緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍達の決戦 幕引き

「…………う…………」

 

呂布は薄く目を開けた……一毅の新たな二天一流の【極技】の技である――風林火山――を受けて意識を失っていたらしい。

 

すると目の前には貂蘭の顔があった。と言うか呂布の頭は貂蘭の膝の上にある。

 

「貂蘭……俺は負けたのか……?」

「そうよバカ……」

 

ポツリ……と呂布の頬に滴が落ちた。貂蘭の目から流れたのは見て分かる。

 

「ホント……バカなんだから……」

「やめてくれ……お前が泣くのは嫌いなんだ……」

 

そう言ってソッと……壊さないように優しく呂布は貂蘭の頬に触れて滴をぬぐった。

 

「俺は……これからもここに居ても良いのだろうか?」

「寧ろ居て貰わないと困ります」

 

そう言って来たのは姜煌だ。

 

「…………まあとりあえず……お疲れ様です」

「…………ああ」

これから香港藍幇は生まれ変わっていくだろう……少なくとも呂布……いや、名無しのバラガキは自分の居場所を見つけたような気がした……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「近くにあるものほど見えないもんだよなぁ」

 

それを一毅たちは遠くでみながら笑った。因みにココたちはお尻ペンペンされて逆さに吊るされている。あと、お尻ペンペンした一毅は極めし者のオーラ(クライマックスヒート)状態のままでやったため冗談にならない痛みと悲鳴が辺りに響いたのは余談である。

 

すると、孫が立ち上がった……

 

「さすが遠山だ……強いなぁ……」

『っ!』

 

全員が身構えた……だが孫は両手をあげる。

 

「降参だよ……まあ孫悟空にも飽きてたしちょうど良いや」

 

孫の言葉に全員が首をかしげた……すると、孫は笑った。

 

「また会おうぜ」

「っ!」

 

孫は突然倒れた……だがその直前に確かにアリアをみていた……まるで探していたものを見つけたような顔だった……何だったのだろうか……

 

そんなことを考えていると孫が……いや、猴が立ち上がった。

 

「うみゅ……ここは……」

「……まあ」

 

キンジは制服のボタンを留めてネクタイを締める。

 

「これで一件落着だね」

「そうだな」

 

一毅もそう言って極めし者のオーラ(クライマックスヒート)を解除した……次の瞬間、

 

「いでででででででででででででででで!!!!!!!!!!!!」

 

全身に走る激痛……あまりの痛みに一毅はひっくり返った。

 

「大丈夫かよ一毅!」

皆も慌てて一毅に駆け寄った。

 

だが当然の副作用でもある。元々先程の出した速度だって明らかに人間ではない。

 

「恐らく全身の筋肉が断裂したんでしょうね」

 

そう言って静幻が来た。と言うか最初から脱出しようと思えばできたらしい。それをしなかったのは……キンジたちが勝つ方に賭けたからだ……

 

「お前は何が目的だったんだ?」

「今の貴方なら推理できるはずですよ?」

 

口調的にヒステリアモードを知っているようだった。だがキンジもそういわれ思考を動かす。そして思い至った。

 

「お前らを俺たちを使ったな」

「はい」

 

静幻はうなずいた。

 

「私たちは大きくなりすぎた。そして増長してしまったのです。故に敗北させるしかなかった。前回の日本のようにちょっとした小競り合いではなく……完全なる敗北を……だから使わせてもらいました。今回の戦いをね」

「負けるのは読みのうちってことか」

「いえ、実は私の読みでは孫とルウ君は勝つはずなんです」

『え?』

 

全員が静幻の言葉を聞いて呆然とした。

それを見て静幻は笑った。

 

「ですから賭けです。何せシャーロックホームズですら打ち破った二人の予想を上回る力を信じてね。いやぁ~ポーカーで言うならファイブカードを一発で引けた気分です」

 

ようはあり得ない勝利だったと言うことだ。それを聞いてキンジは頭を掻いた。

 

「それで決まりました?」

「何が?」

 

いきなり言われてもキンジは何のことやらだ。すると静幻はニコニコ笑って、

 

「言ったじゃないですか。藍幇を貴方にと」

「ああ、それか」

『ええ!』

全く聞いてなかったキンジ以外の仲間達は驚きすぎて座ったままジャンプしそうになった。いつの間にすごいことになってる。

 

「凄いじゃんキー君!藍幇みたいなおっきい組織もらえたら将来安泰だよ?」

「落ち着け理子……何で君が興奮するんだ」

「だってそしたら毎日酒池肉林だよ?」

「それは別に要らないんだけどねぇ……」

 

今でも一杯一杯だ。

 

「ですがキンジさん。キンジさんが国外に逃亡する事態になったら逃げ場確保できますよ?」

「いやレキ……どんな事件に巻き込まれたら俺が国外逃亡する事態になるんだい?」

「キンジだからよ。何をするか分かったもんじゃないわ」

 

アリアが言うと全員が納得した顔になった。

 

「酷いな……」

 

冷や汗をかきながらキンジは静幻をみた……まあ答えは最初から決まっているんだ。

 

「すまないが遠慮させてもらうよ。俺はバスカービルのリーダーでね。これ以上は許容量オーバーだ」

「そんな気はしてましたよ……」

 

静幻は肩を竦めた。その辺も読めていたんだろう。

 

「でしたら少し付きまとってみますかね」

「は?」

「ほら、私の先祖は三回誘われましたからね。まだ私は一回目です。なら先祖にならってしつこく勧誘してみますよ」

「お前は勧誘された方だろう」

「ですから今度は私が誘います」

 

それを聞いて今度はキンジが肩を竦めた。

 

「なら精々長生きするんだな」

「ええ、長生きして貴方を勧誘しますよ」

 

そう言って二人は笑った。

 

『やっぱりキンジ先輩って……』

「何言ってんだ!」

 

一年生の引き気味の視線にキンジが叫んだ。すると、

 

「ん?」

 

静幻の所に誰か来た。確か昨日接待してくれたときにいた女中の一人だ。

 

「……分かりました」

「どうした?」

 

キンジは聞くと静幻は答えた。

 

「突然巨大な石油タンカーが沖に止まってきたと言う情報が入りましてね。中はもぬけの殻で誰も居らず少し騒ぎになっているらしいので少し見に行ってきます。あ、このあとまた今日も宴会の用意をしてありますからどうぞお楽しみください」

「準備良いんだな……」

 

静幻は笑って誤魔化すと外に出ていった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外に出た静幻は沖には向かわず町の方に入っていく……入り組んだ裏路地をあっちこっち移動していくと……

 

「あなたの仕業ですね?」

 

そう声をかけた……振り返ったのは全身黒尽くめの男だ。

 

「ん?おー久し振りじゃん。まだ生きてたのか?んで何が?」

「タンカーですよ」

「ああ、あれね。いやだってさぁ~せっかくいい感じに終わろうと言うのに水を指そうとするしなぁ~。あ、今の上手くね?厄水の魔女だけに水を指すってね。座布団一枚くらいくれないか?」

 

ヘラヘラ笑いながら男は言った。

 

「相変わらずですね……亜門 丈鬼さん」

「お前もな。諸葛 静幻」

 

亜門 丈鬼……どこの国にも属さずどこの国にも靡かない流浪の男だ。だがその強さは出鱈目だった。その余りにも出鱈目な強さは世界各国が常に警戒しアメリカは人工衛星で常に同行を見張っていると言う徹底ぶりである。だが最もな出鱈目さはその性格である。

 

近衛兵が子供を突き飛ばしたと言う理由でイギリス王室まで乗り込んでなんとイギリス国王自身に子供へ土下座させたり(本人いわくペットの問題は飼い主の責任らしい)気に入った絵を偶々そこで起きたマフィアの抗争で壊されぶちギレたあげくどっちも壊滅させたり人質とった犯人をビルの壁面に飛び付いてヤモリのように上がっていき(なんと40階建てビルの最上階に陣取ったらしい)犯人の顔を自らのグーの形にヘコませたり……他にもあるが本人いわく大体全部ムカッと来たから……らしい。

ようはムカついたからぶっとばしたにすぎない……GⅢも口ではそう言ってるが内心は違う。だが丈鬼は正義もない。悪もない。いや、正義はあるのだ。丈鬼にとって正義とは己である。ムカつけば悪。ある意味純粋で分かりやすい超絶理論である。

 

「まあ取り合えず肉まんとか食いてぇな~。あ、やっぱり白い米ははずせねぇな」

「一つお聞きしますが……乗り込んでいたやつらは生きてるんですか?」

「おう。ゴムボートと一緒につまんでポイしたから今頃は海のど真ん中で鮫と戯れながらヨーロッパに帰ってんじゃね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃……二人は……

「おいパトラ!そっちに鮫が来た鮫!」

「ぬぉ!ゴムボートに穴が!急いで塞ぐんじゃ!」

 

と、中々デンジャラスな目に遭っていたがそれは置いておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ですがなぜあなたがここに?」

「桐生がいたからさ……一応なんかうちの一族とは因縁があるらしくってさ……まあはっきり言ってうちの一族の運命なんて下らないっつうか負け犬が自分じゃ勝てないから子孫に押し付けてるだけだしな。因縁事態に興味はないけど桐生事態は一度見てみたかったんだよね。いやぁ~強いなぁ。あいつマジで強いよ。でもまだ俺の方が強い。だから戦わない。ほら、蝶々だって羽化したばかりで触るとダメだろ?それと同じだ」

 

逆に言えば強くなれば戦ってみたいと言うことだ……一毅も中々面倒な相手に目をつけられた。

 

「つうわけで美味しい食べ物が俺を呼んでるからな。あばよ静幻」

 

そう言って静幻の横を丈鬼は通りすぎようとした……だが静幻は通す気はなかった。何故ならいずれ桐生 一毅に仇をなすと言うことはキンジにも被害が出る。静幻は真面目にキンジに藍幇を渡す気なのだ。このままでは危険すぎる……そして静幻は拳を振り上げるべく拳を握った。命賭ければこの男の不意打ちの分も含めイケる……が、

 

「っ!」

 

静幻の手は丈鬼の人差し指によって抑えられた。

 

「命は大切にしとけよ……病気のお前には手心加えるけどさ……死にたがりの相手はごめんだぜ」

 

静幻の体に冷たいものが走る。

 

「お前じゃ俺には勝てない。呂布でも今の桐生でも遠山でも……俺には勝てないよ……それに不意打ちは俺の眼には見えてるし見てなくても俺には感じ取ってしまうんだ……意味がない」

「なっ……」

 

静幻は力を抜くと丈鬼も手を離した。

 

「と言うわけでな……今度こそあばよ」

「…………」

 

そう言って丈鬼は夜景の中に姿を消した……

 

「…………はぁ!」

 

静幻は息を吐ききると急いで吸う……そして吐く。一瞬だけ見せた丈鬼の本性……その本性は一毅と同質……であるが同時に一毅とは比べ物にならない恐ろしさが混じった狂気だった。

 

(殺されていた……)

 

自分の読み間違えに静幻は汗が止まらなかった。忘れていた。丈鬼が世界になんと言われているか……

 

【異常者】(イレギュラー)……そして何者にも繋がれず……言うことを聞かすことができないと言う意味から【繋がれざるもの】(アンチェイン)

 

どちらもこの男の異常戦闘能力を表す言葉だ……

 

「私もまだまだですね……」

 

刺し違えるなんておこがましいほどの強さを目の当たりにしつつも静幻も藍幇城に向かう。

 

こうして……中国での長い戦いは幕を卸したのであった……

 

 

そしてこの戦いでチームバスカービルの名前は裏社会で大きく出ることになるのだがそれはまた別の話である。




次回やっと日本に帰ります。そしたらこの欧州編に行こうと思います。と言うか前回今回で終わるようなこといっておきながら長くなってしまいました。マジでごめんなさい!次回こそ終わります。本当に終わります!

と言うわけで次回こそ中国編最終回です。

因みに今回登場した亜門はしばらくまた出ません。そして亜門の強さですが……現段階では作中トップです。一毅の新しい力使っても勝てません。と言うか極めし者のオーラ(クライマックスヒート)を含め全ヒートは亜門も使える設定です。最強の敵ですが同時に戦う予定はないです。

と言うわけまた次回!

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