……すごいなぁ一毅。遂に現実まで侵食し始めたぞ……と言うわけで今回の一毅の行動は伏線は張ってはありますがこっちは多分ばれないはず……よく考えればおかしな部分がこの作品にはあったのですが多分ばれないよね……いや、作品事態が可笑しいとかは無しですよ旦那。
と言うわけでこの謎の解明は首を長くしてお待ちください……さて本日の日記は彼女が執筆者だ!
バスカービル日記
執筆者・火野ライカ
某月某日……前々から注文していた人形が遂に届いた。一毅先輩の部屋では隠す必要がないので既に部屋がこう言った人形で埋め尽くされているのだがまぁ仕方ないよな。うん……だってこれ限定仕様の奴で抽選で500人限定だったから徹夜で申し込みハガキを書きまくって注文したんだ……いやぁ~やっぱり可愛いなぁ~。
だけど最近自分は変わったと思うんだ……前だったら隠そうと必死だったけど今は堂々としてる……一毅先輩だけじゃない……一毅先輩を通じていろんな出来事があって……そんな中で変わっていったんだって思うんだ……だからこれからも変わっていける……だから先輩……よろしくお願いします!終わり