緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍と金の幸運

「へぇ……」

 

一毅は感嘆の声を漏らす。

 

現在一毅たちはルーブル美術館に来ていた……なぜかと言うとメーヤと無事合流した次の日……メーヤが白雪で言う占いの託のようなものを感じここに来ると良いことが起きると言ってきたのだ。まあようは勘なのだがメーヤの幸運がこちらに来ると言う力の都合上無視はできない。どうせ行く宛てもないので皆でここに来たのだ。

 

「分かるか一毅」

「全く……つうかなんでこの絵がすごいと言われるのかも見当がつかん」

 

と、ご先祖様である宮本武蔵の描いた絵が美術館に飾られても全く何が凄いのか分からない一毅に聞く方も聞く方かもしれないがキンジもまぁ皆が凄いと言うのだから凄いんだろう……的な感想しかでない……すると突然一毅の顔が少し歪んだ。

 

「いつつ……」

「どうした一毅?」

「いや傷がまた痛んだんだ……ったく……さっさと治らんかい」

 

と呂布に着けられた傷をペシンと叩いてあまりの痛さに一毅は蹲った……バカである。

 

「ったく……気を付けろよ、戦いになったらヤバイんだからな」

「ルウ位強いやつが出てこなきゃ平気だろ……」

 

あんなのが行く先行く先で現れるとも思えない……まぁ、居られても困るが……

 

「まあそうかもしれないけどな」

 

とキンジが頷いてるとロキが来た。

 

「ねぇお兄ちゃん、あっちにモナリザがあるよ」

「ああ、モナリザの苦笑いか……」

「微笑みだ……それじゃまるで描かれるのが嫌だったみたいだろ」

 

 

そんなやり取りをしながらモナリザの辺りまで移動するとジャンヌとメーヤが角の辺りで覗き込むように角の先をみていた。

 

「何してんだ?」

「む?遠山たちか、みてみろ」

「見てみろって何を……――っ!あれは……」

 

三人も覗くとキンジは目を見開いた……その先に居たのは可愛らしい模様の眼帯に小柄な体躯……少しツンとした目付きの少女がその他大勢の女の子たちの中に紛れていた。あの顔は……カツェ・グラッセ……魔女連隊と言う秘密結社みたいなのに属する眷族(クレナダ)の代表戦士……

 

だが一毅は、

 

「誰か知り合いでもいたのか?」

『っ!』

 

ズコっと一毅以外がずっこけた。勿論一毅以外はカツェの存在に気づいてるが一毅は完全に顔や姿形を覚えていない。

 

「お前覚えてねぇのか!見てみろあの眼帯少女を!」

「……ええと……あ!そう言えば見覚えがないようなあるような……」

「ほら、開戦宣言の時にいたでしょ?メーヤさんと言い合ってた人」

「あぁ~思い出した。確か~マロン・グラッセだっけ?」

『それはお菓子の名前……』

 

皆でこそこそ話ながら一毅の大ボケに突っ込んだ。こんなところで大騒ぎなんぞしようものなら警備員につまみ出される。だが一毅のやつ全然名前覚えてねぇじゃねぇか!

 

「カツェ・グラッセだ……敵の名前くらい覚えとけ馬鹿」

「あはは……ま、まあ敵何ぞ名前覚えてなくたって良いんだよ、リーダーのお前がいった相手と俺は剣を交えるだけだからな」

「知ってるか桐生……それを思考の放棄と言うのだぞ?」

「…………クスン……」

 

一毅はそっぽ向いてしまった。拗ねるなよ……

 

「まぁまぁ、そこがお兄ちゃんの可愛いところだしさ」

「ロキ、あまりこいつを甘やかすな」

 

とキンジが言っていると、

 

「皆さん、向こうで動きがありましたよ」

 

一人見ていたメーヤが教えてくれたため皆でその後を追う。

 

「ん?」

 

すると入り口で止まった……そうか……これは学校の課外学習だったのか……つうかカツェは普段は学生なんだな……みた感じ友達いないけど……

 

「しかしまさか敵と会うとはな……」

 

とキンジが呟くとメーヤが、

 

「恐らくこれは私の魔術の影響です」

 

確かにこの広いパリでピンポイントで見つけるなんてよほど運が良くないと無理だ。だがあとでロキに聞いたがメーヤのような運命的なものを操る魔術は別の場所で不運な目に遭うとのことだ。

 

つまり差し引きゼロにしようと世界の理が動かす……と一毅は頭から湯気を出しそうになりながらロキの説明を一毅なりに解釈した。

 

そんな事を考えてるとカツェたちが解散した。カツェは一人残ってるけど……

 

「うまくいけば魔女連隊の拠点が分かるかもしれませんね」

「しかしあれは有名なお嬢様学校だぞ……学費も高いがな……」

「ん?なにか来たぞ」

 

少し雑談しながら待っているとカツェの元にバイクが来た。確かあれはケッテン・クラートとか言うナチスが作ったバイクのはずだ。

 

「なるほどな……追うぞ」

 

バイクが走り出すのと同時にキンジが合図をだし皆は追っていく……幸い目立つしスピードもあまりない。

 

「意外とロキさんって運動神経が宜しいんですね」

「まあね、一応鍛えてるよ」

 

何て追跡しながらメーヤとロキは話す。

 

「でも走ると胸が揺れていたいんだよねぇ」

「私もです。夏なんか汗疹できますしかわいいブラジャーもつけられないし」

「スッゴク分かる。ジャンヌ・ダルク先輩くらいが一番いいよねぇ」

「む?そうか?」

 

追跡中にどういう会話だよとキンジと一毅は内心突っ込んだが勿論なにも言わない。

 

何て茶番を交えつつ追跡を続けると飛行場にたどり着いた。そしてそこにはなんとドデカイ飛行船が……

 

「うーん……中には武器とか食料を詰め込んでるみたいだね」

 

と、ロキが狙撃銃のスコープを使って情報を教えてくれる。さて……どうするかね……カツェがあそこに入っていくのは見えてる……

 

「ハッチも緩いし潜入しようと思えば出来るのな……」

 

とジャンヌが言うとメーヤが顎に手を添える。

 

「この場合まず相手の拠点にたどり着けること……そしてそこからの連絡」

「つまり……何があっても多少のことでは死なないし荒事になっても切り抜けられる人……」

 

スゥっとジャンヌ、メーヤ、ロキの視線が固定された。

 

「……分かったよ、どうせそう言うオチなのはわかってたさ」

「ま、そうなるよなぁ……」

 

キンジと一毅はため息をつきながら立ち上がる。

 

「あ、そうだお兄ちゃん、これあげる」

「これは……カロリーメイト?」

「うん。一応何があるか分からないし持っていきなよ」

「サンキュー」

 

一毅はロキに礼を言うと持ってきておいた龍桜を制服の上に着る。キンジも同様だ。準備も万端……それじゃあ……

 

「帰ってきたら米の飯が食いたいなぁ」

「お前もう日本食が恋しいのか?」

 

と言いながら二人は飛行船に忍び込んだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかしいろんなものを詰め込んでるなぁ……」

 

一毅とキンジは仲良く忍び込んだがしばらくすると飛び上がっていくのを感じつつ物色していた。どこか丁度よく隠れられそうな場所を探してるのだがキンジは近くの箱に乗って毛布みたいなものを掛けておけば良いが一毅が隠れやすそうな場所はロッカー位しかない……しかしずっとロッカーの中では体の形が四角になってしまう……だが、

 

『っ!』

 

一瞬だけ聞こえた人の声……一毅とキンジは反射的に隠れた……

 

キンジは箱の上に埃避けの布を被って……一毅はロッカーに……

 

「お前ら揺らしたら許さないからな」

 

そう言って入ってきたのはカツェだった……なぜこいつがここに……と思っていると徐ろに制服を脱ぎ出した。

 

『っ!』

 

キンジは慌てて視線をそらし一毅は必死に息を潜めた……これでは自分達は女子中学生?と思われるカツェの着替えを覗く変態である。何としても隠れ通さなければならない。

 

「ん~」

 

カツェは凡そ年に似つかわしくない下着姿になると近くの鏡を覗きにっこり笑う。うむ……顔はいいから可愛いじゃないか。

 

「しかしまさか桐生 一毅と遠山 キンジがこっちに入ってきたってのは本当か……」

『っ!』

 

既に相手側には噂程度には知られてるらしい……流石に少し早すぎないか?いや……バレてても仕方ないが少々情報が早い……

 

(内通者……)

 

ふとその時キンジの脳裏にフランスに旅立つ前にその時はまだ同行するとは思ってなかったワトソンから聞かされていたことを思い出す。

 

もしかしたら……の存在……まだ確証はないが欧州の劣性の影には師団(ディーン)の内通者の存在があるらしい……一毅はこの事を知らない。と言うか知ってるのは仲間内ではキンジその事を話したワトソンだけだ。

 

(内通者……そんなもん居ないのを願うぜ)

 

何てキンジが考えてるとカツェは着替えを出そうとロッカーに手を……ウゲ!

 

(あれって一毅が飛び込んだロッカー……)

 

キンジは悲鳴をあげそうになった……寄りによって数あるロッカーのうち一毅の飛び込んだロッカーはカツェの着替えがあったらしい……

 

「あれ?開かないぞ?」

 

だがしかし一毅が中からガッチリ掴んでいるためロッカーは開かない……一毅の腕力にかかればカツェの開けようとする力なら余裕で勝てる。

 

「おっかしいな……扉が歪んだのか?はぁ……今日は厄日だ……くそ!」

 

グイグイ引っ張るが勿論開くわけない。頑張れ一毅!キンジが応援してると飛行船が揺れた……

 

「っ!」

 

カツェは突然の揺れに体制を大きく崩した……だが同時にロッカーの中では無理な体制で中から扉が開かないようにしていた一毅の指からスポーンと握っていた場所が滑って手から離れていった……

 

「あ……」

 

勿論その結果……

 

「え?…………」

「よ、よぉ……」

 

ロッカーの扉は開かれ中ですっぽり嵌まっていた一毅と下着姿のままのカツェの目と目が合う……瞬間……

 

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!」

 

カツェ大絶叫である。そりゃいきなりロッカーの扉が開いたかと思えば一毅が入っていれば驚きであろう。可愛らしい悲鳴をあげながら辺りにあるものを片っ端から投げつける。

 

「うわぉ!」

 

一毅は慌てて扉を閉めてガード……だがカツェは今度は銃を出してきた。こっちを殺すきかこいつは……殺すつもりだよね。と思った瞬間カツェから銃が奪われた。

 

「え?」

「俺の仲間だからな……悪いがそれを撃たせるわけにはいかないんだ」

 

と、キンジがカツェから銃を奪う。ヒスってはいない……(メザ)ヒスと言うやつだ。カツェの下着姿でも軽くではあったがヒスれた。

 

「よし……」

 

一毅はその隙にロッカーから出ようとしたがキツい……無理矢理ロッカーを少し変形させて無理に出ると、

 

「これはなんの騒ぎ!」

 

そこに現れたのは複数名の武装した女性たちとその先頭にはキツそうな視線をする一部特定の男性から好かれそうな女性……

 

「イヴィリア様……」

「…………カツェ……確かあなたは着替えにここに来たはずよね……」

「は、はい」

 

イヴィリアと呼ばれた女性が言うとカツェは頷く。

 

「ではなぜここに【(エネイブル)】とロッカーを変形させながら【応龍】が出てきてるのですか?」

「私にもさっぱりで……」

 

ですよね……とキンジと一毅は苦笑いする。

 

「まぁ、次から荷物チェックは厳しくした方がいいぜ?」

 

とキンジが皮肉を言うがこれからどうするか悩む……このままでは捕まる……いや、倒すのは容易だが相手は全員女だしな……一毅も女相手に力は出せる性格じゃないし自分は論外……となると、

 

「一毅……お前高所恐怖症じゃないよな?」

「ん?あ、ああ……どうするんだ?」

「逃げる算段だよ」

 

キンジは肩を竦めつつ言う、

 

「あら逃がさないわよ」

 

とイヴィリアが口を開いた。

 

「あぁ……パラシュート二つこっちにくれれば大人しく出ていくんだけど……」

「そう言うわけにもいかないのよ、貴方達には上が興味持っててね……もし出会ったときは連れてこいっていわれてるのよ」

「いやぁ……キンジモテモテだね」

「達ってことはお前も入ってると思うぞ」

 

だろうね……っと一毅は言いながら肩を落とす。

 

「そう言うわけだから大人しく投降して貰うわ」

「どうするキンジ?」

「お前なら何を言いたいか分かるんじゃないか?」

「ま、なぁ……仕方ない、二天一流・絶技……」

『っ!』

そういった次の瞬間一毅の体から深紅のオーラ(レッドヒート)が出る。

 

「怒龍の気位」

「何を!」

 

イヴィリアが口を開いた瞬間一毅は一瞬の間に後方の緊急用のハッチ開閉装置の前にいく。

 

「しまった!」

 

イヴィリアが驚愕する中一毅は言う。

 

「何かにしっかり捕まっとけよ、ポチっとな」

 

一毅はカチッとスイッチを押すと緊急を知らせるブザーが鳴り響きハッチが開いていく。

 

「一毅!」

 

すると突然のキンジの声……一毅は無意識に心眼を発動させ次の瞬間響いた銃声を聞きつつ同時に飛んできた銃弾を殺神(さつがみ)を瞬時に抜いて切り飛ばした。

 

「お前か……」

 

銃を撃った張本人であるカツェの顔を一毅は見る……既に服を着ている辺りは年頃の羞恥心があるらしい。

 

「てめぇ人の着替えシーン覗いといて逃げるってのか?ふてぇ野郎だぜ」

「だからあれは不可抗力だって……」

 

一毅は肩をすくめる。

 

「んなもんどうだっていい!やれ!エドガー!」

「っ!」

 

そこにカラスが突っ込んできた。爪が紫だし毒爪か?

 

「おっと!」

 

だが一毅はそれをヒョイと躱すとキンジと背中合わせになる。

 

「キャア!」

 

それと同時にハッチが完全に開閉し風が入ってくる……それにより相手のスカートがまくれ上がった……

 

「ふぅ……こう言うのも不幸中の幸いって言うのかな?」

「さぁな……」

 

と完全に今の光景でヒスったキンジと一毅は言って笑い合うと……

 

「一毅……これは殲滅戦じゃない。パラシュート取って逃げる……いいな?」

「了解。リーダー」

 

そんなやり取りをする二人をイヴィリアやカツェ達は逃がさぬように取り囲む。

 

「逃がさねぇからな覗き魔野郎!」

 

憤慨するカツェ……

 

「安心しろって……俺はアリアやあかりに興奮するキンジや辰正と違ってロリコンじゃないからお前じゃ何ともないって……」

「それはそれで失礼だぞこの野郎!」

「一毅……お前喧嘩売ってるのか?」

 

何てふざけたやり取りを交わしながら一毅とキンジは戦闘体制にはいった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃の日本では……

 

『っ!』

「ど、どうかされたでござるか?」

 

突然立ち上がったアリア、あかり、辰正の行動に他の面子は首をかしげる。

 

「今私バカにされた気がするわ」

「奇遇ですね。私もです」

「僕も今猛烈に腹が立ちました……」

『?』

 

三人のよくわからない怒りの様子に首をかしげることしか他の人間はできなかった……




一毅「まだ人気投票は活動報告の方で受け付けてるぜ、宜しくな」

咲実「あ、そうそう。これで一毅が一位とれなかったら主人公首にするからね」

一毅「え?」

咲実「勿論主人公は一位になったやつになるからね」

一毅「えぇえええええええ!!!!!」







勿論冗談ですよ?何があろうと一毅が主人公です。

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