「………………はぁ」
キンジはため息をつく。
現在キンジはテグスのような物を海と言うか藍幇城のオープンテラスみたいなところから垂らしていた。
一応魚も釣れるらしいがこうやって考えるのはこれからどうするべきかである。
昨夜の宴会では結果的に先手を捕られた。いわばあれは懐柔策だろう。いい気分にさせて此方に対して好印象を持たせてきた。
例えその前に襲撃を受けたとしても人間は心理的に嬉しいことをされたり気分が高揚することをされると判断力が鈍り敵との距離を間違えることがある。
しかし静幻は何を考えているのだろうか……態々自分の敵地を晒すようなことをして……例え自分達のところに引き込むにせよ昨夜の宴会は歓迎し過ぎ感を持たずにはいられない。
「隣宜しいですか?」
「っ!」
すると、静幻が隣に来てテグスを垂らし始めた。
「いやはや今日は魚が釣りにくい日ですよ?」
「別に釣りたい訳じゃないんだがな」
キンジが愛想なく答えると静幻の眼が細まる。
「私が何を考えているか……でしょう?」
「……お前はエスパーか」
「コレくらいは簡単に
恐らく……シャーロックと同じく相手の感情……動き……動向を推理できるタイプなのだろう。厄介だな……
「そう警戒しないでください。私は貴方と話したかっただけですから」
「…………なんだよ」
キンジは静幻を見る。
「ええ、私は皆様を見たとき何て面白いチーム何だろうと思いました」
「……はぁ?」
キンジは首をかしげる。
「人間は稀に強く人を引き付けるものがいます。一般的にそれはカリスマ性と言われていますがその才能はどんなに磨こうとしても磨くことが出来ない物です。謂わば天然物が一部の例外を除き殆どです。」
キンジはだまって聞く。
「ですがカリスマ性を持つもの同士は往々として仲良くなれません。何故なら他人を自らの色に変えていくことがカリスマ性でありカリスマ性を持つものは他の色を嫌う」
静幻は語っていく。
「例えば桐生 一毅さん……彼も強いカリスマ性を持っています。男であればその強さに……何があろうと曲がらず砕けず消え去らぬその出で立ちに敵であっても羨望し、憧れていき、その背中に惚れてしまう……女であればその強さと性格ゆえに見せる漢の風格に無意識に惹かれていく……そして【華】があるその行動は敵を蹴散らし道を作りその道を多くの人間がついていく……圧倒的な武力を持って他の者を引き連れていく【武王】の才……三国志で言うと曹操 孟徳のような男です」
「…………」
キンジにも心当たりがあった。一毅は基本的に戦い終われば敵味方関係ないと言うやつで宍戸といい吉岡といいあいつは戦ったあとに敵を味方に変えていくことが多い。
一毅に言わせれば自分もそうらしいのだが一毅も大概そうだと思う。目立たないのは相手のリーダー格の相手をすることが少ないのが原因だろう。もし一毅がもっとリーダー格の相手と戦っていたら恐らく一毅に味方した組織は多いだろう。
それでも何だかんだで味方を増やしていっているところは一毅の才能なのかもしれない。
「対して間宮 あかりさん……彼女は一毅さんとは比べるのも痴がましい程に武力は低い方でしょう。無論……武偵としてであり殺し合いとなった場合は未だ未知数の部分がありますがそれでも桐生一毅さんと貴方から比べればまだまだ低い……だがそれ故に一挙一足が人を惹き付ける……命を賭してでも守ろうと思わせる……敵ですら友達になろうとする姿勢は危なげであり同時に長にとって必要な心でもある……正に徳を持って人を率いる【徳王】の素質……三国志で言うと劉備 玄徳のような人ですね」
「そうかもな……」
「因みに彼女って周りに女性が多いでしょう?女人望と言って女性を惹き付けるフェロモンみたいなものを持っているんですよ。人工的に持たせられる例外のひとつで彼女のような天然物には勝てません。ですが女にしか効きませんからそう言う意味では谷田 辰正という男はイレギュラーですね」
あの百合空間製造機の秘密はそこにあったのかとキンジは思った。
通りで周りには女ばっかり集まる訳だ。
しかし二人ともそうやって見ると普通じゃないことが良く分かる……だが、
「ですが貴方が一番の異質ですよ。遠山 キンジさん」
まるで心を読まれたような言われ方にキンジは眉を寄せた。
しかし静幻は顔色ひとつ変えずに話を続ける。
「あなたは不思議だ。説明したようにこの二人は特に人を率いると言う点に置いて武を使うか純粋なカリスマ性を使うかの差はありますが、どちらも一角の組織で相応の位を持って長をしていても何ら不思議じゃない。寧ろそうじゃないのが可笑しい……だが、貴方はその二人と交流を持っている。そして桐生一毅さんに至っては貴方をリーダーと呼ぶ……普通じゃないんですよ……貴方たちが深く付き合い更に仲間と呼び会うのはね……」
「………………」
キンジはだまって聞く。
「ですが生で会って分かりました。貴方は武力は桐生一毅には及ばない……カリスマ性では間宮あかりに及ばない……だが貴方は総合力ではあの二人に勝ってる……武もカリスマもバランスよく持った貴方の力は相乗効果を生み出している。更に幾らカリスマ性を持っていたとしてもそれを受け止める器がなくてはいけない。そして貴方の器は二人を上回ってる……そうして貴方は異質のチームを作り出してしまった……反発し合うものを纏め上げ、他者を受け入れ慈しみ包み込んでいく…………【仁王】の素質によってね……差し詰め……孫権 仲謀といった感じですね」
するとキンジは首を横に振る。
「そんな大逸れたもんじゃねぇよ俺は……何時だって色んな奴に助けられてばかりだ」
「そう言うところがですよ」
「?」
静幻の言葉にキンジは首をかしげる。
「貴方は確かに一人で出来ることは小さい。ですが同時にそれをできる人間が周りにいる。自分にはないものを無意識にか意識的にかはその時に寄りますがそれを理解し、他人にそれを願うことができる。他人を信じて託すことができるし、することができる状況です。貴方は並外れて
キンジはそう言われて頭を掻く……そう言われて嫌な気もしないものだ。それに確かに仲間に恵まれていると言う自覚くらいはある。
「そこでなんですけどね……」
静幻はキンジの方に体を向けると頭を垂れた。
「我ら香港藍幇を率いてはもらえませんか?」
「……は?」
キンジは一瞬自分の耳が悪くなったのかと思った。
「今でしたらココ達をあげますし」
「いやそれで吊られねぇよ」
「アリアさんたちも一緒でいいですよ?」
「いやだから……なんで俺なんだよ」
「言ったでしょう?巡り合わせが良いからです。それに……私ももう長くない」
「え?」
静幻はキンジの顔を見る。
「肺をやりましてね……保ってもあと一年……私の予測では一年半が限界でしょう」
そのまま静幻は続ける。
「今、上海藍幇の力が急激に延びている。上海藍幇は日本で言うヤクザみたいな組織でしてね。香港藍幇も乗っ取られれば多々では済まないでしょう。無論ルゥ君や他の皆も含め実力はある。だが私が居なくなれば率いるものがいない……そこで出会ったのが貴方です。類稀な巡り合わせの力……敵を味方にしてしまうカリスマ性……巨大な敵を打ちのめす武力……貴方は恐らく……世界で最強の才能の持ち主ではないでしょう。ですが……世界で最も厄介な才能も持ち主です」
そう言って更に頭を下げてきた。
「私は香港藍幇が大好きでしてね……残したいんですよ……自分が去ったあとにも……私はここで育ちました……そしてたくさんの人間と巡りあいました……消えてほしくないんですよ……」
何処か縋るような口調……キンジは一瞬息を飲んだ。
この男の中には覚悟がある。例えここでどんなに頭を下げてでも未来にこの香港藍幇を残したいと言う強い思い……泥臭くても格好悪くても……自分の夢のために……
だが同時に……諦めてるんだ……自分の死と言う運命に……
「まあここで答えを出せといっても無理でしょう。この話はまたということで……あ、そうそう」
静幻が小箱をキンジに渡す。
「アリアさんの殻金です」
「っ!」
キンジは慌てて開けると確かにその中にはあった……
「さて、私は用事がありますからいきますね。では」
そう言って静幻は去っていった。
「…………器……ね」
どんどん勝手に自分はすごいやつ扱いにされていく……勝手に評価が上がっていく……そんなつもりはないと言うのに……だ。
「何してんだ?」
すると、寝転がったキンジの顔を覗き混んできた人物……先程話題に出た一人、一毅だ。
「少し考えごとでな……ってかあんなに昨日飲んでなんともないのか?」
「全然?爽やかな朝だぜ」
化け物かこいつは……とキンジはため息をつく。
「お前はいいな。悩みごととか無さそうで」
「いやいや、俺だってあるぞ?」
「例えば?」
「そりゃあ……ええと……」
悩むなよそこで……
「あ、悩みがないことで悩んでる!」
「羨ましい限りだ」
キンジはそう言って立ち上がる。
「なあ……俺とアリアの関係って何だろうな」
「は?」
「いや、お前に聞いてみたかったんだけどさ……中々二人になれなかったから」
先程の静幻との会話を記憶の隅に追いやるため敢えて別の話題を出す。
「うーん……パートナーで……同居人で……ご主人様と奴隷で……」
一毅に出されていくとずっこけそうだった。
「まあお前の好きな人?」
「っ!」
キンジはビックリ仰天し海に落ち掛け一毅が慌てて掴んだ。
「な、なに言ってんだお前!」
「違うのか?」
「ちが……」
うと言おうとしてキンジはその前に一つの答えが出てきた。
(そうか……だから悲しかったんだ……)
アリアは海外慣れしてて自分が慣れてないのが嫌だった……微妙な関係でいるのが嫌だった……パートナーと言われるのが嫌だった……同居人で終わってるのが嫌だった……主人と奴隷なのが嫌だった…………何でか今まではっきりしなかったけど今のではっきりした……
(俺は……アリアのことが好きだったのか……)
遠い存在に感じるからこそ悲しかった……届きそうで届かないのが悔しかった……その内自分の声の届かないところに行くのが嫌だった……
これが恋をすると言うことなのか……とキンジは内心呟く。
「おーい……」
「はっ!」
一毅に叩かれてキンジは正気に戻る。
「どったん?」
「いや少し自覚がでたと言うか……」
キンジがシドロモドロしていると……
「何してんの?」
「ユアン!?」
キンジに声をかけてきたのは迷っていたときにお世話になったユアンだ。
「なんでここに……」
「お前と知り合いだってバレてさ……」
それを見て疑問符を飛ばすのは一毅だが……ポンッと手を叩く。
「キンジがこっちで落とした女か」
『違う!』
二人が叫んだ。
「ってそんなことをいってる場合じゃない。来いよ」
ユアンがこいこいをする。
「猴さんが呼んでるんだ」
『っ!』
二人が表情を引き締めた。
「連れてきました」
ユアンに連れられやって来たのは地下だ……そして呼ぶとパズルの本で遊んでいた猴が顔をあげた。
だがしかし短くて露出が激しい名古屋武偵女子学校の制服……そんな格好でゴロゴロしていたため非常にあられもない格好だったためキンジと一毅は視線を逸らした。
「待ってました。遠山、桐生」
礼儀正しく正座した猴は二人を見る。
「今は……猴なんだな?」
「あい」
一毅は猴を見た。
「しかしキンジから多重人格と聞いてはいたが違いすぎるな……しっかし猴だったり孫だったり忙しいなお前も」
「孫でいるのは心身ともに負担をかけますから……もう戦えますがもう少し休みをいれれば完璧です。それまでは待機を命じられています」
大方猴が完全になったところで踏み込んだ交渉をするのだろう。
「昨日の戦いは聞きました。孫は恐らくその時は遊んでいました」
「遊んでた?」
「あい……間違いなく次は孫は本気で殺りに来ます」
確かにキンジもそれは分かっていた。昨日の戦いは前哨戦と言うだけあって確かに遊んでいた節があった。
すると猴は衝撃の言葉を口に出す。
「ですから……私を殺してください」
『っ!』
一毅とキンジは驚愕するがそれをよそに猴は続けた。
「闘いの中でとなれば藍幇も文句は言えないでしょう。それが私を救う……」
優しげで……とても見た目からは想像がつかない言葉だった……そこに、
「わかった殺してやる」
『誰だ!』
後ろを振り替えるとヒラヒラの改造制服をその身に纏った理子が銃を抜いていた。
「おい理子やめろ!」
「全くキンジはロリに甘いなぁ……お前だって見ただろ?レーザー攻撃……昨日は一毅が斬ってくれたがもしお前だけの時にやられたらどうすんだ?」
そう言って理子は猴に近づく。
「んで?あのレーザーって弱点ないの?」
「ありません。レーザー……いえ、皆様には【如意棒】と言った方が分かりやすいですね。これは相手を視界に入れただけで射抜く事が出来る最強の矛で唯一桐生の刀は例外ですが全て貫きますし溶かします」
「なあ、なんで俺の刀だけは貫けないんだ?」
それは昨日からの一毅の疑問だった。あの時は邪魔できればと思い無意識に出したがまさか斬り飛ばすとは思わなかった。
「あれは昔星伽と言う巫女が桐生の家に伝わる最上級クラスの大業物の刀を使い作り出した対色金用の刀なのです。三本の刀は色金が産み出す
何かを言い掛けて止めたがそれより、
『星伽……?』
「あい、そちらにもいるはずです。その末裔が……そしてその巫女はもっているはずです。イロカネアヤメを……」
確か白雪が持っている刀がそうだったはずだ。
「イロカネアヤメは桐生の刀と違い制御棒みたいなものです。それを使えば私を孫から戻したりその逆を行ったりすることができます」
「制御棒?」
「あい、星伽は古来より緋緋色金を研究して動かしてきました。そして私はその成果です」
「まさかお前……」
キンジの呟きに猴はうなずく。
「私の胸には外科的に緋緋色金を埋め込まれている……そう、私は不完全な緋緋神です……」
キンジは絶句する。将来アリアもなる可能性があると言われた緋緋神……それが目の前にいる……
そう言えばイロカネアヤメは……【色金殺め】とも書ける……もしかすれば自分達の知らぬところで様々な出来事があったのかもしれない。
「戦いが始まったら恐らく私は孫にされます。ですが星伽であればもう一度猴にすることができるはずです。そこで桐生と遠山は私を殺してください。私は生命力が高いですが桐生の刀は色金適応者に対して猛毒を塗った刀身のようになります。私に対して斬撃を叩き込めば瞬時に絶命させられるでしょう」
一毅とキンジは声がでない。
頭の中には武偵法9条とか色々めぐっているが処理しきれない。
「この話は一度預けます。心の準備を必要ですから……でも信じてますよ?」
二人は歯を噛み締めることしかできなかった……
『………………はぁ』
猴から話された日の夜……あの後理子と別れ一毅とキンジはない知恵を絞って考えたが結局何も決まらないままだった。
「どうするよ」
「どうしようもねぇよ……」
このままでは猴がいったように殺すしかなくなってしまう。
「しかしお前の刀が緋緋神殺しの刀だったとは驚きだぜ」
「しかも星伽ってことはうちの先祖って白雪の先祖と知り合いだったってことか?」
「恐らくな……」
そうやって考えると自分達は本当に何も知らない……と言うか知らされてない。
「ただの凄まじく良い刀かと思いきやこれだもんなぁ……頭の用量越えるぜ」
だが緋緋神のオンオフを切り替える……つまり緋緋神操るための物が白雪のイロカネアヤメ……そうやって考えた場合一毅のは正反対の武器だ。
そして緋緋神は恋戦いを好む神……そして自分は性的興奮……ある意味相手を意識すると言う点においては恋心にも近い感情で発動するヒステリアモードの持ち主……
そして極めつけに緋緋色金適応者……アリアがいる……
(偶然……なのだろうか……俺たちが集まってると言うのは……)
一毅とキンジは東京武偵高校に入ったのは本当に偶々だと思いたい……だが良く考えてみればなぜ白雪は武偵高校にいたのだろう……星伽は特別な用事がない限り社から出ることもできないはずだ。
それがなぜ東京なんて言う遠い学校への入学が許されたのだろうか……
そして何故イ・ウーは日本の東京を中心に活動したのだろう……その性でアリアが東京武偵高校に編入してイ・ウー探しをすることになったのだ……
(まるで……誰かの意思によって一ヶ所に集められたみたいだ……)
キンジは内心冷や汗を垂らした。
「なんだキンジ、名案が思い付いたか?」
「やっぱり如意棒を使わせずに倒す……これしかないな」
「そうか……」
二人には最初から殺す選択肢を選ぶ気はない。
「ま、俺には呂布もいるしなぁ……援護出来ないぞ?」
「期待してねぇよ。こっちも気合いいれていくさ」
二人は笑う。する放送が入った。
《全員今すぐ大広間に集合ネ》
すごく嫌な予感するが……行くしかない。
「行くぞ」
キンジと一毅は立ち上がって歩き出す。幸い着くとすでに皆は集合していた。
「んで?ココ、何のようだ?」
書状みたいな物を持ったココにキンジが聞く。すると、書状を広げていった。
「上海藍幇の命令ね。【遠山キンジは武大校位を与え、3000万人民元給与として与える。更にココ達を正妻とし、中国語を覚えるまで教師もつけること】……あ、もちろん女性ね」
正妻として……の下りでアリアと白雪がR18指定の人相になったが今はそっとしておこう。
「更に、【チームバスカービル、及びその後輩たちにも相応の位を与え給与を払う。後も遠山キンジの部下として動くこと……】分かったネ?」
全員がうなずく……いや、一人わかってないものがいた。
「全く分からん」
一毅の言葉に全員ずっこけた。
「言い回しが長い上に難しい言葉使っていて意味わかんねぇよ!」
「つまり破格の待遇で迎えてあげるからこっちに大人しく下れってことだバカ!」
キンジは噛み砕いて説明してやって頭を抱えた。
「まあだいたいそんなとこネ。これ断ったらただのバカ……そんな馬鹿なら戦役のルールに則って倒すだけね」
ようは従わねば殺すってやつだろう。
「んで?静幻は?お前の上司だろう?」
「邪魔だったからふん縛っておいたね。なぁに、キンチの奥さんになればココの位も上がって静幻は下ね」
そしてココはキンジに手を伸ばす。
「これが最後の通告でプロポーズね……キンチ、こっちに来て一緒にトップになるね」
キンジはそれを聞いて目をつむる。決して後ろのレキ以外のバスカービルの女子と陽菜の目が怖かったからじゃない。断じて違う。
「……上海は人選をしくじったな」
キンジが出したのは手じゃない。ベレッタだ。
「お前じゃダメだ……静幻だったら良かったがな」
出した答えはNO……掛かってくるなら来いと意思を表示する……あれだけの地位と金を見せられても揺らがないのはカッコいい……が、
「お前……男色家だったのか?」
ココの後ろで控えていた呂布の絞り出した呟きのキンジはずっこけた……だが、他の皆もそう思ったらしく、
「き、キンジあんたそういうやつだったわけ?」
アリアだけじゃない。一年たちまでズザザ!っと距離をとった。
「違う!断じて違う!俺は交渉相手が静幻だったらよかったと言っただけだ!」
キンジは全力で否定した。
「とにかくお前ら……気を付けぇ!!!!!!」
『っ!』
蘭豹仕込みの発生で意識をリセットさせた。いつまでもこれでは話が進まない。
「とにかくだ、金と地位さえ見せれば何でも叶うと思うなよココ。少なくとも《巧言令色少なし仁》って言うだろうが。そんなもんもらうより平和な日常の方が俺は欲しいんでね」
リーダーが完全にやる気を見せたことで一毅たちも武器を構える。
「そうか……まあしょうがないネ。半分くらいはそうなる気がしたよ」
そう言って四人のココたちが二人ずつ半分に別れる。
「なら勝負ネ……」
「ああ、負けたらそっちに下ってやるから安心しろ」
キンジがそういうとココが笑う。
「雑魚は使わない。勝負は……昨日の続きで良いネ……決着をつけると良い」
そう言ってココたちは階段を上がっていく。
「キンチ、孫は上ね。頑張ってくるよ」
そう言い残して上へと消える……
「よし……行くぞ!」
キンジがそういうと全員がそれぞれの相手へと走り出す。
「キンジ!捕まって!」
「っ!」
ホバースカートを身に付けたアリアはキンジを引っ張ってこれから激しくなるであろう激戦区予定地を抜けていく。
「来い桐生……俺とお前の戦いは周りに迷惑がかかるからな」
「上等だ!」
一毅と呂布も上がっていく。
決戦の火蓋が切って落とされた瞬間であった……