IS〜異端の者〜   作:剣舞士

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今回で幼少期編は終了かな?


それでは、どうぞ!!!


第7話 決着と和解

「はああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

「うおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 

 

 

 

藍色と薄紫色の光が交錯し、鋼を叩く様な音と火花を散らす。そして、それが衝撃としてその場にいる者たちの所にも響き渡る。

 

 

 

 

「……う、う〜ん…………あれ?」

 

「くっ!……痛たたた……」

 

 

 

その衝撃に、簪と刀奈も目を覚ました。目を向けると一夏と少女が激しくぶつかりあってあるのが見えた。

 

 

 

「刀奈! 簪! 目が覚めたか?!」

 

「お父……さん?……これは、一体…?」

 

「なん、なの? これ? あの二人……」

 

 

 

 

楯無が起き上がった娘二人の所へと向かう。二人は未だ状況がのみ込めていなかった。全身から光の粒子やら幾何学の様な模様を出してはぶつけ、撃ち合い、斬り合う二人の姿を見る。今まで実戦は何度も見てきた二人だが、ここまで異様な戦いを見たのは初めてだった。

 

 

 

 

 

「お父さん…あの二人は、一体何者なの……? 何なのよあの光や模様は…ッ!」

 

「こんなの、見た事が…ない。お父さん、何か知っているんしょう? あの子と…一夏は、一体……」

 

 

 

 

 

当然の様に、二人は目の前の状況を信じられないでいた。その事に楯無は一夏達の秘密を明かす事にした。

 

 

 

 

「刀奈、簪、よく聞け。一夏とあの少女…マドカは、魔法使いなんだ…ッ!」

 

「……へ?」

 

「ま、魔法使いッ?!」

 

「そうだ。一夏はここへ来る前に、ある研究所で人体実験を施されていた…。そして、その実験で得られた力があれだ。俺たちでは理解出来ないであろう『異端の力』だ……ッ!!」

 

「「異端の…力………」」

 

 

 

 

未だに信じられない。しかし、目の前で起こっている現象に信じざるを得なかった。この二人は自分達とは別の次元で戦っているのだと…。そして、今この時も二人は自分の命を賭けて戦っているのだと…。

 

 

 

 

 

「はああぁぁぁ!!!」

 

「チィッ! ハッ‼ ……せいッ! やぁッ!」

 

 

 

マドカのイリュージョンブレードの剣撃と一夏のシグナルドリームの先読み。二つの力がまさに拮抗していた。

マドカは先手を譲らんと小太刀を振るい、インビジブルフィールド内であらゆる方向からの攻撃を一夏に仕掛けるものの、数秒先からさらにその先の事まで予知できる様になった一夏のシグナルドリーム。その予知と持ち前の反射神経で攻撃を避け、受け流し、払い、打ち砕く一夏。

 

 

 

 

(くッ! 私の攻撃が当たらなくなった…ッ! これじゃあ、いつ攻守が変わってもおかしくない‼ 早く決めたいと‼)

 

(落ち着け…ッ! 絶対に相手に付けいる弱点があるはずだ…。それを確実に見つけ、確実に仕留める…‼)

 

 

 

 

そろそろ、相手の能力を分析できた二人。幾度となく剣を交え、相手の呼吸や動き、早さなどを掴みかけていた。

 

 

 

「……ッ! そこッ‼」

 

「くっ!」

 

 

 

剣撃の合間を縫って、一夏はマドカの懐に入った。

 

 

 

「レック!!!」

 

「がぁッ!! ……こんのぉ!! ショット!!!」

 

「プロテクション!!!」

 

 

 

一夏がレックでマドカを吹き飛ばし、体勢を立て直したマドカがショットで迎撃。しかし、一夏はそれをプロテクションで受け止める。その攻防で、一夏はある事に気がついた。

 

 

 

(何であの時、幻術の刃を使わなかった? いや、使えなかったのか…? もし、そうだとしたら……)

 

 

 

一夏は疑問に思い、また再びマドカに超接近戦を仕掛ける。

 

 

 

「くっ! 同じ手を…ッ! させるか!!」

 

「悪いが…。今回もくらってもらうぜ‼」

 

 

 

攻撃を躱し、再びマドカの懐に入った一夏。今度は魔法ではなく、トワイライトによってマドカを斬りつけた。

 

 

 

「はあッ‼」

 

「ぐっ、あぁぁ!!!」

 

 

 

トワイライトの刃が、マドカの左手を浅いが斬り裂き、斬った所からは血が流れる。咄嗟に反応されて小太刀で半分は受けられたが、この瞬間、一夏はマドカの弱点に気づいた。

 

 

 

「やっぱりな…。お前の能力にもやはり弱点がある」

 

「………ッ?!」

 

「弱点?」

 

 

 

その言葉にマドカは驚き、刀奈は不思議に思った。

 

 

 

「さっきの攻防でわかった。お前の能力は下手したら自分さえも傷つけかねない技だということ…。だから、さっきの俺の二回の攻撃もその能力で作った刃で受けるのではなく、その小太刀で受けた。つまり、受けざるを得なかった…と言った方がいいか?」

 

「く……ッ‼」

 

「どういう事だ、一夏?」

 

「一体、どういう意味?」

 

 

 

 

一夏の言葉に、楯無達が驚く。

 

 

 

「こいつの能力…インビジブルフィールド内ではその効果範囲内で自由にイリュージョンブレードを使えるが、その技は使用者であるマドカ自身も攻撃を受ける危険性がある…。だからお前は、自分でテリトリーを決めているんだろう? 攻撃を自分から受けない様にある程度の範囲を決めてそこから内側には、能力を使わない様にしている…。つまり、この能力は諸刃の剣も同然。さしずめ、その範囲を『制空圏』とでも呼ぶべきかな? だったら、そこから内側に入ってしまえば、こちらの有利だ!!!」

 

 

 

 

 

マドカの弱点を知り、更に攻撃の手を強める一夏。流石に暴露てしまったマドカに分が悪く、先手を打つ一夏に対し、完全に後手に回ってしまう。

 

 

 

(ぐっ‼ ここまでとはな…ッ。私以上に強い奴はこいつが初めてだ。イリュージョンブレードを見切ったのも、インビジブルフィールドの弱点を見抜き、私に一撃を入れたのもこいつが初めてだ…。何でこいつはここまで強いんだ……? 私には無い何かを持っているのか? …………知りたい…。どうしても、それが何なのか…ッ。知りたい!!!!)

 

 

 

 

一旦、距離を取り、態勢を整えるマドカ。一夏も不用意に近づかず、マドカの様子を見る。

 

 

 

「もう、終わりだ! このまま戦っても、消耗戦になるだけだぞ!」

 

 

 

 

俺は再度マドカに対して問いかけた。が、その答えは…。

 

 

 

 

 

「嫌だね…」

 

「…………」

 

「悪いけど、お前のその強さ…少し…興味が…ある。それに、私と同じなのに、どうしてお前は…そんなにまっすぐな眼をしているんだ? 世界に歪められた存在でありながら…どうして、そんな眼が出来る…」

 

 

 

 

これは本当に知りたい事だったのだろう。マドカも同じなのに、俺とは全く違う道を歩んでいたのだ…。だからこそ、疑問に思ったのかもしれない。だったら…

 

 

 

「だったら、自分の眼で確かめてみろ…。行くぞ! トワイライト‼」

 

 

 

 

キーン!!!

 

 

 

 

濃紫色の魔法陣がトワイライトを包み、やがて刀身が変化する。

 

今までの直剣ではなく、反りのある刃。日本刀に…。そして、鞘もその形に合わせて変型する。

 

 

 

 

「フフッ…。そうだな、これを最後の一撃としよう‼」

 

 

 

 

お互いに得物を構える。マドカは切っ先を俺に向け、俺はトワイライトを鞘に収め、右脚を出し、腰を落として右手は柄に添える。つまり、『抜刀術の構え』をとる。

 

 

 

静寂が二人を支配する。そして、吹いていた風が止んだのを合図に二人は駆け出した。

 

 

 

「はああぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

「うおおぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 

 

一気にお互いを肉薄し、剣を振るう。

 

 

 

「イリュージョンブレード!!!」

 

「ちぃいいッ!!! はあぁぁぁ!!!」

 

 

 

イリュージョンブレードを放つマドカ。それをストライクビジョンで予知し、一夏は懐に入ろうとする。が…

 

 

 

「かかった!!!」

 

「ッ?!」

 

 

 

ニヤリと笑うマドカ。一夏が必ず突っ込んで来ると分かっていたうえで、一夏の背中をめがけて幻想の刃を向ける。

 

 

 

「終わりだぁぁ!!!!」

 

「まだだぁぁ!!!!」

 

「ッ!!!??」

 

 

 

しかし、一夏はそれすらも読んでいたのだ。後方から来る幻想の刃を勢いそのまま突っ込みながら体を回転させ、空中で旋回する事によって躱したのだ。

 

 

 

「おおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」

 

「…………見事だ……」

 

 

 

 

ザシュウ!!!!!!

 

 

 

 

トワイライトの刃がマドカを捉え、斬り裂いた。

マドカはそのまま宙を舞い、やがて地面に落ち、仰向けに倒れる。

 

 

 

「かっ…はぁっ…!!!」

 

「はぁ…はぁ…はぁ……。俺の勝ちだ…マドカ」

 

「……あぁ、そして、私の敗北…か…」

 

 

 

 

初めて負けた。生まれて初めて誰にも負ける事なくここまで来たマドカに初めての敗北。しかし、マドカはとても清々しい顔をしていた。

 

 

 

「お前と出会えて…良かったと思うよ…一夏…」

 

「そうか…。俺もそうだ。まさか、俺と同じ奴がいるとは思わなかったからな…」

 

「悪いけど、私はもう逝くぞ? また一人になってしまうが…?」

 

「このまま死なせると思うか? 安心しろ、お前の事は俺たちが保護してやる…! 仲間を傷つけたとはいえ、死人が出てない…。お前、あんな事言ってたけど、本当は殺さない様にしてたんだろ…?」

 

「…………」

 

 

 

否定しないマドカに一夏は近寄り、手のひらを傷口に当て、魔法をかける。

もちろん、回復魔法だ。

 

 

 

 

「……な、何をしているッ!?」

 

「何って…。傷口を治そうとしているが?」

 

「そ、そうじゃない‼ 何故そんな事をするんだと聞いているんだ‼ 私は、お前の仲間や家族を殺そうとしたんだぞ? なのに何で私を助けるような事をする!?」

 

 

 

当然といえば当然だ。さっきまで自分と互いの命をかけて戦った相手に情けをかけようというのだから。しかし、一夏は…。

 

 

 

 

「助けるのに理由がいるか?」

 

「なっ、なに?!」

 

「人が人を殺す理由や動機なんて人それぞれだ…。その事に俺は口は出さねぇし、知ったことじゃねぇ…。でも、人が人を助けるのに… “論理的思考” はいらねぇだろ?」

 

「あっ……」

 

 

 

その時、マドカは気づいた。一夏の強さが何なのか。

一夏は自分と違い、殺すのではなく、守るための剣をふるっていたのだと。

 

 

 

「そうか…それがお前の剣なのか…。私には到底真似出来ないな…」

 

「だったら、一緒に学べばいいだろ?」

 

「えっ?」

 

「言ったはずた。お前の事は “俺たちが保護してやる” ってな。いいだろ? 楯無さん!」

 

 

 

 

俺は刀奈さんと簪の手当をしている楯無さんに問いかける。

 

 

 

「ん、まぁ〜問題ないだろ。娘が一人増えた所でどうって事はない。香奈恵もそれでいいか?」

 

「えぇ、結構ですよ。やだぁ〜、また可愛い娘が増えたわ〜♪」

 

 

 

 

どうやら楯無さんは俺と同じ考えをしていたみたいだ…。香奈恵さんにいたってはマドカを見て、両手を自分の両頬に当て喜んでいる。決定したな。

 

 

 

「っと、いうわけだから、お前はこれから『更識 マドカ』だ! 異論はないな?」

 

「えっ? いや、あ、あのぉ〜」

 

 

 

戸惑っているマドカ。しかし、ここからまた問題が発生した。

 

 

 

 

「ねぇ、お姉ちゃん。さっきからお姉ちゃんが持ってる刀…光ってない?」

 

「えっ? うわぁっ!? ほんとだ! 何これ?!」

 

 

 

 

よく見ると、刀奈さんが持ってる刀から蒼い光の粒子が漏れている。そして、その光の粒子が出ていたのは刀奈さんだけではなく…。

 

 

 

 

「って! 簪ちゃん! 簪ちゃんも!」

 

「へっ? きゃあっ!?」

 

 

 

簪が右手人差し指にはめていた指輪…打鉄弐式の待機状態の指輪を中心に、水色の光の粒子が溢れ出していた。

 

 

 

「お、おい、マドカ…。あれって…もしかして…」

 

「あぁ、間違いなく魔法の粒子だな」

 

 

 

 

マドカの一言に俺と刀奈さんと簪は大いに驚き、声を上げた。

それからと言うものの、家に帰り、傷の手当をしていた時、刀奈さんと簪が俺の部屋に来て、すべてのことを話した。俺が誘拐された事、魔法を身につけた事、組織崩壊と同時に楯無さんにあった事、それから二人が魔法使いになった事を。これはマドカから聞いた話だが、どうやら魔法使いが一般人を攻撃すると、その傷口から魔法の粒子が入り、その人を魔法使いにしてしまうのだとか…。

 

 

 

「それで? これから私たちはどうすればいいの?」

 

「やっぱり、練習とかしないと…ダメ、だよね?」

 

「あぁ、魔法は日々の訓練で少しずつ身に付くものだからな。俺も今日は少し無理をしてあんな技を使ったからなぁ〜。今マジで疲れてるよ…」

 

「ふぅー、まぁいいわ。今日はあなたに助けられたし、守ってもらえたんだしね…。今日はゆっくり休みなさい」

 

「あ、ありがとう…」

 

「あっ! でも、明日から私達に魔法について教えなさい! こんな力、しっかり学んでおかないと、いつか自滅しかねないし…」

 

「わかりました…。じゃあ、明日から一緒に鍛練しましょう。簪も」

 

「う、うん! よろしく…お願いします」

 

 

 

それから、簪は部屋を出ていった。香奈恵さんに呼ばれているらしい。刀奈さんはいまだ部屋に残っている。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

静寂が部屋を支配していた。とても気まずい。

 

 

 

「あのぉ〜、刀奈さん?」

 

「……禁止…」

 

「は、はいぃ?」

 

「さん付け禁止‼」

 

「は、はい! って、じゃあ俺は今度からなんて呼べば?」

 

「好きに呼べばいいじゃない。あなたが呼びやすいように」

 

「それもそうだな……。うーん」

 

 

 

刀奈さんはずっと俺を見ながら腕を組んでいる。しかし、その顔は少し赤かった。

 

 

 

「じゃあ、『姉さん』?」

 

「却下!」

 

「なんでぇ?!」

 

「なんだか他人行儀だから! もっとないの?」

 

「うーん…」

 

 

 

再び考え直す一夏。そして、一つだけ思いついた。

 

 

「じゃ、じゃあ…」

 

「ん、」

 

「…『刀奈姉』……で、どうかな」

 

「〜〜〜〜〜ッ‼‼‼」

 

 

 

その言葉を聞いて、刀奈は顔全体を赤くし、狼狽える。

まぁ、当然だ。女の子のような外見をした一夏。しかし、自分を守ってくれるほどの男気がある少年に心打たれた刀奈にとって『刀奈姉』などと言う親しい仲でしか呼ばれないであろう呼び方をされたのだ。それ以上の理由はない。

 

 

 

「えっと、どうかな? 嫌なら、もっと別のーー」

 

「そ、それでいいわ!!! って言うかそれがいい!!!」

 

「えっ⁉ そ、そうか? ならこれからはこう呼ぶよ…。刀奈姉」

 

「〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!???」

 

 

 

 

満面の笑みで言われた言葉に、刀奈は赤面して、頭が爆発しそうだった。

 

 

 

「わ、わかったわ…。だ、だから私も認めないとね!」

 

「え? 何を?」

 

「あなたが私の弟だって事をよ…」

 

「あぁ…」

 

「認めるわ…。あなたは私の弟。かけがえのない、私の家族…」

 

 

 

 

その言葉だけで、一夏は嬉しかった。やっと自分も家族の一員になれたのだと。そして、家族と呼べる存在の中にいるんだと。

 

 

「ありがとう、刀奈姉…。みんな…」

 

 

 

自然と涙が零れた。嬉しくて抑える事が出来なかった。そんな一夏を刀奈は優しい抱きしめたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






次回からは、一夏のIS起動と行きます!

なるべく早く更新しますね?




あと、マドカの魔法はこちらになります!


イリュージョンブレード
幻術による不可視の剣を生成し、小太刀の間合いの外でも相手を攻撃出来る魔法。参照は『魔法科高校の劣等生』に出てくる『千葉 修次』の圧斬りがモデル。

インビジブルフィールド
自分の半径50mの範囲内ならどこでもイリュージョンブレードを使える広範囲魔法。しかし、自身にもその刃が襲う可能性があるため、制空圏を設けているため、懐に入られると弱い。参照は『BLEACE』の『朽木 白哉』の卍解。千本桜景義がモデル。


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