緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍と金の裏切り

「これでよし……っと」

 

現在一毅とキンジはリバティーメイソンの隠れ家(寝泊まり予定だったのとは違う場所だ)で傷の治療を受けていた。傷といっても然程じゃない。とは言え軽症と言うほどでもない。少しばかり微妙だがこういう傷を嘗めて掛かると後々泣くことになるのでワトソンにされるがまま治療を受けると完了したようだ。

 

すると部屋の扉が開かれる。

 

「っ!」

 

一毅は咄嗟に身構えそうになったが落ち着いて見ればメーヤだった。その後ろにはメーヤに負けず劣らずの胸を持つシスターもいる。

 

「どうも、お二人ともご無事みたいで良かったです」

「まぁきっちりやられたけどな……」

 

一毅は座り直しながら肩を竦めた。

 

「それでそっちの人は?」

「バチカンに所属するローレッタと申します」

「そうか……」

 

と一毅はうなずくと天を仰いだ……全身は重いしダルい……

 

「それでこれからどうする?」

「まぁ今はかなり不利だからね……どうにかして逆転の一手を打てないと危険だ」

「すみません……私の力が及ばないばかりに……」

「しっかりしなさい、メーヤ……この程度前回の戦役に比べればまだまだです。何せまだローマは無事なのですから」

 

そうローレッタが言うと扉がまた開かれた。

 

「まるでフランスとかはどうでも良いような言い分だな」

 

入ってきた男が言うとローレッタは首を振る。

 

「そうは申してません」

「どうだかな……」

「カイザー……」

 

ワトソンがカイザーと呼んだ男はワトソンを見る。

 

「そっちは無事だったみたいだな。ワトソン」

 

そう言ってカイザーは部屋にはいる。空気が重い……するとローレッタがキンジに話しかけてきた。目を瞑っているのを考えると盲目だろうか……

 

「貴方が遠山キンジさんですね?カナさんから聞いています」

「兄さ……ゲフンゲフン!カナを知ってるんですか?」

「はい、大変綺麗な方だとか……盲目なのが悔やまれました」

「あはは……」

 

キンジは頬を掻くしかない。メーヤも頷いてるのを考えるにカナが男だとは誰も知らないんだろう……

 

それにしてもどうも今のやり取りでわかったが欧州は歩調が揃ってないようだ。これではなぁ……

 

「さて、まずは情報を擦り合わせよう」

 

まず今回の襲撃……撤退し隠れ家に隠れたのにその日のうちに襲撃を受けた。恐らく内通者がいる……と言うのがカイザーの見解……そして、

 

「それでジャンヌを最後に見たのはいつだ?」

 

と、この場に居ないものに疑惑が向くのは避けられなかった。

 

「ホテルで部屋に移るとこまでかな?」

「僕もだ」

 

と、答えたのはロキとワトソン……

 

「遠山キンジ、桐生一毅、君達はどうなんだ?」

『………………』

 

カイザーの問いに二人は沈黙する。一毅は答えようとしたのだがキンジがアイコンタクトでストップをかけたのだ。なら大人しく黙っておくことにしよう。

 

だがそれに対しカイザーは眉を寄せる。

 

「なぜ黙っている……言いたくはないが……妖刕と猛虎の襲撃を受けたそうだがあの二人の強さはよく知っている。なのになぜ生還した?君たちの強さも聞いてはいるがな……特に遠山キンジ、君は随分と魔女連隊から熱心に勧誘されたそうじゃないか」

「………………」

 

カイザーは……恐らく内通者かもしれないリストにキンジもいれてあったらしい。確かに勧誘はされたが……それを言えば一毅も使い魔に勧誘されたらしいが……恐らくこの情報は入っていないんだろう。

 

「藍幇も随分あっさり君に降ったらしいが……今のままでは私としては君が前から眷族(クレナダ)と通じてい他としか考えられないんだが?そもそも君とジャンヌが共にあるいてたと言う情報も……」

「やめるんだカイザー」

 

と、それを止めたのはワトソンだった。

 

「ここでそんなことを言い合っても仕方ないだろう。眷族(クレナダ)の狙いはそこかも知れないんだぞ」

「あ、いや……そのだなワトソン……現状を考えてもジャンヌやこの男が怪しいのは事実だし……桐生一毅だって……言い切れない部分もある……」

 

どうしたのだろうか……突然カイザーがしどろもどろし始めた……と言うかワトソンに怒られてしどろもどろって……まるで意中の女の子に怒られたような反応……ワトソンって実は女だってバレてんじゃね?

 

「とにかく!どうなんだ遠山キンジ」

 

本当は偽物だと勘違いされたんだが……キンジは口を開き放った言葉は……

 

「どうだかな……」

「…………ワトソン……構えろ」

 

カイザーの中でキンジ=内通者と言う構図が完成したらしい。全く、もうちっと信じちゃくんないかね……

 

「おいやめろカイザー!」

「ここで争っても意味がありません!」

 

と、ワトソンとメーヤが止めるがカイザーは既に戦闘体制だ。するとキンジは立ち上がり、

 

「なら教えてやるよ、まず……カナは男だ」

『……………………は?』

 

カナはメーヤやローレッタだけじゃなくカイザーやワトソン……ロキも顔くらいは知っている……なのでキンジのカミングアウトに固まった……更に、

 

「あと、ワトソンは女だ」

『え?』

 

今度はロキが唖然としなかったが他のカイザーやメーヤ、ローレッタがワトソンを見た。

 

「ち、違う!遠山も何をいって……」

『っ!』

 

次の瞬間部屋を煙が包み込んだ。キンジが持っておいた武偵弾……その一つだろう。使う機会がなかったがここで使うことになるとは……

 

「Smoke!」

 

カイザーも驚きそのなか突然銃声と共に窓が割れる。皆は窓からキンジが飛び降りたように感じただろ……だがキンジと一毅はソッとドアから退室したのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?どう言うことだよ!」

 

二人は急いで細い路地裏に隠れると一毅はキンジに聞く。

 

「お前ほんとにジャンヌが裏切ったと思うか?」

「どうだかな……状況だけなら怪しいけどな……」

「ならやってねぇな」

 

キンジの言葉に一毅は首をかしげる。

 

「仮にも策士名乗ってるやつが頭に脳みその代わりに糠味噌いれてるお前に怪しまれるような策を建てるか?雑すぎんだよ、ジャンヌがやったにしてはな。今まで上手くバレないようにやってたにしてはいきなり俺たちに怪しまれるような行動だぜ?まだ戦役は続くってのに早計すぎんだろ、大方別にいるぞ、内通者がな……多分俺達が邪魔でどうにかして消したいから俺達に眼が向くように仕向けたんだ」

「うん、最初の方が滅茶苦茶失礼なのは置いておいても確かにそうかもな」

 

誰が脳みそじゃなくて糠味噌じゃいと一毅は顔を顰めた。

 

「ふん、小学6年の時点で九九が四の段で挫折した男がよく言うぜ」

「馬鹿め……俺だって日々成長してんだ!今じゃ九九くらい簡単だぜ!……七の段まではな!」

「九九って言うのは九の段まで覚えて初めて完璧だからな?」

 

キンジは肩を落としつつ言う。

 

「じゃあ3×4は?」

「12」

「おぉ、じゃあ4×3は?」

「ええと……4、8……12だ!」

(今こいつ足して考えたぞ……)

「じゃあ、6×8は?」

「ええと……48!」

「なら最後、8×6は?」

「………………お前なぁキンジ、俺は七の段までしか覚えてねぇっていったの忘れたのか!」

「威張るな大馬鹿!しかも掛け算って言うのは数字の順番を逆にしても同じ答えになるって言うのを覚えてねぇのかよ!」

「えぇ!マジで!?」

 

キンジは頭を抱えた。

 

「お前ほんとどうやって武偵高校に受かったんだよ……武偵高校の入試だって筆記あっただろ……いくら重視されないって言ったって限度があるぞ」

「ああ、五角鉛筆転がした」

「ほんとお兄ちゃんって運良いよねぇ」

「そうだなロキ、この運で宝くじでも……って!」

『ロキィ!?』

 

キンジと一毅は驚愕してスッ転んだ。

 

「やっほ~」

「お前なんでここに!」

「目眩ましして窓を壊してまるで窓から飛び降りたように偽装しつつ扉からこっそり出ていくって神崎アリア先輩にやる手でしょ?私だけじゃなくてチームバスカービルと一年生なら見たことあるもん」

「そうじゃなくて何でここに……」

 

一毅は困ったような表情を浮かべるとロキが肩をすくめる。

 

「だって彼処にいたって何か分かるわけでもないしきっと何か事情があるんでしょ?あんな態々犯人じゃないのに犯人みたいな事をいってたのは」

「俺は裏切ってないって思ってるのか?」

「裏切ったの?」

「いや、違う」

「ならよし、だってお兄ちゃんの親友だもんね、そんな不義理なことはしないだろうしさ」

「買われてんな、一毅」

 

とキンジが一毅を肘でつつくと一毅は苦笑いする。

 

「で?どうする?」

「とにかくここから離れよう。そうしないとまず話にならないしな……」

 

そう言って三人は立ち上がると路地裏を抜けようとし……止まった。

 

「早いな……もう俺達を見つけたのか……」

 

一毅は自分達の行き先に居るものを見る。

 

「メーヤ」

「何となくこちらの方にいる気がしてきただけなので運が良かっただけです。それでなのですが皆さんが抜けた直後に突然襲撃を受けました。偶然か……それとも貴方達を逃がすための手引きなのか……それは分かりませんが捕まってはいただけないでしょうか?私は……皆さんを信じます」

 

信じます……か……確かに信じていそうだ……でも……違うんだよメーヤ……それはな。

 

どちらにせよ襲撃か……それで追撃がメーヤだけで済んだのか……とにかく時間が惜しいな。

 

「キンジ、ロキ……お前らはこのままにげろ」

『っ!』

 

キンジとロキは一毅を見る。一毅はそれを尻目に前に出る。

 

「お前正気か」

「ああ、糠味噌の頭でも時間がないのはわかってる。ここでチンタラすれば援軍が来て全滅の可能性がある。ならここで誰かを切り捨てなければならねぇだろ、時間稼ぎ兼……囮要因がよ」

「だが……」

「……行こう、遠山キンジ先輩」

 

ロキの言葉にキンジは反論しそうになるがとっさに黙った……ロキの辛そうな表情……くそ!

 

「命令は三つだ。一つはメーヤを片付けろ」

「おう」

「二つ目は追っ手を引き付けてくれ」

「あぁ」

「最後は……死ぬなよ」

「……了解、キンジ(リーダー)

 

キンジはそういうとロキと共に走り出した。

 

「…………やはりこうなるんですね」

「まぁな、頭潰されれば俺たちの敗けさ、なら俺のような配下が相手をする……頭を守るためにな。常識だろ」

「…………残念です」

 

メーヤも背中から大剣を抜いた。

 

「最後に聞きます。投降していただけませんか?私も一毅さん達が裏切ったとは……」

「……なぁメーヤ……確かにお前は俺達を信じてくれてるんだろうな……分かるよ……それくらい感じてる……だけどさ……」

 

違うんだよ……お前の信じ方って……

 

「お前の信じてるってのは義務から来てる信用だ……」

「っ!」

「そうしなきゃならない……そう言う思いが何処かにある信用の仕方だ……シスターなら当たり前かもしんない……けどな……俺たちはそう言う信じてるってのはわりぃが御免なんだよ……そんな信用なくたって良いんだ……」

「ですがこのままでは眷族(クレナダ)だけではなく師団(ディーン)すら敵に回します……そうなれば……」

「それでもあいつは真実を見つけてくるさ……俺はそう信じてる」

 

喧嘩したことだってある……軽口言い合って……馬鹿やったり……一緒に戦ったりだってした。殴りあったりもした……背中を任せたこともある。だから信じれるんだ。

 

「あいつは裏切ってない。犯人見つけてみんなの前につきだしてくれる……」

そう言って一毅は殺神(さつがみ)を構える。だから黙って自分は体を張るだけだ!

 

「いくぞ……メーヤ!」

 

一毅は足に力を込めて駆け出す……その瞬間……

 

「へ?」

 

地面に落ちていたバナナの皮に滑った……

 

「なんのギャグ漫画だよ!」

 

咄嗟に受け身をとったがいきなりの事態に一毅が目をパチクリさせるとメーヤが飛び込んできた。

 

「隙あり!」

「ちぃ!」

 

一毅は横に転がって避ける……だが、

 

「わぷっ!」

 

メーヤの大剣は地面に埋め込まれた水道管を叩いたらしく水が勢い良く発射され一毅の顔に直撃。生理的な反応として眼を瞑った一毅に向けメーヤが大剣を一閃……

 

「ちぃ!」

 

壁にぶち当たるもメーヤの大剣は壁を壊しながら一毅を狙う。一毅は瞬時に心眼を発動……素早く伏せて躱すと切り上げた……

 

「くっ!」

 

メーヤはそのままバックステップで距離を取る……

 

(…………不味いな)

 

一毅は舌打ちする……細い路地である以上一毅は殺神(さつがみ)を振る方向を縦にするしかない……横に薙ぐと壁に刺さる可能性があるからだ。だがメーヤは重量と遠心力に物を言わせて壁を破壊しながら切れる……つうかどういうパワーしてんだ?

 

「運良く壁のなかでも脆い部分にいったようですね」

「お前の超能力は単純な分対処ができねぇじゃねぇか……」

 

そう言って一毅は殺神(さつがみ)を鞘に納め代わりに神流し(かみながし)を抜く……

 

二天一流 組小太刀の構えと呼ばれるのだが一毅はこの構えが苦手である。むしろ嫌いといってもいいくらいだ。それゆえに前に一度使ったきりだがこの細い路地裏には刃渡りが短いこれの方が都合がいい……

 

「……おぉ!」

 

そこからメーヤは大剣を振ると一毅は下がって躱す。小太刀である神流し(かみながし)では強い攻撃にたいし正面から受けるわけにはいかない。回避に専念だ……が、

 

「うぉ!」

 

突然に足を襲う引っ掛かり……何のことはないさっき地面を叩いたときに地面が少しめくれそれが一毅の足に引っ掛かったのだ。

 

「ちぃ!」

 

一毅は咄嗟に後ろに転がる。

 

「はぁ!」

 

そこにメーヤが飛びかかる。

 

「くそったれ」

 

一毅は下がる。筋肉痛だし猛虎こと、大牙の攻撃で痛いし狭いから刀は振りにくい……対してメーヤはさっきから運良く壁や地面の脆い部分……と言うか、目のような部分があるのだがそこを沿って切ってるためスイスイ壁を切り裂き一毅を襲う……なんかすべてが敵の気分だ。

 

「ちぃ!」

 

一毅は飛び上がって壁を蹴るとメーヤの斬撃を回避と同時に転がって避けつつメーヤの上を飛び越えると相対しなおす。

 

「すぅ……」

 

一毅は一度息をたっぷり吸い全部吐く。さてどうするか……メーヤ超能力の影響か不運続きで攻めきれてない。カツェがいってた通りだな。今この瞬間祿な目にあってない。さてどうするか……と考えて思わず笑ってしまう。何時からそんなことを考えるようになった?

 

「はぁ……」

 

自分は馬鹿だ……だからこそ……黙って突っ込む以外に道はない!

 

「ぐちゃぐちゃ考えても仕方ないよな」

「っ!」

 

一毅は飛び掛かる……メーヤはそれにたいし防御体制を取る。メーヤの超能力は武運上昇……今回のように運良く相手が隙を作らざるを得ない状況に持ってたりすることもあるかなり戦闘の際に有利な超能力だ。それに対し一毅は考えなく突っ込んだ。

 

メーヤは冷や汗を垂らす。今まで相対してきた相手は皆自分の能力を見れば撤退か……超能力のガス欠……その他何かしらの策を講じる。だが一毅は違う。ほんとにただ自分の本能赴くままに間合いを詰めてきた。一毅が狙ったことではないのだがメーヤにしてみれば精神的な圧迫感を与える状況でしかなく生物の本能的な恐怖を感じさせる行動だった。

 

「くっ!」

「ルァ!」

 

一毅の神流し(かみながし)の突きをメーヤは伏せる……だがその伏せて場所めがけて一毅は飛び上がり浴びせ蹴りと呼ばれる回転踵落としを放つ。

 

「っ!」

 

メーヤは運良く偶々剣を上にして伏せたためそれで止めた。そこを押し返すと、

 

「ハァアアアア!」

 

メーヤは一毅との間合いを詰める……

 

「ウォオオオオ!」

 

それを一毅は迎え撃つ……そして次の瞬間……

 

「かは……」

 

メーヤは組伏せられ一毅は上に乗ると神流し(かみながし)を首筋に突きつける……

 

「二天一流 組小太刀……巴狩り……」

 

相手の攻撃に巴投げであわせそこから更に倒した相手の上に乗り小太刀でトドメ……と言うのが一連の流れのこの技……一毅が苦手な技のひとつだが……

 

「焦ったな……メーヤ……」

 

一毅が感じさせた本能的な恐怖ゆえか……超能力のガス欠前に決めたかったのか……あるいはその両方かは分からない……だがメーヤは負け、一毅は生殺与奪の権利を得た。

 

「ま、殺さないけどな」

 

武偵法9条あるしな……と一毅は手錠を出すとメーヤに着ける。まぁ、超偵用のじゃないが……持ってないしメーヤの目にもう戦意はない。でも一応な……

 

「さて……俺も行かないとな……」

「どうしてですか?」

「あん?」

「全てを敵にして……何を思ってキンジさんは動いてるのですか?」

 

メーヤには分からなかった。メーヤはとある事情があるとはいえキンジが犯人じゃないと思っているのは本当だった。少なくともカイザーのは些か強引と言うか状況証拠しかない。だがキンジはあえて自分がわざと疑われることをしている……だが一毅の返答に耳を疑った。

 

「そんなん知るか」

「…………え?」

「俺はあいつの全てをはわからない。そんなこともある。だけどな……あいつには何かしらの考えがある。そう信じてる。親友だからな、世界があいつを犯人だといっても……99%あいつが犯人だといわれても……俺は1%を信じる……あいつと笑ったり馬鹿やったり喧嘩したり……そんな日々のなかで少しだけわかったあいつを信じる。わからないことの方が多くても信じることはできる。何がなんといわれようとな」

「死ぬかもしれなくとも?」

 

その言葉に一毅は刀を納めつつ口を開いた。

 

「親友疑って……何を信じてりゃ良いのかわからなくなったら……そんなもん死んでんのと同じじゃねぇか」

「っ!」

「うまく言えねぇけど……俺は馬鹿だからさ……そんな器用にはできないんだ。だから一回信じようって思ったやつを信じるのが精一杯だ。何信じりゃいいのかわかんないけど……今いろんな情報あっけど……そんなの関係ない。俺はキンジを信じる」

 

あいつが信じるならジャンヌもやってない……きっと何か別があるんだろう。と一毅は言葉にはしないが胸にきっちり刻んでる。

 

「つうかな……もしキンジが犯人だったら……そんときはお前らの手なんか煩わせねぇよ……そんときは、俺が斬る……」

「っ!」

「何を驚くんだよ。俺たちは確かに仲が良いだろうよ……認める。でもな、俺とキンジはなぁなぁで一緒にいるんじゃねぇんだよ。なし崩しでいるんじゃねぇんだよ……親友だと思ってるからこそ俺はあいつが間違えたんだったら手加減も遠慮もねぇ……俺がきっちり締める。あいつをボコボコのする、それでも止まらねぇなら……」

 

武偵法9条破りも念頭にある……と一毅は言う。だけどな……一毅は続けた。

 

「俺が間違えたらあいつが止めるだろうさ……俺をボコボコにするだろうさ……そう言うもんだろ?親友ってのはさ……」

 

ま、実際やったらキンジ以外にもバスカービルの面々や一年生たちまで敵に回すけどな……と一毅は笑った。

 

「状況が不利でも信じて……それでも真実なら俺がケリを着ける、それくらいの覚悟はあるんだよ」

「一毅さん……」

「それが俺の……生き方だ」

 

そう言って背を向けた。

 

「また生きてたら会おうぜ、メーヤ」

 

そう言って一毅は走り出すと通りに出た……その姿に……メーヤの胸が熱くなったのは……一毅は知らないだろう。

 

「さてと……どうすっかな……」

 

そういった瞬間目の前を銃弾が通る、

 

「やっべ……もう追手かよ……」

 

一毅は慌てて走り出したのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

その頃キンジとロキは下水道にいた……

 

「…………くそ……」

「遠山キンジ先輩……」

「分かってる……少し感情整理させてくれ……ああするしかなかったのはもう理解してる……一毅なら大丈夫だ……」

 

そう呟いてキンジは自分の頬を軽く叩いた。

 

「よし……俺たちは一旦逃げて真犯人見つける」

「そうだね」

 

そう言って二人は下水道を進む、すると?

 

「ん?」

「誰かいる?」

 

下水道は暗いがそれでも整備用に灯りがある……だが曲がり角の先に誰かが俯いていた……周りにあるのは……血か?

 

「……ロキ……安全装置だけ外しておけ」

「うん……」

 

二人は銃を構えながらそっと近づく……そして……

 

『動くな!』

「ひぃ!」

 

振り返ったのは……きれいな髪をした可愛い女の子だった……




今回は一毅に言わせたかったセリフを出せて満足です。なにげに書き上げてから思いましたが……超能力の代償として味方を疑うことを出来ないようにされたメーヤと誰を信じるのも自由の上でキンジを信じる一毅……何気に相反してるって言うか……わりと結果的にメーヤ皮肉ってる?何て少し思いました。ただメーヤとの会話はうまく書けただろうか……納得いく形で書いてますが中々シリアス一毅は……いや、一毅に限らずシリアス系統は結構苦手です。ま、恋愛よりは良いかな……とかおもいますが。

一毅「おい作者……台本見てみたんだが……次回から俺の出番無くねぇか?」

……さ、皆さん次回会いましょう。

一毅「おいまてこら!おいぃいいいいいい!!!!」

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