IS〜異端の者〜   作:剣舞士

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えぇ、今回はちょっとした息抜きにと私、剣舞士と竜羽さんの作品のコラボをさせていただきました!

私の『IS〜異端の者〜』と竜羽さんの『慟哭する科学と科學』のコラボです!


それからちょいちょいと入れていこうと思ってますので、よかったら読んでください^o^




番外編EX 交わるはずの無い世界Ⅰ

そこは、何処とも言えない場所。

今までに見たこともない、もしかしたら現実の世界にはない場所なのかもしれない。

そんな所に、一人の少女……もとい、少年が立っている。

薄桜色の髪は、腰のあたりまで伸びきっており、男と言うには、いささか細っそりとした華奢な身体つき。

そして、女の子と見紛うような中性的な顔立ちをした少年。

見た人はたぶんこの少年を『男の娘』と表現するのだろう……。

 

 

彼の名前は、“更識 一夏” 。

更識家の長男にして、IS学園に通う、世界でたった二人しかいない男性IS操縦者。そして、この世の理を外した『異能の力』を持つ少年だ。

 

 

 

 

「ここは……ナイトメアか?」

 

 

ふと口走る一夏。

この場、この景色を、一夏は知っている。

何度も見てきた世界だ。彼の、彼だけが知る世界。彼の持つ剣、魔剣《トワイライト》の持つ能力。《ナイトメア》……これから起こる事象を、予知夢として所有者に見せるのだ……。

 

 

 

 

「今度は何が起きるっていうだよ……永遠…」

 

 

 

ふと視線を右に傾ける。そこには、一夏と同じ髪色をした正真正銘の少女が立っている。

だが、その格好はと言うと、黒いフリルのついたドレススカート。そして、背中が大きく開いた上着は、とても艶やかであり、扇情的な光景だ。

一夏よりも華奢なその体は、白く透明感溢れる素肌。

町などで見かければ、10人中10人は振り向き、彼女の事を見るだろう……。

しかし、そんな彼女には、似つかわしくない物が唯一つ……。

まるで中世の騎士を彷彿とさせる甲冑の存在だ。

全身身につけているわけではないが、胸当ての部分、腰回り、そして両脚とその華奢な身体を護るように付けられた甲冑は、よりその少女の存在を際立たせていた。

 

 

 

 

「いえ、たいした事にはならないでしょう……しかしーー」

 

「しかし……なんだよ?」

 

「これは本来あるはずのない事……。それ故に、何が起こるかわからない……」

 

「そうか……」

 

 

 

 

 

無表情だが、その声は透き通る様な美しい声。

その声は、しっかりと一夏の耳に届いた。

ナイトメアの予知夢は……絶対に外れることはない。

今までだってそうだった。

故にこれから起こる現象は、避けては通れない道なのだ……。

 

 

 

 

カツン……!

 

 

 

 

 

「っ?」

 

 

 

 

一夏の後方で、響き通る音が聞こえた。

振り向き、その音の出元を見る。そこに立っていたのは……

 

 

 

 

「っ!……か、刀奈姉……?」

 

 

 

見間違えるはずなどない。

水色の髪は、ショートにカットされ、そしてその毛先が、外側に跳ねている。

紅く惑わすような瞳、不敵な笑み、手に持つ扇子……。全てが自分の姉、更識 刀奈……いや、更識家17代目当主たる更識 楯無に他ならない……。

だが、何故かその姉だとは思えなかった。

いつもの不敵な笑みと扇子を持った姿、そして威風堂々と立つその姿は変わらないが、それに加え、 “全身を包む黒い外套” が、一夏を思いとどまらせる。

 

 

 

「刀奈姉……なのか? なんだよそのコート……」

 

「ふふっ……」

 

 

 

 

問いかけには答えない。

そして、その後ろからまた二つの影が現れた。

 

 

 

「っ……えっ?!」

 

 

 

一人は小柄で無表情の女の子。青い髪に碧眼で、何を考えているのかわからなそうな簪に少し似ている少女だった……。

そして、もう一人は……

 

 

 

 

「ち、千秋……?」

 

 

 

見るからに千秋だった……。だが、その腰には、十字に交差する形でぶら下げられた二刀がある。

その三人は、一様にこちらを向いていた。

 

 

 

(なんで刀奈姉と千秋が……? それにあの女の子は誰だ?)

 

 

 

疑問が次々に出てくる。

そんな中、彼らの後方で大きな影がせりあがる。

 

 

 

「ぐおぉぉぉぉーーーーーーんッ!!!!」

 

「な、なんだ!?」

 

 

 

その巨大な影はやがて形を成していき、人ならざる怪物へと変化していった。

 

 

「なんだよ……あの化け物は……!」

 

 

 

開いた口が塞がらなかった。

目の前で起きてる事象に、完全に呑み込まれていたのだ。

やがて、正気を取り戻し、永遠を呼ぶ。

すると永遠は、淡い紫色の粒子に変わり、一夏の右手の中で収束し、一振りの剣となる。

 

 

 

「くっ! リベレイト!」

 

 

 

呪文を唱え、魔法を発動させる。

だが、それと同時くらいだっただろうか、目の前の三人が動き出した。

 

 

 

「《風花》、《風花・焔》、抜刀‼︎」

 

「鎮める……!」

 

「行きましょうか……《菫蒼(アイオライト)》!」

 

 

 

目の前で千秋は刀を抜刀する。

まるで焔のような真っ赤に染まったその刀身は、妖しくも研ぎ澄まされた様な印象を与えてくれる。

そして、先ほどの声を聞いて思った。あれは千秋でなく……

 

 

「あれはもしかして……俺なのか?!」

 

 

今の一夏は男にしては高い声だが、千秋の声とは全く違う。そして、目の前にいる少年もまた、千秋とは全く違う声音だ。

そして、それだけではない。無表情な少女の体からは、黒い箱のような物が現れれ、背中に背負った飛行ユニットの様な物で飛ぶと、その黒い箱から大量のミサイルを化物の浴びせる。

 

 

「発射ぇぇーーー!!!」

 

 

叫びながら、ミサイルを発射する少女。

そして、最後の一人。

 

 

 

 

『闇より深き絶望より現れしーーー』

 

 

刀奈の影がまるで人型の様な形をとり、そしてそのまま大きくなっていく。

 

 

「ーーー其は、科学の光を喰らいし影!』

 

 

 

大きくなった影からは、途轍もなく大きな騎士人形が現れる。ISというには大き過ぎ、だからと言って、ただの模型と言うには、その存在感に、あまりにも迫力があり過ぎだ。

 

 

 

「な、なんなんだ……これは……!」

 

 

 

驚愕の眼差しを送る一夏。

だが、目の前で起きている事象は、刻々と進んでいる。

 

 

 

「やりなさいーーー!」

 

 

 

ただ一言、呟いただけだった。

それからは、戦いと言うよりも、蹂躙といったほうが正しいか……。

化け物を焔を纏った二刀で斬り刻む自分と、無表情でミサイルを撃ち続ける少女。そして、現れた騎士人形で、化け物を狩る姉の……狂気の笑みを見せる姿。

 

 

 

「アッハ、アッハハハハハーーー!!!」

 

 

 

蹂躙していく中で、やがて焔に包まれる三人。

そして、やがて焔は広がり、世界を紅く染めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ‼︎」

 

 

 

 

目を覚ます。周りを見れば、朝陽が部屋へと差し込み、外では小鳥たちの鳴き声が聞こえてくる。

 

 

 

「ん………何だったんだ……あれは……」

 

 

重々しく唸りを上げる。

ナイトメアで見た予知夢は、絶対に現実になる。それは変わらない真実だ。だが、

 

 

 

 

(二刀を操る俺……体からミサイルを発射する無表情な簪……そして、騎士人形を出現させて戦う刀奈姉……)

 

 

 

あまりにも現実から離れた現象だった。

まぁ、こちらには魔法という非現実的なものが存在しているのだが、魔法を持ってして、あの様な巨大な騎士人形を動かすことが果たして可能だろうか……?

そして、それを操るあの姉は一体何者なのか……。

 

 

 

「まさかな……」

 

 

 

 

一夏はふとすぐ隣に視線を向ける。

未だにあどけない寝顔を見せ、一夏の体を拘束する少女。一夏の姉である刀奈の姿を。

 

 

 

「うう〜ん……ふわとろオムライスゥ〜……♪」

 

(あぁ、そう言えばこの間作ってやって、大好評だったっけ……)

 

 

とても幸せそうに寝言をいう自分の姉に、心なしか癒される自分がいる。

 

 

(まぁ、こんな感じだと、あんな事にはならないだろうな……)

 

 

 

少しほっとして、いつものように起きては、歯を磨き、髪を梳かしていく。

着替えて、いつものように刀奈を起こす。

刀奈が着替え終わったら、いつものように簪とマドカと合流し、食堂へと向かう。

すると、一組の生徒たちと出くわし、挨拶しようとしたら……。

 

 

 

 

 

「あれ? 会長? え、でもさっき……」

 

「ん? 私がどうかしたのかしら?」

 

「い、いえ、さっき会長と会ったばかり……なんですけど……?」

 

「「「「…………は?」」」」

 

 

 

 

刀奈とつい先程あったと言う生徒の証言によると、生徒会室に必要書類を提出しに行って、その書類は中にいた虚さんに渡したらしく、その後帰ろうとした時に、生徒会の備品を収納しているであろう倉庫のようなところから、刀奈と千秋と見たこともない無表情の少女が出てきたらしい。

 

 

 

 

「あ、あれだ! ちょっとしたドッキリだよ!」

 

「ミステリアス・レイディの能力を使ったんだろ? な、姉さん」

 

「そうそう、ちょっと人手が欲しかったんだけど、見つからなかったから仕方なしにね! あ、あはは……」

 

「はぁー……? そうなんですね。いや〜びっくりした。それじゃあ私はこれで」

 

「ええ、ごめんなさいね。アハハ〜……」

 

 

 

一夏とマドカが咄嗟に前に出てハッタリをかまし、刀奈もそれを肯定し、簪も首を縦に振る。

何とか誤魔化しはしたが、問題が解決していたわけではない。

 

 

 

「生徒会の備品が収納してある倉庫って言ってたな……」

 

「えぇ、言ってたわね」

 

「でも、お姉ちゃんとは、今あったし……」

 

「しかも一夏と一緒ってならまだしも……」

 

「あぁ、千秋と一緒にいたって言うのがな……」

 

 

 

 

一夏の脳裏に、今朝の光景が浮かび上がった。

 

 

 

『アハッ、アッハハハハハーーー!!!』

 

 

 

狂気の笑みを浮かべて笑う姉の姿。

そして、千秋と無表情の少女……。何もかもが今朝の夢と同じだった。

 

 

 

 

(おいおい……マジかよ……)

 

 

 

少し考えあぐねたが、一夏が口を開く。

 

 

 

「俺が見てくるよ。みんなは先にメシ食っててくれ!」

 

「ああ! 一夏! …………」

 

「行っちゃったね……」

 

「どうしたんだ、あいつ?」

 

 

 

一夏は走り出し、その問題の倉庫へと向かって行った。

一同は心配はないと思ってはみたものの、やはり心配になってきた。

 

 

 

「はぁー。私も入ってくるわ……二人は私たちの分の席も取っておいて」

 

「う、うん……わかった」

 

「一応、心配ないとは思うけど、油断しないようにな」

 

「ええ、分かっているわ」

 

 

 

 

一夏の後を追う形で、刀奈が走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、この角を右に曲がれば……!」

 

 

 

一方、一夏は目的地に向かって走っていた。

先程の証言からさほど時間は経っていない……ならば、まだ近くにいる可能性は高い筈だ。

もしもナイトメアの予知夢通りならば、何かが起こる前に対処しなければならない。

そう思いながら、一夏は廊下の突き当たりを右に曲がった。

 

 

 

そして、目的の人物たちに出会った……。

 

 

 

 

(いた! あれか!)

 

 

 

一夏は立ち止まり、呼吸を整えると右手を振りかざす。

 

 

(来い、永遠!)

 

 

やがて右手にIS独特の量子が集まり、一本の剣と成す。

一夏のアスペクト、魔剣《トワイライト》だ。

そして、剣を抜き放ち、切っ先を向ける。

 

 

 

「待て!」

 

「「「っ!?」」」

 

 

 

 

一様にこちらに振り向く面々。

その顔は、やはりと言うかナイトメアの中に出てきた顔だった。

 

 

 

「な、なんだよお前!」

 

「一夏くん……待って……」

 

「…………」

 

 

 

相手は、一夏が刀一本を抜き放ち、同じように切っ先を向け、無表情の子は、徒手格闘の構えを取る。そして、そんな二人を抑えるように刀奈が前に出る。

 

 

 

「はじめに行っておくわ。私達はあなた達と争うつもりはない……どちらかと言うと、助けになってもらいたいくらいなのだけれど」

 

「助けに?」

 

「一夏ァァ‼︎ ちょっと待ちなさい!」

 

 

 

 

目の前にいる刀奈の答えに、疑問を抱いていると、後方から走ってくる影が一つ。

 

 

 

「か、刀奈姉?!」

 

「とりあえず、剣を納めなさい。まずは話を聞くことが専決よ」

 

「「「っ!!」」」

 

 

 

 

三人は、現れたもう一人の人物に驚愕した。

 

 

 

「も、もう一人の……楯無さん?」

 

「ま、まぁ、その可能性がないことはなかったけど……まさかこんなに早く遭遇するなんてね……」

 

「…………!?」

 

「っ‼︎」

 

 

 

 

両者ともに硬直する。

それもそのはずだ。目の前に自分とおなじ顔が存在するとだから……。似ていると言うレベルではなく、本人同士なのだ。似ていて当然であり、極々当たり前なのだ。だが、世界に同じ人間が存在している……そのことだけが、異常なのだ。

 

 

 

 

「まさか……本当に私が居たなんてね……」

 

「刀奈姉…」

 

「一夏、三人を生徒会室に入れてあげて、話はそこでしましょう。そう言う事でいいかしら? “もう一人の私” ?」

 

「ええ、助かるわ」

 

 

 

 

刀奈の指示に従い、一夏は剣を納め、生徒会室へと誘導する刀奈と一夏。

 

 

 

 

「えぇっと、おい、お前」

 

 

 

ふと、もう一人の一夏が呼ぶ。その視線の先には、薄桜色の長い髪をした少年に向けられていた。

 

 

 

「なんだよ……」

 

「お前の名前……」

 

「ん?」

 

「だから、お前の名前だよ! 俺は “織斑 一夏” だ! お前は一体何者だ……!」

 

 

 

 

なるほど、同じ一夏という名前。そして、IS学園の “男子用の制服” を着ている事に、少なからず疑問を抱いていたのだろう。その薄桜色の少年の正体に……。

 

 

 

「俺は、 “更識 一夏” 。言っておくが、お前と同じ男だぞ?」

 

 

 

 

 

 

一夏は素直に答えた。

そして帰ってきたのは、驚嘆の声だった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、決して交わらないであろう出会いを……俺たちはしてしまったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






いかがだったでしょうか?

本編の方も頑張って更新しますので、よろしくお願いします^o^

また、竜羽さんの作品も読んで見てください‼︎
よろしくお願いします^o^


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