龍と金と傭兵戦士
ネットリと体に纏わりつく殺気……それに一毅とキンジは頬を汗が伝っていく……
「行くぞ……」
「ちっ!」
キンジはベレッタを抜くと静刃と呼ばれた男に向けて発砲……だがそれを刀を振った……そして弾かれた弾丸は足元の街灯を弾き辺りを暗闇が包んだ……
「っ!」
今のは恐らくわざとやったんだろう……刀で弾いて街灯にぶつけるとは……刀版の
「油断しとる場合じゃあらへんで……」
「キンジ!」
一毅はとっさにこっちに突っ込んできた大牙と呼ばれた男とキンジの間に入り止めた……大牙が放ったのは体当たり……だがその破壊力はまるで大型トラックが突っ込んできたような衝撃だった……筋肉痛なのも合間って踏ん張りが利かなかった一毅の体が中に浮く……
「猛虎……轟牙!」
「っ!」
空中に浮いた一毅を大牙は片手で掴むとそのまま地面に叩きつけるように投げる……
「ちぃ!」
だがそれを一毅は二天一流 拳技 猫返りと言う投げや打撃によって倒されたさいにその反動を利用して回転しそのまま受け身をとって立ち上がる技で体制を戻すとそのまま拳を握り間合いを詰める。
「二天一流 拳技……死中活拳!」
この技は猫返りの派生技で猫返りから体勢を戻すとそこから相手の反撃に転じる技だ……この技はその性質上反撃の機転には持ってこい……だが、
「っ!」
一毅の拳は大牙に入るが大牙はコキリと首を鳴らすだけ……
「くっ!」
一毅は一旦離れる。だがそれを大牙は追うと拳を振り上げる……
「くらぇ!」
「チィ!」
大牙の拳はガードのために交差した腕に直撃する……だがそれでも一毅を後方へと吹っ飛ばした……
「かは……」
(不味い……下手に防御すると簡単にぶち抜かれる……なんつうパワーしてんだよ……)
一毅は吹っ飛んだ先で立ち上がり腕を振る……腕が痺れてやがる……
だが今のでわかった……この大牙と言う男は完全なパワーファイター……先程のキンジへの突進や今の間合いの詰める速さを考えると速力は然程じゃない。一毅の方が上だ……だがそれを補って有り余るほどのパワー……そして頑丈さ……一毅も頑丈でパワーもあるが大牙には及ばないだろう。こんなだったら刀とか持ってきとけばよかった……体も筋肉痛だし……
だが無駄に拳を打ち込んでも体力の無駄遣いだ……数より質だ……生半可な一撃ではこの男に効かない……
「行くで?」
「あぁ……」
大牙の突進……一毅は拳を握って腰を落とし……
「二天一流 拳技!」
「猛虎!」
二人の一撃が瞬きほどの一瞬に交差する……
「虎落とし!」
「龍墜!」
一毅の相手の攻撃の瞬間に打ち込む拳技……カウンター技である虎落としを放つ……が、それに合わせて大牙が頭突きを一毅の額の叩き込んだ……一毅の虎落としと同等のカウンター技……しかしコンマ一秒先に一毅の額に叩き込まれた大牙の一撃は一毅を昏倒させた……不味い……脳震盪を起こした……
「これで終いや……」
「ぐっ……」
一毅の胸ぐらをつかんだ大牙は一毅を持ち上げるとそのまま一毅を空高く投げた……どんなパワーしてんだ!
「猛虎……パワーラリアットの極みぃいいいいいいい!!!!!」
「っ!」
大きく大牙は拳を後ろに引きフルスィング……
「がっ!」
それは重力に則って落ちてきた一毅の背中に着弾した……
「ぶっとべや」
「っ!」
グン!っと体に掛かる空気抵抗と共に一毅は吹っ飛んだ……そしてそのまま頭からゴミ箱に突っ込む……
「一毅!」
キンジは一毅の方の援護に向かおうとしたがそこに立ち塞がるのは静刃と呼ばれた男……
「どけ!」
キンジは静刃に上段蹴りを放とうと足に力を込めようとした……だが、
「ぐっ!」
その前に蹴りあげようとした足を静刃に踏まれ蹴りを止められた……
「安心しろ……20%で相手してやる」
「がっ!」
キンジの腹に静刃の膝が叩き込まれる……
「ごふっ……」
その膝蹴りはえげつないほど的確にキンジの鳩尾に叩き込まれる……完璧な角度……完璧な体制……的確な位置……何れをとっても気味が悪いほど正確でまるで何かのナビゲーション受けてるようだ……
「弱いな……」
「ち……」
静刃はそう呟きつつ空に浮いたキンジを手に持つ双刀で峰で挟み持ち上げる。
「お前本当に
「うるせぇ……」
キンジは自傷覚悟で刀を掴もうとする……だが、それを静刃の方が止めた。
「止めておけ、俺の妖刕はカミソリみたいに切れ味がいいんだ。指がボトボト落ちるぞ」
「っ!」
さっきからこっちの動きを先読みされている……それ自体はキンジの万象の眼でも可能だ。だが万象の眼は極限化した観察眼……それを用いるにはその見たものを処理する並外れた判断能力を必要とする……故にキンジはヒステリアモード時でなければ使えないし使わない……あのシャーロックも条理予知を併用した。だが今言いたいのはそこではなく観察眼である以上自分がどうするべきかの行動の判断は使用者に委ねられてると言うことだ。逆に返せば万象の眼は相手の動きは教えてくれてもどう動けばいいかまでは分からない。だが相手はまるでどう動けばいいのかまで理解している……相手の動きまで分かった上でだ……
「…………ちっ!」
怪しげな緋色の瞳を動かし静刃はキンジを放すと爪先でキンジの脇腹……正確には腎臓にダメージが入るような蹴りかただ……これはかなり微妙な角度で蹴り込まないといけないため狙って打つのは難しいのだがそれをしている辺りやはり違和感を感じる。
「スナイパーか……」
静刃は刀を振って突然飛んできた狙撃弾を斬る……すると突然刀がリリン……リリン……と鳴り出した。
「……ちっ……いくぞ大牙、多分こいつらは影武者だ」
「そうやな……明らかに手応えが無い……アリスベルや貘から聞いた話やともっと尋常じゃないはずや……」
「顔だけは似た奴をよく見つけたもんだ……ま、世界には四人はそっくりさんがいると言うしな」
そう言いつつ静刃は刀を納めた。
「おい偽物の
「あぁ?」
キンジは生まれつきネクラと呼ばれる目付きで睨むと静刃は鼻で笑った。
「藍幇にはこれ以上関わるな……お前のせいでこっちが尻拭いしなきゃいけなくなった……お前のお陰で散々だ……これ以上流れを変えられると問題なんでな……死にたくなかったら藍幇には関わるなよ……とな」
「ほな……」
そう言って二人は闇に消えていった……それを見送りキンジは口を開く。
「おい一毅……生きてるか……」
「あぁ……背中痛いし腕も痛いけど……な……」
一毅は吹っ飛んだ拍子に頭から突っ込んだゴミ箱から頭を引き抜く。
「クソッタレ……
そう言いつつ一毅はキンジの手を取り立ち上がるのを手伝う。
「俺もだ……ヒステリアモードなら勝負になったが素の俺じゃ相手にならん……」
「ま、そのお陰でお前は偽物判定受けたんだろ」
「お前もな……」
二人はため息をつく。
「だが顔は覚えたな……」
「あぁ……もう忘れん。武偵はやられ多分はやり返すのが信条だ。次会ったときは絶対に打ちのめしてやる」
「バスカービルの皆で御礼参りでもするか?口調的に他にも仲間いるっぽいし」
「それは悪くねぇな……徹底的にやってやる……」
二人はニヤリと笑った。するとそこに駆けてくる人影……
「大丈夫お兄ちゃん!」
「二人とも無事かい!」
さっき恐らく狙撃してくれたであろうロキとワトソンが来た。
「待ちくたびれたぜ。だけど何でロキが?」
「うん、お兄ちゃんの部屋に行ったんだけど居なくて丁度ワトソンさんと会ったんだけど……」
「先程リバティーメイソンの情報網に妖刕と猛虎の目撃情報が入ってね……危険だから外に出ないようにと言いに来たんだが……遅かったか……」
「あぁ……となるとあれが……妖刕と猛虎……」
二人は制服についた埃を落とすとワトソンをみる。
「あぁ、
「そうか……で?これからどうする?」
「取り合えず場所を変えよう。着いてきてくれ……別の隠れ家に連れていく」
「分かった」
キンジと一毅はうなずきワトソンの案内のもと歩きだした……だがこれが始まりの合図だったのだと知るのは……この直ぐ後の事だった。
一毅「…………」
咲実「ねぇねぇどんな気持ち?後輩に人気投票で差をつけられた気分は?」
一毅「死ね!」
咲実「けばっぶ!」
投票のご協力改めてありがとうございました。またいつかやりたいですね、キャラ投票ではないですけどこういう感じのは……