緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍達の前哨戦 前半戦

「キキキキンジ!あんた何成ってるのよ!」

「あああのアマ――じゃなくてなんなのあの子!そんな羨ましい――じゃなくてけしからん!」

「おぉーっとキー君流石の理子りんドン引きですよぉー!」

「な、なんと言うことでござる……」

 

アリアはゼロコンマ一秒でキレるとキンジに掴み掛かろうとするし他の面子も大騒ぎである……がそこはヒステリアキンジ。慌てず騒がす冷静に対処する。

 

「おっと皆。今は敵に集中した方がいい。話は後でしよう」

「……そうね!キッチリ話し合いましょう!」

「ああ……」

 

キンジはそっとアリアに甘い声で囁いた。

 

「その時は今度こそ綺麗な夜景を見ながらにしよう」

「な、何よ今さら」

 

アリアはプイッとそっぽを向いたがキンジは続けた。

 

「悪かったと思ってるよアリア。だけどこれだけはわかってほしい。俺にとってアリアは誰よりも一番大切な女性だよ」

「っ!」

 

ボン!とアリアは頬を赤らめた。

 

「ふ、ふん……馬鹿キンジ」

 

アリアはニヘニヘしながら言った。

 

次に白雪、理子、陽菜と纏めてこっそりささやいた……するとなんと言うことでしょう。あっという間にデレデレニヤニヤ空間の出来上がりである。三分クッキングより早い。

 

というかキンジは何をやっているのだろうか……絶対そのうち後ろから刺されるだろう。

 

(最近アリア達がヒロインじゃなくてチョロインになってきたような……)

 

一毅は嘆息しながらキンジを見る。

 

「で?どうする?リーダー」

「決まってるさ」

 

キンジは銃を抜く。

 

「せっかくこんな派手な歓迎会を開いてくれるんだ。答えなきゃ失礼に当たるよ」

「だな」

 

一毅がうなずくと全員は其々構えをとった。

 

「そう言えばこの総力戦でココはきていないのか?」

「あ~、アイツ等は一毅(お前)を見るとケツが痛くなるんだってよ」

「あはは……」

 

一毅は夏侯僉の言葉に苦笑いした。もしかしなくてもトラウマになってる?

 

「じゃ……開幕と行きましょうか……」

 

そう言って貂蘭が狙撃銃を構える。

 

あれはVSS狙撃銃……ソビエト連邦が作った軍用狙撃銃だ。

 

「いくわよ」

「っ!」

 

それに反応したのはレキ。レキもドラグノフ狙撃銃を構えるとほぼ同時に銃弾が放たれた。

 

『っ!』

 

放たれた銃弾はまっすぐ飛んでいき互いの銃弾がぶつかり合うとその弾きあったレキの銃弾は呂布に……貂蘭の銃弾は一毅を狙う。

 

だが、

 

「ん?」

「ふむ」

 

ヒョイっと首を傾けて二人は当たり前のように躱した……

 

「狙撃手対決一矢目は引き分けか?」

 

呂布の言葉に一毅は肩だけ竦める。

 

「じゃあ次は……俺たちがやってみるかぁ!」

 

呂布の檄が一毅を狙う。

 

「ウォオオ!!!!!」

 

それを一毅は腰から殺神(さつがみ)を抜いてぶつけ合う……その際に生じた衝撃は辺りに風を撒き散らした。

 

「流石だな……」

「まあな」

 

ギン!っと言う音と共に火花を散らした刃を返しつつ更に斬撃を放ってぶつけ合う……

 

2合3合と打ち合っていき辺りのガラスまでビリビリ震えていく。文字通り並外れた腕力によって行われる【力比べ】は周りの皆もその轟音に咄嗟に眼を細める。

 

「ウォオオオオ!!!!!」

「ラァアアアア!!!!!」

最後の武器を打ち付けあって距離をとる。

 

「流石だな……面白い」

「そうかよ……」

 

二人は腰を落とす。そして他の皆もそろそろ頃合いとばかりに其々が相対すべき相手を見た。

 

「さあ……」

「ああ、いくよ!」

 

キンジは猴と……

 

「こんにちは、神崎 アリアさん……貴女は私と戦いましょう」

「誰でもいいわよ」

 

アリアは姜煌と……

 

「ま、前は桐生とやったけど今回は無理だし……そこの巫女さん……やろうぜ」

「いいよ……そっちが剣士なのはカズちゃんから聞いてるからね」

 

白雪は夏侯僉と……

 

「となると俺は峰 理子だな……」

「くふふ~、良いよ?カモン」

 

理子は周岑と……

 

「第2ラウンドといこうか」

「ええ、行きましょう」

 

レキはもちろん貂蘭と……

 

「この間の借りは返すよ」

「やってみな」

 

あかりは趙伽と……

 

「先日の敗北の借り……ここでお返しいたします」

「きなよ」

 

志乃は甘餓と……

 

「今度は負けねぇからな」

「そうか……」

 

ライカは関羅と……

 

「いくよ」

「ええ」

 

辰正は楽刄と……

 

「今回は負けるつもりはないでござる」

「…………」

 

陽菜は夏候黽と……

 

「戦闘開始だ!」

『おお!』

 

其々の戦いを開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一番先に武器をぶつけたのは志乃だった。

 

【飛燕返し】という技を使う以上やはり速い。

純粋な剣速は白雪や一毅には及ばすとも十分に高い力量を感じさせる。

 

「シュ!」

 

それを甘餓のカリスティックが受け止める。

 

フィリピン発祥のこの武術は両手に棒を持って戦いその様は一毅の二刀流に似ている部分もあり非常に実戦的な武術として知られ国によっては警察の習得武術の一つにもなっている。

 

『っ!』

 

キィン!っと金属がぶつかり合うと刃を返し甘餓を志乃の刃が狙う。

 

「うぉ!」

 

それを甘餓は体を大きく逸らして避けるとカリスティックの棒を振るう。

 

「くっ!」

 

ギリギリで返しながら志乃はハンドガード付の刀を振り上げた。

 

「ちっ!」

 

甘餓は舌打ちを一つしてバックステップで躱すと距離をとって息を吐く。

 

「いやいやまさかこんな短期間でそこまで実力あげるかよ」

「戦姉が素晴らしい人ですからね」

 

志乃は体制を低くすると再度走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ!」

「……っ!」

 

次に飛び出したのは陽菜だ。やはり忍者の末裔として陽菜は身軽だ。

ドジさえ踏まなければ十分にAランクを狙える少女は手裏剣を夏候黽に向けて投てきする。

 

「邪魔」

 

それを夏候黽は自分の手につけた鉤爪で弾く……だがそこに陽菜は詰め寄ると忍者刀を抜刀し振り下ろす。

 

「っ!」

 

夏候黽は鉤爪で受け止めながら爪先に着けた小刀の刃を出して顎に向けて蹴りあげる。

 

「うっ」

 

陽菜は首を傾けてギリギリ躱すと更に忍者刀を横に凪ぐ。

 

「っ!」

 

それを伏せて避けると夏候黽は爪を突き上げる。

 

「くぅ!」

 

それを横に飛んで躱すと陽菜と夏候黽は睨み会う。

 

「…………」

「さすがに一筋縄ではいかんでござるな……」

 

それでも陽菜は夏候黽から視線を外さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人目は理子だ。

 

恐らくこの面子の中ではキンジのように空を蹴りの風圧で飛ぶとかみたいなみたいなことはできないが総合的な身体能力であればキンジや一毅には大きく劣るが身軽さに限定したなら理子はトップクラスだろう。

それでも先手を志乃や陽菜に譲ったのは相手の戦闘能力を生で見るのは初めてだからだ。

 

キンジから聞いてはいるもののやはり生で見てみないことには本当のところはわからない。

 

別にキンジが話を誇張してるかどうかとか疑っているわけではなく自分の目、耳、鼻、肌で感じてみないと不安感を覚えてしまうのは泥棒の血筋故か……まぁそれは置いとくとして理子は髪を操りながら周岑の様子見だ……

 

周岑は高い身体能力を持つ。ククリ刀を両手に持ち理子を的確に追い詰めていく。

だが理子もそれをヒラリヒラリと躱して銃撃……

 

「ぐっ!」

 

顔を周岑は顰めるがそれでも構わずククリ刀を振り上げる。

 

「あぶな!」

 

クルリと軽々とバック転でその斬撃を全て躱しながら髪で持ったナイフを振るう。

 

「面倒だな……」

「面倒だね……」

 

二人はため息をつく……すると理子は見た。

 

「あれは……くふふ」

(いいもの見つけた~)

 

理子は不気味な笑みを浮かべたが周岑は気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん!」

「やぁ!」

 

夏侯僉と白雪は武器を切り結ぶ。

 

鞘と剣の二つを使う斬打一体の構えは白雪の正統派剣術とは真逆に位置する喧嘩殺法。故に決まった手と言うものはなく白雪は若干苦戦を強いられた。

 

「オラァ!」

「くっ!」

 

夏侯僉の剛撃に白雪は後ろに吹っ飛ぶ。元々腕力などの力で押す剛の剣よりテクニックなどを用いた柔の剣が白雪本来の戦い方である。

 

無論どちらが劣るとか剣の質事態では分からない。だが剣先の読めない我流の剣は白雪を防御一辺に追い込んでいく。だが、

 

「おらぁ!」

「――っ!」

 

大きく振りかぶった脇を一閃……夏侯僉は驚愕する。

 

「やるなぁおい」

「身近にいるんだよ……そう言う喧嘩剣術の使い手がね……まあなんか最近剣術で言う術の部分までなんか磨かれてきたけどさ」

 

夏侯僉は誰かと聞かずとも一毅のことをいっているのはすぐにわかった。

 

「はは……ありゃあ反則だよなぁ?そう思わないか?」

「否定はしないかな。普段おおよそ鍛えてるようには見えないけど気付くと勝手に強くなっていくのは羨ましい部分もあるけど……そうとも言い切れない部分だよね」

 

白雪の言葉には夏侯僉は首をかしげるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァアアアア!!!!!」

「でぇい!」

 

あかりは趙伽の槍のように鋭い貫手を避けながらナイフを振るう。

 

「おっと!」

 

それを躱しながら趙伽の情け容赦ない爪先蹴りがあかりのコメカミを狙う。

 

「つ!」

 

それを後ろに飛んで躱すと腰からマイクロUZIを抜いて撃つ……が残念なことにあまり射撃の成績がお世辞にも良いとは言えないあかりの銃撃回避しやすくその隙間を縫うように間合いを積めてきた。

 

「しゅ!」

「くぅ!」

 

首の根本の辺りを狙った貫手……それをあかりは伏せて躱し至近距離で銃口を押し付けてマイクロUZIを撃った……これで今度こそ外さずに当てた……

 

「いっつ……」

 

当たり前のように防弾処理をされた服の腹を擦りながら趙伽はあかりを見た。

 

「前よりやっぱ強くなったよなぁ」

「当たり前でしょ!」

 

あかりはまた銃を向けた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウォオオオオ!!!!!」

「ふん!!!!!」

 

辰正と楽刄の戦いは乱打戦となった……楽刄のメリケンサックの拳を辰正は全て捌きっていく……少しでも遅れれば辰正は楽刄の文字通り鉄拳を喰らうことになるがそこは受け流しを得意と言うだけはあって上手く捌いていく。

 

「ウォラァア!」

 

そしてついに攻守が逆転する。

 

捌かれた楽刄は体勢を崩す。そこに辰正は拳撃叩き込みそのまま腕関節を極める。

 

「捌き腕取りの極み!!!!!」

「ぐ!」

 

ミキィ……っと言う音がして完全に腕関節を極めた辰正はそのまま合気道の要領で腕を掴み直して投げ飛ばす。

 

「ちぃ!」

 

咄嗟に楽刄は受け身をとるがそれでも腕が痛む。

 

「おぉ!」

「はぁ!」

 

辰正の振りかぶった拳と楽刄のメリケンサックの拳が交差する……

 

『ぐぅ……!』

 

二人は体勢を崩す。だがそれでも相手から視線は外さずに睨み会う。

 

「なんだ今回はずいぶんやるじゃん」

「決めたんだ。もう迷わないって……あの子と一緒に戦えるようにもう迷わないって……誓ったんだ……」

 

この肉体に……心に……大切な少女に……そして何よりも、

 

「俺の魂に……」

 

そう言って辰正は疾走した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ!」

「はぁ!」

 

関羅の一撃をライカは躱しながらハイキック……それを避けながら関羅の青龍偃月刀を振り下ろすがライカは横に飛ぶと関羅の脇腹を穿つ。

 

「二天一流 拳技!捌き打ち!!!!!」

「軽い!」

 

そこから横凪ぎの一撃……それをライカは大きくバックステップをして離れて躱した。

 

「確かに動きは前より洗礼されている……だがやはり軽いな」

「…………」

 

関羅はおよそ180㎝と少し……どう考えても体重もある……確かにライカの普通の打撃では効かない……ならば、

 

「ふぅ……」

 

するとライカは両腕をブラリとさせて構えを解いた。

 

「ん?」

 

ライカの行動に関羅は一瞬降参したのかと思ったが次の瞬間なにかが違うとわかった。

可笑しい……なにがって……変なのだ。普通人間はただ立っているだけでも何処かに力を入れている。そう言う風になっている……だがライカはその形を取っていない。全身の力を抜いている。あくまでもイメージであるが全身が液状化していくように見えるくらいだ。

 

そして次の瞬間、

 

「二天一流 拳技……」

 

関羅の懐にライカが飛び込む……関羅は反応すらできなかった……

 

「煉獄掌」

 

力も体重もないライカ……だがその二つを埋め合わせる亜音速……には一歩及ばないがそれであっても常人を遥かに凌駕する一撃をライカは放った……

 

「雷」

 

【二天一流 拳技 煉獄掌・雷】……何者であっても反応できない速度を持った煉獄掌……という意味でライカが名付けた煉獄掌の亜種……

 

「ぐっ」

 

関羅は後方に大きく吹っ飛ばされたがそれでもたつ。

 

「今のは……脱力か」

「そうだ」

 

力を抜く……中国では太極拳に見られる構えだ。

 

何かを攻撃する際人間は体を硬直させる……だがその前に力を脱力させると……脱力→硬直の振り幅が大きければ大きいほどその際に生じる速度は大きくなる……とまあ論理は単純だ。

 

だがそれを行うためにいままで多くの格闘家が挑み……そして実を結ばなかった者が多くいた。

無論実を結んだ者をもいたが成功者よりも失敗者の方が圧倒的に多かった。

 

そもそも脱力などというのは口で言うほど簡単じゃない。生きているだけで何処かに力を入れて入るし意識しても無意識の部分の力みが存在してしまう。

 

だがライカは金井との戦いの際に本当に全身に力が入らないということを身を持って学んだ。そしてその経験が脱力の境地へと進めた。

 

こればかりは一毅もできない。一毅のように筋肉量が多いと抜かなきゃならない力も自然と多くなるし抜く際にかかる時間も多い。

その点ライカは一毅に比べてしなやかな筋肉を持っているしそう言う意味では脱力の極意はライカにとってもっとも相性が良く、しかもライカの威力不足を補う上でもっとも必要な技術だった。

 

「ちっ……何人もの武闘家がそれを夢見て挫折していった極意を使うやつがいたとはな……師匠の教えか?」

「ああ……初めて使ったときは意味がわからなかったけど聞いたら教えてくれた。それからずっと練習して出来るようになったのもつい最近だ。でもこれで互角だろ?」

「前にいったことを訂正して詫びるよ。お前の師匠は確か桐生一毅だったな……大した男だ」

「ああ、そうだろ?」

 

ライカはそう言うと再度力を抜いた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………………』

 

他の皆が戦う中アリアと姜煌はにらみ合いが続いた。

 

アリアの性格上一番に行っても可笑しくないが直感ですぐに突っ込むべきじゃないと考えたのだ。

 

「お会いになれて光栄ですよ。神崎 ホームズ アリア殿」

「そうかしら?」

「ええ、私の師匠である諸葛静幻様は貴方の曾祖父であるシャーロック・ホームズ様と昔戦ったことがあるようでしてね。まあ、負けましたがね」

「へぇ」

 

確か諸葛静幻はあの糸目でヒョロヒョロの男だったはずだ。まあ見た目で強さの判断はつかないが曾祖父と勝ちの戦いとは……一毅とキンジですら大苦戦した上に相手も病気で弱っていたはずだ。

 

「まあそんなことで弟子という立場上シャーロック・ホームズの後継者と呼ばれる貴方には少々勝手に敵意があると言いますかね。良い迷惑でしょうけど付き合っていただけませんか?」

「ま、他に戦うやつがいないし良いわよ」

「じゃあいきますよ?」

 

そう言って足を前後に開き腰を落とすと手を開き片手をアリアに向ける。

 

(徒手空拳ね……なら!)

 

アリアはガバメントを抜くと向ける。

 

「風穴ぁ!」

 

バリバリと弾丸を撃ちまくる。

 

「おぉ!」

 

だが姜煌はそれを全て避けながらアリアとの間合いを詰める。

 

「っ!」

「その程度の弾幕は策の内ですよ」

 

諸葛静幻はなにもその武力だけでシャーロック・ホームズと戦った訳じゃない。頭脳と言う点においてもけた外れに高い水準を持っていた。

 

そしてその武と知能は未だ及ばずとも確実に……そして確かに姜煌へと受け継がれていた。

 

そして諸葛静幻の後継者……姜煌の拳がアリアを狙う。

 

「くぅ!」

 

それをバックステップで避けると銃を乱射するがそれも読まれて避けられる。

 

「は!」

「んな!」

 

咄嗟に銃を撃ったが何かで弾かれた……いや、見えていたが、

 

「鞭?」

「はい、チェーンウィップとも言う奴です」

 

姜煌はそう言いながら腕を振ると片腕ずつ鞭が袖から一本ずつ出てきて地面を叩き袖に戻っていく。その一連動作は普通は見えない。だがアリアの直感がギリギリで作用してくれたお陰で助かった。

 

しかし一見すれば無手の技を使うように見えてそこに漬け込んだ暗器の鞭の不意討ち……そこはやはり武人と言うよりは……

 

「策士って奴?」

「まあ静幻様ほど人間やめる領域にはまだ遠いんですよ」

 

姜煌は何処か胡散臭い笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………っ!」

「おっと!」

 

レキと貂蘭の狙撃戦は他のものと比べやはり派手さはない……と言うわけはなかった。

「よっと!」

「っ!」

 

次々と撃って弾きあいながらその跳弾の弾幕の中を二人は駆け抜け銃剣を突き出す。

 

「こういうのは柄でもないしキャラでもないんですがね」

「私もこういうの苦手なのよねぇ……ほら、私動くと胸が揺れていたいのよね」

「っ!」

「ちょっと!胸を集中的に狙わないでよ!」

「削ってあげますから」

 

そんなおふざけもあるが次々発射される弾丸を全て銃弾撃ち(ビリヤード)で弾いて逆に撃ち返していく。

 

「そう言えば呂布さんでしたっけ?やっぱり血筋的に恋人だったりするんですか?」

「まさか、あんな戦闘狂で頭脳がスカスカの脳味噌みたいな脳筋馬鹿をなんだって恋人にすんのよ」

「成程、片想いですか」

「ち・が・う!」

 

再度発砲……だがレキが弾く。

 

「て言うかあんた男の趣味悪いんじゃない?あんなマフィアのドンみたいな顔でしかも脳味噌がスカスカ処か空っぽの超脳筋馬鹿を恋人にって」

「なにいってるんですか?あの人は確かに学力が低いですし未だに注射が嫌いで病院には梃子でもいきませんしピーマンが嫌いで食卓に出すとこっそり私やライカさん達の皿に移しているような人ですけどいざって言うときは最高に格好良い上に普段抜けてるって面倒見てあげなきゃって母性本能うずくじゃないですか」

「あんたダメ亭主に引っ掛かるタイプね」

「一毅さん以外にはうずきませんよ」

 

そう言って今度はレキが発砲する。

 

「全く……ホンと面倒な相手だわ」

「貴女こそ本当に面倒ですよ」

 

二人の鷹のような視線が交差する。

 

「さて……どうしますかね……ん?」

 

そこにクラクションが鳴り響いた……

 

(モールス信号?これは……成程)

 

レキは貂蘭を見る。

 

「すいませんがここで退散のようです」

「は?」

「いえ、ここで全部手の内さらすわけにいきませんからね。こちらとしても……皆さんまだまだ奥の手を隠し持っていますから……と言うわけで……」

 

レキは後ろに向かって走り出すと跳ぶ……するとそこにバスが突っ込んできた。

 

「こちら~理子運転手でーす!行き先はわかりませーん!」

「良いから出しなさいよ!」

「はーい」

 

理子はレキが乗車したのを見て走り出す。

 

「居ない人は居ない?いたら返事し

て」

「キンジ先輩と一毅先輩がいません」

 

辰正が言うと理子は笑う。

 

「あの二人戦ってる内に移動しちゃったみたいだからね。拾っていこう」

 

理子は更に車を加速した……




一毅とキンジは後半戦にて書きます。思ったより長かった……前後編に分ける予定は無かったんですがね……

ちなみにライカの技はある漫画のを引用させてもらいました。元ネタがわかった人は漫画の趣味が私と合う人かもしれません。

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