こんにちは、統制以下略のハザマです。
マコトさんを部下へと迎えてから早一ヶ月、聞き込みや書類整理などノンアクティブな仕事を片付けていました。
お蔭様でテルミさんが出てくることも有りませんし、たまに友人としてマコトさんと酒盛りに。最近私も充実してきたと言えるでしょう。リア充、素晴らしい言葉ですね。
今のところ危険も無く落ち着いた状態である、と言えます。
さて、今回の私の現場へ戻っての確認、というか旅行はイカルガ篭城戦が行われていた都市です。……に行こうと思っていたのですが、戦争跡地とあってごたついてるらしいので、その人民が流された第十三階層都市カグツチへとやって来ました!
ふふん、と浮かれ気分で鼻唄を歌いながら、私はのんびりと町を歩いています。理由は二つ、一つ目は秋のこの時期ですとイカルガの文化ではお祭りをするのです。
勿論、今日はその祭の日で私の視界にはあちらこちらでお店が、屋台が立てられているのが目に入ります。別に狙って来た訳ではありませんけど、タイミングが良いと言うのはこのことを言うのでしょう。
そして二つ目は……
「おーいハザマさーん。はーやーくー」
「ん?……あ、ええ、今行きますよ」
と、自分より少し先から聞こえる黄色い声に私はぼんやりとした空想から抜け出し、歩幅を上げて近づきました。
その視線の奥にはイカルガ風の服を、所謂ユカタと呼ばれる着物を着たマコトさんが入っています。
オレンジ色の布の上に赤い花のような刺繍がされたその着物を、ミニスカートのように着こなす姿は、やはり活発である彼女のイメージにピッタリで少し乾いた笑が漏れましたね。
数時間前、私が任務(苦笑)と言う名前の旅行に行こうとした時、非番だったマコトさんが任務に連れていって欲しいと頼みました。
カグツチへ流れた人たちの動向を探ってほしいといと、任務を言い渡されたのですが、正直遊びながら探ろうと思っていたんですよね。
ですが……スーツをビシッ、バシッと着込んだマコト少尉がそこに。
勿論任務だと考えていたでしょうマコトさん。ですが対するはその辺の観光をするだけの私。実際任務とか殆ど気にしないで観光ムードでしたし。
私の任務(と言う名前の休日)に気が付いた瞬間、『こんなもん着てられっかー!』と言う叫び声と共に服屋さんに駆け込んだマコトさんは、数分たってユカタ姿で戻ってきましたね。あ、でも寒くないんでしょうか?
「分ってないねハザマさん! 祭りとは戦場、一瞬の油断さえも許されぬその時間においてぼんやり過ごすなど愚の骨頂!」
「戦場……成る程、確かにそれならはぼんやりしてる暇はありませんね」
マコトさんの突き出してきた拳の間にあるのは、フランクフルトとホットドックに林檎飴、もう片方の腕にはビニール袋の中にタコ焼きイカ焼きお好み焼きが積まれています。
遠慮とかどこかにすっ飛んだのでしょう? 私ヒモにされていませんよね? まあお金の使い道なんてナイフやシルバーアクセサリを買うぐらいしかありませんけど。
「というか……まぁ奢るのはやぶさかではありませんし、食べるのも良いですけど……太りますよ? 」
女性はほら、カロリーとか色々気にするものだと思うのですが。このまえ読んだ雑誌に書いてありました。屋台の商品は沢山食べれますがカロリーも多い。少しは気にしなければどんどん脂肪が…
「ふ…だから分かってないと言うのだハザマさん! カロリーが恐くて祭が楽しめるかーっ!?」
そう言いフランクフルトを三口で食べると、指に残った串をゴミ箱に投げ入れました。そしてかぶりつくのはホットドック……は私が視線を手に向ける前にいつの間にか消え失せていますね。残ったのは串だけです。
なんというか、容姿は女性なのに着物の裾が少ないから太もも大きく露出してたり、食べ方なんかが清々しいほど漢らしいんですけど。
悲しい事にマコトさん以外の女性の知人は居ませんが、マコトさんはずいぶんダイナミックであることは想像出来ます。
無防備に顔にケチャップつけたりと、少しはしゃぎ過ぎじゃないでしょうか?
「ほらマコトさん。流石に女性がそんなにはしたなくしちゃだめでしょう? ほら、頬にもケチャップがついていますし」
「へ? どの辺?」
「右上の……ああもう、取りますから少し動かないで下さい」
「ふひまへん」
「そう言う側から苺飴を頬に含まない。リスですか貴方は……って、リスでしたね」
とりあえず顔をこちらに向かせウエットティッシュで顔を拭き取りました。
それにしてもマコトさんの頬って柔らかいんですね。リスの亜人ですから頬袋の遺伝の名残でしょうか。おも むろに摘んで引っ張ってみました。
むにむにむにむに
伸びますね。柔らかめのグミのようです。
むにむにむにむに
「ハザマさーん? そろそろやめないと5秒後に私の私の拳が鳩尾に飛ぶけど。いーち」
なら後4秒は大丈夫ですね。ああ、いい触感です。
むにむにむにむに
「にさんよんごそぉい!!」
「ぎょえへっ!?」
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「良かったですねマコトさん。ここが本部でしたら一発で独房行きでしたよ?」
「良かったねハザマさん。私がセクハラで訴えていたら一発で牢屋行きだよ?」
「申し訳ありませんでした」
日も暮れて空が暗くなった頃、お腹は空だったのが幸いして危うく中身がリバースするところを、大きな惨状にはなりませんでした。
それにしてもちょっと悪乗りしましたね。少し前にもホワイトチョコバナナを食べているときに『……すばらしいですね』と意味ありげに言ったらハイキック喰らいました。下着見えました。……いえ、少し自重しなければ。
欲情もしていたんでしょうか。質が悪い。『訳の分からない感情は面倒なものです』。初めての友人とあって無知な所もありますが、少々踏み込み過ぎたようです。反省。
「まったく、これが私じゃなかったらとんでもない事になってたね、うん」
「鳩尾にえぐるようなブロー以上ですか…」
「勿論! 例えばノエるんだったら大号泣。乙女の涙を流させた罪でハザマさんは牢屋行き。ツバキだったら……あーご愁傷様」
「どれだけツバキさん凄いんですか!?」
……いえ確か聞いた話しだとツバキさんの名字はヤヨイ、が頭に付きます。
ヤヨイ家、帝を守る十二宗家の本締めの家。権力とか物凄いですよ。上流貴族のものすごく上の方の方々だと考えていただければわかりやすいですね。
で、かくいう私は……家名がないので貴族ですらありません。ただの一般諜報員の首とかあっという間に飛びますね。
おかしいな、私大尉になれるほどのエリートですよね? 待遇はアレですけど。
ですがヤヨイ、ですか。
……諜報員としては収集のために充分利用できる名前です。諜報員としてだけではなく、後ろ盾、という意味ではどのようにも使えるでしょう。。
チラッとマコトさんへと視線を向けました。が、相変わらず頬にいっぱい食べ物の含ませていました。
なんというか、シリアスな思考に切替ようとした所を撃ち落とされた気分です。
と、そうして見ている内に視線に気が付いたのか、マコトさんと視線が重なりました。最後のパックのタコ焼き、それを食べようとして口に運ぶ最中、身体が硬直しています。
「…………」
「…………」
「…………あげないよ?」
「いりません」
見ているだけで胸やけします。
思わず大きくため息が漏れました。少なくとも休暇中に考える必要はありません、後で考えればいいのです。何と言うダメ人間思考。
「んー、おいしかった」
ぱく、と私がどうでもいい思考をしている最中、いつの間にか最後の一つになったタコ焼きをほお張り満足そうなマコトさん。
見ているこちらも微笑ましくなります。
「マコトさんでも流石にもう満腹ですか」
「まだ八分目ぐらいだからそうでもないケド。でもハザマさんの帰り賃が無くなっちゃうし」
まだ食べれたんですか貴女は。
奢りなんて言葉、簡単に使うべきじゃないですね。財布に冬が訪れました。
やれやれと軽く息をつきつつ帽子を直すと、私の視界に既に暗くなった空が入りました。もう夜の八時も回った程でしょうか。流石にもう本部へと帰った方が良いかもしれません。
「あっと、そうだハザマさん!」
「は、はい」
財布の中身を確認しようとした私に、マコトさんは腰に手を当て、急にずいっと顔を私に近づけました。
急に近づかれた事と覗き込まれた事にびっくりしたためか、私は一歩後ずさりましたけど、マコトさんは尻尾をゆらゆらさせながらこちらを見てきています。
それはどこかふて腐れているというか、怒っているというか、何とも言えない表情です。
「休日中、急に真剣な雰囲気を出されると困るよ。びっくりするじゃん」
と、そこにかけられた言葉に私は返答することができませんでした。
「……なぜそうお思いに?」
「なんとなく? なんか雰囲気が微妙に変わったからそうかなって。今みたいにさ。ほら、私獣人だから気配とかの変化が分かり易くてさー」
なんとなく、つまりは勘ですか。いえ、確信もあったのでしょう。諜報員に関わらず衛士なら生き残るために勘、危機察知能力は重要になります。
諜報という任務には罠の仕掛けて有る場所へと踏み入れること……踏み入れさせられることも暫しありま す。私みたいに。やっぱりあれは諜報員の仕事じゃありませんよ。勘の良し悪しは以外に役に立つものです。
マコトさんのは野性の勘というやつですね。亜人という半分野性の血が入っている事は、戦士としてはメリットであるのでしょう。
だからこそ惜しい、これで友人を利用できる程の冷酷さが有れば、その後ろ盾や戦闘技能と合わさり諜報員としては良い地位へと行けるでしょうから。
どっちもできない私は三流ですが。
「残念ですね。その勘も、人脈も、利用できたのなら諜報員としては大成したでしょう」
「……それは私にツバキを利用しろって言いたいのですか? ハザマさん、いくら私でも怒りますよ」
「失礼、失言でした」
私はそう言葉を続け、身構えるマコトさんへと小さく笑いかけました。その言葉には悪意を含めたわけではないのですが、やはり聞き方によっては失礼に当たりますね。
すみませんでした、とひとつ頭を下げた私を見て、マコトさんは小さくため息をつきました。
「……うん。ツバキは士官学校で私を『マコト・ナナヤ』と見てくれた。なのに私がツバキを『ヤヨイ』として見るなんて、そんな裏切るようなことはできないよ」
はっきりと私に答えたマコトさんにやはり私の口から苦笑が漏れました。
やはり、彼女は諜報員には向いていない。
諜報員はその大切な友人にさえも、裏から探らなければならないこともあります。一枚岩ではいかないのが組織であり、軍というあり方でもあるのですから。情は確かに戦いに於いて大きな力を発揮するものですが、任務、それも諜報という活動では邪魔になるものです。
「ええ、マコトさんはそのままである方が好ましいですよ」
でも私はなぜか『その邪魔になるものをマコトさんには持ってほしい』と思いました。
おかしいですね。私の部下である人に心構えをしっかり教えた方が、私の生存率は上がるというのに。その発言はよほど可笑しかったのでしょう、マコトさんはぽかんと口をあけてこちらを驚いたように見てきていました。
「……って、マコトさん?」
「あっと、すみませんハザマさん。なんか……ちょっと意外だったので。情報の網を作り出すのに誰かを利用するってことは、士官学校時代もさんざん言われてたことだったから」
うわぁまたなんか間違ったこと言っちゃったんですかうわぁ。く……記憶喪失で私に士官学校時代の記憶が無いなんて言ったらどうなるでしょう。
『えっ……そうだったんだ。ごめんハザマさん…』みたいな空気になってしまうではないですか!(ただの被害妄想)
相手に気を使わせるという行為も面白いものじゃありませんよね。回避してみせます。
そこで私は苦笑してから空気を軽くするために一息つき、体の力を弛緩させました。ようするに発言についてごまかそうと思ったのですね。
とりあえず辺りをぐるりと見回し、話のネタになりそうなものを探します。
……ない。さすがにもう屋台の食べ物ネタは尽きています。財布の中身も尽きてますよ。
なにか、なにかないでしょうk『皆の衆、今日二十時より打ち上げ花火の始まりでござる! 楽しみに待つでござるよ!』
こ・れ・だ!
「は!? 任務ですマコトさん!」
「へ? あ、えっと?」
「イカルガの残党が花火に見せかけた爆弾を使ってテロを企てているかもしれません! さあ早く見やすいスポットに移動しますよ!」
「ちょ、ちょっとハザマさんってば!」
素晴らしいタイミングでの花火打ち上げの通知でした。
とりあえずその場から駆け足気味で離脱すると、マコトさんが追いかけてきたのがわかります。ふ、いったん場が壊れたことによってもう一度口をきく時は空気が弛緩しています!
何が好きで休日まで真面目にしなきゃならないんですか。最初に思考を持ってかれたのは私ですけど。
しかしマコトさんに言ったようにあまり諜報員としてそれだけになって欲しくないのは本心なんですよね。
どこまではしてもいい、だけどその先はしてはいけないという線引きは重要なものですから。
まあとりあえず……花火を見てからいろいろ考えます。疲れたので。私は足を少し早めると、綺麗に見えるだろう広場へと進みました。
『言うじゃねえか。お前に
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私の上司は、ぶっちゃけ変な人だった。
初対面で驚かせようとしてぶっとんだり、(これは私が悪いけど)セクハラまがいなことをしたり、気安いというか上司っぽくなかった。親しみやすいというのは確かなんだけれど。
それになんだか距離感がつかめない。近かったり遠かったりさまざまで、話してて飽きない。仕事に関しても、諜報部ってもっと殺伐としたところだと思っていた分、予想以上にフレンドリーだった。たぶんハザマさんの性格のせいでもある。
木の上から自分の上司を見下ろす。やっぱり登るのは躊躇しているみたいだった。
「ハザマさんこっちだってば! ハリー!ハリー!ハリー!ハリー!」
「いや確かに見晴らしは良いかもしれませんけど、木をスーツで登るのは無謀ですって!」
「大丈夫、私は一向に構わん!」
「構ってくださいよ!」
あと数分で花火は始まるのにハザマさんは登ってこない。
仕方ないから肩で担いで一気に跳躍したけど、なんだか、ひょえっ!?、とか言って驚いてた。ちょっと面白いかもしれない。
「確かに此処なら視界も悪くはありませんね。なぜこの場所を?」
片手に持ったビニール袋を置き、その中からお酒入り缶を取り出しつつハザマさんは聞いてくる。私も缶のプルタブを開けつつ答えた。
「その辺に忍者の人がいっぱい居るよね、その人達から聞いたんだけど……ハザマさん?」
忍者、という単語になぜか硬直したハザマさん。『忍者……釘…落とし穴…』とぶつぶつ言い始めたのを見て、やっぱり変な人だと再確認する。
そうこう言っている間にも、二十時に時計の針は差し掛かっているのに、いまだに何かをぶつぶつ言ってるハザマさんには正直笑わせてもらった。私が話しかけないとそのままだったかもしれない。
『皆の衆、準備は良いでござるかっ!? 拙者は準備万端のバリバリでござる! 今、この時より復興祭最後の打ち上げ花火の始まりでござるよ~~!!』
とそう思ったけれど、やっぱむさ苦しいこの声に結局は気が付いていたと思う。拡音の術式を使わないでこの声は正直すごいよね。
それと同時に気が抜けるような音と共に花火が発射された。
最初の花火は赤色。大きく空に咲いた光の花は花火という文化を教えてくれた親友の姿を思い出させた。
(ん~ツバキは元気でやってるのかな?)
ちょっとした連絡を取ることはあっても、どの場所に任官したかは分からなかったから、心配なところもあった。けどどちらかというと自分よりもそつなくこなせるツバキなら、すぐに部隊の人となじめると思う。そもそも心配する方が失礼かもしれない。
次の花火は黄色と青。連続で打ち出されていくそれはおっちょこちょいの親友の姿が思い浮かぶ。
(ノエるんは……キサラギ先輩と上手くいけてるのかなぁ?)
ノエルは卒業間際でキサラギ少佐の秘書官として引き抜かれた。
なんで彼女が引き抜かれたかは分からない。知り合いという線だったらツバキの方が邪険にならないはずだけど。案外調査が甘かったのかもしれない。
そして今度は青から緑へと花火は変わっていった。
(私は……それなりかな。上司の人も結構面白いし)
思い浮かんだのは隣で花火を見るハザマさんだった。
ぽかんと空を見上げるさまは、目を輝かせショーウインドから離れない子供のようにも見えて、思わず口元が緩んだ。
「凄いですねぇ。あれってどんな術式を使っているんでしょうか? 爆破術式の応用……? いえ、空間転移と爆破術式を簡単に両立できるわけがありませんし……」
「あはははは……、べつにあれは術式を使ってるわけじゃないよ。たしか一つ一つ手作りで作ってるんだって」
「えぇ!? 一発ずつ全部をですか!?」
「そそ、一つの玉の中にたくさん光る玉を入れて、それをどーん!って打ち出す……ってツバキが言ってた」
「はーなるほど……それにしてもこれが……綺麗、綺麗ということですか……いや……なるほど」
私の説明に何度もうなづくハザマさんは、やっぱり視線だけは花火に釘付けだった。新しいおもちゃに目を輝かす子供みたいにみえてやっぱり可笑しい。
思ってみればハザマさんには年齢よりも幼い印象を持った。
たしか年齢は二十代半ばだと聞いたけれど、自分と波長が合うあたり、やっぱり子供っぽいのかもしれない。私も子供っぽいところが少しあるから。
警戒したのも短い期間であって、最近は友人として過ごすことも少なくない。男性の知り合いとしては紳士的な部類にも入って心象はすごぶる良かった。
だから、信じられないこともある。
空に上がったのは深い緑色の花火。
その時に視線を横にずらしてハザマさんの表情を覗った。そうだ、やはり優しそうな表情はそのままで、私の中の印象と一致する。
なら時折見せる、蛇のような雰囲気はなんだったのだろう。
初めて見たとき、本能が感じた。目の前の人物は『蛇』だと。それこそ油断したら頭から丸のみにされてしまうような、そんな危険な雰囲気を。
自分の勘はよく当たる。本能的な部分のものは亜人である自分はよく感じ取れた。
それがハザマさんの本質なら、私の隣で花火を見るハザマさんは偽物なのか。でもそれに私は否だと答えたい。
最後の花火が打ち終わり、静かな星宿が辺りに流れる。
「さて、と。じゃあ帰りましょうか。明日も任務ですし」
「……もー、お祭り中に仕事の話をしないでってばー。お祭りは帰るまでがお祭りなのだ!」
「あらら、それは失礼しました」
広げたおつまみや缶を片付けビニール袋にまとめるハザマさん。それはどこにでもいるような男性にしか見えない。
「じゃ、帰りましょうか」
さっと木から飛び降りるハザマさんを追って私も飛び降りた。空港までの道を談笑しながら思う。
この胸騒ぎは違和感に違いない、と。
私はそう思った。少し違う、そう、思いたかった。