IS〜異端の者〜   作:剣舞士

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あけましておめでとうございます^o^

今年もどうぞよろしくお願いします!
新年初の投稿……。12月には投稿しようと思っていましたけど、仕事が忙し過ぎて、全然出来ていませんでした( ̄◇ ̄;)

それでは、どうぞ!




第28話 バーサーカー

「そうか……皆は息災無いか?」

 

『はい。皆あれから傷を治して、今では日常生活に問題無いくらいに回復しました』

 

「そうか……よかった」

 

『隊長……』

 

 

 

今、ラウラは人気の無い校舎の裏で、自分の携帯端末で連絡を取っていた。

その相手は、自身が隊長を務めている部隊『シュバルツェ・ハーゼ』の副隊長。クラリッサ・ハルフォーフだ。

軍の上層部よりIS学園へと編入したラウラに変わって、今は副隊長であるクラリッサが隊を率いているのだ。

 

 

 

『隊長……学園生活は、どうですか?』

 

「あぁ……中々楽しめている。例の、更識 一夏ともコンタクトが取れたしな。今は、私の魔法の鍛練にも付き合ってもらっている」

 

『そうですか……! それは良かったです……はい、本当に……!』

 

「ふっ、全く……何を感極まっているのだ。そんなことでは、隊員達に合わせる顔がないぞ?」

 

『ぐすっ……! 申し訳ありません』

 

「とにかく私は大丈夫だ。隊員たちにもそう言っておいてくれ」

 

『はっ! ご武運をお祈りしております!』

 

 

 

通信を切った。

元気な副隊長の声が聞けた安心感か、ラウラの心は少し安らいでいた。

たが、安心もしていられない。ラウラがこの学園に来た目的、ラウラの部隊を壊滅させた謎の大男、仮称を《バーサーカー》。

その者の情報収集及び、可能ならば討伐の任を授かり、その任務の協力ということで、一夏達にも力を借り、その技術も学んでいる。

だからこそ、絶対に成功させなくてはならない。

たとえ倒せなかったとしても、バーサーカーの情報を得なければ、この学園に来た意味がないのだ。

 

 

 

「待っていろバーサーカー……! 必ずこの報いは受けてもらうぞ……!」

 

 

 

右眼に映る執念の灯火。

覚悟は既に決まったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、運命の時が来た。

 

 

 

 

 

 

 

「刀奈姉、本当にここに奴がいるのか?」

 

「ええ、潜伏先としてもってこいの場所だと思うけど?」

 

 

 

 

今一夏たちがいるのは、IS学園から少し離れた場所にある貿易港。

海に近いIS学園同様、潮の香りが漂う大きな港。港内には今も多くのコンテナが敷き詰められており、一度乗用車が通過する道に入ってしまうと、迷路のように見えるため、迷ってしまいそうだ。

そのうちの一つのコンテナの上に、一夏と刀奈は座っていた。相棒である《トワイライト》と、愛刀の《蒼月》を片手に、周りが見渡せれる位置に配していた。

ことはラウラの魔法鍛練を開始してから二週間後のことだった。主に魔法の鍛練は一夏とマドカが担当し、簪と刀奈は、虚と一緒にバーサーカーに、関する情報を集めていた。

ラウラの魔法は破壊魔法《氷雪地獄(デビル・アイス)》自然干渉系統の魔法で、アスペクトは手袋。

この手袋は自分が指揮する隊の隊員たちにもらったものだという……。

基本的な氷系の魔法であり、その規模も本人の成長次第、魔力の制御次第で飛躍的に伸びる。

今使えるのは、氷を自在に操り、槍やら盾やらを精製出来る事と、広範囲の迎撃魔法などなど。しかし、広範囲の魔法はまだまだ制御に苦労しているらしい。

そして、話はバーサーカーの情報を収集した話に戻る。

 

 

 

 

「ドイツから日本に来るのに、考えられる経路は三つ。陸路、空路、そして……」

 

「海路……か。まぁ、前の二つよりかは目立たず早くここに来る事は可能だな。

ましてやあんな巨体を隠すとなると、貿易用に用意されている巨大コンテナとかに身を隠すしかないしな……それで、どうやってその情報を?」

 

「そうね……ざっと日本に入ってくる貿易商の船を調べまくったわ。陸路や空路も考えたけど、いくら人外とはいえ、命の危険を晒す行為はしたくないと思ったしね。

なら、安全かつ迅速に潜入出来るとしたら、他国の船でも直接入港出来る貿易港が一番怪しい……。それに、あんだけ荷物が載ってるんだもん、カモフラージュにはもってこいだと思ったの」

 

「妥当な判断だな。人払いは?」

 

「完了してる。虚ちゃんに頼んで、ここら一帯は封鎖させてもらったわ。周辺の被害が広がらない用に、家と自衛隊の共同で、周りに展開させてもらってるから、多少の被害が出ても大丈夫なようにはしてる。だけど、あまり派手に動かないでね、事後処理が面倒だから」

 

「難しい要求だな……。でも、それは大丈夫なんじゃないか? 情報ではバーサーカーは派手な放出系の魔法はない……完全な近接オンリーの戦闘スタイルだからな……こちらは簪とラウラ、マドカくらいしか、遠距離系統の技は持ってないんだし……」

 

「それでも、よ。ここは日本の貿易港としても大事な場所なんだから、被害が最小限に留められるなら、それに越した事はない。

あとは世間への言い訳ねぇ……、爆発事故って事で世間は信じるかしら……」

 

「どうだろうな……いっその事、どこかの国のテロリストって言った方が納得するんじゃないのか? そんで、犯人たちは数名を確保し、主犯格の奴は混戦で死亡って事にすれば……」

 

「ここは日本よ? 死亡なんて出たら自衛隊の面子が潰されるわよ……。でも、そっちの方が建設的かしらね……死亡したのは無しにして」

 

「あはは……だよな。……さてと」

 

 

 

 

ゆっくりと立ち上がる一夏。

それに応じて刀奈も立ち上がり、愛刀を左腰に差した。

 

 

 

 

「みんな、準備はいいか?」

 

 

 

 

視線を一夏の後方へと向ける。

薄桜色の長い髪が潮風に舞う。そして、その視線の先では、臨戦態勢を整えたメンバーが集まっていた。

 

 

 

「私はいつでもいいぞ。早く行こうぜ……!」

 

 

 

黒のコンバットスーツにライトアーマーを身につけ、あくまで最小限の装備を整えた姿に、アスペクトである小太刀《幻舞》を後ろ腰に装備している幻術魔法の使い手、マドカ。

 

 

 

「右に同じく……。準備に抜かりはない……!」

 

 

 

更識家の家紋が入った和装型バトルスーツ。

伸縮性と耐久性に優れている白梅色のスーツを見に纏い、右手人差し指にはめたアスペクトである指輪《プロメテウス》が光る。

闇黒魔法の使い手、簪。

 

 

 

「無論だ。この時のために、技を覚え、磨き、力をつけたんだ……ッ! 負けるつもりは毛頭ない!」

 

 

 

 

確固たる覚悟を胸に秘め、刃を鍛えてきた。

使える魔法はまだ少ない……だが、制御と威力は申し分ないレベルまで鍛え上げられた。

その手にしている手袋のアスペクト《ブリュンヒルド》。

最強と謳われた恩師のようになりたいと願い、思いを込めた名前だ。

 

 

 

 

「私も……何時でもいいわよ? 一夏」

 

 

 

 

簪と同じく更識家の家紋が入った紺色の羽織を、中に着た黒を基調にしたコンバットスーツの上から羽織る刀奈。

愛刀である《蒼月》の柄をそっと撫でるその姿は、時代劇に出でくる剣客を思わせた。

 

 

 

 

「よし、そんじゃあ一丁、派手に行きますか!」

 

 

 

潮風がまた吹く。

それによって一夏の髪と白いミッションスーツのコートが靡く。腰にさしている剣。魔剣《トワイライト》を抜き、コンテナを飛び出す。

コンテナからコンテナへと飛び越えて行き、最短距離でバーサーカーが潜伏ているであろうと思われる場所まで向かう。

すると、後ろから付いてきていたマドカがいきなり前に出て……。

 

 

 

 

「悪いけど一番槍はもらうぞ! 射殺せ! 《イリュージョン・ブレード》ーーーーッッ‼︎」

 

 

 

突き出した《幻舞》は藍色の光とともに、不可視の刃を飛ばした。

そして向かう先にあるコンテナへと突き刺さると、コンテナの壁をいとも簡単に突き破り、中にいたものを突き刺した。

 

 

 

「手応えあり……さぁ、どう出る?」

 

 

暫く静観したのち、反応がなければ周囲を警戒しつつ、接近する予定だったのだが、それも取り越し苦労だったようだ。

 

 

 

「ヌオオオオオォォォオオオオッッーーーー!!!!」

 

 

 

 

港内に響いた雄叫び。

弾けとぶコンテナが、中を舞って広範囲に散らばる。

そして、そこから現れた猛獣の如きオーラを纏った大男。

ラウラの追い求めた仇討ちの相手。《バーサーカー》。

 

 

 

「っ! 見つけた……ついに見つけたぞ、バーサーカーっ!!!!!」

 

 

 

もはや少女とは言えないような叫び声。

一気に殺気を纏い、魔力を放出するラウラ。

その目には怒りや憎しみ、殺意の色が見えていた。

 

 

「作戦通りに行くぞ。あいつの相手は俺と姉さん、マドカでやる。ラウラは中距離からの援護狙撃と、簪は遊撃。行くぞ、みんなッ!!!!!」

 

「「「「おおっ!」」」」

 

 

五人同時にリベレイトし、一夏、刀奈、マドカの三人は、バーサーカーに向けて近接戦を仕掛ける。

ラウラと簪は左右に大きく動き、バーサーカーを包囲する。

 

 

 

「おおおおおッ!!」

 

「ーーーーッ!!」

 

 

 

一夏のトワイライトと、バーサーカーのブレードが交錯くる。

それと同時に、空気を弾くようにして響き渡る鋼と鋼がぶつかりあう音と、刃鋼同士が削り合い、四散する火花。

そして何より、互いに渾身の力を込めた一撃であるために、凄まじい衝撃が波のように広がる。

 

 

 

「ぐっ!? 重っ!」

 

「オオオオーーーーッ!」

 

「うおっ!?」

 

 

 

鍔迫り合いも一瞬の出来事だった。

バーサーカーの無類な豪腕によって、一夏は軽々と吹き飛ばされてしまう。

空中に放り出された一夏。途中でくるっと体を回転させ、体勢を整えて着地し、トワイライトの剣先をバーサーカーに向けたまま、構え直す。

 

 

 

「このパワー……マジ化け物だな……。刀奈姉! マドカ! 正面から打ち合うな、潰されるぞ!」

 

「了解!」

 

「分かった!」

 

 

 

 

一対一ではパワーで押し負ける事は分かった。

だから、今度は三人がかりで包囲していく正面は変わらず一夏。右からマドカが攻めて行き、左からは刀奈が攻めていく。

 

 

 

「うおおおおっ!」

 

「ムゥンっ!」

 

 

 

二撃目となる一夏の上段唐竹をバーサーカーは片手で持ったブレードを振り抜くことで対処し、今度は左から来る刀奈の抜刀を素手で受け止めた。

 

 

「カァアアーーーっ!!!!!」

 

「うっそっ!?」

 

「姉さん!」

 

 

 

バーサーカーの背後に回り、イリュージョン・ブレードをバーサーカーの頭部に向かって放つマドカ。

だが、これをバーサーカーは “まるでどこに来るかがわかっていた” かのように頭を動かして避ける。

 

 

 

「はっ?! こいつ、イリュージョン・ブレードか見えてるのか!?」

 

「そんな馬鹿な……!?」

 

 

 

そう声をあげたのは一夏だった。

一夏自身、マドカと交戦経験があるためわかっているが、イリュージョン・ブレードは全く見ることができない不可視の剣だ。

それを一度は食らったとはいえ、二撃目ですでに躱せるとは思えない。

一夏とて、自分の魔法……ストライク・ビジョンによる予知があった為に、対処できたところが大きい。

 

 

 

「っていうか、こいつ本当に理性を失ってるのか……?」

 

 

 

ラウラの話では、再三にわたる応答にも答えず、ただひたすらに目の前の敵を殲滅していったとか……。

ゆえに、理性も持たない狂った戦士……《バーサーカー》と呼称したのだが、そのバーサーカーは、今一夏、刀奈、マドカを相手に、理性を失って、ただ暴れているだけで、この三人をいなして行っている。

 

 

 

 

「それは本当だろうな。だが、こいつの動き一つ一つが、並の武芸者の技術を遥かに超えているんだ……。

これは、生半可な手じゃ崩せないぞ、一夏」

 

「…………仕方ねぇか。なら、俺も本気で……殺す気で行くぜーーーー‼︎」

 

 

 

 

マドカから渡された弾丸を受け取る。

その弾丸は、トワイライトが用いる魔弾の弾丸。その中には、すでにマドカの魔力を充分に充填している。

それを握り、トワイライトのカートリッジに装填する。

 

 

 

 

 

「ユニオン! 《イリュージョン・ブレード》!!!!」

 

 

 

 

トワイライトの引き金を引く。

その直後から、トワイライトを通じて膨大な魔力の本流が、一夏を包む。

ユニオン。タイプ《イリュージョン・ブレード》。

トワイライトの刀身が変化し、日本刀の形へと変化する。

そして、その刀身を包む藍色の粒子が、刀身を消していった。

刀身が変化してゼロコンマ数秒で刀身が消える。

バーサーカーとは言え、見えていない刀身の長さを対処するのは難しいはずだ。

 

 

 

「第二戦目……! おっ始めるかっ!!」

 

「グオオオオオォォォーーーーっ!!!!!」

 

「はああああああーーーーっ!!!!!」

 

 

 

向かってくる一夏めがけてブレードを振り下ろす。

常人ではありえない速度でISブレードを振り、その刃が一夏の脳天めがけて叩き割るかと思いきや、一夏は即座にトワイライトの刀身を当て、後方へと斬撃を受け流し、今度はお返しとばかりにがら空きになっていたバーサーカーの胴体を斬り裂こうとするが、それを阻むようにして振り下ろしたはずのブレードで防ぐ。

 

 

 

「くっ! 出来るな……ならばっ!」

 

 

 

 

出し惜しみ無しにバーサーカーに斬りかかる。

が、バーサーカーはその斬撃すらも対応してくる。

しかも一夏が両手で剣を握って、威力、速さを上げているにもかかわらず、こっちは片手で捌いている。

 

 

 

 

「近接戦で一夏と張り合うのかよ……!」

 

 

 

一夏と対戦経験のあるマドカが言う。

正直なところ、一夏にとっての近接戦……クロスレンジは絶対的な距離。

だが、バーサーカーは一夏の速度に対抗するために、あえて威力を下げ、片手によるスピード勝負に持ち込んできたのだ。

 

 

 

「んオオオォォォッ!!!!」

 

「うおっ!?」

 

 

 

迫るバーサーカーのブレード。

それをトワイライトで受け止めるが、パワーの差は歴然。一夏の体が軽々と浮き上がり、後方へと大きく弾き飛ばし、弾き飛ばされた一夏はたくさん積まれたコンテナの山へと激突する。

 

 

 

「がはっ!」

 

「一夏っ!」

 

「姉さん! 来るぞ!」

 

「ちっ!」

 

 

 

飛ばされた一夏の方へ向かおうと思ったが、すでに目の前まで来ていたバーサーカーの猛攻によってそれを阻まれてしまう。

蒼月による連続攻撃。絶え間なく斬りかかる刀奈の猛攻も、バーサーカーは驚異的な反応速度でいなしていく。

 

 

 

「っ! しぶとい……っ! というより、本当にやるわねこの男!」

 

「姉さん! 私も魔法で合わせるぞ!」

 

「了解!」

 

 

 

バーサーカーと打ち合っていた刀奈が一旦下がり、刀を鞘に納める。

そして、一気にまた懐へと走り、蒼月を抜刀。

 

 

 

「零閃ーーーーっ!!!!!」

 

「ムウッ!」

 

 

 

 

刀奈の出せる最速の剣技。

目では追えないはずの速度で放たれた剣閃は、バーサーカーの首を捉えたかと思ったが、寸でのところでバーサーカーは紙一重でこの斬撃を躱した。

刀奈の零閃が斬り裂いたのはバーサーカーの髪の毛数十本分くらいだろう。

 

 

 

「くっ! これも躱すのっ!?」

 

「オオオオッ!!」

 

「しまっーー!」

 

 

抜刀術の後は隙が生じる。

そこにつけこまれたように、バーサーカーのブレードが横薙ぎから一閃。

今度は刀奈が絶体絶命になるかと思いきや……。

 

 

 

「むううっ!?」

 

 

 

放たれるはずのブレードは、寸でのところで止まっていた。

いや、正確にはブレードではなく、それを握っていた腕そのものが止められていた。

よく見ると、ブレードを握っていた腕からは、何かが刺さっているような後と、そこからにじみ出る血が肌を伝って、地面に落ちる。

 

 

 

「っ! マドカちゃん!」

 

「わかってる!」

 

 

 

刀奈がその場を飛び退き、後ろへと大きく退がる。

対して、幻舞を振るうマドカ。

その刀身は藍色の粒子が包み込んでおり、幾重にも重ねられた剣閃の軌道を描いていた。

 

 

 

「《インビジブル・フィールド》‼︎ これでくたばりなっ!!!!!」

 

 

 

ドサドサドサっ!!!!!

 

 

 

「ごおおおぉぁぁああああっーーーー!!!!」

 

 

 

 

マドカの半径50メートル圏内において、自由にイリュージョン・ブレードを使うことのできる魔法《インビジブル・フィールド》。

その無数の刃がバーサーカーの腕だけでなく、体全身を貫く。

 

 

 

「ぬおおおおっーーーー!!!!」

 

 

 

 

猛るような絶叫。

その体からそこらじゅうに飛び散る鮮血。

おそらく筋肉や筋だけではない、斬られた箇所は内臓にまで及ぶだろう……。大量の血がバーサーカーの足元に流れ出る。

そして、暴れていたバーサーカーは動きを止め、その場で膝立ちのまま動かなくなった。

 

 

 

「っ…………ふぅ〜、これで大人しくなっただろう」

 

「うーん……でもちょっとやり過ぎた感はあったわよねぇ〜」

 

「んなこと言ってもさ〜、一夏ですら相手にならなかったんだぜ? そんな奴を相手に、殺さずに止めろとか、無茶だって」

 

「まぁ、それもそうね」

 

 

 

 

 

妙に納得しながら、刀奈とマドカは動かなくなったバーサーカーを見る。

その後方では、倒れている一夏のところに簪とラウラが駆け寄り、一夏を起こしていた。

 

 

 

 

「痛ってぇ〜……」

 

「大丈夫か、一夏?」

 

「あぁ、大丈夫だ。ちょっと強く打っただけだからな」

 

「いや、あれで大丈夫だと言われてもな……」

 

「なに、魔法で肉体の強化をしていれば、このくらいの痛みなんて軽いものさ。それより……」

 

 

 

 

そう言って、一夏はバーサーカーの方へと視線を向ける。

そこには血だらけになったバーサーカーと、その近くで様子を見ている刀奈とマドカの姿。

 

 

 

「簪、戦いは終わったのか?」

 

「うん。一夏が行動不能になってた間に、決着がついていた……」

 

「そうか……ラウラ、こんなあっさりとした感じだったが、これで任務完了……って事でいいのかな?」

 

「何を言う……お前たちのおかげで、奴を仕留められたんだ……これは大きな戦果だと言ってもいいさ。

まぁ、私も奴に一矢報いてやりたいと思ってはいたのだが……そうしなくてもいいくらいに、奴を追い込んでくれた……。私は、それでも充分だ」

 

「っ…………そっか。後は家の人間に任せるか……調べられることは調べておきたいからな……」

 

 

 

 

一夏がラウラとの会話を終え、再び視線をバーサーカーの方へと向けようとした……その時だった。

 

 

 

 

キイィィィーーーーンっ!

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

一夏のストライク・ビジョンが発動し、未来を見せる。

それも、バーサーカーが “何事も無かったかの様に起き上がる” というビジョンが見てたのだ。

 

 

 

「ま、まさか……っ!」

 

 

 

視界にバーサーカーを捉える。

それと同時にこちらに向かって歩いてきていた刀奈とマドカの二人も捉える。

その後ろでは、再び動こうとしているバーサーカーの姿もあった。

 

 

 

「っ!! 刀奈姉! マドカ! 後ろだッ‼︎」

 

「えっ?」

「はっ?」

 

 

 

 

そして、二人も捉えた。

いつの間にか、マドカの魔法によって付けられた傷を完全に癒しきって、ブレードを力強く握る狂戦士の姿を……。

 

 

 

 

「ウオオオオオオオオーーーーっ!!!!!」

 

「「「「「っ!!!!!?」」」」」

 

 

 

 

復活を宣言するかの様に、再びバーサーカーの口から発せられた咆哮とも呼ぶべき叫び。

一気に戦闘モードへと移行した刀奈とマドカも、一旦距離を置くために、バーサーカーから離れる。

 

 

 

 

「どういうこと!? バーサーカーはさっき……っ!」

 

「わからない……でも、ありえない……! 心臓を外したとはいえ、なんであの深傷が一瞬で治ってんだよっ!?」

 

 

 

 

 

目の前で起こっている事象に、驚くことしか出来ないでいた。

だが、バーサーカーはそんな事御構い無しとばかりに、再びブレードを振り下ろす。

 

 

 

「オオオオっーーーー!!!!」

 

 

 

振り下ろされたブレードが地面に食い込む。

その衝撃によって、バーサーカーの前方の地面が衝撃波とともに砕け、飛び散る。

 

 

 

「っ! 回避っ!」

 

 

 

 

一夏が叫ぶ。

刀奈とマドカは左右に飛び、簪と一夏とラウラはコンテナの山を登って回避する。

 

 

 

「くそっ……なんなんだよこいつは……っ!」

 

 

 

一夏が駆ける。

高速で走って、そこからの鋭い一撃。鋼同士が激しくぶつかり合った時に起こる甲高い音が、まるで波紋のように広がっていく。

 

 

 

「くっ!」

 

「ヌウウウ……ッ!!」

 

 

 

 

そのまま鍔迫り合いの状態で競っている。

その場から発生する魔力の波動もまた、一際大きくなり、戦闘の激しさを物語っている。

 

 

 

 

「一夏! 躱せっ!!!」

 

「っ!?」

 

 

 

 

突如後ろから伝わる指示。

咄嗟にバーサーカーのブレードを弾き、一夏は右側に飛び退く。

 

 

 

「《アイス・ボム》っ!!」

 

 

 

その言葉の直後、バーサーカーの体にぶつけられる氷の礫。大きさはソフトボールのくらいの大きさだろうか……。

その礫が複数、バーサーカーの体に触れた瞬間、一気に弾けとび、その場に耳を突くほどの轟音と、白く冷たい爆煙が広がった。

 

 

 

 

「っ……! これは新しいやつね……」

 

「あぁ……着弾と同時に爆破。原理は普通の爆弾と一緒さ。それを魔力の放出で再現してるんだと」

 

「まだまだ行くぞ!」

 

 

 

続いてラウラが右手を地面につける。

その瞬間、ラウラの周りが凍りつき、氷のフィールドを形成していく。

 

 

 

「《フォートレス・スタンス》っ!!」

 

 

 

 

厚い氷の壁がラウラの前から現れ、それがやがて城壁のように形成されていく。その前方に四門、後方三門、ラウラの両サイド二門ずつの、大口径のキャノン砲が形成された。

その名の通り、まるで “要塞” のようだった。

 

 

 

 

「ファイヤーーーーっ!!!!!!」

 

 

 

ラウラの掛け声に合わせ、鳴り響く号砲。

計十一門のキャノン砲から、次々と氷の砲弾が飛んでいく。

これに対してバーサーカーは迎え撃とうとしたが、ふとした瞬間、自分の体が動かない事に気づいた。

 

 

 

「ムッ?!」

 

「逃がさない……っ!」

 

 

 

 

よく見ると、バーサーカーの体を水色の幕が覆っていた。

それは以前、マドカとラウラの決闘を止めた時に使った魔法。

 

 

 

「《ガイヤ・フォース》……これで避ける事は出来ない……!」

 

 

 

その空間全てに重力を集中し、相手の動きを完全に止める魔法。

どんなに屈強な肉体を持ったバーサーカーでも、重力には勝てないらしい。

そして動けぬまま、ラウラの放った砲弾全てが、バーサーカーに着弾したのだった。

 

 

 

 

ドンっ! ドンドドドンっ!!! ドンっ!!!

 

 

 

「オオオオォォォオオアアアアアアッーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

再びの絶叫。

串刺しで倒れないのなら、火力で圧倒的に吹き飛ばす。

あたり一面には、白い霧が漂い、ライトアップされていた現場では、ダイヤモンドダストが見られていた。

これがもう少しロマンチックなシュチュエーションならば、問題なかったのだが……。

 

 

 

 

「これで……」

 

「どうだ…………」

 

 

 

互いの魔法の合わせ技で、攻撃を成功させた簪とラウラの二人。

問題は、攻撃を受けたバーサーカーがどうなったか……だが。

 

 

 

「っ……あれは……」

 

 

 

 

霧が晴れてきた。

そこには、身体中を氷漬けにされているものの、微動だにしておらず、仁王立ちの状態で待ち構えていたバーサーカーの姿があった。

 

 

 

「おいおい、マジかよ……!」

 

「なんなのよ、こいつ……!?」

 

「あれだけの攻撃を受けてまだ……」

 

「立っているなんて……っ!」

 

「不死身なのか……?!」

 

 

 

 

全員が絶句するほかなかった。

目の前の男は、現代ではありえない攻撃をその身に受け、死んでもおかしくないほどの傷を負っているにもかかわらず、それでも立ち続けている。

その姿にすら、恐怖する。もはや目の前の男は《バーサーカー》なんて呼ぶべきではない……その姿は《アンデット》……不死身の化物と言ってもいいだろう。

 

 

 

 

 

「オオオオォォォーーーーっ!!」

 

 

 

 

再三にわたる雄叫び。

これでもう、打つ手なしと思ったが、それでも諦めていないものが一人。

 

 

 

「上等だ……っ! いいぜ、殺しても死なないって言うなら、死ぬまで殺し尽くしてやるだけだっ!!」

 

 

 

すでにトワイライトの刀身は元の剣の状態に戻っており、《イリュージョン・ブレード》の形態を解き、刀身が露わになっていた。

 

 

 

「これが出来うる限り、最後の手だ。ラウラ、こいつに魔力を充填しておいてくれ」

 

 

 

そう言って、一夏はラウラに弾丸をパスすると、ラウラはそれに魔力を充填し始める。

 

 

 

「刀奈姉、マドカと一緒に時間を稼いでくれないか?」

 

「オッケー♪ 時間はどれくらい?」

 

「ラウラの充填が終わるまでだな……いけるか?」

 

「無論よ……ねぇ、マドカちゃん」

 

「当然だ」

 

「よし、じゃあ頼んだぜーーーーっ!」

 

「「極めて了解ーーーーっ!!」」

 

 

 

再び刀奈とマドカから仕掛ける。

右に左に、縦横無尽に得物を振るい、バーサーカーを牽制していく。

 

 

 

「《ダンス・タイム》っ!!!」

 

「《インビジブル・フィールド》っ!!」

 

 

 

二人の魔力が増大し、バーサーカーは迎撃しようとブレードを振り上げるが……。

 

 

 

ドオォォォーーーーンっ!!

 

 

 

「ムゥッ!!?」

 

 

 

突如襲った重力による加圧。

体全体が重力に圧し潰されるのではないかと思うくらいの力を受けていた。

その技の出処は、当然……。

 

 

 

 

「《ナイトメア・スフィア》……!」

 

 

 

 

両手を前に突き出し、水色の魔力で生成した魔法陣のようなものに手のひらをかざす。

簪の魔法によって、再びバーサーカーの動きは抑えられた。

その隙に刀奈とマドカがバーサーカーに斬りかかる。

蒼月の止まることのない剣撃と、無数のイリュージョン・ブレードが体を斬り刻む。

 

 

 

「オオッ……ォォォオオオアアアーーーーっ!!!」

 

「ぐっ!」

 

 

 

重力によって動きを止めていたバーサーカーが動き出した。

本来ならばありえない。

その術をかけている簪が一番よくそのことを理解している……だが、今目の前にいる男は、それを破ろうとしているのだと理解した。

そしてそれを可能にする強靭な肉体。魔法による強化……だけではない。もともとが優れた武芸者であるが故に、その肉体の基本的な才能……野生や膂力などと言った、その人間が持つ全ての才能を、この男は持っているのだろう。

 

 

 

「っ〜〜〜〜!!? ダメッ、もう保たない!」

 

「いや、もう大丈夫だ…………っ!」

 

 

 

 

そう言ったのは一夏だった……。

充分に回復させた一夏は、ゆっくりとバーサーカーに向かって歩いていく……。

 

 

 

「よし! こちらも充填完了だ! 一夏、受け取れ!」

 

 

 

弾丸に魔力を充填していたラウラから、その弾丸を受け取る。

トワイライトに魔力を通して、カートリッジを出す。その中に入っていた、マドカの魔力を充填していた弾丸を取り出して、ラウラからもらったものを装填する。

 

 

 

 

「準備完了……刀奈姉! マドカ! あとは任せろ!」

 

「ようやくね……!」

 

「遅いんだよっ……!」

 

 

 

 

二人は毒づきながらも、待っていましたとばかりの笑みを浮かべては、後方へと離脱する。

そして、ちょうどその時を狙ってなのか、バーサーカーが簪の魔法を打ち破った。

 

 

 

「オオオオォォォっ!!!!」

 

 

 

重力の束縛から解放され、再び闘気をあらわにするバーサーカー。その視線の先には、トワイライトを構えている一夏の姿がある。

 

 

 

「大したもんだよ、あんたは。俺たち五人がかりで相手してるのに、倒せなかった奴は初めてだぜ……」

 

「グウゥゥーーーーっ!!」

 

「だが……これで終わりだ……っ!」

 

「オオオオオオオオーーーーっ!!!」

 

 

 

一夏の宣言を聞いてか、さらなる覇気を見せる。

これまで以上の魔力の放出。

両者ともに引かない。

これが、最後の一戦になると、誰もが思った。

 

 

 

 

「この一撃……手向けとして受け取りなーーーーっ!!!!」

 

 

 

 

その言葉を言い放ち、一夏は勢いよくバーサーカーに向け走り抜ける。

その速度はどんどん上がっていき、一切の躊躇がない。

 

 

 

「オオオオオオッ!!!!」

 

 

 

 

対してバーサーカーはそんな一夏を見て、ブレードを大きく振りかぶり、地面をすくい上げるように振り抜く。

ひび割れた地面が土石流を起こし、一夏を襲う。

だが、一夏は躱すどころかそのまま突っ込んでいく。

破片で顔の所々を傷つけながらも、一切スピードを落とさない。

その迷いのなさに、バーサーカーも危機を感じ取った様で、向かってくる一夏を今度こそ仕留めようとブレードを一閃。土石流の中を、横薙ぎに放たれた銀色の閃光が走った。

 

 

 

 

「それも読めてるぜっ!!!!!」

 

 

 

だが、一夏の魔法は回避魔法。

それも数秒先を見通す魔法……ならば、フェイントや追撃の類は全てを見抜いてしまう。

 

 

 

「せいやあああああっーーーー!!!!」

 

 

 

バーサーカーの一撃を躱して、すかさずトワイライトを振り抜いた。

 

 

 

 

「ユニオン‼︎ 《デビル・アイス》っ!!!」

 

「ーーーーーーーーッ!!!!?」

 

 

 

思いっきり振り抜くと同時に、トワイライトの引き金を引いた。

その瞬間、トワイライトの刀身が凍てつく氷の刃へと変化していく。

ラウラの魔法《デビル・アイス》の魔力を付加した状態の刃が、まるでバターを溶かして切っているかの様に、バーサーカーの巨大な肉体をいとも簡単に斬り裂いたのだ。

 

 

 

ザザーーーーっ!!!!!!

 

 

 

 

放たれた一閃。

その余波なのか、バーサーカーの立っていた地点から半径10メートルが凍りついた。

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……これで、終わりだ………!」

 

 

 

 

全てを出し切ったかの様にその場で膝をつく一夏。

トワイライトも元の状態に戻り、カートリッジから弾丸が飛び出し、その場に転がる。

 

 

 

「一夏!」

 

 

 

そんな一夏を心配して、ラウラがこちらに走ってくるのが見えた。

その表情はとても心配そうで、こっちに急いで走ってくる姿はどこか愛らしさがあった。

 

 

 

 

キイィィィィーーーーンッ!!!!

 

 

 

 

「っ!? はぁ……?」

 

 

 

再び発動したストライク・ビジョン。

だが、今回ばかりは一夏も信じれないでいた。

完全に倒したはず……現に今バーサーカーは真っ二つに斬り裂かれている状態でその場に倒れている。

なのに……

 

 

 

 

(っ! これは……!)

 

 

 

 

改めてバーサーカーの体を見た。

先ほど一夏の斬り裂いた部分は、まるで時間が巻き戻ったかの様に傷がみるみるうちに治っていくのだ。

 

 

 

(これは……魔法……? でもこんな魔法、見たことないぞ俺は……! これは回復や再生なんてものじゃない…………まさか、こいつっ!?)

 

 

 

 

そこで一夏はあることに気づいた。

一夏達が身につけている魔法は基本的な系統魔法。それらはそれに応じた魔法攻撃、支援魔法を発動させられる。

だが、それらの魔法とは別に、ある一つの特殊な魔法が存在する。

それゆえに名付けられた名を……

 

 

 

「こいつッ、《特異魔法》の使い手だったのかっ!?」

 

 

 

 

《特異魔法》……系統魔法のどの魔法にも属さない特殊な魔法。

それらの魔法とは違い、特殊過ぎた魔法であるがゆえに、その力は絶大。そして、その魔法を使える使い手自身が少ない為、どの様な魔法なのかもわからない。

 

 

 

「一夏、どうした?」

 

「っ! ラウラ、とにかく今すぐ離れろ!」

 

「っ?! どういう事だ?! 奴はもうーーーー」

 

「こいつはまた生き返る! こいつは特異魔法の使い手だ!」

 

「っ!? なんだと!」

 

 

 

 

 

起き上がった一夏は、急いでラウラの元へと走り、ラウラの腕を引っ張って走り去る。

 

 

 

「っ!? これはーー?!」

 

「どうした、簪?!」

 

「お姉ちゃん、マドカ、私たちもここから離れよう!」

 

 

 

 

一夏たちの行動に呆気にとられていた刀奈とマドカと簪。

だが、簪がふと何かに気づき、刀奈とマドカの腕を掴む。

 

 

 

「離れるって……なんで?!」

 

「今こそあいつを殺れるチャンスだろ?!」

 

「ダメなの! ここら一帯を包んでいた結界に何かが引っかかってる! もしかしたら、外からの攻撃かもしれないの! だから早く!」

 

「っ! そう言う事ね! それじゃあ今すぐ離脱するわよ、二人とも!」

 

「うん!」

「わ、わかった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石は一夏だね…………でも、そいつはもっと殺し尽くさないとダメなんだよねぇ……」

 

 

 

 

 

そう言って、狙撃銃を構えている “少女” がいた。

その場は戦闘が行われている貿易港を一望できる高層ビル屋上で、少女はその狙撃銃で今にも回復しつつあるバーサーカーに照準を合わせている。

 

 

 

「……だから、最後は “僕” が決着をつけるよ……っ!!」

 

 

 

 

そこにはもう、一人のスナイパーとしての面持ちを持った少女の姿があった。

 

 

 

 

「リベレイトーーーーっ!!」

 

 

 

 

手に持つ狙撃銃に魔力が集中する。

黄金色の魔粒子が魔法陣を形成していき、やがてそれが神速魔法の魔法陣を形成する。

 

 

 

 

「闇を斬り 大地を照らす聖光 我が敵を撃ち抜き、灼き尽くし、滅せよーーーーっ!!」

 

 

 

 

詠唱を唱える。

全ての敵意、殺気、使命感や覚悟……それらの感情の全てを魔力とともに銃に注ぎ込む。

 

 

 

「閃けっーー‼︎ 《マテリアル・バースト》っ!!!」

 

 

 

 

 

全ての魔力が銃口から一点に放出された。

向かう先にはバーサーカーがおり、放出された光の奔流は、一切の戸惑いも躊躇もなく、その全ての光をバーサーカーに浴びせた。

 

 

 

 

 

 

バアアアアァァーーーーンッッ!!!!

 

 

 

 

「ヌオオオオオォォォオオオオーーーーっ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

貿易港一帯が、凄まじい閃光に包まれた。

だがそれも一瞬の事。

その光は着弾と同時に大爆発を起こしたものの、その数秒後には、その光が収束して虚空へと消えていった。

どうやらこの少女もまた、余計な犠牲を出したくないと思っていたらしい。

それが、“同じ学園に在学している生徒” ならばなおさらだ。

 

 

 

 

「…………着弾確認……これなら……っ!!」

 

 

 

 

 

そう言って、狙撃銃のスコープレンズから顔を覗かせた。

狙撃成功を信じて疑わないその顔は、ようやく標的を仕留められたと喜ばんとしていたのか、とても猟奇的であり、狂気的な笑みを浮かべていた。

潮風に揺れる背中まで伸びた金色の髪を後ろで一本に結んだ少女。

その中性的な顔立ちから、男の子にも見えるその少女は、世界で三番目に男でありながらISを動かしたと話題になった時の人。その名は…『シャルロット・デュノア』。

その眼下に広がるのは、巨大な魔法によって焼失した焼け野原だけだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 





バーサーカーは知っての通り、fateからの出演でした!
正確には、特異魔法の使い手。
特異魔法《ゴットハンド》
神話に登場する英雄と同じ、12の命を持つことで、12回殺さなければ、死なない体。
その副作用として理性を失い、まともな会話をする事は叶わない。



っと、こう言う感じでいいかな?
感想、よろしくお願いします!


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