IS〜異端の者〜   作:剣舞士

10 / 34
今回は、箒とのくだりまで行きます。


第二章 IS学園
第9話 再会


4月 IS学園入学式

 

 

新たな入学生を迎え入れたIS学園。しかし、今年は定年に比べて、とても異常だ。それはそのはず、何せ男子生徒が二人、この学園に入学してくるのだから…。そして、その二人が入るクラス、一年一組の教室では、今現在、生徒達による自己紹介が行われていた。

 

 

 

「みなさん、入学おめでとう! 私はこのクラスの副担任の山田 真耶です! 一年間よろしくお願いしますね?」

 

「「「………………」」」

 

 

 

教室に入ってきた胸以外は、中学生に見える女性、山田先生が教壇に立ち、自己紹介をする…。が、クラスの生徒達は一切反応しない。その代わり、みんな視線は教室の中央の最前列の生徒に集中していた。そう、何を隠そう男性操縦者の織斑 千秋だ。そして、そこから離れた窓側の席からその人物を心配そうな目で見るポニーテールの少女とその列の最後尾で鋭く睨みつける金髪縦ロールの少女。

 

 

 

「え、えぇっと……そ、それでは! 一人ずつ自己紹介をお願いします! えっと、あいうえお順で…『あ』の人からお願いします」

 

 

 

完全に無視された事に、若干涙目になった先生。仕方ないので、そのまま生徒の自己紹介を促す。そして、やがてお目当ての千秋の番だ。

 

 

 

「えっと、織斑 千秋です。趣味は、機械いじりとかです。それと剣道もやってます! 一年間よろしくお願いします!」

 

 

 

オーソドックスな自己紹介に全員拍手する。すると、教室の入口が開き、そこから一人の女性が入ってくる。

 

 

 

「ほう、お前にしてはまともな自己紹介をしたな」

 

「ッ?! 姉さん!? なんでこんな所に……ってぇ!」

 

「ここでは『織斑先生』だ! 馬鹿者!」

 

 

 

教室に入ってきて、いきなり千秋の頭を出席簿で殴る女性。それは千秋の姉であり、モンド・グロッソ二連覇を達成し、世界最強『ブリュンヒルデ』の称号を持つ織斑 千冬だった。

 

 

 

「諸君! 私がこのクラスの担任の織斑 千冬だ! 君たち生徒を一人前にするのが仕事だ」

 

「「「きゃああぁぁぁぁぁ!!!!!!」」」

 

「本物の千冬様よ!」

 

「私、ずっと憧れてました!」

 

「私、お姉様に会う為に来ました! 北九州から!」

 

千冬の紹介と共に、教室内がざわめく。対して千冬は右手を頭の上に置き、「やれやれ…」と呆れている。しかし、そんな表情にも女子たちの歓喜の声が上がる。

 

 

 

「さて、騒ぐのはこれくらいにして、次! 織斑の次は誰だ? 早く自己紹介しろ!」

 

「は、はい!」

 

 

 

 

それから、順に自己紹介が進んで行くのだが、ふと途中でその流れが止まる。何故なら本来いるはずの席に、生徒がいないからだ。

 

 

「あ、あの、先生! 次の人がいないんですけど?」

 

「ん? あぁ、そこにいるやつは、家の事情で少し遅れると聞いている。もう少ししたら来ると思うが…。まぁいい、そいつは抜かして、次の奴から続けろ」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、IS学園一年の教室塔の廊下

 

 

 

「やばいな。完全に遅刻だよ…」

 

「仕方ないわ。一夏の専用機の設定に時間がかかったんだから…。永遠ちゃんの事もあるしね。それに大丈夫よ、学園には私から言っておいたから♪」

 

 

 

俺は、今刀奈姉と共に俺が入る一組のクラスを案内して貰っている。何故遅れたかと言うと、俺専用の専用機を装着し、パーソナライズをやっていたからだ。

その機体はマドカの専用機、サイレント・ゼフィルスと同じ時に任務で回収した機体。それを倉持技研と更識家と合同で開発した機体だ。そして、問題がもう一つ。俺のアスペクト、トワイライトのことだ。

あれから、何度も鍛練を続けている内に、奇妙な物を見てしまった。それは、『夢』である。しかも、その夢は全部悪夢と呼ぶべきものばかりで、俺は何度となく飛び起きる日があった。調査の結果、トワイライトの仕業である事が判明し、一度はトワイライトを手放すよう、親父やマドカから言われた。が、俺はトワイライトの意思と対面する事を選び、再び夢の世界へととんだ。そして、出会った。俺と同じ容姿をした少女を。そして、戦い、剣を振るい、剣を合わせた。そこでわかった事は、この少女には確かな意思がある事、そして、とても悲しんでいるのが分かった。

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ………なんで、俺を殺さない? お前ならとっくに俺を殺せただろう…」

 

「私には意思がない。故に無私。だからあなたが私を諦めて」

 

「そいつは無理な相談だな…。それに、自分には意思がない? それは違う! お前には意思がある! だから俺を殺せなかった!」

 

「いいえ、私は無私の存在。そのような物は存在しません」

 

「…………そうか。なら、俺がお前に存在理由を与える。……ごめんな、本当ならもっと早くあげなきゃいけなかったのに…」

 

「…………」

 

「俺はお前に名前を与える。そして、お前と言う存在を俺が肯定してやる! お前の名前はーーーー『永遠』だ」

 

「永遠…私の名前…」

 

 

少女は遠い瞳で俺を見ていた。俺はその少女を、永遠を優しく抱きしめた。

 

 

「お前は俺の大切なパートナーだ。俺の命はお前に託す! だからお前も、俺にお前自身を委ねてくれ!」

 

「…………一夏、私のこの命、あなたに委ねます。よろしくお願いします………マイマスター…」

 

 

最後の言葉を皮きりに、永遠は俺の力になる事を約束し、俺は永遠の意思を尊重し、自分の信念の為に戦うことを誓った。

その影響が、俺の専用機にも発展し、永遠が俺のISのコアの代理人格となった。その為、一から機体の調整、整備をする羽目になり、こんなに時間がかかってしまったのだ。

 

 

 

 

「にしても、なんで俺だけ一組なんだ? マドカと簪は四組だったのに」

 

「それもねぇ、クラス担任が織斑先生だからかもね…。結構、厄介な生徒達を集めてるから…。あそこには織斑 千秋と束博士の妹さんもいるけど、大丈夫? 一夏…」

 

 

 

俺の事を心配してくれる刀奈姉。

 

 

 

「大丈夫だよ刀奈姉。俺には刀奈姉達がついていてくれるんだから…。それにマドカや簪だっているし!」

 

「そう? ならいいわ。あっ! それと、ここでは『刀奈姉』は禁止ね? 一応、『楯無』で通ってるから」

 

「ああ、そうだったな…。じゃあ、みんなの前では『姉さん』かな?」

 

「んっ……不本意だけど、仕方ないわね…」

 

 

 

本当はいつでも『刀奈姉』と呼んで欲しいが、致し方ないので、それで納得する事にした。そして、話しながら歩くこと数分。目的地に到着。中はまだ自己紹介をしているらしく、拍手の音や騒ぎ声が聞こえる。

ふと、俺の体にも緊張が走り、深呼吸をし、手は強く握り締めていた。

 

 

 

「それじゃあ、いくよ」

 

「うん、頑張りなさい…。大丈夫、あなたは私の弟だもの…」

 

 

 

そう言って、刀奈は一夏の頬に軽くキスをする。一夏は顔を赤くし、声をあげて抗議しようとしたが、「ウフフッ♪」とすぐさまその場を走って逃げる刀奈に声をかけられず、呆然と立っていた。

 

 

 

(全くもう、今から大事な時だって言うのに…刀奈姉は……でも、俺の事を気遣ってくれての事だしな………。さてッ! 俺も行きますか!)

 

 

 

一夏は気持ちを切り替えて、一組の扉の前に立つ。

 

 

 

「すみません! 事情があって遅れて来た者です!」

 

「入れ」

 

 

 

許可をもらい、一歩足を踏み出す。すると、自動ドアである教室の扉が開き、一夏はそのまま教室に入る。

 

 

 

「んっ?」

 

「あっ…」

 

「「「へっ??????」」」

 

 

 

担任、副担任、そして、クラスの全員が俺を見て、言葉を失っていた。それもその筈だ流暢な日本語を話し、男の声が聞こえたのに、入って来たのは、日本人離れした姿をした女子。

 

 

 

「えぇっと…自己紹介の続き…だったんですよね?」

 

「あ、あぁ、そうだ。お前も自己紹介をしろ」

 

「はい、それでは失礼します」

 

 

 

一応確認の為、担任の織斑先生に聞き、教壇の前に立つ。

 

 

 

「えぇ〜、いきなり遅れてしまってすみませんでした。これから同じクラスで一年間共に勉強をします『更識 一夏』と言います! 見ての通りこのような格好ですが、『男』ですので、至らない事もあるとは思うけど、みなさんよろしくお願いします!」

 

「「「……………………」」」

 

(……あれ? なんかまずかったかな?)

 

 

 

自分の中では精一杯の自己紹介をしたと思ったのだが、思いの他、みんなが無反応だったので少し心配になった。が……。

 

 

 

「「「きっ、」」」

 

「き?」

 

「「「きゃあぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」

 

「ぬおッ?!」

 

 

静寂からの発狂。女子達の反応に一瞬気圧されてしまう。

 

 

 

「きた! 本物の『男の娘』が来たぁぁぁぁ!!!!」

 

「きれぇ〜! 女の子みたい!」

 

「クールビューティー系男の娘!!!! 今作もいける! 絶対にいけるわぁぁぁ!!!」

 

「アッハハハ…………」

 

 

 

予想を裏切らない展開に、自然と苦笑してしまう。

その後、織斑先生の一言で一気に歓声が静まり、俺は指示された席へと腰をかける。左隣には、ポニーテールの少女が座っており、ずっと俺を見ている。

 

 

 

「えっと、俺の顔に何か付いてる?」

 

「っ⁉ いや、なんでもない! 気にしないでくれ。私は…篠ノ之 箒だ」

 

「更識 一夏、よろしく篠ノ之さん!」

 

「…ッ!」

 

「ん? どうかした?」

 

「いや、なんでもない。…………『篠ノ之さん』か……」

 

 

 

そう言うと篠ノ之さんは前を向く。その反応から恐らくだが、気付いたのかもしれないと思った。俺が、『織斑 一夏』だと言う事が。外見も変わっているし、なんせ六年ぶりの再開なのだが、自然と篠ノ之さんの目はどこか確信めいた目をしていた。しかし、今はSHRの時間だ。話して良いわけではないので、しっかり山田先生の話を聞く。

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

その時間も俺に度々視線を向ける篠ノ之さん。それともう一人、教室の入口付近で俺を見ている織斑先生だ。

 

 

 

(ぐっ…なんでそんなに俺を見んだよ…。マドカ、簪、刀奈姉…。俺、初っ端から帰りたくなったんだけど…)

 

 

 

IS学園は入学初日から授業がある。一時間目はISの事についてのおさらいみたいなものだ。俺も刀奈姉や簪、マドカから色々と教わっているので、授業に遅れをとる事はないだろう。ホント、あの三人には感謝だ。そうこうしているうちに、SHRが終わり、みんな予鈴がなるまで思い思いに行動する。隣の生徒同志仲良くしようとする者、友人と話をする者、教科書を開いて予習する者と、さまざまだ。俺も簪とマドカのいる四組に行こうとしたその時だった。

 

 

「ちょっとよろしくて?」

 

「えっ?」

 

 

いきなり声をかけられた。隣にいる篠ノ之さんは織斑の所に行っているので違う。誰だろうと思い、後ろを振り返って見ると、そこには俺に鋭い眼光を向けてた金髪縦ロールの少女が立っていた。

 

 

「まぁっ! なんですのそのお返事は! このわたくしに声をかけられたのですから、それなりの対応があってもおかしくありませんこと?」

 

「…………えぇっと、ごめん。俺、君が誰だか知らないんだ」

 

「なっ!? わたくしを知らない?! このセシリア・オルコットを?! イギリスの代表候補生にして入試主席のこのわたくしを!?」

 

「あぁ、そうだったね! ごめん、オルコットさん。あの時は、ちょっと緊張してたから、名前覚えられなくて…」

 

 

 

一気に表情を変え、俺に怖い顔で迫るオルコットさん。雰囲気からして、相当なお嬢様なのだろう。それにこの性格から察するに、世の中の人が抱いている女尊男卑の世界観を持っているようだ。

 

 

 

「ふんっ! まぁいいですわ。世界でたった二人しかいない男性のIS操縦者とあって期待して来てみましたけれど、とんだ期待はずれですわね!」

 

(俺に一体何を期待してたんだ?)

 

「まぁ、あなたのような方でも仲良くして差し上げますわよ。それに、泣いて頼むのであれば、ISの事についても教えてあげなくも無くてよ? 何せわたくし、唯一教官を倒したエリート中のエリートですから!」

 

「へえー、そんなのか…」

 

 

 

目に見えての女尊男卑主義者だ。しかし、そう言わせるだけの技量があるからこそ、代表候補生としてここにいるのだろう。それに、根は優しい子なのかもしれないと思う一夏。

 

 

「ありがとう。もし、その時があったら是非教えてくれよ、オルコットさん」

 

「へっ? え、えぇ! もちろんですわ!」

 

 

 

そう言って、オルコットさんは自分の席に戻っていった。丁度予鈴もなり、教室から出て行った織斑と篠ノ之さんも戻ってくる。そして、その後に山田先生と織斑先生が入ってきて、授業を始める。

 

 

 

「それでは授業を始めます! テキストを開いてくださいね」

 

 

 

山田先生の声にみんなが教科書を開き、ノートをとる。俺も急いでノートと教科書を開く。

 

 

 

「インフィニット・ストラトス…通称『IS』と言うのは…」

 

 

山田先生がISの事について触れる。みんな復習のつもりでノートを確認したり、新しく書き込んでいったりととても忙しい。織斑を見ていると、みんなと変わらないが、それでもノートに書いている事が少ない。もしかしたら、全部頭の中で記憶しているのか⁈ と思った。

そして、次の内容はISのコアについてだ。ISをISたらしめているのは心臓部とも言える『ISコア』の存在があるからだ。これを作れるのは、開発者である篠ノ之 束博士たった一人。しかし、当の本人は姿をくらまし、世界中の人々が探し回っているが、未だ発見には至ってない。

 

 

「ISには、意識に似たような物があって、操縦者の使用時間と共に、操縦者の特性を理解しようとします! ですので、ISは道具ではなく、あくまで『パートナー』として認識してくださいね?」

 

 

 

山田先生の言葉に俺は首のあたりを触れる。そして、パートナーと言う言葉に俺は共感を持てた。何せ、そのパートナーの姿をこの目で見て、お互いに誓い合ったからだ。

 

 

「せんせー! パートナーって、彼氏彼女みたいなものですか?」

 

「ええっ!? そ、そうですね〜。私には経験がないので良くわかりませんが…あぁ、でも憧れますねぇ〜!」

 

「アハハッ! 先生顔真っ赤!」

 

「可愛い! 照れてるぅ〜」

 

 

生徒の質問に、頬を赤らめ体を揺らす山田先生。そして、その反応を楽しむ生徒たち。これが女子校のノリって奴なのかと改めて学ぶ一夏であった。

それから、色々と教わって授業が終了。すると、今度は篠ノ之さんが俺のところへと来た。

 

 

 

 

「な、なぁ、更識。ちょっと話さないか?」

 

「篠ノ之さん? あぁ、いいよ。屋上でいいか?」

 

「あ、あぁ…」

 

 

 

篠ノ之さんを連れて、俺たちは屋上へとやって来た。篠ノ之さんは屋上の手すりに手をかけ、うつむいたと思ったらいきなり顔をあげ、こちらを振り向く。

 

 

 

「い、一夏! …………一夏、なんだよな?」

 

「っと言うと?」

 

「私にはわかるぞ! お前は…一夏なのだろう?」

 

 

 

うっすらと目に涙を浮かべ、俺の肩を掴む篠ノ之さん…いや、箒。やはり俺の思った通りだったか……。これではもう、隠す事は出来ない。

 

 

 

「あぁ、久しぶり。六年ぶりか? 箒。元気にしてたか?」

 

「あ………ッ!」

 

 

 

 

俺の言葉に箒は涙を流す。俺はその箒の頭を優しく撫でた。

 

 

 

 

 




次回はセシリアとの決闘騒ぎぐらいまで行きたいと思います!


感想を待ってます!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。