緋弾のアリア その武偵……龍が如く   作:ユウジン

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戦龍の戦い そして一件落着

「セィヤァ!」

 

一毅一人 対 吉岡の門弟たち……普通であれば数に圧されるとかして一毅は苦戦するとかそういう状況に成るはずだ……だが実際は違う。

 

あるものは急所を外してはいるものの斬られ……あるものは蹴り飛ばされ、殴り飛ばされるものもいる。あるものは頭突きをされて鼻血を出しながら後ろに倒れるものもいる。

 

つまり……圧倒的な力……いや、どちらかと言うと暴力に近い動きと実力を誇る一毅は吉岡の門弟達を目につき次第次々と蹂躙していく。

広い場を右に左と縦横無尽に一毅は駆け回りながらどんどん切り捨てる。元々一対多数も慣れていて戦える一毅だったが今回のはなにかが違った。

 

まず一毅はあんな変則的な動きはあまりしない。普段から喧嘩みたいな動きで決まった動きはしない実践剣術を旨とするもののそれでもあそこまで立ち位置を変えながら荒々しく戦うといるより潰していくと言う言葉が似合う戦い方はしない。

 

何より一毅は笑っているのだ。楽しそうに……嬉しそうに……まるで自分の居場所はここだと言わんばかりに笑う。恋い焦がれて待ち続けたものに出会えたような雰囲気だ。楽しくて楽しくて仕方がないとその顔がいっている。

水を得た魚と言うのだろうか?もしくは戦狂い……戦闘狂……戦を愛する戦鬼とかそんな感じだ。束縛していた鎖が砕け散った猛獣のような雰囲気の一毅は目の前にいた男を殴り飛ばす。

 

「く、くそ!」

 

横から刃が迫る……だが、一毅の体にバチっと電流が走る。

 

「二天一流・必殺剣!!!」

 

一毅の意識の外で体が勝手に動く。

まず小太刀で相手の刀を打ち上げるとがら空きになった胴を凪いだ。

 

「二刀陰陽斬!!!」

 

心眼も発動し更に一毅は爆走する。

 

斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る……

 

荒れ狂う暴力と言う波のの前に吉岡の門弟達はひたすら潰されていくだけだ。

 

反撃を許さないとかではない。恐怖することも驚愕することも舐めて掛かることも全て許さない。刀を振り上げることも防ぐことも対策を立てることも全て禁じている。

 

「桐生一毅ってあんなやつだったのか……」

 

GⅢの呟きにキンジは首を横に降る。

 

「元々喧嘩とかは好きではあったけどあそこまでぶっとんではいねぇよ。なんか今回は少し……な」

 

キンジは言葉尻を濁す。

 

「おらおらどうしたその程度かぁ!!!」

 

向かって来る相手を千切っては投げ千切っては斬っていく……人数的にこれだけ圧倒的な差がありながら一毅はものともせずに潰していき向かってくる攻撃は全て心眼で対処する。

これだけの相手をしながら一毅は傷一つ負わない。だが負ったとしても一毅は止まらないだろう。それは確実でそれこそ命の灯火が潰えぬ限り戦い続けるだろう。

 

「くらっとけぇ!」

 

一毅の飛び爪先蹴りが相手の鼻に刺さり吹っ飛ばす。

 

「くく……かはは!どうしたお前ら……だらしねぇんだよ!!!」

「な、何だよアイツは……」

 

吉岡の門弟達は後ずさる。

 

人間と相対してる気がしなかった……怖く……恐ろしい……まるで化け物で……

 

「鬼……」

 

一毅はその呟きが聞こえたのかわからないがニヤァと笑った。

 

「ほら来いよ……俺を斬ってみろよ……蟻ん子野郎共……」

『ひっ!』

 

ズズッと一毅が間合いを詰めてくる。

 

「も、もうだめだ!」

 

一人が恐怖に耐えきれず逃げ出した。そこから堰を切ったように……

 

「ま、まて俺も!」

「こ、殺される!」

 

次々と逃亡し始める。

それを見て慌てたのは当たり前だが無論……

 

「な!お前ら逃げんじゃねぇ!」

 

祇園 廣二である。

 

止めようとするが部下は廣二を突き飛ばしてでも我先にと逃げ出す。

 

「あいつら……」

「おいおいだらしねぇやつらだなぁおい……まあ、これで一人だな」

「くっ!」

 

廣二は鞘から刀を抜いて構える。だが切っ先は僅かに恐怖で震えていた。

 

「て、テメェさえいなけりゃあ!」

 

廣二が一撃で決めようとして刀を振り上げる。だが、

 

「しゅ!」

 

一応廣二の剣術は決して低くない。寧ろ高い方である。その年から考えた場合天才の部類に入るだろう。だが……一毅には興味も抱けないほど稚拙な剣にしか見えなかった。

一毅にとって高い剣術とは吉岡 清寡のような剣か後は鬼道術を併用した白雪のようなものでありそれ以下の剣では何かしらの感情を抱けない。

 

故になにも考えることなく欠伸ひとつしながら神流し(かみながし)で止める……そしてそのまま股間を力の限り蹴りあげた。

 

「いごゃ!」

 

廣二は奇声を上げて飛び上がる。当たり前だ。男であれば優男から筋肉ムキムキのマッチョまで等しくダメージを与える急所……そこを一毅のぶっとい足で蹴り上げられたのだ。キンジのような早さはないがその分重い。

 

「せぇ……の!」

 

そしてそのまま腰を大きく捻って廣二を一毅は殴り飛ばした。

 

「そのまま寝てな……」

 

一毅は刀を鞘に納めながら背を向けキンジたちの元に歩きだす。

 

「っ!」

 

キンジ達はそれを見て目を見開く。

 

「一毅!」

 

その後ろには刀を手に静かに立ち上がる廣二が刀を降り下ろそうとしていた。

 

『うし……』

 

ろとキンジ達が声を出そうとしたが遅い……刀は一毅の頭を……

 

『え?』

 

切ろうとしていたがその前に唖然とした……そこには剣技において曲芸の扱いを受ける事が多い背面真剣白羽取り……だが背を向けた状態での真剣白羽取りは心眼を用いた一毅であれば造作もないことだ。

 

そして廣二の剣を止めた一毅はそのまま刀を奪って棄てる。

 

「な、なんで……」

「どうせこんな手を使うんだろうとは分かっていたんでな……出来れば外れてて欲しかったぜ……?」

 

そう呟きながら一毅は少し腰を落とすと一気に間合いを詰めた。

 

「勝機……」

 

まず一毅は渾身の掌打を廣二の顎に打ち込み無理矢理体を浮かせる……

 

「二天一流 喧嘩技……」

「ま……」

 

待ってくれ……そう言おうと廣二は口を開こうとしたがそこから先は聞こえることはなかった。

 

「大撲打の極み……」

 

浮いた廣二の顔面を続けて勢いをたっぷり込めた掌打が連続で叩きつけられそのまま吹っ飛ばされた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーいお前ら~全部倒したぞ~」

『……………』

 

その場の全員が驚きが混じった表情をした。

あれだけ戦って大暴れしたのに一毅は笑っている。

たっぷりと公園で遊んだ子供のようだ。

あまりに綺麗な笑顔に全員が生唾を飲む。

 

いや、いつもと変わらない表情なのは二人いた。一人は、

 

「お疲れさまです一毅さん」

「いや~疲れた」

 

一毅はレキに答えながらニシシと笑う。

 

「お前また人間やめたな」

 

そしてもう一人はキンジだ。

 

「喧しいわ。ま、そっちも勝ったみたいだな」

「当たり前だ」

 

さてと……とキンジは廣二を見て顔をしかめた。

 

「こりゃもうステーキ食えないな……」

 

廣二は顎は砕かれ歯もボロボロで酷いことになっている。

 

「力加減失敗したかな……」

「おいおい……」

 

一毅の言葉にキンジは肩を落とした。

 

「まあ良いさ。後で突き出せば良い」

 

それよりこれからどうするか……が最優先事項だ。

 

『っ!』

 

GⅢをキンジが見るとジーサードリーグが庇う。

 

「で?どうすんだ俺を……」

尋問科(ダキュラ)に突きだしてもお前ら意味ねえしな……」

 

とは言え何もお咎め無し何て言うのは許されない。

こいつは少なくともかなめを誑かし?てこいつら襲わせたし少なくとも敵だった人物だ。

 

「で?俺になにさせる気だ?賠償金か?」

「…………」

 

最近金欠気味のキンジとしてはそれでも良いがそれにしたら全員からフルボッコを喰らいそうだ。金で解決は不味いだろう。

 

(……待てよ)

 

キンジは良い手を思い付いた。

 

「日本ではな。非礼を詫びる際には昔から存在するやり方があるんだよ」

『?』

 

ジーサードリーグやかなめにアリアは首をかしげた。

だが一毅、白雪、理子、レキは気づいたようだ。

 

「ある意味一番嫌な方法選んだな……」

「だが平和的だろ?」

「おい、桐生とだけで納得してんな。なにすれば良いんだよ」

 

すまんすまんとキンジは言いながらGⅢを見る。

 

「まず両膝をつけ」

「あ、ああ」

 

GⅢはふらつきながら膝をつく。

 

「両手を地につける」

「………」

 

何となく何をさせられるのかGⅢは想像がついた。

 

「そのまま地面に頭突きしながら【ごめんなさい】と言……」

「ただの土下座じゃねえかよ!」

 

遂にGⅢは全力で突っ込んだ。

 

「だがお前今ボロボロじゃねえか。やられた分殴るでも良いけど流石にその体の人間にやるわけにもいかねえだろ?」

 

キンジが仲間にそういうと、

 

「ま、それもそうよね」

「確かに血は流さないよね」

「面白いもの見れそうだね」

 

アリア、白雪、理子はニヤつきながら見る。

 

「ま、諦めろGⅢ」

「そうですよ。衆人環視の前でお尻ペンペンよりマシでしょう」

「う……」

 

GⅢは詰まる……確かに多少はマシだがそれでも良いわけではないしと言うか土下座……部下の前でそんな恥ずかしいと言うか見栄っ張りな彼にとっては清水の舞台から飛び降りる並みの覚悟がいる。

 

「土下座がなんだ?俺なんかアリアがキレたときは土下座しながら逃げるぞ」

「あ、俺もレキの時それやる」

「どうやってんだよ……」

 

土下座しながらって……

 

『四つん這いのまま這いずって逃げるんだ……こう、カサカサって』

「ゴキブリかよ……」

 

兄とその友人はどんな生活をしているのだろうか……そして後ろにはそれぞれ怒気を纏わせたアリアとレキがいるのはGⅢは見えない振りをした。

 

「さ、GⅢ……敗者に文句を言う資格はないんだろ?」

「~~~!」

 

GⅢはブルブル体を震わせると……

 

「この……」

 

GⅢは膝立ちから両手を地につける……そして、

 

「ごめんなさい!!!!!!!!!」

 

地面に頭突きしながら土下座した……

いつも天上天下唯我独尊を地で行くGⅢを見ていたジーサードリーグの皆は目を丸くし、

 

「んまあこれにて一件落着……だな」

 

キンジのニヤリとした笑みにバスカービルの皆もつられて笑った。

 

 

こうして品川での一戦はチーム・バスカービルの勝利と言う形で幕を下ろした……




今回で丁度百話です。イエイ!
まあ談話とか番外編とかやってるんで本当の意味で百話じゃないんですけどね。とにかくこれからもよろしくです。

さて今回の一毅の変貌ですが後に意味をちゃんと持たせる予定です。少なくともただの暴走じゃないんですよあれも。

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