IS〜異端の者〜   作:剣舞士

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新年度初更新!

楽しく読んでいただけたら幸いです!


それではどうぞ。


第18話 暴龍の戦い

IS学園から離れた海上にて、二機のISによる砲撃戦が繰り広げられていた。

 

 

 

「アッハッハ!!!! ほらほらどうしたッ!? 止まってちゃいい的だぞ!!」

 

 

 

完全にワンサイドゲームと化していた。

マドカの専用機、サイレント・ゼフィルスはセシリアの駆るブルー・ティアーズと同じビット兵器を搭載した機体。

それらを自立駆動させ、ビーム兵器での攻撃を得意とする遠距離射撃型のIS。

相手も相手で、両腕に大型のレーザーキャノンと両肩にビームマシンガンを搭載している。特に危険なのは、両腕のレーザーキャノンだ。その出力は、ブルー・ティアーズとサイレント・ゼフィルスの出力を凌駕する。

が、当たらなければ意味はない。

先ほどから、相手の黒いIS……ゴーレムⅠは、何十回とマドカに対して砲撃を行っているが、その弾は全て躱され、逆にビットの集中砲火を受けていた。

 

 

 

「はぁ〜……つまらないなぁー。これなら、織斑 千秋を相手にしてたほうがマシだったぞ……」

 

 

 

挑発してみるが、何の反応もない。それもそのはずだ。だってこのゴーレムⅠは “無人機” なのだから。

 

 

 

(全く、趣味の悪い物を作るやつはたくさんいるんだな……魔法の次は無人機か……でも、私たちの敵じゃないな)

 

 

 

そう、マドカは気づいていたのだ。戦闘を開始してからまだ数十分ぐらいしかたっていないが、相手の動きを見ていて、不審に思ったのだ。

胴体の割には腕がデカ過ぎで、ブースターの出力も通常の人が使えば、あっという間にブラックアウトし、意識が吹っ飛ぶ程の速さ。にも関わらず、両腕での砲撃や物理攻撃、超速回避などを行うあたり、普通の人間ではない。

つまり、自分たちと同じ、魔法のような特殊な能力を持っている人物か、もはや人ではないか……。

 

 

(あんな急速な動きを人間がしてたら、魂消るね……それに、さっきから機械的な動きばかりしてるからバレバレなんだよね)

 

 

マドカの集中攻撃でゴーレムの装甲は見るも無惨にボロボロとなっていた。

まぁ、人が乗ってないと分かれば、こちらとて全力全開で相手を叩きのめすだけで……。

 

 

 

「さあ! これで終わりーー」

 

 

 

マドカは最後の攻撃として、スターブレイカーを構えた。

その照準をゴーレムに向ける。そして、その引き金を弾こうとしたその瞬間……

 

 

 

 

 

キイィィィィィン!!!!!!

 

 

 

「ッ!? な、なにッ!?」

 

 

突如、無人機…ゴーレムⅠから大量の黄色い粒子が溢れ、ボロボロになった体を包む様に、黄色い魔法陣を形成していく。その魔法陣は、見間違えることのない刀奈と同じ……神速魔法の魔法陣だった。

 

 

 

「なッ! 神速魔法だとッ!? ば、バカな……」

 

 

 

ここにきて初めてマドカが狼狽した。それもそうだ…魔法を扱えるのは自分たちだけだと思っていたのだから……。

だが、目の前にいる物は、ハッキリとわかる程のしっかりとした魔法陣を形成している。

その事を改めて認識した時、ゴーレムⅠが右腕の照準をマドカに合わせた。

 

 

 

「くッ!」

 

 

咄嗟に判断して、回避行動を取るマドカ。その直後、先ほどまでマドカがいたところに、大出力の荷電粒子砲が放たれた。

 

 

「なッ! 何だよその出鱈目な出力はッ!? それに、その魔法陣……ッ!」

 

 

 

やはり納得がいかない。どこでその力を手にいれたのか、見当もつかない。

そうしている間にも、ゴーレムはマドカに対して荷電粒子砲を撃ちまくる。

 

 

 

「チィッ!! 調子に乗るなッ!」

 

 

放たれる荷電粒子砲の弾幕を突破し、ゴーレムの背後に回る。だが、即座に振り向き、再び荷電粒子砲を放つ。

 

 

「くっそッ!」

 

 

中々近づけないでいると、ゴーレムは両腕をマドカに向ける。

そして、その両腕のキャノン砲から二門の大出力荷電粒子砲が放たれた。

 

 

 

「くッ! 仕方ない……使うか…」

 

 

 

マドカはスターブレイカーをしまい、小太刀型のブレードを展開する。

 

 

 

「リベレイト……」

 

 

 

最後の言葉と共にマドカが消えた。

 

 

 

 

 

「………………?」

 

 

 

大出力の荷電粒子砲を放ったゴーレムは、マドカを視認する事が出来ず、索敵を始めた。が、見つける事が出来ず、相手が消滅したと断定し、本来の目的であるIS学園へ向おうとした………その時だった。

 

 

 

「おい、どこ見てんだ?」

 

「ッ!」

 

 

 

マドカの声に反応し、振り向こうとしたが、これは叶わなかった。

何故なら、自身の体を “無数のなにか” が貫き、身動きが取れなかったからだ。

 

 

 

「ミラージュ・アーマー……幻術ってのは相手を惑わしてなんぼのもんだ……姿を消すような術が出来たって不思議じゃないだろう?」

 

 

 

ニヤリと笑うマドカは、そのまま小太刀を振り抜く。それと同時にゴーレムの体を貫いていたイリュージョン・ブレードが細切れにし、ゴーレムは無惨にもにも四肢をもがれ、残ったのはコアが埋め込まれていた胴体のみとなってしまった。

 

 

 

「チィッ、手こずらせやがって……。まぁ、これで任務完了。虚さんに連絡っと…」

 

 

 

任務完了の報告を手短に済ませ、マドカは急ぎ学園へ戻る。

 

 

 

(それにしても……あの魔法陣……完全に神速魔法のものだった。それに荷電粒子砲も、魔力によって威力が上げられていたし…。魔法に無人機。一体誰が……?)

 

 

 

 

 

〜IS学園〜

 

 

 

「了解しました。では、その問題のコアはこちらで回収し、解析しますね。お疲れ様でした、マドカさん」

 

 

 

IS学園特別棟のとある一室にて、広範囲索敵機での監視を行っていた虚。レーダーに映された未確認機、ゴーレムの反応が消えた為、任務終了と行きたかったが、マドカから受けた “無人ISが魔法を使用した” というあり得ない報告が、頭の中に残っていた。

 

 

 

(マドカさんと一夏さんの話では、魔法は魔法使いの攻撃によって開花されるものだったはず……なのに人間でもないのに魔法が使えるというのは……)

 

 

考えられるのは、コアに魔力というものの概念を構築させたか……それとも、一夏たち同様に、魔法攻撃を当てることによってISコアにも魔力が移り、魔法を使用出来る様になるのか……圧倒的に情報が少なすぎる。

 

 

 

「とりあえず、お嬢様に報告しないといけませんね…」

 

 

 

当面の危機は去り、一安心と言ったところだ。気は抜けないが、まずは生徒会長である刀奈に報告ため、刀奈がいる管制室へと向かう。

 

 

 

一方、試合の流れはというと一回戦、鈴 対 千秋の試合は、鈴の専用機と操縦技術が功を奏し、鈴の勝利だった。

そして、簪もまた日本代表候補生としての実力を見せつけ、打鉄を纏った相手に薙刀型のIS装備、夢現のみで挑み、見事勝利した。

そして、もう一組は、三組の篠崎さんが勝利した。

それで決戦の舞台に三人が出揃った。そして、マドカがゴーレムとの戦闘を行っている間に、この三名による決勝トーナメントが行われた。

勝率は、鈴の一勝、簪が一勝、篠崎さんが二敗で終え、残る試合は鈴 対 簪の試合。共に一勝で迎えた最終戦。勝てばその時点でどちらかが優勝……つまり、現時点での一年生最強が決まる。

鈴の最新鋭の機体、パワーとエネルギーの燃費を考えた甲龍が勝つのか、方や得意の空間認識力を用い、最新のシステム、マルチロック・システムを搭載した簪の専用機、打鉄弐式が勝つか…。

 

 

 

「やっぱり、鈴が上がってきた……」

 

 

 

試合開始の数十分前、互いに専用機の最終調整の為、アリーナカタパルトデッキで時間を待っていた。

今もなお謎の襲撃者を迎撃に出ているマドカの事が不安だったが、マドカとて専用機持ちの日本代表候補生だ。そう簡単にやられるとは思っていない。

だが、やはり心配だ。が、今は集中しなければ……。相手の鈴は、圧倒的なパワーと高い操縦技術を兼ね備えた人物。そして、一夏の存在に気づいている数少ない人物。箒といい、鈴といい、以前、昔は仲間や友達がいなかったと一夏言っていたが、そんな事はない。少なくとも好意を抱いている人物が、もう二人も現れたのだから……。

 

 

 

「はぁー、全く一夏は……。でも、あの二人は一夏の事をこんなにも思っててくれたんだね……そこは『ありがとう』かな?」

 

 

 

同じ家に住む家族として、とても嬉しかった。だからこそ、鈴とは全力でやり合いたい。

 

 

「行こうか、打鉄弐式! 限界まで全力でいくよ‼」

 

 

 

 

一方、鈴は……。

 

 

 

 

(更識 簪……一夏の家族…昔みたいな状態だったらすぐにでも連れだそうと思ってたけど、優しそうな子だったわね……よかった…)

 

 

 

心の中で安堵する鈴。

昔の一夏を知る身としては、今の一夏の状況は嬉しいものだ。

 

 

 

「よし! いくわよ甲龍! これに勝って……それから……」

 

 

 

何かを決意したかのようにカタパルトデッキに向かった。

 

 

 

 

 

そして、遂に二人が激突した。

 

 

 

 

〜アリーナ上空〜

 

 

 

「改めて、よろしくね簪。言っとくけど、手加減とか一切無しだからね?」

 

「こちらこそ、鈴。私だって、負けるつもりはないよ?」

 

「上等じゃない…ッ!」

 

 

 

互いに意気込みは十分だった。

そして、それぞれ得物を展開し、構える。鈴は双天牙月を、簪は夢現を手にする。

 

 

 

「ねぇ、簪」

 

「ん? なに? 鈴」

 

 

ふと、鈴が話しかけてくる。

 

 

「一夏ってさ、家じゃ何やってるの?」

 

「えっ? うーんっと……」

 

「いつも家でなにかやってるの? 習い事とかは?」

 

「別に大した事は……あぁ、でも剣の修行はやってるよ? あと、料理をよく作るかな?」

 

 

 

流石に、魔法の修行もしているなどとは言えないので伏せておく。

 

 

 

「へぇー…剣も料理も……今でも続けてるんだ……」

 

「昔からなの?」

 

「えぇ、そうよ? 料理も結構うまかったし……剣も暇があったら竹刀振ってたと思ったわよ?」

 

「へぇー……料理はかなり美味しいと思うよ?」

 

「へぇーッ ちょっと食べてみたいかも!」

 

「じゃあ今度作ってもらおうよ! 一夏だって喜んで作ると思うよ?」

 

「そうね……考えておくわ」

 

 

 

互いに意気投合したところで、カウントダウンが始まる。

鈴は双天牙月を下段に構え、簪は夢現の矛先を鈴に向け、長物の基本的な構え、右足を引き、半身になる。

 

 

 

3……2……1……Battel Start!!!

 

 

 

「うぅぅりぃやああぁぁぁぁぁッ!!!!!!」

 

「やああぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!」

 

 

 

開始の合図と共に、一気にブースターを吹かして接近する二人。鈴が青龍刀を振り下ろし、簪はそれをいなしていく。

今度は逆に簪が薙刀で突き、払い、斬りを巧みに扱い、攻めたてるが、青龍刀を盾に受け止め、弾き返す。

今の試合を例えるなら、 “剛の鈴と柔の簪” と言ったところだろうか……。

近接戦では、圧倒的にパワーがある鈴に分があるが、それをカバーするかの様に、簪も薙刀を巧みに扱い、攻撃を躱す。

 

 

 

「中々やるわね……。だったらこっからは本気でいかせてもらうわよッ!」

 

「いくよ、鈴! 打鉄弐式!!!」

 

 

 

鈴が双天牙月を二つ展開し、連結させる。そして、バトンを回す様に振り回し、接近する。

 

 

 

「やるよ! 打鉄弐式!」

 

 

 

一旦距離を取る簪。そして、多弾道ミサイル『山嵐』の全門を開く。

 

 

 

「スモッグミサイル、発射ッ!」

 

 

全門から発射されたミサイルは、鈴に命中する事なく、接近する鈴の目の前で爆散する。

すると、爆散したところから、大量のスモッグが発生し、鈴の周りを包み込む。

 

 

 

(何…これ? スモッグ? でもなんかこれ粉みたいな物が……)

 

 

 

ただ単に煙が出ているだけではなく、中には細かい粉の様な物まで含まれていた。

 

 

 

(こんなんで一体何をするつもりなの……?)

 

 

 

簪の行動に困惑していると、甲龍が警告を鳴らす。

射撃武器によるロックオン警告だ。

 

 

 

「なッ!? まさか……ッ!」

 

「いっけぇぇぇぇッ!!! 春雷ッ!!!」

 

 

 

簪の叫び声と共に放たれた打鉄弐式に搭載されている二門の荷電粒子砲『春雷』が火を吹く。

するとたちまち、荷電粒子砲の高熱によって、霧散していたスモッグの中の粉が、爆発を起こしていき、その中に包み込まれていた鈴は、もろにその爆発を受けてしまった。

 

 

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁッ!!!!!!」

 

「やったッ!」

 

 

 

うまい具合に作戦が成功し、喜ぶ簪。そう、スモッグの中に入れていた粉の様な物は、小麦粉だったのだ。それが、荷電粒子砲によって粉塵爆発を起こしたのである。

 

 

 

「ぐうッ」

 

 

 

何とか態勢を立て直した鈴。しかし、まさかの攻撃に、甲龍のエネルギーが随分と削られてしまった。

 

 

 

(チィッ! まさか粉塵爆発を使ってくるなんて……甘くみてた……簪、案外策略家なのね……)

 

 

 

改めて簪と人間を理解した。大人しそうなその見た目の中には、色々な作戦を組み立て、実行するだけの才能がある。空間を把握し、平面だけではなく、立体的に見て戦略を考えている……恐るべき頭脳を持っている。

だが、もうその手段は覚えた。なら、スモッグの中に入らなければいいだけだ。

 

 

 

「ちょっと驚いたけど、もう遅れは取らないわよッ!」

 

 

 

大爆発の起こったエリアは、大きな黒煙に包まれていたが、その中から鈴が飛び出し、簪に斬りかかる。

 

 

 

「はああぁぁぁぁッ!!!」

 

 

上段から思いっきり振り下ろされる青龍刀を何とか受け止める簪だが、完全にパワー負けしている。

 

 

 

「くぅ……ッ!」

 

「中々やるじゃない、簪」

 

「鈴こそ……。全然怯んでないね…。結構今ので決めたと思ったのに……」

 

「ふっふーん。残念ね……これくらいの事で、私はくたばらないわよ…ッ!

あいつとの “約束” があるからねッ!!」

 

「約束?」

 

 

 

一度離れ、再び斬り合い、鍔迫り合いに持ち込む。

 

 

「約束……一夏と何の約束をしたの?」

 

 

 

気になった簪は、鍔迫り合いのこの状況で鈴に尋ねた。

 

 

「……昔の事よ。いじめられてた私を、あいつは救ってくれた。自分だっていじめられてるクセにね……。

だけど、なんか眩しかったの。とてもね……。あいつみたいになりたいって思って、いつか同じ様に助けたいって思った……。だから約束したの、“今度は、私があんたを守る” っね…」

 

「……っ……」

 

 

 

鈴の揺るぎのない真っ直ぐな瞳に、簪は魅力を感じていた。

 

 

 

「だからッ! こんなところで負けてらんないのよッ!」

 

 

 

鍔迫り合いから一転、鈴の一方的な攻撃な続く。

青龍刀での連打に、簪も受けるので精一杯だった。

 

 

 

「くぅッ!」

 

「まだまだぁぁぁッ!」

 

 

 

大きく振りかぶった青龍刀で、簪を叩きつける。

そして、追い撃ちとばかりに龍砲を撃ちまくる。

 

 

 

「ううッ! まずい……エネルギーが……ッ!」

 

 

 

度重なる鈴の猛攻に、打鉄弐式も悲鳴をあげる。

そして、遂に鈴が決めにきた。

 

 

 

「これで終わらせるわよッ!」

 

「まだッ! 最後まで諦めないッ!」

 

 

 

だが、簪とてまだ諦めない。ここまでくればただの意地だ。だが、その意地の張り合いは、見ていて美しくもあった。

 

 

「うりぃやあぁぁぁぁッ!!!!」

 

「いっやああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

互いに持つ青龍刀と薙刀が交錯し、激しい火花が散った。

そして、その数秒後に、この決戦の勝者を決める合図が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

【試合終了 勝者 凰 鈴音】

 

 

 

 

 

ほんの紙一重。僅かに鈴の双天牙月が、簪の夢現の攻撃を退け、簪にダメージを与えていた。

そして、この瞬間、優勝者が決まった。クラス対抗戦一年生の部、一年生最強が、鈴に決まった瞬間だった。

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

「おめでとう……鈴……やっぱり強いね……」

 

「あんたも……見かけによらず中々エグい戦い方するわよね……」

 

「え、エグくないよッ!?」

 

「ふふっ……私こそありがとう。ここまで全力を出し切ったのって久しぶりだわ……」

 

「そう……。でも、次は勝つからねッ!」

 

「ふんっ、上等じゃない…ッ! いいわ、いつでも相手してあげる。でも、勝つのは私だけどね!」

 

 

 

 

互いに笑みを浮かべ、再戦を誓う二人。そして、硬い握手を交わす。

その後、二年生、三年生の部の試合が行われた。

刀奈は国家代表の為、優勝間違いなしと判断され、今大会の出場は出来なかった。まぁ、クラス代表でもなかった為、試合に出る事は出来なかったが……。

そして、すべての試合が終了し、閉会式へと移った。

生徒会長である刀奈が、壇上に立ち、出場した選手たちに労いの言葉をかけ、表彰式を執り行い、後は閉会宣言を告げるだけだった……はずが、

 

 

 

 

『それでは、これにて本学年別クラス対抗戦のすべてを終了しーー』

 

「ちょっと待ったぁぁぁぁぁ!!!」

 

『ん?』

 

 

 

閉会宣言を行おうとした刀奈の言葉を遮った者がいた。それは……

 

 

 

『あら? どうしたの鈴ちゃん? もうクラス対抗戦は終わりなのだけれど……』

 

 

 

そう、鈴だった。出場した選手たちは、全員アリーナ中央に整列し、刀奈はその中に作られた壇上で話していた。

そして、それを見守る観客席に佇む全校生徒と職員、そして、各国から招かれた客人達。みんな鈴の突然の行動に困惑していた。

 

 

 

「ごめんね、せっかくの言葉を遮って……。でも、ちょっとだけ全校生徒に頼みたい事があるの…」

 

『あら、なにかしら?』

 

「ちょっと私、戦いたい奴がいるのよ…」

 

『ほう?』

 

 

 

不敵な笑みを浮かべ、刀奈に言う鈴。その言葉に、誰もが驚いた。

 

 

「鈴、何言ってるの? もう、大会は終わったんだよ? 戦いたいなら明日でもいいじゃないか……」

 

 

そうやって鈴に促してきたのは千秋だった。正直、初戦敗退と言う結果に納得しきれなかったのか、少々機嫌が悪い。

 

 

「別に? せっかくの機会だから、どうせなら戦っちゃおうと思ってねぇ……」

 

「せっかくって……っていうか誰なんだよ、戦いたい奴って?」

 

「ふふんっ、それはねぇ〜」

 

 

 

そう言って、鈴はゆっくりと右腕を上げていき、人差し指をまっすぐ目的の人物に向けた。

 

 

 

「あんたよ! 更識 一夏ッ!」

 

「「「「ッ!!!!!!??」」」」

 

「…………へっ? 俺?」

 

 

 

いきなり自分を呼ばれ、唖然とする一夏。そんな一夏を見て、鈴は理由を述べる。

 

 

 

「あんた確か、千秋に勝ったんでしょ? それに、イギリスの代表候補生であるセシリアにも勝った……。それにさっき簪に聞いたけど、操縦者になってから負けなしみたいじゃない」

 

「ぁぁ……」

 

「それにあんたこの前、戦ってくれるって言ってたし…」

 

 

 

当然の様に言う鈴に、一夏だけでなく、その場にいた全員がどうしたものかと困惑をあらわにしていた。

確かに、鈴と始めてこの学園であった時、いつか戦おうと言った。言ったが、模擬戦の様な感じでするのかと思っていたが、まさかこんな時にやるなんて思ってもみなかった。

 

 

 

(うーん、確かに言ったが、何でこんな時に?)

 

 

どう答えようか迷っていた時、鈴が更に述べる。

 

 

「大体、今回の大会で、私が『一年生最強』って言われたけど、事実上あんただって『無敗の最強』じゃない。だったら、今この場で決着をつけるのも、悪くないんじゃない?」

 

 

そう言って笑う鈴の顔は、まさにやる気で満ちていた。

そして、対戦を促すかの様に、言葉巧みに論破する鈴に焚き付けられ、周りのみんなも一夏に視線を向ける。

 

 

「おいおい、マジかよ……」

 

『なるほど、鈴ちゃんの言いたい事はわかったわ……』

 

「んっ? 姉さん?」

 

 

壇上にて、鈴の真意を聞いた刀奈が、口を開く。

 

 

 

「もしかして、この場を治めてーー」

 

『いいでしょうッ! 生徒会長が許可しますッ!』

 

「何でだぁぁぁッ!!!!?」

 

 

 

場を治めてくれると思った姉からの裏切りに、一夏は絶叫した。しかし、刀奈は……。

 

 

 

『へっ? だって面白そうだから……』

 

「面白そうって……」

 

『いいわよ鈴ちゃん。私の自慢の弟、一夏との決闘をここに認めます。試合開始は三十分後、それでいいかしら?』

 

「えぇ、それでいいわ…」

 

『それじゃあ、みんなッ! 只今から、凰 鈴音 VS 更識 一夏による、スペシャルバトルマッチを開催します!』

 

 

 

刀奈の宣言に、観客達がどよめく。誰もが、どちらが勝つか予想を立てはじめた。もうこれは「やりません」とは言えない状況になってしまった。

 

 

 

「はぁー……。わかったよ。更識 一夏、その勝負、受けてたつッ!」

 

「上等ッ!」

 

 

 

 

こうして、俺と鈴によるスペシャルバトルマッチの幕が今、上がった。

 

 

 

 

 

 






次回は、宣言通り一夏 VS 鈴をやりたいと思います。


感想よろしくお願いします^o^

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