緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍と金の殴り込み

『はぁ~』

 

一毅とキンジはでかい門の前で手に息を吐き掛ける。

菊代から電話を受けて丁度二時間……日も落ちてるし雪まで降ってきた……

 

だが二人の体の中は全く冷えきってない。寧ろ燃えている。

 

「さてと……」

 

桜吹雪の刺繍がされた龍桜を風に揺らしたキンジは一毅に言う。

 

「今回の任務は望月の救出(セーブ)が第一だ……だから……邪魔するやつは全員ぶちのめす」

「いいねぇキンジ。単純明快……分かりやすくて良い」

 

そして若干ヒステリア・ベルゼの気配を感じさせるキンジは一毅に命令した。

 

「まずはこの門ぶっ壊せ」

「了解キンジ(リーダー)

 

一毅は背中の肉厚の巨大な大太刀、断神(たちがみ)を抜くとそのまま一気に振り下ろした……

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たぞ!」

 

門を叩き斬って入ると鏡高組の構成員のお出迎えだった……

 

「一気に行くぞ!一毅!!」

「おう!」

 

一毅は断神(たちがみ)を背中に仕舞うと腰から殺神(さつがみ)を抜く。

 

「どきやがれぇええええ!!!!!!」

 

相手も刀を出すが所詮は喧嘩殺法のヤクザだ。一毅相手では勝負にならない上に刀の格も違う。

次々と刀を折られて切り潰されていく……だが数は減らない。そこに、

 

「後ろだ一毅!」

「っ!」

 

後ろから飛びかかってきた。だが一毅は冷静にその一撃は横に躱すと腹に正拳突きを叩き込む……更に、

 

「オッシャア!」

 

相手が怯んだところにキンジが後ろ回し蹴りを叩き込んで吹っ飛ばした。

 

「がはっ!」

「てめぇ!」

 

続いてキンジの方に突っ込んできた……しかしそれに対して、

 

「キンジ背中借りるぞ!」

 

蹴りの後の態勢のままのキンジの背中を一毅は転がって越えるとその勢いを利用して切り飛ばした。

 

「ナイス一毅」

「お前もなキンジ」

 

互いのハイタッチひとつしてからそのまま中に入る……すると、

 

「オラァア!」

『っ!』

 

二人は横に飛んで躱すと不意打ちしてきた相手を見る。

 

「あいつ見たことあるぞ……確か井沢 レオンだ」

「ボクシングの選手だよな?」

 

一毅とキンジは軽く情報を擦り合わせていると、

 

「どりゃ!」

 

また後ろから来た。だが今度はキンジが後ろに足を振り上げる。そして、

 

「はぐっ!」

 

金的に蹴りを入れられた相手がそこを抑えて悶絶……更に、

 

「金的の極み!!」

 

キンジのオーバーヘッドキックで下がった頭の後頭部に蹴りを叩き込まれ倒れた。

 

「ちぃ!」

 

その時に井沢レオンも来たがそれは一毅が対応する。元がボクシングだけあって中々良いパンチを放つが一毅の敵ではない。首を横にそらして躱すと、

 

「二天一流 拳技!受け流し!!!!!」

 

一毅は相手の拳を受け流し腕を掴むと強烈な膝蹴りをレオンの腹に叩き込む……その衝撃に堪らず体を崩すがその前に一毅が後ろに回って掴み……そして、

 

「キンジ!」

「任せな!」

 

その隙をついてキンジは走り出し、一毅はレオンを持ち上げる……

 

『連携の極み!!!!!』

 

先ずキンジは飛び上がると飛び膝蹴りをレオンの顔面にキンジの膝がめり込む……そしてその衝撃を使い一毅はレオンをジャーマンスープレックスの要領で床に叩き付けて犬神家の一族にしてやると襖を蹴破って先に進む。

 

「ウォオオ!」

「ちっ!」

 

そこに突然刀が壁から生えて二人を狙ったがそれを転がって躱すと二人を囲むように襖を開けて出てきた。

 

「ちぇい!」

「くっ!」

 

一毅は殺神(さつがみ)で相手の刀を弾くと、

 

「ふん!」

 

胴を凪いで倒すと縦横無尽に切り結んで行く。

 

「くっ!」

 

キンジも相手の刀を素早きバタフライナイフを抜いて受けて蹴り飛ばしていく。だが、

 

「はぁ!」

「しまっ!」

 

強い一撃でナイフを打ち上げられた……しかしそこに、

 

「キンジ!使え!」

 

一毅が素早く殺神(さつがみ)をキンジに投げる。

 

「助かる!」

 

続けて足を狙ってきた相手の刀を飛んで躱すとキンジは殺神(さつがみ)をキャッチすると構える。

 

「ふん!」

「シャア!」

 

キンジは当たり前だが剣術の修練は行っていない。だが先祖が侍であったためか才能がないわけではないし何より周りにいるのが星伽候天流免許皆伝の白雪や高い剣才を持つ志乃に加え更に、一毅がいる。そんな皆には遠く及ばずともヤクザの喧嘩剣術相手ならば十分に渡り合える。

 

「オォ!」

「チィ!」

 

キンジは弾き返すと蹴っ飛ばして跳躍……空中で大きく振り上げるとそのまま落下力も味方につけてそのまま切り飛ばした……

 

「ざっとこんなもんか?」

「だな」

 

一毅に殺神(さつがみ)を返しながらキンジは同意する。

 

「なら進むぞ」

「おう」

 

キンジと一毅は走り出した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「望月!」

 

バン!っとキンジが奥の扉を蹴り開けるとそこは結構開けた部屋だった。そこには幹部と思われるインテリ系の男とホストみたいな雰囲気の男と菊代と縛られた望月がいた。

 

「おい、約束通り来たぞ。望月を離せ」

「そんなに焦んないでよ遠山……少し話くらい」

「菊代……」

 

キンジが睨むと菊代はギクッと体を強張らせた……本気でキンジに嫌われるのだけは嫌らしい。

 

「ふぅん……ここまで来るくらいだからやっぱり強そうだね」

「ああ、俺たちが二人掛かりでやっても負けるな」

 

するとホストみたいな雰囲気の男とインテリ系の男が口を開いた。

 

「お嬢、拳銃(チャカ)は?」

「持っていないよ?」

 

そうですかい……ホストみたいな雰囲気の男はそういった瞬間ガチャリと撃鉄を上げた音が響いた。

 

『え?』

 

菊代とキンジと一毅の三人は唖然とし望月も目を見開く。

 

「じゃああんたは後は用無しだ」

 

インテリ系の男が笑いながら菊代の頭に銃を押し付ける。

 

「おい……どういう冗談……」

「冗談じゃないんですよお嬢……あんたはよくやってくれた……でもヤクザ社会は今時あんたが言うような義理とか人情とか古くさい考え方じゃ先細りです。絞れるやつからはきっちり搾り取るし取れない奴でも搾り取る……そんな生き方じゃなければ駄目なんですよ」

 

ホストみたいな雰囲気の男はそう言ってからキンジと一毅を見る。

 

「あくまでもお前ら来させるための囮って奴だよ」

「何が目的なんだ?」

「藍幇の猴先生とルウ先生がそれぞれ君たちに会いたがっててね。知ってるかい?君たちそれぞれ10億……セットで連れていけばボーナスつきだ。つうわけで……武器は捨てな」

 

ホストみたいな雰囲気の男はナイフを出すと望月の頬をペチペチ叩く。

 

「今回は運がいいねぇ……おまけにこんな女の子も付けられるよ」

『……』

 

キンジと一毅は睨むが意味はない。仕方ないが武器を捨てようとした……だが、

 

【ったく……向こう見ずな兄とその友人を持つと弟は苦労するぜ】

【だからこそ楽しいんでしょ?】

『っ!』

 

次の瞬間ホストみたいな雰囲気の男とインテリ系の男が吹っ飛んだ。

 

「金三にかなめ!?」

「だからその呼び方止めろっつってんだろうがくそ兄貴!!!!!」

「やっほー。お兄ちゃんあるところに私あり……だよ?」

 

かなめが科学剣で望月を救出する。

 

「大丈夫か?」

「う、うん」

 

キンジの問いに望月はうなずく。すると、

 

「てめぇらやれ!」

 

ホストみたいな雰囲気の男が命令すると襖が開いてAK-47(アサルトライフル)がこちらに向けられた。

 

「やべ……どうするキンジ」

「こっちも今考えてる……」

「簡単だぜ兄貴……こうすんのさ!」

 

金三がそういった瞬間菊代の着物を時代劇でよく見る良いではないか~の要領で服を引ん剥いた。

 

「きゃ!」

「っ!」

 

ドクン!とキンジの体が脈を打った。

 

「良い模様だ……こいつぁ来るぜ」

 

同時に金三の体もドクン!と脈打つ……そうして二人の持つオーラが変わっていく。

 

「いけるか兄貴……」

「ああ……」

 

ヒステリアモードが二人になった瞬間銃弾が発射された……だがキンジにはすでに対策は思い付いている。おそらく金三も同じ手だ……名付けて、

 

銃弾返し(カタパルト)!!!!!」

 

螺旋(トルネード)の要領で相手の銃弾を180度跳ね返す……そして跳ね返った銃弾は別の銃弾に当たり連鎖撃ち(キャノン)のようになっていく……更に金三が、

 

綣局(コイル)!!!!!」

 

他の銃弾を次々と180度回転させて銃を破壊した。

 

「さらっと人間卒業してんなぁお前ら……素手で銃弾を弾くなよ」

「うっせぇ……さっさと出るぞ」

 

望月と菊代をつれて庭に飛び出すと隠れてたやつらが出てきた。

 

「おいおいまた随分出てきたなぁ……」

「まあ楽勝だぜ」

「だがこの二人をどうにかしないとね……」

 

するとキンジはなにか気づく。

 

「そうだ……今日は満点の星空だし星に願ってみるか」

「は?」

 

金三が唖然とした。

 

「どうか私にお恵みを……アリア様ってね?」

 

次の瞬間銃弾の雨が降り注ぐ。流星のように空から降ってきたアリアが空中で止まるとキンジを見た。

 

「何でわかったんだい?」

「さっきかなめから電話きたのよ」

 

キンジがかなめを見るとてへっと舌を出された。そんなことをされたら許さないわけにいかない。

 

「しかしなんだその機械」

「平賀さんにつくってもらったホバースカートよ。時間は短いけど空も飛べるわ」

「うわぉ……」

 

こりゃ追いかけられたときに海に飛び込んでも空から追撃喰らうなぁとキンジは苦笑いした。

 

「何やってんだ!やれぇ!」

『おぉ!……あれ?』

 

ヤクザが自分の懐にあったはずの武器を探す。

 

「もしかして~お探しものはこれですか?くふ!」

「理子!」

 

すっかりバラバラになった銃の山の上に足を組む理子がいる。

 

「なら素手でやれぇ!」

「キンちゃんに手を出すなぁあああああああああああああああ」

 

ガガガガガガガとM60をランボーのように乱射しながらキンジたちの前に着地したのは、

 

「白雪……」

「久し振りキンちゃん」

「くそ……死ね!」

 

インテリ系の男が銃を向けた……だがそれは別の銃弾がはじき飛ばした。

これは間違いなく……

 

「レキ」

 

一毅が口を開くと続け発射された狙撃弾が次々跳弾しながらやくざを倒す……この技はロキだろう。

 

「な、なんなんだよいったい……」

「もうだめだ!」

 

逃げようと門に殺到した……するとそこに突然煙が沸く……

 

「なんだこがはっ!」

「げほっ!ぐわっ!」

「なんぐぉ!」

 

煙に乗じて次々ヤクザが倒されていく。

 

「ちゃんとできたわね。あかり」

「はい!」

「大丈夫ですよね?先輩」

 

辰正の言葉に黙って一毅とキンジはうなずく。

 

「よぅっし……やってやろうぜ!」

 

一毅も刀を抜き直して構える。

 

「誰一人として逃がすな!この場で全員逮捕だ!」

 

キンジの号令と共に全員飛び出した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果として快勝だった。記す必要もなかった。まあこの面子で苦戦することはないだろう。

 

全員を縛り上げ転がしながら久々にあった面子で話す。

 

「レキとロキもこっちこいよ」

 

一毅が通信機で連絡をいれてると、

 

「それでこいつは織田信長って答えたんだぜ?」

「一毅先輩……日本人としてその歴史認識はどうなんですか?」

 

ライカに突っ込まれ一毅は頬を掻く。

 

「…………」

 

それを望月は呆然と見ていた……その視線にキンジは気づく。

 

「……これが本当の俺だ。望月」

「え?」

「君の嫌いな暴力の中で生きる人間だ。今まで黙っていてすまない」

「……ううん……何となく遠山くんって違うところにいる人間なんだなって言うのは少しわかってた。桐生くんもね」

「そうか」

 

そして今度は菊代を見た。

 

「しかしこれでもう鏡高組はダメだな」

「ヤクザ家業なんてそんなもんだよ」

 

フッと菊代が笑った。何か色々落ちた感じだ。プレッシャーとかあったんだろう。だがそこに……

 

「しねぇえええええええええ!!!!!」

『っ!』

 

ホストみたいな雰囲気の男がキンジに向けて銃を構える……

 

「遠山!!!!!」

 

菊代が両腕をキンジを庇う。

だがキンジは防弾制服だったし龍桜も着ている。本当は大丈夫だった……だが菊代はとっさだったため庇ってしまったのだろう。

そして銃弾が発射される。

 

(不味い……菊代のは防弾仕様じゃない……!)

 

だが今からでは今までの技では間に合わない。

皆も咄嗟の事で反応できてない……どうする?このままでは菊代は死ぬ……そんなことをさせるのか?ヒステリアモードの自分が……

 

(一か八かだ!!!!!)

 

するとパシッと言う音が当たりに響いた……

 

『…………へ?』

 

全員が唖然とした。というか顎が外れそうな位あんぐりした……一見菊代を抱き締めてるように見えるが違う……そんなんじゃない……

 

「流石にこのカイロは熱すぎるな……」

 

キンジはポイッと()()()()()()()()を捨てた。

 

『つ、遂にやったぁあああああああああ!!!!!』

 

全員がビックリ仰天である?いつかやりそうではあった……だが本当にやったのだ……銃弾キャッチ……

 

銃弾掴み(ゼロ)ってとこかな?」

「き、キー君まじ人間離れ人間……」

 

理子の言葉に全員がうなずく。

 

「ち、この!」

 

再度ホストみたいな雰囲気の男が銃を構えたが、

 

「こっちだ!」

「っ!」

 

一毅が間合いを詰める。

 

「オラァ!」

 

飛んでくる銃弾は全て刀で弾くと銃を切り飛ばし腹に渾身のパンチを打ち込んで気絶させる。

 

「今度こそ全部か?」

「だな」

 

キンジが来た。

 

「しかしなんでここにGⅢまで居んのよ」

 

アリアがもっともな発言をして来た。

 

「色々あってな。あとこいつはGⅢではなく金三だ」

「だからその呼び方止めッつってんだろうが!」

 

金三がキンジに飛び蹴りをした。

 

「あ、そうだ兄貴。さっきの銃弾キャッチもう一回やってくれよ、そしたら俺もやってみるからよ。交互でやろうぜ」

「絶対やだよ。そんな命懸けのキャッチボール」

 

キンジが断固拒否の構えだ。

 

「さて……どうするかねこれから……」

「俺は風呂入りてぇ……寒い」

「あ~……じゃあ皆でうちに来るか?すぐそこだし今回の報奨がわりに旨い和食が出るぞ」

 

そうキンジが言うと皆は賛成した。だが……

 

『っ!』

 

全員が無意識に鏡高組の屋根を見た……そこにいたのは……まだ捕まってるはずのココ……?更に、開幕の時にいた静幻というやつ……その隣に立つ幼げな面立ちの少年……だが一際目を引くのはもう一方の二人だ……

 

一人は十歳前後の小さな子供……だがその持つ雰囲気は……人間じゃない……その少女は……眠そうに目を擦る。

 

もう一人は広い肩幅……一毅と同程度の身長……肩に担ぐ檄が小さく見える……その男は……楽しそうに笑った。

 

 

「ルゥ君……一応言っておきますが今はダメですよ」

「別に良いだろう……俺が戦いたいのあいつだけだ」

 

一毅と視線が交差する……

 

「俺はルゥ ホァンツェン……桐生一毅……死合おうぜ……」

「っ!」

 

次の瞬間空へ飛び出したルゥが檄を一毅に降り下ろす。

 

「くっ!」

「一毅!」

「大丈夫だ!」

 

一毅は刀を2本抜いて二刀流になる……

 

「気をつけてくださいね……彼は強いですよ?何せ彼は三国志上一人の武では最強と言われた男の名を次ぐ男ですから……」

「なに?」

 

キンジが静幻を見る。

 

「ルゥ ホァンツェンは中国での呼び方です……日本で分かりやすく言うなら……呂 奉先……劉備、関羽、張飛の三人掛かりでも敵わずそこに曹操の軍勢も交えてようやく捕らえた最強の武将の名を継いだ男です」

「おいおい……マジかよ……」

 

すると通信が入る。

 

「レキ?」

【敵襲を受けています……気を付けてください】

「絶賛もう来てる……」

「ウルスの方にいかれたのは貂蘭という人です……貂蝉の子孫と言えばわかりますか?」

「……」

 

近くで剣撃の音がして遠くから発砲音……キンジはこの場をどうすれば良いか頭を動かした……




次で終わると思っていたが終わりませんでした。次回で今度こそ終わらせます。

そして新キャラ三名……これ以上は増えません。因みに貂蝉は史実では存在しないそうです。

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