緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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龍と金の平穏の終わり

「まさか遠山に妹がいたなんてね。驚いたわ」

「序でに弟もいるぞ」

「…………」

望月の家から退出した後……キンジとかなめはヤクザの車に乗っていた。目の前には武偵中学時代の同級生にしてクラスメイトだった鏡高 菊代がいる。

 

「それにしても偶然ね」

「面白い冗談だね」

 

菊代にキンジがそう返すとニヤっと笑う。

 

「やっぱりそっちの遠山は優しいね」

 

そんなやり取りをしているとかなめは更に頬を風船みたいに膨らませていく。まあフォローは後でするとして、

 

「で?どういう用件だい?」

「後少し待って」

 

そう言われたので待つ……すると五分ほどで車が止まった。

 

『?』

 

キンジとかなめが気になって外を見るとそこには巨大な中華料理屋が立っていた。キラキラとネオンで光らせていて金が掛かっている。

 

『…………』

 

二人が少し驚いているとドアが開けられた。

スキンヘッドのガタイの良いさっきまで運転手だった男はどうぞと腕を広げて促す。

 

「いこう」

「うん」

 

キンジとかなめが出ると続いて菊代も出た。

 

「どう?」

「金が掛かってるね。どうやって稼いでるんだい?」

「何だと思う?銃の密売、麻薬、地上げにケツ持ち……ヤクザには色々稼ぎ方があるからね」

「そうかい」

 

何となく分かった……その何れでもない稼ぎ方だろう。何か出資者がいるんだ。そう言えば校長から鏡高には藍幇と交流を持ち始めたらしいしもしかしたらそこが金でも出しているのだろう。

 

「さて、この奥だよ」

 

言われるままに行くと最上階のフロアにつく。そこには既に食べ物が置かれていた。序でに魚がいる水槽も……

 

「うわ~美味しそう」

「そうだな」

 

かなめの頭をポンポンしつつキンジは菊代を見る。

 

「座って良いのかい?」

「ああ」

 

キンジとかなめが座る。すると菊代も座り綺麗な女性たちがやって来た。

 

「さ、まずは食べなよ。毒が入ってるか疑うならそこの水槽に落としてみれば良い」

「毒や薬入ってないよ」

 

そう言ってかなめはバクバク食べる。

 

「毒が入ってたら私すぐ分かるからね」

 

キンジは苦笑いした。まあそれなら良いだろうと食べ始める。

 

「で?本当にどんなようなんだい?」

「うんまぁね……遠山に会えたから話したかったんだ」

「そうかい」

 

キンジはスープを飲む。ってこれフカヒレだぞ……

 

「後は……最近うちの下っ端をあしらったでしょ?」

「え?」

 

キンジは記憶をたどる……もしかして、

 

「二人組のチンピラか?」

「そうだよ。簡単に遊ばれて腹立ててたのを聞いてね」

 

あの二人ヤクザと繋がっていたのか……しかも鏡高……つまり校長が言っていた繋がりのある下っ端はあの二人のことだったのだろう。いやはやどこで知り合うかわからんものである。

 

「面白い偶然だね」

「本当……運命だと思わない?」

「あ?」

 

ビキキ青筋を走らせて殺人的な視線をかなめはする。

 

「それで今朝から俺を見てたのかい?」

「本当は声をかけようと思ったんだけど何か急いでたし様子を見たのよ……」

 

菊代は眼を逸らした。

 

「まあそれは横に置いといてね……桐生は一緒じゃないの?」

「いや?何でだい?」

「だって何時も一セットだったでしょ?」

「否定はしないが、そんなにベッタリと言う訳じゃない」

「ふぅん……最近人相悪い男がうちの組の事嗅ぎ回ってるって聞いて遠山もちょうどこの辺り彷徨いてたし桐生かと思ったけど違うの?」

「さぁね。あいつはあいつで何か任務なんじゃないかい?」

 

まあ半分嘘で半分本当って感じで良いだろう。

流石に言うわけにいかない。

 

「そう?じゃあこっちからも一つ聞くけど遠山なんでここに?」

「まあ社会勉強ってやつさ」

「退学かい?」

「どうだろうね」

 

そんな話をすると菊代は嬉しそうに頬尻を上げた……

 

「退学になったと言うんならうちが雇うけど?」

「遠慮しとくよ」

「そういわないでよ。鏡高組の全てをあげるよ」

「……君の組だろう?そんなホイホイもらえるものなのかい?」

「簡単さ。私と遠山が結婚すれば良い」

 

ベキィ!っと皿が割れる音が響いた。かなめ……女の子なら素手で皿を握りつぶさない方がいいんだよ。

 

「さっきから聞いてればお兄ちゃん……こいつ私の敵……」

「ちょ、ちょっと遠山……あんた妹までタラシこんだの?」

「ちょっと過剰にお兄ちゃん子なだけだよ」

 

キンジはかなめを宥めつつ菊代を見る。

 

「まあ魅惑的な誘いだけど俺は今でさえ面倒事が絶えなくてね……悪いが定員オーバーなんだ」

「そう……」

 

菊代は少し残念そうだ。

 

「ねぇお兄ちゃんもう帰ろうよ」

 

不機嫌かなめキンジを押し出す。

 

「ま、待って!」

 

すると菊代が立った。

 

「?」

「遠山……私あんたを昔利用した……覚えてると思う」

「そうだったけかな」

「うん……今の遠山ならそういうよね……でも一応言っておきたいんだ……ごめんなさい」

「……ああ、許すよ。女の罪を許すのも男の仕事だからね」

 

パチンとウィンクをすると菊代に頬に朱色が走った。この子も子ので初心だね。

 

「ほらお兄ちゃん行くよ!」

「じゃあね菊代」

 

かなめに押されつつキンジは退出した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってことがあってな」

 

家についた後でっかい檜風呂にキンジと一毅は浸かっていた。知恵熱もすっかりよくなりキンジの話を聞いていた一毅は……

 

「うん。そろそろお前後ろから刺されんじゃね?」

「何でだよ」

 

要は新たに女の子を作ったと言う話だろ?と一毅は言うとキンジに蹴っ飛ばされた。

 

「ちっげぇよ!とにかく藍幇と通じてるのは多分状況から見て間違いない。後はタイミングだな」

「タイミングねぇ……今から殴り込みには……」

「行かねぇよ!行き当たりばったりの殴り込みはしねぇんだよ普通!相手の居場所とかその他諸々きっちり調べた上でだ!」

「けち!どけち!ネクラ!」

「どれも関係ねぇだろうが!」

 

二人が取っ組み合うと次の瞬間、

 

「お兄ちゃん一緒に入ろーと言うわけで桐生一毅はそろそろ出てね」

「フギャ!」

 

キンジは不思議な奇声を上げると座ったままジャンプする。

 

「な!馬鹿!なんで入ってくんだよ!」

「良いじゃん良いじゃん」

「良くねぇ!」

 

そういうが早いかキンジは窓から庭にダイブして逃亡していった……

 

(あいつの逃亡スキルは日に日に伸びていくな……)

 

一毅は内心そんなことを呟いたがキンジに聞こえるはずもなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてそんな次の日……キンジと一毅は学校でうんうん頭を唸らせ授業で小テストを受ける……とは言え昨日の勉強の成果が早速でたのかキンジの方が余裕があるが一毅の方は知恵熱をまた起こしそうになっている。

まあこんだけ頑張っているんだから少し位は当たって……

 

「ええと……十七条憲法を作ったのは天皇の先祖だから……昭和天皇か?」

 

……前言撤回。この調子では無理である。というか昭和と着く時点で可笑しいと思え。しかもすげぇ最近じゃねえか。

 

 

そんな風に一日を過ごすが……

 

「なあ望月どうしたんだ?」

「そうなんだよな……昨日寒がってたしもしかして風邪でも引いたかな」

 

放課後……一毅とキンジは歩きながらそんな話をする。そう、何故か望月は休みだったのだ。クラスメイトの話では望月が休むこと事態初めてらしい。

 

「一体何が……ん?」

 

すると道を塞ぐように二人の男が前に立ちふさがる。

 

「お前達は確か……」

「久し振りだなぁ」

 

この二人はキンジが転入して早々あしらったチンピラだ。今回は金属バット装備でどうしたんだ?

 

「てめぇを連れて来いって言うのが命令でな……大人しく着いてきて貰うぞ」

「自分で会いに来いって伝えてこい」

キンジは断りの言葉をいれた。

 

「……望月を預かってるっていったら?」

「何?」

「今うちらの手元にあぶぇ!」

「相棒!?」

 

ガリガリの方が言い終わる前にキンジの蹴りを顔面にクリーンヒットし後ろに吹っ飛んでそのままゴミ箱に顔からダイブした。

 

「ホールインワンだな」

 

一毅がニタリと笑いながら太った方に近づく……

 

「こ、この!」

 

横凪ぎの大きな一撃……まあ隙だらけだったので伏せて躱すとボディに一発入れる……

 

「ごぶぇ……」

 

ゲロを吐きそうだったのでその前に下がった顎にアッパーカットを打ち込んだ。

 

「お前……腹筋柔らか過ぎだろ……」

「そりゃあ力込めれば刀が深く刺さらなくなるような無茶苦茶な腹筋してるお前から見ればプリンみてぇな腹筋だろうよ」

 

キンジは一毅に対して至極真っ当な突っ込みをいれつつ携帯に電話を入れる。

連絡相手は……望月だ。

 

【もしもし遠山?】

 

しかし出たのは菊代だった……

 

「おいどういう事だ?望月を拐うなんてどうかしてるぞ」

【そっちだって嘘をついてたじゃないか。桐生が何をしてるか知らないって?一緒にいて知らないわけがないだろ?二人でうちのこと調べてたんだね】

 

キンジは内心舌打ちした。一毅も一緒なのは望月が言ったんだろう。責める気はない。と言うか望月は自分と一毅が一緒だと知られると言うことがどういう意味を示すのか知らないのだから……

 

【まあ良いよ……デートしようよ遠山……特別に桐生も一緒で良いよ?そうだね……今から二時間以内に来てよ】

「おいま……」

 

プツンと電話が切られた……

 

「くそっ!」

 

するとメールが続けてきた……そこにあるのは地図……ここに来いと言うことだろう……二時間とすると……実家に戻って装備揃えれば大体そのくらいだ。本当は急いでいきたいが今二人は丸腰だ。無論多少の相手なら丸腰で十分だが何があるか分からない。準備は万全にしていくべきだ。

 

「一度戻ってから行くぞ」

「了解」

 

一毅も表情を引き締めながらキンジに続いて走り出した……


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