緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍達の決戦 龍の目覚め

「……ん?てことは俺って死んだのか!?」

 

一毅は祖父である一心を見ながら驚愕した。だが一心はクックック……と喉を鳴らしたような笑いをした。

 

「ばぁか。そんなわけないだろうか。幾ら強烈だったとは言え流石に即死はねぇよ。まあアブねぇ所ではあるけどな、良く言うだろ?綺麗な河が見える~とかよ。そういうやつだ」

「ああ、あれね」

 

それを聞いて一毅は安心した……だが、

 

「なら急いで戻んなきゃ行けねぇじゃねぇか!なあ、どうやって戻るんだ?」

「あん?別に戻んなくたっていいじゃねぇか。辞めとけ辞めとけ、お前みたいな弱っちいやつはここにいとけ」

「なに……?」

 

一毅は一心を睨み付ける。だが一心は何処吹く風でキセルから煙をプカプカさせながら一毅をみる。

 

「いやぁ、爺ちゃんは可愛い孫が負け戦にいくなんて嫌だねぇ。しかも勝っても負けても何ら意味もない。そんなのにいかせたくないねぇ」

 

言い方は酷くわざとらしい。いっそ清々しいが言われる一毅はムカつくだけである。

 

「負けるとは限んないだろ!」

「いいや、負けるね。あんな大斬撃喰らったんだ。今から立ってもいいようになぶられて終わりさね。彼女たちにそんなところ見られたくないだろ?」

「アイツらは関係ない!俺の勝手だ!死のうがどうなろうが俺の責任なんだよ!」

「……………………」

 

すると一心の眼が鋭く……鋭利なものに変わった。

 

「っ!」

 

一毅はギクッと体を竦める。

 

「俺の責任なんだよ……かぁ……いいねぇその言い訳のしかた……」

「言い訳……だと?」

「ああ、言い訳だ」

 

すると一心は立ち上がってキセルを咥えたまま一毅に相対する。

 

「何だぁその顔は……もしかしてムカついた?いやぁ悪い悪い。昔からこうでね……」

 

一心はおちゃらけた言い方で謝った。

 

「とは言えだ……これ以上口で言っても止まりゃあしないだろうなぁ……お前は俺に似て馬鹿だからな……つうわけで来な、俺に一発ぶちこんでみろ……お前にないものを教えてやる」

「…………いいのかよ……」

 

幾ら一心がガタイがいいとは言え一毅のパンチを喰らったら年も年のはずなので危険のはずだ。

 

「おお、遠慮も手加減無しでこい……」

 

それを聞いて一毅は拳を握って腰を落とす。

 

「恨むなよ!」

 

そう言って放たれた一毅の正拳突き……腰の捻り……拳の突きだし……全ての要因が完全に合致した拳が一心の腹に刺さった……だが、

 

「え?」

 

一心は微動だにしなかった……顔色ひとつ変わらずキセルから煙をふかす。

 

「軽いねぇ……」

 

そういった一心は手を振り上げ指をゆっくり順番に折って握り拳を作った。

 

「歯を喰い縛れ」

「っ!」

 

ガツッ!!!っと顔に走る痛みと衝撃……それにより一毅はぶっ飛んだ。

 

「が……」

 

たった一発……たった一発だ。一心が放った拳骨……腰の捻りもない純粋な拳骨……ただ拳を振り回しただけなのに重く……固い一撃によって一毅は一気に戦闘意欲を削り取られた。

 

「あらゆるものを捨て戦いのみにその意思を置く……それは武の狂信者と呼ばれ拳聖……武王……と称され神扱いされる。だが俺に言わせれりゃそいつは弱いやつさね」

 

仰向けの一毅の顔を覗き込みながら一心は言う。

 

「だって邪魔な物を捨てるってのは様はその邪魔なものを背負う余裕がないってことだ。漢ならよぉ……そんな邪魔なものも纏めて背負わねぇとな。強さも弱さも……全部引っくるめてなきゃ……ただの戦闘狂……しかもおめぇも呂布ってやつも見境がねぇ。戦うんなら相手を選びな」

「くっ!」

 

一毅は口を拭うと一心をにらむ。

 

「クックック……良いねぇ若いねぇ……自分の強さを疑ってない良い目だ。それ故に危険なんだがまあそれはあとにしよう」

 

一心はまたキセルから煙を吹かした……

 

「俺の拳……重く痛かっただろう?何でだと思う?」

「…………」

 

一毅はわからないため無言で返すと一心はまたクックックと喉を鳴らしたような笑いを漏らした。

 

「俺はな……お前をこのまま死なせた方がいいと思ってる」

「っ!」

 

一心の言葉に一毅は目を見開く。

 

「お前さんをこのまま離せば暴れかねない。暴れれば関係ないやつを巻き込みかねない……なら無関係の人間傷つける前に俺が引導渡すのもまた筋ってもんだろう?」

「………………」

「だからここでお前を止めなきゃなんねぇ……止めなきゃ取り返しのつかないことになりかねない……そうしておいた方がレキちゃんだっけか?その子や他の子達もそれぞれの道を歩ける。お前が生きてるとそれができねぇだろうよ……」

「………………」

「そう言うわけで俺は腹ぁ括っておめぇの前に立って拳握ってんだ。だがお前さん……何のために拳を握ってんだい?」

「何のためって……戦うためだ」

「ふん……全てを捨てて戦いのために?そりゃ楽だろうねぇ。何せ何も背負わないんだ。何の覚悟も要らねぇ。例え負けたって自分の命だけで良い。何て楽な戦いだ」

「何だと……」

「お?何だ怒るかぁ?クックック……何度でも言ってやるぜ、お前と呂布の戦いは所詮何も背負いたくねぇもん同士のガキが自分の戦闘欲求満たすために暴れただけさ。所詮は堪え性のない子供の喧嘩さね」

「っ!」

 

一毅は一気に立ち上がって一心を殴る……だがそれを一心は簡単にキャッチするとニヤニヤ笑う。

 

「ホラやっぱり子供だ。事実を言われるとキレる」

「――っ!」

 

一毅はそこから押すが一心には全く効果がない。微動だにしない。

 

「して一毅よ……何で【握り拳】って言うかわかるか?」

「手を握るからだろ!」

「かぁー……お前やっぱ駄目だなぁ。そんなありきたりな意味しか答えられないわけ?」

「じゃあなんだよ!」

「簡単だよ。背負っちまったもんを……プライドを……意地を……戦うわけを……覚悟を手に込めてそれを握るから【握り拳】って言うのさ……最初は重いかもなぁ……拳を振るのすら苦労するかもなぁ……でもな、それを我慢し手に握り続けてるとな……ある日気付いてると重くなくなってるのさ……そして重かったはずのものは拳で殴った時の重さに変わってる……何時しか重さは消え失せ邪魔だったものは力になってる……それがねぇ拳何ざ炭酸の抜けたサイダーみたいなもんだ。どんなに力強くても中身のねぇ拳ほど軽いのはねぇんだよ……」

「………………」

 

一毅は一心をみる。

 

「そんな拳でやる喧嘩何ざあとでむなしくなるだけさぁ……つまんねぇ勝負だよ……そしてその重さはなぁ……俺たちの性を抑える重石になってくれる」

「重石に?」

「ああ、俺たちの戦闘欲求はもう病気レベルさ。どうしようもねぇ、血を求め……力を求め……強者を求め……死を求める。それはもうどうしようもねぇことだ。それを否定しちゃなんねぇよ……認めるしかねぇよ……受け入れるしかねぇよ……だけどなぁ……それに振り回されちゃあイケねぇ……あくまでそれは自分の内にあるべきものだ。それに呑まれちゃなんねぇ……それに使われちゃあなんねぇ……それに振り回されたらな、ただの信念の無い人斬りさぁ……犬畜生にも劣る人のクズだよ……」

 

一心の言葉に一毅は何時しか聞き込んでいた……口を挟まず……ただ真摯に聞いていた。

 

「孫にそうはなってほしくないんだよ、俺はさぁ……それにきっとお前の大切なやつらもそう思ってるぜ?」

「皆が……?」

「ああ、お前はさっき生きるも死ぬも自分の責任だと言ったな?でもそれは間違いなんだよ。確かに命をどう賭けるかっていうのは自分が決めることさ……でもな、お前が命を賭け……お前がいなくなったとき、お前に涙を流すものがいる。そうなった時点でお前の命はお前の責任で散らすわけにはいかなくなっていくのさ……」

「爺ちゃん……」

「俺たちは戦いを求める……でもな、それでも忘れちゃなんねぇ物がある。絶対に目を背けちゃなんないものがある……消しちゃなんねぇ意思がある……その身が鬼となろうと色褪せちゃならないものがあるんだよ……」

「忘れてはならないもの……」

 

一毅はゆっくり反芻していく……脳裏に浮かぶのは今までの思いで……レキの初めて作った飯がダークマターでキンジを巻き添えにして顔を引きつらせながら食べたこと……レキと午後の昼下がり一緒にテレビをみたこと……キンジと一緒に強盗を捕まえたら何と相手が機関銃取り出してきて慌てたこと……アリアがキレて銃を乱射してキンジを追い回してるのを見て笑ったこと……ライカと一緒に訓練したこと……レキとライカとロキの三人で一緒にお昼寝したこと……白雪が暴れたのをキンジと一緒に止めたこと……理子のおふざけに一緒にやったら後でキンジに膝詰め説教されたこと……あかりへ未だにはっきりしない辰正をからかって遊んだこと……陽菜の珍行動に頭を抱えたこと……志乃から逃げ回ったこと……たくさんあった。何れも思い出だ……捨てようとした記憶……

 

「俺たちはな……自分の性を抑えたりとか……折り合いつけようとか……そんな器用なことできないしそこまで頭良くねぇ……一明みてぇな例外はあるが基本的にアイツも含めて俺たち桐生はその身に狂気宿してる……だがその時にこそ何を手に握ってるのか思い出すんだ。桐生は戦いでその狂気を使う……特にお前は一種の先祖帰りなんだろう。歴代の中でもトップクラスの狂気だ。だが同時にそれだけじゃない、俺達の周りには何時だって俺たちを思ってくれる仲間がいてくれる……それを忘れちゃならない。折り合いをつけようとか考えるな。抑えようとかするな。だが同時にそれを全てにするな。そして命を粗末にするな……生きるんだ、這いつくばってでも、何度やられても、繋がりと言う糸を使って立ち上がれ……色んな背負っちまったもんを手にした握り拳で相手をぶっ飛ばせ……生き様を見せつけるんだ……その果てが死か……はたまた伝説なんて呼ばれるか……それは分からない。神さえも知らないだろうな……」

「生き様……か……」

 

一毅はうつむいた……すると膝に水滴が落ちた……

 

「本当は怖いんだ……」

 

一毅は漏らす。

 

自分はどんどん人間ではなくなっていく。最初は笑ってすむレベルだった。だけど段々そんなものでは済まなくなっていくのを感じた。

 

いつか皆が自分を腫れ物を触るような目で見るんじゃないだろうか……そんな恐怖が何時だってあった……

 

そして一番怖かったのはこのままでは自分の居場所がなくなる気がした……

 

「俺さぁ……勉強全然だめなんだ……努力してみたことだってあるんだ……でも全然だめなんだ……知恵熱出たときなんかマジかと思ったよ……家事とかできるけどさぁ……そう言うのじゃなくて戦いに役立つ能力も剣術とかくらいで……狙撃は無理だし盗みとか無理だし超能力は使えない……キンジみたくヒーローぽい事もできない……思うんだ。俺って別にいなくても大丈夫なんじゃないかって……俺みたいな戦闘以外じゃ役に立たない奴は居なくたって困んないんじゃいかって……そりゃあアリアとキンジの仲を取り持ったりもするけどあれだって別に俺がいなくなってうまくやるよ……そんな風に思ってたら今度は呂布だ……マジで強くて……引き分けにすんのがやっとだった。今回に至っては負け……俺から強さを抜いたら何も残んねぇよ……戦闘以外では役に立たねぇ上に一番にもなれない中途半端な化け物なんてさぁ……」

 

ずっと一毅の中にあった感情……ずっと一毅のなかで沸き上がってた感情を吐露した……

 

「そりゃそうだ。俺たちは化け物……だが全てが完璧じゃない……勝ちもするし負けもする……どうしようもなくなって助けを求める……それが普通さ……でもな……別に良いじゃあねぇか……化け物だからって全部一人でやるのか?違うだろ……それに、耳を済ましてみな」

「?」

 

一毅は顔をあげた……すると微かに聞こえてきた……

 

《一毅》《一毅さん》《カズちゃん》《カズッチ》《一毅先輩》《桐生殿》

 

「あ……」

 

トクン……と一毅の中で何かが跳ねた……皆の声が聞こえる。

 

「色んな奴がお前を呼んでる。お前を信じてる。お前の心配ももっともさ……でもな、もっとアイツらを信じてやんな……」

「うん……」

 

一毅は眼を拭った……

 

「さっき言ったようにお前は歴代でも最高クラスの狂気だ……生まれたときからそれは分かってた」

「え?そうなのか?」

「赤ん坊って開いた手に指を入れるとギュッと握るだろ?」

 

一毅もそれは知ってるのでうなずく。

 

「あれを俺がやったらな……お前いき なり俺の指へし折ったんだぞ」

「マジで?」

「おお、それで確信したぜ。こいつはヤバイってな……こいつは俺とは比べ物にならん狂気……いや、狂鬼を持ってるってな。だからお前の名前は【一毅】って決めたのさ」

 

一心は空中に軌跡を描く。

 

「【その身に一匹の狂うてる鬼を宿し者】……だが同時にそんな鬼にも負けない【(つよ)い】人間になってほしい……だから【一鬼】ではなく鬼の部分を毅に代えて【一毅】としたんだ」

 

そう言えば自分の名前は祖父がつけたと父に聞いたがまさかそういう意味があったとは……

 

「だがもうお前は名前と言う(まじない)で縛らずとも大丈夫だろう……例え一鬼になったとしてもお前には一緒に歩いてくれる奴等がいる」

「ああ……」

 

一毅が頷くと一心は笑う。

 

「なら行け……このまままっすぐいけば着く……」

「わかった……なあ爺ちゃん。ありがとな……」

「ふ、さっさと行きな」

 

一心は頬を赤くしてそっぽ向いた。ツンデレだ。

 

「あ、そうだ。鐡に会ったら言っといてくれないか?」

「なに?」

「あの世にはなぁ、そりゃもう美人さんが多くて天に昇る心地だって」

「死ねエロ爺」

 

しかももう既に天に昇っているじゃねぇか。

 

まあとりあえず気を取り直して……

 

「じゃあ行ってくる」

「おう、帰ってくんなよ」

 

そんなやり取りをして一毅は走り出す。

 

今までずっと回ってた歯車……それが呂布とであって一度外れかけて……また嵌まった……しかも今度はもう外れないように強固だ。

 

折れた芯は元通り?違う。前とは違う。色んな意味で違うのだ。比べ物にならない。

 

足りなかったものが嵌まった……くっついた……理解した……

 

(今度は……もう倒れない)

 

一毅は新たな一歩を歩み出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お……おぉ……」

『っ!』

 

一毅が僅かに動く……それを見た皆は驚きつつも……

 

「やっと起きたかよ……」

 

キンジの言葉を聞いて一毅は笑う……

 

「なぁキンジ……俺は何だ?」

 

一毅の言葉……それをキンジは理解し笑って答える。

 

「チームバスカービル最強の馬鹿で脳筋で俺達の最高の仲間で……俺の一番の親友だ。兄弟(一毅)

「そうか……そうだよな……兄弟(キンジ)

 

一毅は腕に力を込める……少し体が浮く……それを見てキンジも力を込めた……

 

「レキ!ライカァ!」

『っ!』

 

一毅は二人をみる……

 

「俺のこと……好きか?」

 

一毅の問いに二人は笑いながら愚問と言う。答えは決まっている。今更なんだと言うのだ。変わるはずもない。確定事項とも言える答えだ。

 

『大好きです!』

 

それを聞いて更に体をあげる……

 

「皆ぁ!一言だけ頼む!」

『?』

 

キンジの言葉に皆は首をかしげた。

 

「頑張れって……言ってくれ……そしたら頑張るから」

 

キンジが言うと皆が笑った。

 

『《頑張れ》《負けるな》《勝つって信じてる》《応援してます》《この程度ではないでしょう!》《まだ行けるでござるよ》《まだいけますよ》《立ってください》二人とも!』

 

あれ?っと全員で顔を見合わせた……ここに来ても面白いほどバラバラだ……だが……それでこそ皆だ。だからこそ力がわいてくる。

 

「なあキンジ……ここは俺の死に場所じゃあねえよなぁ……」

「当たり前だろうが…………ここが地獄じゃあるめぇし……死ぬかよ」

「なら……生きようぜ……」

「それも当たり前だ……二人で勝って……皆で帰るぞ!!!!!!!!!」

「おう!!!!!!!!!」

 

一毅とキンジは立ち上がる……そして一毅は刀を拾って二刀流となる。

 

「そうだ……これで終わりじゃないよな、お前と俺は同類だ!まだ戦えるよなぁ!」

 

そう呂布が吠える……すると一毅はフッと笑って呂布を見た。

 

「確かに俺とお前は似ている……だけど……やっぱ違う……」

「なに?」

 

呂布の驚愕を他所に一毅は刀を上にあげ……ゆっくりおろす……

 

人間(じんかん)……五十年(ごじゅうねん)……」

 

余りにも……場違いなほど美しい敦盛だった……元々武芸者の嗜みであり武の稽古から発達のだから一毅が踊る敦盛は一流も一流……超一流の美しさだ。だが何故踊れるのか?いや、踊り方なんぞ一毅は知らない、ただ体が自然と動き口も自然と動く。

 

 

 

呂布と自分は同じだとおもった……戦いが大好きで血を求め強さでしか自分を表現できない……

 

下天(げてん)(うち)をくらぶれば……」

 

だけど桐生一毅は呂布とは違う……それでも一毅には仲間がいる。自分の勝利を信じてくれる。例え自分がなんだろうと自分を愛してくれて……親友と呼ぶ友がいて……自分は果報者だ……だからお前とは違うんだ……

 

夢幻(ゆめまぼろし)の……」

 

だから戦おう……自分は血を求め戦いを求める……だがそれでもそんな自分の欲や功名心……名声等よりも大切なものを見つけたものは……自分の力を越える……無欲のようになりその実誰よりも欲深いのだが真っ直ぐな物になる。

呂布のように自分しか見ない者にはたどり着くことはない領域の力を使うことができる。

 

たった一人の女の子のために二刀とこの力を振るった最初の桐生がいた……主君を守るために愛する我が子を主君に頼んで渡し己は全身に矢を受け戦った桐生が桐生と名乗るよりも遥か昔の一毅の先祖もいた……桐生は……大切なものを見つけたときに強くなる……友愛・恋愛・家族愛……多くの愛を受けて与えて生きる一族である。

 

そして……遂に……一毅の深奥に置かれていた力が解放された……

 

(ごと)くなり」

 

一毅の体から溢れ出すヒート……だがその色は今までの純白や蒼、紅とは違う。一毅の体に感じる力も違う。

 

その色は緋色……大切なものを見つけ……それを守ろうと誓い……想った桐生が使うことができる最強のヒートにして最高のヒート……その名も極めし者のオーラ(クライマックスヒート)……

 

「決着をつけようぜ……呂布」

 

さっきとは明らかに違う一毅の雰囲気…… それにたいして呂布は困惑した……

 

自分とはそれでも違う……何をいっているのか呂布には理解できない。

 

「気になるならよ……(これ)で語ろうぜ……」

 

 

 

 

 

 

 

「立ったか……遠山」

「ああ……一毅がたった……皆が応援してくれた……だからまだ戦うよ……」

 

キンジの体からまた深紅のオーラ(レッドヒート)がでる……先程とは比べ物にならない……更にキンジの眼も更に加速する。

 

「俺はバスカービルのリーダーだ……頭が負けられるわけ無いだろう……」

 

そう言って腰を落とす。今度は違うと孫は理解した。一毅が完全に覚醒したことでキンジはもう一毅に意識を割く必要はなく更にこの二人は片方が進化するともう片方も追従するように強くなる。

 

何処まで行っても親友なのだ。

 

「なら今度こそ終わらせる……」

「散らせるもんなら散らせてみな……」

 

 

 

 

 

 

 

こうして……最後の戦いの最期の幕が上がった……




次回予告

本当の意味での力とは何かを学んだ一毅は覚醒、更にキンジもフル稼働。体調は最悪だが精神は最高潮の二人の戦いに終止符が打たれる。

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