IS〜異端の者〜   作:剣舞士

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なんか思い付いたので早速、更新します!


私ってもしかして、こんなダークな話を書くのに向いているのでは……?!
まぁ、冗談はさておき、第2話目です。


第2話 解放

某国 某所

 

 

 

人気のない山奥。そこに一人の少女? いや、少年がいた。華奢な体に薄桜色の髪を腰の辺りまで伸ばし、アメジスト色の瞳で辺りを見回す少年…一夏。

少年の手には一振りの剣が。そして、足元には大量の死体が転がっていた…全員少年が持っている剣で斬られたのだろう…その証拠に少年の持つ剣には、血がべっとりと付いている。

 

 

 

(はあ〜…これで何度目だろうか…俺を殺そうとする奴が来たのは)

 

 

 

 

そう、あの襲撃事件以来、一夏は各地を転々としていた。特にどこへ行くわけでもなく、ただひたすら歩き続けている。そんな事をしていると、トレイラーの者たちに感づかれ、時折命を狙われる始末だ…だが、覚醒した一夏を止める事が出来るものは居らず、すべて返り討ちにされているのだ。

 

 

 

(別に来ても構わないけど、自分達が死ぬと言う可能性は考えなかったのか?)

 

 

 

トレイラーで施された暗殺術の数々…剣術、戦闘術、破壊工作…様々な物を学ばされ、その頂点に立った一夏に敵う者などいないだろう。

そうして、追っ手の姿ももういないので、死体の上に座り、男達が持っていた携帯食を食べる。いくら覚醒して人間をやめたと言っても腹は減るのだ。

 

 

 

「はむ……うーん、そろそろ飽きていたかなぁ〜」

 

 

 

何日も同じ物を食べているため、そろそろ違う物が食べたくなる。しかし、そんな贅沢を言っていられるほど、今の自分に自由はない。なので、我慢してそれを食べ続ける。すると、突然頭の上に手を置かれた。

 

 

 

「ッ…?!」

 

「おっと!? すまんすまん、驚かせてしまったか」

 

 

反射的に持っていた剣の柄に手をかける。そして、今しがた手を置いて来た相手を見る。そこに立っていたのは、見るからに中年のおっさんだった。

 

 

 

「おっさん…だれ?」

 

「うん? 人に名前を尋ねる時は、まず自分から名乗るのが筋じゃないかな?」

 

 

 

今この場に置いて、ニヤリと笑うおっさん。そんな事を言う奴も言う奴だが言っている事は間違いないので素直に答えた。

 

 

 

「…………一夏。織斑 一夏だよ」

 

「ほほうッ! お前さんが…」

 

「なんで知ってんの? 俺の事」

 

「そりゃあ〜お前さんに捜索願が出されていたからな〜。しかし、男だと聞いていたが、ホントは女の子だったか」

 

「いや、ごめん。こんなんでも男なんだ」

 

「なにッ!? 男? その容姿でか?!」

 

 

 

まぁ、今の一夏を男だと言って直ぐに信じる者はいないだろう。このおっさんの反応は至極当然だ。

 

 

「それで? おっさんは誰なの?」

 

「おぉっと、すまんすまん。私は更識 楯無という者だ」

 

「更識……?」

 

「お前さんも聞いた事があるだろう。日本の対暗部用暗部の家系でな…私はその16代目当主なんだ」

 

 

 

 

トレイラーにいた頃に何度か聞いた名前、『更識』。代々日本を中心に公に出来ない事件などの解決を手伝ってきた暗部の家…そして、その当主は代々『楯無』と言う名前を襲名するとか…

 

 

 

「その更識さんが、俺に何の様だったの?」

 

「いやな、最近ここらで人を喰らう鬼が出ると聞いてきてみたんだが…お前さんがそうだったのか。何とも可愛い鬼が出てきたもんだ」

 

 

 

 

やはり、その事か…いずれは誰かに伝わるであろうと思っていたが、最悪だ。更識の当主が直々にお出になるとは…最悪戦闘になれば、俺もただではすまないだろう…

そう思い、俺は剣を鞘から抜き、臨戦態勢に入る。よく見ると所々刃こぼれが酷く、刀身全体が傷だらけで血がべっとり付いている。とても状態が悪い。しかし、この男を殺すには充分だ…

 

 

 

 

「ほぉ、それでお前さんはここにいる者たちと戦い、生き残ったのか?」

 

「……そうだけど?」

 

「まだ、12の子供がこれだけの手慣れた大人たちを相手に……大したもんじゃないか」

 

「……?」

 

 

 

 

褒められた…のか? この男は俺を非難するでもなく、蔑視するわけでもなく、ただ、褒めた。だから一瞬、俺が褒められた事に気が付かなかった。なんせ、今までこれと言って褒められた事がなかったからだ。

 

 

 

「だがしかし、お前さんのその力はいつかは折れる力だ」

 

「…エッ?」

 

「人に怯え、自分を守る為だけの剣だからな。その剣は、いつかは折れるだろう…」

 

「そんな事はーー」

 

「無いとは言い切れんだろう?」

 

「ううッ!? それはそうだけど……」

 

 

 

確かにこの男の言う事は理にかなっている。いずれは誰かが俺を殺そうとする…今はまだ、その人物が現れていないだけでいつかは現れるんだ…そんな時、この剣では…俺の今の剣では、負けるかもしれない。

 

 

 

「人に怯え、己を守る為の剣なんて物は捨ててしまえ…」

 

 

 

更識さんがそう言いながら、背中に背負っていた細い包みを取り出し、紐を解いて行く…するとそこから出てきたのは一振りの剣だった。

 

 

 

「敵を斬るのではない…弱き己を斬る為に。己が身を守るのではない…己の魂を…守るための剣を振るいな…!」

 

 

 

静かに俺に剣の理を伝える更識さん。しかし、その目、その表情からは並々ならぬ気迫を感じた…「この人は強い!」と。

すると、更識さんはあろう事かその剣を俺に向かって投げてきた。

 

 

 

「うわっ!? っとと…危ないだろ!」

 

「そいつはお前さんにやるよ!」

 

「えっ!? なんで…?」

 

「そいつは、例の研究所から見つかった物なんだが…見たところ特殊な鍛え方で作られていてな。おそらく、お前さんの為に作られた剣なのだろう…だから、お前さんにやるんだ」

 

「…………」

 

「まぁ、そいつの正しい使い方を知りたきゃ俺と一緒に来ればいい…そこはお前さんの自由だ。それじゃあな! 一夏」

 

 

 

 

更識さんはそう言うと山を降りて行く。その背中はとても大きくて、かっこよかった…自分もホントはあんな男になりたい、みんなから認めれる様な人間になりたいと思っていた。気づけば俺は、更識さんの服の袖を握っていた。

 

 

 

「……お前さんも来るか? 家に」

 

「けど、俺は無能だよ? みんなから蔑まれて来たんだ…出来る事はこれだけだし…」

 

「でも、それはお前さんにしか出来ん事なのだろう? だったらお前さんは無能では無いよ…お前さんにはお前さんの役割ってもんがある筈だ。それを家で見つければいいだけだ…子供が遠慮なんてするもんじゃない!」

 

「更識さん…」

 

「楯無で構わんよ」

 

「じゃあ、楯無さん。改めてよろしくお願いします」

 

「おお、よろしくだ! 一夏」

 

 

 

 

こうして、俺はやっと地獄から解放されたのだった。

 

 




次回からは更識家での事を書きます。

早くIS学園篇に突入させれたらいいなと思ってます。


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