他の作品もあるので、ちょっと更新が遅くなるかもです。
織斑家の家庭は、他の家庭とは少し違っている……
両親は、一夏の物心付く前に失踪して、それ以来長女の千冬が一夏とその双子の弟、千秋を育てていた。
千秋も当時はまだ学生であったため、出来る事は精々アルバイトぐらいだったので、古くから付き合いとあった篠ノ之家の援助を受けながらも、織斑家は生活していた。
千冬はその頃から篠ノ之流剣術と剣道を嗜み、腕をめきめきとあげて行った。その流れで、一夏と千秋も幼馴染で篠ノ之家の次女である箒と共に剣道をやり始めた。
その頃からだったろうか…俺、織斑一夏が周りの人間から色々と非難される様になったのは…
「お前、ホントにあの千秋の兄貴なのか?! あいつより全然ダメじゃん!!!」
「お姉さんや弟くんは出来てるのに…なんでこうもできないかなぁ…はぁー、ホントに君、あの二人の兄弟なの?」
学校に行けば、こんなものだったか…クラスメイトはともかく、先生にまでこんな事を言うのだから、全くもってどうかしてる。しかし、俺がこんな事を言ったって何もならない…むしろ相手を怒らせ、こちらが更に被害に遭うだけだ。だから、いつも俺は……
「それは悪かったね…こんなんでも、俺はあの二人の兄弟だし、出来ないものは出来ないんだ……だから謝る事しか出来ない。ホントにごめん……」
こう言っておけば、大抵の人間は納得するか、更に嘲笑うか、だ。買い物をしている時だってそう…どこへ行っても同じ反応だ。なのでもう慣れた…小学生でありながらそんな押しとどめた感情を持っていた…
(早く高校を卒業して、就職すれば…この家から出ていける…こんなとこに未練なんか無いし…………俺は、こんな家から出ていけるなら…例えそこが『地獄』だって構わない…)
しかし、自分はまだ小学生だ…先はまだ長い…だからこそ、今の内に慣れておこうと思う。社会はきっとこれ位厳しいものだと思うから…
そして、来る日も来る日もその日常が続く。しかし、そんなある日の事だった。世界が一変したのは……
IS……幼馴染でもあり、千冬姉の友人でもある篠ノ之 束が作製した飛行パワードスーツ。正式名称『インフィニット・ストラトス』そいつの出現以来、世界は変わった。まず、世界の軍事状況は一変、今までの最先端兵器は鉄屑と化し、宇宙進出も目的に作られた筈のISは軍事兵器へと変わった。そして、ここが重要…ISは女性にしか動かせない。そのせいか、世間では『女尊男卑』の形が出来上がった…そのせいでまた俺への風当たりが悪くなった…ホント、余計な事をしてくれたもんだ。
そして、また俺の姉、千冬姉がIS操縦者の世界チャンピオンになったのだ。家族としては喜ばしい事なのだろうが、俺個人としては最悪の気分だ。
そして、とうとうこの時が来た…第2回モンド・グロッソ世界大会。その日、俺は誘拐された。当然助けは来ない…
「よぉ〜、元気かい? 少年。今どんな気分? 誘拐犯なんて人生で始めて見たろ? ラッキーだったな」
どこかわからない倉庫の中、とても薄暗く、油の臭いが充満している。その中で俺は手足を縛られ、拘束されているみたいだ。
「そうだね。死ぬ前に見られてホントラッキーだよ…」
「お、おぅ、そうかい、そりゃあ良かった……って、なんでお前はこんなに落ち着いてんだよ…」
「別に? 慌てたって早々どうにかなるわけじゃ無いし、たぶん助けにも来ないよ?」
「なんでそう言い切れる?!」
「それはだって、俺が無能だからだよ。千秋ならともかく俺を誘拐したんだ…俺は誘拐したってなんの価値も無いし、助けにくるやつもおそらくいないだろうしね」
淡々としゃべってはいるが、相手は小学生だ…普通は泣いたり喚いたりする筈なのに意外な反応に誘拐犯達も気味が悪いと思ったのだろう…顔が引き攣っている。
「ても、そうでもないんだぜぇ…お前の事を5000万で買いたいって人がいてなぁ…その金は俺たちにくれるっていんだよ! だから俺らはお前にホントに感謝するよ」
「そう、良かったね…お金が入ってきて」
「………………」
あえて挑発する様に言ったのだが、未だにブレない少年の感情に本格的に恐怖させ覚えた。
「おっと!? 迎えが来たか…おい、少年! さっさとこの車に乗りな!」
「はいはい、言われずとも…」
俺は素直に指示に従い、黒い大型車に乗る。
そして、なんらかの薬を嗅がされ、意識を失った。
この作品の一夏は七瀬 武をモデルにしています。そして、千秋はもちろん月光です。