緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍達への歓迎会

『………………』

 

今キンジたちは船に乗っていた……何故かと言われると、諸葛 静幻に誘われたから……としか言えない。

 

「そんなに怖い顔をされなくても大丈夫ですよ。私は丸腰ですし見ての通りこんなヒョロヒョロの優男ですから」

 

そうだとしても油断はできない……あんな襲撃をかまして来た連中の中でも一際怪しいのがこの男だ。何かあるように感じる。

 

「それに言ったじゃないですか。私は皆さんを藍幇城に案内するだけですからね」

 

そう、突然現れたこの男がにっこり笑って藍幇城まで案内すると言ってきたのだ。

 

無論それだけなら信じず着いてはいかないが元々これは皆さんを試すための戦いで悪意はない(十分迷惑ではあったが)とか色々言われて説き伏せられる形で乗船していた。

口八丁とはこう言う奴の事を言うのだろう。

とは言え彼もロケットランチャーをぶっぱなすのは想定外であったらしくそれを言ったときは苦笑いした。

 

「で?態々試した理由は?」

「色々ありますよ?これから戦う人間の事をよく知りたいとか……師団(ディーン)のアジア方面の最強戦力を知っておきたいとか……後は諸事情がありましてね」

「最強?」

 

キンジが眉を寄せた。

 

「ええ、現在の戦役は日本を中心としたアジア方面は師団(ディーン)が優勢です。どんな形であれその形状を作り出したのは皆さんでしょう?ですから眷族(クレナダ)の中でも遠山キンジとその仲間たちはかなり危険人物認定です。ぶっちゃけ命狙ってる組織も多いです。ほら、出る杭は打たれるって言葉が日本にはあるでしょう?」

「ちょっとキンジ先輩のせいで私たちまで危険人物認定されてますよ!」

「何で俺のせいなんだよ!」

 

あかりに文句を言われキンジは吠えた。

 

「だってキンジ先輩が人間卒業技ばっかりするからでしょ!ねぇたつま……さ……」

 

いつもの流れで辰正に話題を降ろうとしたあかりは辰正の顔を見て頬が赤くなっていく……辰正も同じ感じだ。

 

前回の頬っぺたにチューは二人には少々衝撃的だったらしい……

 

(ニヤニヤ)

 

それを見て理子や他の面子はニヤニヤしている……なんともはや初々しいではないか……あいや、二人ほど違うやつがいた。

 

一人は無論志乃だ。

取り敢えずは引き離したもののなんと言っても志乃である……白雪二世と言っても遜色ない彼女が怒りの矛を納める訳がない。

 

(殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺!!!!!!!)

 

(ゾクゥ!)

 

辰正は背筋が寒くなった。なんか自分は呪い殺されて日本に帰れないかもしれない。

 

そしてもう一人はこの船に乗ってからずっとボーッとしている一毅だ。

 

(同じ……か)

 

呂布に言われた言葉が反芻されていく。

 

確かになぜ自分はここにいるのだろう……何故戦っているのだろう……何故剣を振るうのだろう……何故か……自分には思い返してみると何もないと思い知らされる。我ながら空っぽで嫌になる。

 

もしかしたら何も考えずただ闘いのなかにいる方がお似合いなのだろうか……

 

「一毅さん?」

「…………ん?」

 

風に吹かれながらボーッとしてたらレキが来た。

 

「どうかしましたか?」

「あ、いや……ちょっとな」

「……一毅さんは一毅さんですからね?」

「え?」

「私もライカさんもロキも一毅さんがどんな風に考えて何を感じて何を決めようと信じてます」

「…………ありがとな」

 

一毅はフッと笑うと柄でもないと頭をかいた。そして、

 

「さあ着きました。欢迎光临(いらっしゃいませ)藍幇城へ」

 

遂に敵地への到着である。しかし全面金ピかで眼が痛い……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では皆さんのお荷物はお運びしておきます」

 

静幻はそう言うと中で待機していた女中達に指示した。

その指示を聞いた女中たちは皆の荷物を受け取り運んでいく。

 

「さて、ささやかながら食事の準備もあります。こちらへ」

 

そう言えば良い匂いがする。さっきまで大暴れしたのだ。腹も減っている。

 

なので静幻についていくとでっかい広間みたいな所に来た。

 

「しっかしここまで金か……」

 

ここに来るまでも思ったがこの城は随分金やら赤やらがふんだんに使われていて眼に痛い。

 

「中国では赤は健康運、金は金運を司っているからね」

「へぇ」

 

白雪先生のご教授に一毅は感心しつつ女中(さっきの人とは違う)が引いた椅子に座る。

 

全員が座るとタイミングよく藍幇の構成員たち……先程戦った面子が入って最後にココたちがコソコソ入ってきた。

 

「よう」

 

一毅が声を掛けると四人のうち三人のココがビクゥ!と飛び上がり眼鏡を掛けたココの後ろに隠れた。

 

「今日は叩かねぇよ」

 

一毅は肩を竦めていると食事が運ばれてきた。

 

「さぁ、毒は入ってませんからどうぞ」

 

静幻はそう言うと勧めてくる。

 

「あ、ピーマンも今回は入れないように作らせたので桐生 一毅殿も安心を」

「ぶっ!」

 

一毅は吹いた。何故自分が嫌いな食い物を知っているのだこいつは……

 

「貂蘭が教えてくれましてね」

「アタシはそこの狙撃手から聞いたけど?」

「レキィ!」

 

一毅はレキを揺らして抗議する。

 

「良いじゃないですか?今回は私やライカさんのお皿にこっそり移さなくて良いんですから」

「意外とカズッチって子供みたいな部分あるよねぇ」

「そう言えばカズちゃんって病院も嫌いだったよね」

「注射と苦い薬が嫌いだったからな。寝てれば病気は治るとか言ってじっとしているんだけど大概余計に酷くするんだ」

 

一毅は恥ずかしさで穴に入りたかった。

 

「も、もういいだろ!食おうぜ!」

 

そう言って一毅はガフガフ食い出した。

 

毒が入ってるかとかすでに考えていない。まあ一毅は食ってみねばわかるまいの人間なので冷静だったとしても結果はあまり変わらない気がする。

 

「どうぞ」

 

そう言って給仕の女中さんはキンジに飲み物を出してきた。

 

「これって……酒か?」

「中国には規制がないので大丈夫ですよ」

 

そう言われ煽る。鼻にツーンと来る独特の風味……悪くはないが余り好んで飲もうとは思わない。だが、

 

「ジュースか?」

 

と一毅はグビグビと飲んで次々おかわりを頼むが物足りなくなったらしく瓢箪から直接飲み出した。

 

グビグビグビグビグビグビグビグビとすごい速度で酒が消費されていく……見てて気持ち悪くなってきた。

 

「強いんだな」

 

呂布も酒には強いらしく張り合って飲んでいくが一毅の場合水を飲んでいるようだ。

 

しかも同時に、

 

「すいません。白米もください」

「は、はい」

 

と、どんぶり飯をテーブルに置かれた豪華絢爛な食材をオカズに消費していく。

ヒートを使うと腹が減るのはよく知っているが今回は相当腹が減ってるらしい……しかし本当に酒も飲んでいく。

 

(しかも全然酔わねぇ……)

 

顔が若干赤くなっている気がするがそれだけだ。口調もしっかりしているし目付きも大丈夫そうだ……そこに、

 

「きいてくらはいよきんひへんぱい」

「あ?」

 

揺さぶられて見てみると辰正が顔を真っ赤にしてやってきた。

 

「おれらっれあきゃりほゃんともうひょっほかんけいふふへはいほほほって」

「何言ってんのかわかんねぇよ!」

 

多分「俺だってあかりちゃんともうちょっと関係進めたいと思ってんですよ」と言っているんだろうが呂律が凄いことに成ってる。こいつは絡み酒のタイプなんだろう。

 

「遠山 キンジ!」

「は、はい!?」

 

飛び上がりそうになったが呼んだのはあかりだ。

 

「今日こそ言わせてもらいますけどね!あなたちょっとばかり女グセ悪いんですよ!もう節操とかその辺を追求すると一毅先輩も説教することになるんで置いときますけどもう少し関係をはっきりさせたら以下がですか?いつまでもうだうだとなあなあの関係続けて見てるこっちはイライラするんですよ!」

「あ、はい……すいません……」

 

なぜ自分は後輩の女の子に膝詰め説教受けているんだろう……とキンジは思っていると、

 

「ほらほらあかりちゃーん……怒んないで飲んだ飲んだ~」

 

救世主――もとい、志乃はあかりの杯にお酒を注いでいく。

 

あかりはそれを一気に飲み干すと、

 

「おいキンジ」

「は、はい」

 

あかりも酒癖は相当悪い……志乃は少しハイになるくらいでマシだがあかりのは純粋に悪い……辰正と同じく絡み酒といった感じだが普段鬱屈していることを相手に向かって滔々と説教するタイプ……酒は本性をさらすと言うが本当らしい。

 

「あかりちゃん行こー」

「あ、まだ話終わってない……」

 

キンジはあかりを強引につれてってくれた志乃に心から感謝した。

すると、

 

「師匠……」

「ひ、陽菜?」

 

陽菜の登場である。

 

さてここまで一年の酒癖は悪いのが続いている……陽菜はどうだろう……オチ的に良いとは思えない。

 

「師匠には何時も何時もお世話をかけております……故に尊敬しておりまして……」

「?」

 

もしかして……もしかしなくても陽菜は酒癖がまだ良い方?比較的志乃寄り?とキンジは思う。自分の戦妹(アミカ)は酒癖が悪くてマジで良かった……

 

「師匠~」

「いい!」

 

と思ったときもありました。キンジの幸福感を打ちのめすが如く陽菜はキンジに抱き付くと耳元で囁く……息があたって凄く変な気分であると言うかヒス的な血流が……

 

「師匠がアリア殿にご執心なのはわかってるでござる……ですが……かといって諦める必要はないでござる……」

「ひ、陽菜?」

「婚前行為等父上と母上に怒られるかもしれんでござるが……この際どうでも良いでござる」

「い、いやぁ、陽菜……親御さんの言い付けは守った方がいいぞ、うん」

 

物凄く危険な雰囲気なのは分かった……

 

「ま、待て風魔……お前が今酔っぱらってる……だからこうしよう……日本に帰ってから……な?」

 

実際陽菜が何を望んでいるのか全く分からないがとにかくこの場を回避できればそれで良しだ。

 

「……分かったでござる……ですがその代わり……」

「その代わりなんだむぐ!」

 

口を陽菜の口で塞がれた……

 

「これでいいでござ……るぅ」

 

コトンとキンジに凭れてそのまま陽菜は寝てしまった……

 

(将来俺はこいつと酒だけは飲まん……)

 

毎回これでは陽菜の親御さんにこっちまで頭を下げなければならない事態になってしまう。

 

キンジはそう本能的に悟っていた。

 

「旨いのかぁコレ……」

 

チビチビライカは酒を飲む。一年の中では唯一酒が普通に飲めたのはライカだけだったりする。

 

(そう言えばバスカービルのやつら……いで!)

「何すんだアリア!」

 

キンジは手に噛り着いてきたアリアを引っぺがす。

 

「ホントなんであんたは少し眼を離すとあっちこっちの女とチュッチュッチュッチュ……ホントにモテるわねぇ……ヒック!」

「?」

 

何でだろう……今回のアリアは怖くないぞ?

 

「なんでぇ……キンジはぁ……ふぇぇえええ!」

「っ!」

 

何と泣き出した……こいつは泣き上戸か!普段とのギャップ凄すぎだ……

 

「おいアリアぁ……何どさくさに紛れてキンちゃんに甘えてんだ……ああ?」

「し、白雪さん?」

 

酒瓶片手に顔を真っ赤にしてやってきたのは白雪である。

 

「つうかお前は前々から思ってたんだけどキンちゃんに話しかけるときだけあんなニコニコ面して……3歩後ろを歩く奥ゆかしさ持たんかい!」

「白雪がいじめるぅううう!!!!!」

 

白雪は……恐らく一番酒癖が悪い。し白雪のファンが見たら卒倒しそうな位危ない雰囲気だ。だが初めて飲んだ感じじゃない。恐らく星伽にあった酒をチョロまかしたことがあるんだろう。

 

「おー!良いぞやれやれー」

 

この中でマトモなのは少し何時もよりテンションが上がってる理子と……

 

「………………」

 

いつの間にかスヤスヤ寝ているレキ……

 

「やっぱあんまり美味しくないよなぁ……」

 

ずっと舐めるように飲んでいるライカ……あとは、

 

「お代わり」

 

白飯と遂には酒を大壺から直接飲み出し呂布や他の藍幇の構成員達を酔い潰させた一毅だけである……と言うかなんでこいつはあんだけ飲んでも顔が少し赤くなるだけで全然平気なのだろうか……

 

(さっきのは撤回だ……陽菜だけじゃねぇ……俺は将来こいつらと酒だけは絶対に飲まん……)

 

キンジは心にそう強く誓ったのであった……


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