緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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金の迷子

「待て孫!!!!!」

「ピィイイイイ!!!!!」

 

孫は走る……とにかく走る……足で足りなければ手も使って走る……パンツ見えてるっつうの!

 

「逃げんな!」

 

こんな人通りが多いところでは発砲も出来ないのでキンジも走る。ヒスって無くてもキンジは蹴りを使うため足腰は強い。その為相当な速度が出ているが孫も速い。

 

「ひっ!」

 

孫は壁を蹴ってかけ上がる。猿だなホントに……

仕方ないのでキンジも路地にはいって同じ方向を走る。

 

「いつまでも逃げてんじゃねぇよ!」

 

キンジは悪態を付きながら階段を4段位飛ばして上がっていく。その先には孫が出てきた。

 

「ひゃあ!!!!!」

 

キンジが先回りしていたのは想像外だったのか孫が飛び上がる。

 

「ピィイアアアアア!!!!!」

 

孫は慌てて階段をかけ上がる……が、

 

「あ……」

 

上がりきった所で転んだ……

 

「やっと追い付いたぞ……孫」

「……」

 

キンジはベレッタを突きつけながら孫に近づく。

 

「動くなよ……変な動きをした瞬間撃つ……」

「………」

 

コツンと後頭部に銃口を押し付けた。

 

「ゆっくりとこっちを向け……だが変なことは……え?」

「……ふぇ……」

 

振り返った孫は瞳にたっぷりと涙をためている……

 

「お、おい」

「ふぇ……」

 

今にも目から涙は決壊しそうだ……いや、する!

 

「ビィイイイイエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエン!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

今の状況を説明しよう……

 

まず孫は見た目十歳が良いところの幼女である。そんな女の子の頭に銃口を押し付ける十七才の日本人……どっちが悪者だかわからない。いや、完全にキンジが悪者である。

 

「お、おい泣くな――いで!」

 

いきなり頭を叩かれた。振り替えると坊さんがいて銃を仕舞えとジェスチャーしてきた。

 

(よく見りゃここ寺じゃねぇか……)

 

そりゃ怒られると銃をしまうと今度はバナナを一房渡された……

 

(泣かせたんだから泣き止ませろと?)

 

キンジはまだヒックヒックとシャックリをしている孫をチラ見しながらバナナを受けとる。

しかしこいつはホントに孫か?と疑問が出てきた。これではどうみても見た目通りの子供である。

 

「おい孫」

「……?」

「バナナ食うか?」

「あい」

 

返事速いなおい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまりお前は……孫じゃなくて猴だと?」

「あい。私は確かに孫でもありますが遠山が思ってるのとは違うのです」

 

話を聞いてみるとなんと孫は謂わば人格が入れ替わった猴だと言うのだ。自分と同じ人格変化による戦闘能力の変化とは……しかし猴の人格の方はずいぶん臆病らしい……そんなことを思っていると五本目のバナナを毟り取って剥いてアムアム食べだした。よく食うな……何かアリアが桃饅食うみたいだ。

 

「ですが貴方の弟さんを殺したのは事実です……」

「あいつは死んでないぞ」

「……え?」

 

猴はポカンとキンジを見た。

 

「あいつは人間辞めてるからな。死んでない」

「そう……でしたか」

 

猴は安心したようは顔だ。それからバナナをまた食べ出す。なんと言うか愛らしいと言うか小動物的な可愛さがあるな。

 

「だけど何であんなところにいたんだ?」

「ココにラーメン買ってこいと……」

 

ようはパシリか……キンジもアリアに桃饅を買ってこいとよくパシられるだけに他人事には思えない。

 

「それは……悪かったな」

「いえ」

 

アムアムとバナナを頬張りながら猴は首を横に振った。

 

「それでこれからどうするのですか?」

「そうだな……まずお互いの所に戻るか」

「え?」

「何か色々あるっぽいし一旦自分のところで考えた方がいいだろ」

「……わかりました」

 

猴はバナナを食べ終わると立ち上がる。

 

「それでは遠山……また会いましょう」

「ああ、それと……」

 

キンジは猴にお金を渡す。

 

「これは……?」

「俺のせいでラーメン台無しにしたからな……これで買い直せ」

「良いのですか?」

「ああ……」

 

キンジが頷くと猴は何度も頭を下げながら走り去っていった。

 

「さてと……」

 

今ので有り金全部渡したのは失敗だったかなぁと思いつつも最低限の金しかもっていない状態では全部渡すしかなかった……だが、

 

「ここどこだ?」

 

改めて落ち着いてみてみると全くわからない。猴を追って無茶苦茶に走ったから他の皆も居ない。

 

「ま、なら電話するか」

 

キンジは携帯を出す。すると既に大量の不在着信が入っていた。全部一毅である。電話を掛けるとすぐに出た。

文明の利器様様だ。ビバ携帯。マジで神。現代人の必須ツールである。

 

【キンジ!】

「わりぃ……でも大丈夫だ」

【あっという間に切り離すんだもんな……探していたんだぞ?何処にいんだ?】

「ああ、何か(プツン)寺に……あれ?」

 

キンジが携帯を見ると……

 

「あ……充電なかったんだった……」

 

文明の利器の役立たず!っとキンジは携帯を地面に叩きつけそうになったが我慢する。

仕方ないホテルに帰れば金もあるしタクシーを使って……いや、キンジは中国語が話せないためタクシーも使えない。

 

「仕方ねぇな……」

 

とにかく歩き出そうと足を進め出したのであった……取り合えず前向いて歩けば良いことあるさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「腹へった……」

 

とまぁ楽観的に考えられたのは最初の一時間くらいだ。それから更に二時間ずっと迷って計三時間も彷徨って放浪して……昼食も食べていないため腹が減ってへたり込んでしまった……

 

「うぅ……」

 

もし迷っていなければ日も落ちた今頃はアリアと飯を食べていたはずだ。なのに今は空腹で目が回ってきた。

 

今頃皆はどうしてるだろうか……と言うか絶対アリア怒っているだろう……もしこの先何かあって帰れてもアリアに殺されるかもしれない。いやその前に空腹の中この寒空の下にいたらそれだけで今日自分は死ぬ。

 

(……何か綺麗な川が見えてきた……しかもなんか父さんが手を振ってる?)

 

段々キンジは寒いし腹が減ったで意識が遠くなっていく……もうだめだ。

 

「☆□○◎■▲▽」

(?)

 

なにか聞こえた気がした。

 

「もしかして日本人か?」

「…………」

「どちらにせよここで死ぬな。店に迷惑だ」

 

ゲシゲシ蹴られた……痛い。

 

「……た」

「は?」

 

キンジは残った力で声を絞り出した。

 

「腹へった……」

「…………」

 

声をかけてきた声からして女の子は盛大にずっこけた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハグハグハグハグ!!!!!ングングングング!!!!!!!!!!」

「相当腹が減っていたんだな……」

 

キンジは店の中でまかない食であるが念願の食べ物を食っていた。空腹が最高の調味料とはよくいったものである。

 

「だけど何で行き倒れていたんだよ」

「道に迷うし金もないしでさ」

「…………」

 

落ち着いてみるとつり目で若干きつめの顔立ちだが整った顔立ちの女の子だ。

 

「あ、私はユアン。あんたは?」

「キンジだ」

「キンジね……で?どこのホテルにいきたかったの?」

「OZONEって言うやつだ」

「随分また遠くまで来たわね」

 

そんなにか?とキンジは首をかしげる。

 

「向かうのは明日にした方がいいわね」

「そうか……」

 

するとそこに突然何かが割れる音が響いた。

 

「ん?」

「▽■◎◎○□☆○!!!!!」

「■●★▽↓◆■□!!!!!」

 

中国語で何が喚いている。酔って暴れているようだ。

 

「人の店で……」

 

ユアンは立つとその二人のもとにいく。

 

「□◆◆▽★▲○!!!!!」

 

ユアンが叫ぶと二人はユアンをにらむ。

 

「■□▲▽○★◆!!!!!!!!!!」

 

おおかた関係ない奴はスッ混んでろって言ったんだろう。何となくわかった。等と考えてる暇はなく片方が瓶を掴んで持ち上げた。

 

「っ!」

 

ユアンが硬直した。

 

「ちっ!」

 

キンジは舌打ちをしてから飛び出した。

 

「っ!」

 

男はそれを知らずにユアンの頭に目掛けて瓶を降り下ろす……が、ユアンの頭にぶつかる前に腕を捕まれた。

 

『っ!』

 

その場にいた客も含め全員が腕をつかんだキンジを見た。

 

「◆★○?」

「わりぃんだけど中国語はわからねぇんだよ!」

 

そう言ってキンジは瓶を奪うと逆に男の頭に瓶を炸裂させた。

 

『おぉ!』

 

その場がざわつく。

 

「ぎゅぎゃ……」

 

声も漏らしながらキンジに瓶で逆に殴られた男は白目を剥いて気絶した。

 

「■□◆★○!!!!」

 

多分もう片方は「なにしやがんだてめぇ!」って言っているだろう。何となくニュアンスでわかる。

 

「おいユアン。怪我はないか?」

 

取り合えずもう片方は無視だ。まずはユアンの心配をする。

 

「あ、ああ」

 

ユアンは頷く。

 

「さて……もう片方はどうするかな……」

 

空腹のところを助けてくれた恩人に手を出そうとしたんだ。相応の報いを受けさせる。

 

「来いよ……」

 

クイッと指で挑発するようにコイコイとやると相手は案の定キレた。

 

「○■◆▽!!!!!」

 

何か叫びながらこっちに来る。それをキンジは横に跳んで躱すと蹴っ飛ばした。

 

「オォ!」

 

更によろけたところにハイキック、ミドルキック、ローキックと次々叩き込みクルリと反転すると後ろけりで顎を蹴りあげた。

 

「喧嘩を売るときは相手を良く見な……って言ってやってくれユアン」

「え、あ、ああ……□◆○■▲●★」

 

ユアンが通訳すると蹴りあげられた男が眉を吊り上げると飛び上がりキンジの腰に抱きつく。

 

「うぉ!」

 

そしてそのまま持ち上げると壁に向かって走り出す。

 

(ちっ!このまま叩きつける気か!)

 

キンジは肘を男に落とす。だが男は離さずそのままキンジを壁に向かって投げつけた。

 

(一か八かだが……!)

 

しかしキンジは空中で体勢を整え壁に両足を着ける。一瞬地面とキンジの体勢が平行になったところで壁を思いきり蹴って膝蹴りをお返しに叩き込んだ。

 

「シャア!」

『オォオオオ!!!!!!!!!!』

 

鮮やかなアクロバティック技に客も大興奮だ。

 

「おい、今回は見逃してやる」

 

キンジは膝蹴りを叩き込んで倒れていたやつの首襟を掴んで持ち上げると睨み付ける。

 

「だが今度酔った勢いで暴れてみろ……長江に沈めるぞ……ユアン通訳」

「いや……その必要はないよ」

 

ユアンは嘆息した。

 

「っ!」

 

何故なら完全に相手はビビっていたしキンジの口調で何となくニュアンスでどう言うことを言われてるかわかっていたからだ。

 

「なら消えろ」

 

キンジがそういうと男はまだ白目を剥いている男を抱えると走り出した。そして男たちが消えると……

 

『オォオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!』

 

拍手喝采と言うやつだった。

 

「なんだいったい……」

「キンジの動きで盛り上がってんだよ」

「マジかよ……」

 

あんなもん大したもんじゃない。ヒスっていれば空中でずっと蹴りつつけるなんて言う事も出来るのだ。壁に着地位大したもんじゃない。

 

「ってキンジ手が……」

「ん?ああ」

 

ガラスで切ったのか少し血が出ていた。舐めときゃ治るだろう。

 

「仕方ねぇな。こっち来いよ」

 

そう言ってユアンはキンジの手を引いて歩き出した。

 

王子先生和回来了吗?(王子さまとお帰りか?)

不是吃亏,(そんなんじゃない!)

「?」

 

頼むから日本語で話してくれ……分からんだろとキンジは首をかしげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これでよし」

「悪いな」

 

キンジはユアンに包帯を巻いてもらった手を見ながら礼を言う。

 

「元々アタシを助けるための傷なんだ。礼を言うのはこっちだよ」

「そうか?飯を食わせてもらった恩もあるしお会い子だろ」

「…………義理堅いんだな」

「家訓でね。金持ちからの奢りは忘れていい。だがそうじゃないやつからのは絶対に忘れるなってね」

「貧乏臭くて悪かったな」

「あ、いやそういう意味じゃなくてだな……」

 

キンジがオロオロするとユアンが笑った。

 

「冗談だよ。そうだキンジ、今夜ココに止まっていけよ」

「……へ?」

「どうせ明日まで何処かで夜を明かすんだろ?野宿は危険だしな」

 

うんそれがいいとユアンは頷くと掛け布団を渡してきた。

 

「いやあのな……?」

「じゃあシャワー浴びてくるからそこにいろ。覗くなよ」

「ぜってぇしねぇよ……いっで!」

「それはそれで失礼だ」

 

何か堅いものを投げられてキンジは鼻を抑えた……何なんだよ……

しかもなんか良い匂いしてきたしヒス的にすごく危険な場所だ……

 

そう言えば一毅は一年の時にレキが押し掛けてきてシャワーを浴びてるときに非常に居心地が悪かったと聞いたがすごくその気持ちがわかる。

 

「おいキンジ」

「えひゃい!」

 

取り合えず素数を数えてたら声をかけられて変な声を出してしまった。

 

「っ!」

 

しかも振り替えるとユアンはバスタオルを体に巻いただけ……ヒス的な血流が体を巡り始めた……非常に不味い。

 

「シャワー浴びたらどうだ?」

「あ、あい……」

 

猴みたいな返事の声を出してしまった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、何とかヒステリアモードになるのだけは回避しながら夜を明かしたキンジはユアンの手伝いのためあっちこっちを駆け回っていた。

 

一夜を明かさせてもらった礼のためにあっちこっちの店で皿を洗いごみを拾い荷物運びを手伝う。次から次へと片付けていき辺りの人間たちは称賛していた。

 

「すごかったなキンジ」

「ん?」

 

一通り終えるとキンジのところにユアンが来た。

 

「でもなんで他の店までやったんだ?アタシのところだけでも十分だろ?」

「ついでだ。他の店でも大変そうだったからな。見て見ぬふりは苦手なんだ」

 

そう言うとユアンが笑った。

 

「日本人にも色々いるんだな」

「そうか?」

「ああ……そう言えば最近有名なんだけど【エネイブル】と【オウリュウ】って言う日本人が来てるらしいんだけど知らないか?」

「いや?聞いたことないな」

「ふぅん」

 

そしてキンジは立ち上がる。

 

「じゃあそろそろ俺は行くわ」

「ああ……そう言えばキンジが待たせてるやつってどんなやつなんだ?」

「ああ~……ピンク色の髪でツインテールでチビで幼児体型でキレると2丁拳銃ぶっぱなして人をぶん投げるやつで……」

「……もしかして後ろにいるようなやつ?」

「え?」

 

キンジが振り替えるとその特徴に合致するアリア様がいた。

 

「そうそうこんなや……げぇ!」

 

キンジは飛び上がった。

 

「そう……へぇ?」

 

ビキビキと青筋が走っていく。

 

「あわわ……」

 

キンジは顔色が真っ青になっていく。

 

「悪かったわねぇ……チビで幼児体型でキレると2丁拳銃ぶっぱなす女で……ねぇ?キィイイイイイインジィイイイイイイイ!!!!!!!!!!」

 

ゴゴゴゴと効果音が付き添うなほど怒りの炎を撒き散らしアリアが怒声を発する。そして、

 

「風穴ァアアアアアアア!!!!!!!!!!大砲(キャノン)!!!!!!!!!!」

「ミギャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」

 

その後キンジの断末魔が辺り一体に響き渡った……

因みにそれを見たユアンは、

 

「あれが日本で言う鬼嫁って奴か……」

 

と呟いたのは別の話しである。


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