『理子…』
一毅とキンジは信じられないといった顔だ…
二人の知る峰 理子と言う女を説明する際には馬鹿の一言に尽きる。
常に騒動に中心に居り超が付くほどのトラブルメーカー。そしていつも武藤と共にばか騒ぎに興じている。
クラスメイトからの人気も高く男子からはその社交的且つ明るい性格とその可愛らしい顔とロリ巨乳と称されるほどのスタイルから人気が非常に高い。
ただ、特定の異性との噂はなく良く絡まれていたキンジとの間に関しては噂が立った(キンジは否定するが)。
「やっほー♪」
理子はクラスでも良く見る太陽のような笑顔を向ける。
「あんた爆弾魔だったのね…」
「そうだよ…オルメス」
(オルメス?)
キンジと一毅は顔を見合わせる。アリアの実家の名前か?
「結構戦闘能力って遺伝するんだ…例えばキンジは町奉行…遠山 金四郎 兼元…一毅は桐生 一馬之介こと宮本 武蔵…そしてオルメス4世…この場にいる全員が遺伝系だ…」
その言葉を聞いて一毅は眉を寄せる。
「全員?お前はじゃあ何だよ…峰何て言う奴は聞いたことねぇぞ」
「ああ、私は峰 理子だけじゃない…本当の名は…峰 リュパン 理子…」
次の瞬間キンジとアリアの表情がひきつる。
「リュパンって…あの?」
「そうだよ…」
だが一毅は…
「わるい…リュパンって偉人も知らん」
その場の全員が次の瞬間ずっこけた。
「ああ、あのラスクみたいなパンのお菓子か?」
「それはコパンだ…」
キンジが突っ込む。
「じゃあ音楽家?」
「それはショパンでしょ?」
次にアリアが突っ込む。
「じゃあ誰だよ。リュパン何て偉人はいないぞ」
「居るよ!アルセーヌ・リュパン!理子はその人の4世だよ!」
「ああ~フランスの泥棒…でもあれってルパンだろ?」
するとキンジが、
「発音の違いだ馬鹿、外国と日本では良くあるだろ」
「ふぅん…で?態々何でこんなことしたんだよ。もしアリア殺したいんならキンジにヒント与えてここに呼び出すようなことしなくたって良いしアリアがイギリスに帰ってからだって…」
一毅がそこまで言うとキンジが出る。
「これは挑戦状…違うか?」
「流石キンジ…脳味噌まで筋肉とレキに殺られちゃった一毅とは違うね」
喧嘩を売ってるのかこいつは…等と思っているなかもキンジはヒステリアモードの時に作り出した仮説を話していく。
「まず第一回目の武偵殺しはバイク…大型車…そして船だった…そして今回…俺と一毅の自転車…武偵が大勢乗ったバス…そして飛行機…船の時も恐らくお前は直接対決していたんだろ?」
そうでなければ兄が逃げ遅れるわけがない。
「そしてお前も今回で直接対決を望んでいる。だからお前はここで騒動を起こした」
「流石キンジ…だね」
「だが分からないことがある。何故俺と一毅も巻き込んだ…偶々か?」
「 本当は一毅は要らないんだ…本当はオルメスとその相棒となれるキンジの二人がいれば良い。はっきり言って邪魔さ」
「……じゃあ質問を変える…何が目的だ?」
理子の目が細くなる。
「私さ…一応昔は使用人とかいたんだよ…でもそんときから可笑しくてさ、だーれも理子って呼ばない。皆4世様って呼ぶんだ」
『?』
一毅達は首をかしげた。それの何処が悪いのだろう。
だがそう思ってることが理子はわかったらしく。
「悪いに決まってんだろうが!!!私はDNAか!?記号か!?違うね!私は理子だ!」
どうやら理子にとっての地雷を踏んだことだけはわかった。
「だから私はオルメス…お前を殺す…殺して…峰 理子になる」
すると次の瞬間理子の髪がまるで意思を持ったように動き出す。
「一つ教えてやるよアリア…お前は
理子のツインテールはナイフを一本づつ持ち理子自身が銃を二丁持つ。
『なっ!』
髪が持ったナイフが前にいたアリアと一毅を狙う。
「ちっ!」
「このっ!」
一毅とアリアはとっさに防ぐが次の瞬間銃弾が当たる。
「ぐっ!」
「いつ!」
だがその程度では止まらない。
アリアは銃をその中でも構えるが次の瞬間機内が揺れる。
『え?』
二人はよろけそこにナイフがアリアを狙う。
「なっ!」
「アリア!」
アリアが倒れる。見てみれば側動脈をやられている。
「くそ…退くぞ!」
「ちっ!」
キンジはアリアを抱えあげ一毅と共に走り出す。
「どこ行くの?こんな狭い機内でさぁ…」
「くそ…アリア!大丈夫か?」
キンジが声を掛けるがアリアの反応は薄い。更に…
「よう!」
「てめぇ…宝蔵院!!!」
宝蔵院は槍を構える。
「キンジ…アリア連れて先に行け…」
「だが後ろから理子も…」
「今の状態のアリアが一緒じゃ逆に不利になる…だから行け…」
「……死ぬなよ…」
「ああ…」
一毅は
「ウォオオオオ!!!」
それから走り出すと刃をぶつける。
「へっ!」
それから一気にキンジは横を通り抜けそのまま逃げたのを見届けると切り返して距離を取る。
「あれぇ?カズッチしかいないの?」
そこに理子も来る。
「……」
本当は二刀流で行きたいが先程から揺れがひどい…二刀流は足の踏み込みが命だ…故に今は太刀のみで行く。
「安心してねカズッチ。レキに髪の毛くらい死んでも送ってあげるから」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ…レキと約束してんだ…互いに相手残して死なないってな…」
そう言って一毅は構える…そして、
「らぁ!」
一毅は走り出すと宝蔵院に
「はぁ!」
それを宝蔵院は槍で受けそこに理子が髪を操りナイフで一毅を狙う。
「くっ!」
一毅はスウェイで躱すが狭い機内だ、逃げ道は限られる。それ故に宝蔵院に簡単に行き先を見切られその場所に槍を突き出される。
「ちぃ!」
一毅は咄嗟に刀で防ぐがその隙を突くように理子がナイフと銃を使い一毅を追い詰める。
「がっ!」
ナイフは咄嗟に避けたものの銃弾はそうもいかず防弾制服に当たる。
「うらうら!」
更に宝蔵院は槍を突きだし一毅を狙う。
「っ!」
一毅は
「なっ!」
「二天一流・秘剣!弾き斬り!!!」
だがそれは理子のナイフで防がれてしまう。
「くっ!」
一毅は下がる。
(流石にキツいぞこれ…)
一毅は歯を噛み締める。このままでは不味い…
「さぁて…後どれくらい持つかな?一毅…」
冷酷な目をした理子は走り出した…
その頃キンジはアリアをVIPルームまで連れてくるとベットに寝かせる。
それから武偵手帳から注射器を出す。
「アリア!ラッツォ打つぞ!」
ラッツォとはモルヒネとアドレナリンを凝縮した復活薬。ただこれは心臓に直接打たなくてはならない。
「必要悪だからな…後で怒んなよ」
キンジはアリアの制服を少し脱がすと心臓の位置に手を添える。
(くそ…こんなときでも可愛いな…)
後で一毅にばれたら殺されるなと思いつつ心臓に直接打ち込む。
ギュッと中身が入っていくと…
「カッハァ!!!」
アリアが跳び起きる。
「え?え?」
アリアは自分が脱がされブラジャーが丸見えなことからまたキンジが
「あ、あんた何!?嫌みのつもり!悪かったわね、万年142㎝よ!胸もAカップでこのブラ着けても寄りも上がりもしないわよ!それが何か!?」
「いや、それは…」
不覚にもかわいいと思った手前キンジは強く出れない。
「…ん?……ええ!?」
するとやっと注射が刺さったままだと言うことに気付きアリアは飛び上がる。
「何これ!?」
「落ち着け!お前は理子にやられて…」
「っ!理子!!!」
アリアはベットから飛び降りると制服を着ながらズカズカ歩き出す。
「待てアリア!!!」
キンジはアリアを止める。だが、
「煩い煩い!!!あんたは布団の中でも隠れてなさい!!!」
ラッツォは復活薬でもあると同時に興奮剤でもある。更にアリアは薬が効きやすいようで(余談だが反対にキンジは薬が効きにくい)その効果は素の性格も絡んで完全に理性を失っている。
「代替あんた今更なんなのよ!違うくせに!やっとパートナー見つけたと思ったのに!」
言ってることが飛びすぎている。
「やっと…
ズキン!と心臓が痛む。
「現場につれていけば何だかんだで力を出してくれると思った!そうね!私だって勝手だって思うわ!でもじゃあどうすれば良いの?ママを助けるため力貸してって悲劇のヒロインみたいに言えばよかったの!?」
(辞めろ…辞めてくれ…)
分かっている…キンジは分かっているのだ。この状況をどうすれば良いのか…だがそれを実行したらどうなるのか分かっている…
だが…怖い…それをしてしまったら逃げられなくなる気がする…武偵を辞める筈なのにここまで来て…そして成ってしまうのか? 駄目だ…あれだけは使っちゃいけない…
「辞めろ…死ぬ気か…?」
キンジは何を言って良いのかわからず当たり障りのないことをいってしまう。
「覚悟の上よ…それが武偵をやるってことでしょ!!!例え報われなくたってやるのよ!」
「っ!」
キンジは二の句が継げなくなる。
「じゃあね」
そう言って横を通っていく…
(辞めろキンジ…それは…)
キンジは振り替える。
「アリア!!!」
「今度はな…む……」
キンジの唇と自分の唇の距離がゼロとなりアリアは目を見開く。
『ん…う…』
キンジは自分の血が熱くなっていくのを感じた。恐らく…人生で初の自分の意思で使うため行動した…言い訳はできない…でも構わない。
(アリアは……死なせない!!!)
キンジは唇を離す。ヒステリアモードに…成っている。しかも今回は相当強力だ。
「ふ、ふみゃ~」
アリアも良い具合に落ち着いたようだ。
「あ、あんたね!私初めてだったのよ!」
「俺もだよ…アリア」
キンジはアリアの前に膝を突き顔を見る。
アリアの顔は赤い。
「済まないことをした…俺は本気を出すのが嫌いでね…だから…今度は本当の力を見せるよ」
「っ!…あんた…まさか…」
アリアもキンジに何かしらの変化があったのを感じ取ったらしい。
「アリア…一緒に捕まえよう…君を絶対に死なせないよ」
「っ!」
ニッコリ微笑んだキンジにアリアの赤面は更に強くなった。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
一毅は荒くなった息を強引に整える。
「大丈夫~?カズッチ」
「うるせぇ…」
すると一毅のスマホが鳴る。
「出て良いよ~、もしかしたら最後のお別れかもね」
「…………」
一毅は好意に甘えて出る。
「もしもし…?あ?…分かったよ」
一毅はスピーカーにすると理子と宝蔵院の前につき出す。
「ん?」
「モールス信号?」
【リ・コ・オ・イ・デ・ビ・ッ・プ・ル・ー・ム・ニ・イ・ル・ヨ…リ・コ・オ・イ・デ・ビ・ッ・プ・ル・ー・ム・ニ・イ・ル・ヨ…】
キンジのやつ…皮肉っていやがる…と一毅は頬をひきつらせる。
「ふぅん…宝蔵院…後頑張ってね。デートのお誘い来たから」
「あいよ」
理子はスキップで行く。これで
「俺さ…やっぱ二人がかりは気が引けていたんだ…」
「そうかよ…」
一毅は
「行くぜ…」
「ああ…」
その頃VIPルームでも…
「アリア死んだ?」
「俺を倒した後に見てみれば良いさ…」
キンジは防刃ネクタイをグイッと引っ張って弛め制服のボタンを2、3個外す。これはキンジが本気で戦うときの前段階と言うか気分的なもので特に意味はないが癖のようなものだ。そしてバタフライナイフとアリアの黒いガバメント…そして、得意の蹴りの構えを取る。
「成ったんだ…よくこんな中で出来たね」
キンジは眉を寄せる…
(知ってるのか?ヒステリアモードのことを…まぁいい…後で聞こう)
「おいで理子」
「良いねキンジ…最高、殺したいくらい」
「ああ、そのつもりで来ると良い…そうじゃなきゃ…君が死ぬ」
一毅と宝蔵院…キンジと理子…武偵とイ・ウー…二つのグループの戦いが