緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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第十章 普通の学校
龍と金の転入


「新しく転校してきた遠山と桐生だ。お前ら仲良くしてやれよ」

『ドウモハジメマシテ』

 

一毅とキンジは頭を下げたがクラスの反応は……

 

(何かカンニングペーパーを暗記してそのまま言ってるみたいだな……)

 

依頼の受理から早くも三日……今日から一毅とキンジは当分この東池袋高校の生徒になる。

 

「何か質問あるやつはいるか~」

「じゃあ趣味は?」

 

クラスメイトの一人に聞かれる。

さて、もし二人だけならここで答えに詰まってしまうだろう。もしくは変な答えをして言ってドン引きさせてしまっただろう。だが今回はそれはない。

(確か理子から聞いたのは……)

 

一毅とキンジは出発前に理子から貰ったカンニングペーパーの中身を思い出す。中身は転校先での質問にあったときの返答。いやはや理子には頭が下がる。

 

「時代劇鑑賞が好きかな。特に水戸黄門とか?」

「俺は映画とか見るのは好きだな。特に洋物とか?」

(何故に疑問系?)

 

二人は思い出してそのまま言ってるだけなのでどうしても疑問系になる。

 

「じゃあ特技はなんですか?」

「バタフライナイフの高速げふん!」

「え?バタフライ?」

「ちょ、蝶の採るのが得意です……」

 

キンジは危なげなくクリアー……さて一毅は、

 

「日本刀の扱いででで!」

 

キンジに抓られた。

 

「え?日本刀?」

「に……日本刀マニアなので日本刀を見ただけで大体どんなものかわかります……」

 

一毅もなんとかクリアーだ。と言うかこの二人理子の努力を水の泡にする気だろうか……

 

「じゃあ最後に好みの女の子は?」

「俺は……「彼は幼女が好きです」チゲぇよ!」

 

一毅の謂れのない中傷にキンジはマッハでキレてドアまで蹴り飛ばした。

 

「特に女の好みはない!それ以上聞くな」

 

ここはひとつ風穴開けるぞといった方がよかっただろうかとキンジは思った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ委員長と副委員長が今日は面倒をみてやれ」

「あ……えと、私は望月 萌……宜しくね。遠山くん」

「ああ……」

 

キンジはマジかよと内心頭を抱えた。寄りによってキンジへ宛がわれた委員長は何と女の子である(一毅の宛がわれた副委員長は男)。しかも滅茶苦茶可愛い。武偵高校の女子はバスカービルも含め出るとこ出てても引き締まっていることが多い。それに反して彼女はどうだろうか……太ってる訳じゃない。良い意味で肉付きが良い。しかもすごく純粋な笑顔だ。チワワみたいな笑顔は綺麗すぎて浄化されそうである。

 

まあアリア達みたいな地獄の番犬ケルベロスみたいなオーラとは全然違う。

 

「じゃあ教科書を開け」

 

先生に言われるがキンジと一毅は持っていない。

 

「あ、じゃあ一緒に見ようね」

「あ……ああ……」

 

近くに来るとシャンプーの香り……ヒス的にはすさまじく危険だ。

 

(やべぇ……一般高校では銃とかに狙われないやらラッキーと思いきやこんな危険地帯があったとは……)

 

キンジは必死に自意識を押さえ込んで授業を受けた……

 

因みに一毅の相手をする副委員長は一毅の眼光に完全にビビってしまったのは別の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~」

 

バタバタしてる合間にあっという間に放課後……

一毅は書類を出し忘れていて職員室によってから来ると言っているのでキンジは校門で待ち惚けだ。

しかし今日はずっと変な汗を掻きそうになっていた……何故なら筆箱の開閉音とか近くの工事現場の音とか色々な生活音が銃のコッキング音とかに聞こえてしまったのだ。お陰で一毅もだがバッと振り返ったり身構えてしまい変な目で見られてしまった。

 

(一般高校ってのは大変なんだな)

 

やっぱり自分は武偵に染まってると自覚してしまった。すると、

 

「あんだぁ望月ぃ!文句あんのかよぉ!」

「ん?」

 

駐輪場で何か騒ぎがすると思いきや望月と何か変な髪型の不良?みたいな二人の男が向かい合っていた。

 

「だ、だってまだ二人とも休学中だから問題を起こしたら……バイク通学もダメだし……」

「あんだよ問題あんのかよぉ!ああ?俺たちがなにしようが俺たちの問題だろうがよ!」

「おいおい」

 

キンジは脈絡なく折り畳みナイフを抜いた不良の片割れを舌打ちしながら見た。

 

「仕方ねぇな」

 

キンジはその方に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっちまうか?ああ?」

 

痩せていてナイフを舐める男と太っていて肉をかじる男を前に望月は恐怖で体を竦める。

まあ普通そうだよなぁとキンジは思う。でもこのナイフの持ち方……蘭豹に見られたら「なんやその持ち方舐めとんのか我ェ!」とかいって腕ごと叩き折られるぞ?

 

「おい辞めとけ。素人がそんなもん振り回したって事故って刺しちまうだけだぞ」

「あ?」

 

キンジが頭をかきながら言うと望月と男二人や周りでチラチラが見ていたギャラリーがキンジを見る。

 

「と、遠山くん!?」

「おい望月……これはいったいどういう騒ぎなんだ?」

 

見てみると自転車が将棋倒しのように横転している。大方その辺で言い合いになったというところだろう……

 

「誰だお前」

「今日転校してきた遠山キンジだ」

 

太った方に聞かれたので素直に答える。

 

「それは脅しの道具じゃないんだ。とっととしまいな」

 

素人のナイフはいろんな意味で危ないからな。しまうように促すが気にくわなかったようだ。

 

「関係ねぇやつは黙ってやがれぇ!」

 

ナイフを持った男がこっちに走ってきた。望月がそれを見て声にならない悲鳴をあげる……が、

 

「よっと……」

 

少し体を回して突進を躱すとキンジは足を払った。

 

「あぶっ!」

 

すると面白いように顔から地面に落下した。お前少しは手を着くとかしないのかよ……

 

「この!」

 

するともう一人……

 

「はぁ……」

 

キンジはため息をつきつつそれも躱す。

そしてそのまま未だに地面で転がっている仲間に足を引っ掻け倒れこんだ。

 

「グゲフゥ……」

 

上に乗っかられた方はたまったもんじゃなく変な声を漏らしている。

 

「さてと……」

 

キンジはナイフを拾うと折り畳んで……さてどうしよう。

 

(返すのもアブねぇしな……とは言っても武偵高校と違って武装してると厳重注意どころか一気に停学か退学だし……)

 

側溝にでも捨てるか?等と考えていると二人が復活したようだ。

 

「てめぇ!ぜったい殺してやる!」

「あーはいはい」

 

キンジは心底どうでもいいという感じで言う。

 

死ねとかぶっ殺すとか武偵高校では日常用語だ。今更気にならない。

まあそれも気にくわなかったとのか二人が腰をおとした次の瞬間、

 

「なにやってんだキンジ」

『っ!』

 

そこの来たのは広い肩と高身長に筋肉質な体を持ち鋭い眼光を光らせる男……まあ一毅である。

 

「あ~ちょっとな」

 

キンジは適当に言う。

 

「な、なんだあいつ……」

「く、くそにげるぞ!」

 

一毅の登場にいきなしビビった不良コンビはスタコラさっさと逃げ出した。

 

「何だあいつら」

「お前の顔見てビビったんだろ?」

「失敬なやつらだ」

 

まあ半端な不良では一毅の顔を見ただけで竦み上がっても仕方がない気もするが……

 

「遠山くん!怪我はない?」

 

そこに望月が駆け寄ってきた。

 

「ある言うに見えるか?」

 

キンジが言うと望月は首を横に降った。

 

「お前は……大丈夫そうだな」

「う、うん」

 

キンジが言うと望月は照れながら返答した。

 

「じゃあそろそろ帰ろうぜキンジ」

「そうだな」

「あ、遠山くん……」

「ん?」

 

キンジが望月に振り替える。

 

「その……ありがとね。このお礼はいつかするから」

「別に気にしなくても……」

「私がしたいからいいの!」

「そ、そうか……」

 

柔らかそうな見た目に反して意外と頑固そうな望月に押されてキンジは頷く。

 

「じゃあ遠山くん。また明日」

「ああ」

 

キンジは何気なく言ったが一毅は……

 

(まーたキンジのやつフラグをたてやがったよ……)

 

と肩をすくめたのは余談である。


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