妖精の翼 ~新たなる空で彼は舞う~   作:SSQ

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話数を重ねる度に文字数が増える増える。
ついに2万です。



第44話 ヴェネツィア戦(下)

基地到着後、エレナ少尉はすぐに治療室へ運ばれた。俺も少し腰の回りに痛みを覚えたのでそれを申し出ると同様に診察された。

診断結果は急旋回を行ったことによる捻挫。

放置しておくと変に癖がつく可能性があるということなので治療ウィッチに治してもらうことに。

すぐ担当のウィッチが来る、とそういうと医者はすぐどこかに行ってしまった。

「あの医者も大変なんだな。」

思わず、疲れからか独り言を言ってしまう。

「この基地にもヴェネツィアで負傷した兵士や民間人がたくさん運ばれてくるんですよ。だから合間を縫って大尉の診察を行ってくれたんです。いまだ重傷者はたくさんいるんですけど私たちウィッチは最優先。ウィッチというのはそれだけ重要視されているんですね。」

返答されるとは思ってもみなかった。

後ろを振り返ると一人の少女が立っていた。

「あんたは?」

「あ、失礼しました。私は504所属のロマーニャ公国空軍のフェレルナンディア・マルヴェッツィ中尉です。大尉の怪我を治療しろといわれて来ました。」

あぁ、例の赤ズボン隊のやつらか。どう見てもパンツだろうという突込みにも、もう疲れた。

「ということは中尉は治癒魔法が使えるのか?」

「はい。それじゃあ、はじめましょうか。」

俺が服を捲り上げるとすぐに彼女は魔法を発動、俺の腰に手を当てて治療を始めてくれた。

 

「大尉、ひとついいですか?」

「ん?なんだ?」

俺は後ろを振り返ると真剣な目をした中尉と目が合った。

 

「ありがとうございます。私たちを守ってくれて。」

 

・・・守ったつもりなんてなかったんだがな。

「別に。あの時は警報の音に体が反応して勝手に動いただけだ。いくら指揮系統に組み込まれていないとはいっても勝手な行動には間違いがな。」

そうなんだよな、これ。大丈夫かな?勝手に行動したなとか言われないといいが。

まぁ、7機落した上にちゃんと基地を守ったのだから文句を言われる筋合いはないか。

「それでも行動できるだけすごいですよ。私たちなんて昼間の戦闘で疲労困憊していてほとんどの人がまともに動けなかったんですから。みんな大尉を見てもっとがんばらなきゃとか思っているはずですよ。」

「そうだといいな。明日からの戦いもさらに激しさが増すだろうからな。」

「そうですね・・・。」

そういうと彼女は黙ってしまった。

なんとなく落ち込んでいるようにも見えた。

「責任を感じているのか?」

「え?」

「ネウロイがこんなにたくさん襲来するのはトラヤヌス作戦実行直後だろ?自分たち504が刺激しなければ、とか思ってたりしないか?」

「・・・はい。」

「ならそんな事を考えるのはやめておけ。自分をさらに追い込むだけだ。作戦実効命令を出したのは司令部なんだ。それにヴェネツィアを守る責任がとか考えているのならそれも同じだ。いくら精鋭とはいえ、一度に裁ききれる数には限りがあるんだ。それ以上がこられたら無理なものは無理なんだ。

もし、そんな事を考えているなら今は切り替えて、これ以上の被害を出さないためにはどう動けばいいのかを考えるべきだ。違うか?」

「はぁ。・・・強いですね。大尉は。」

経験の差だよ、と言おうと思ったがやめた。

こればかりか彼女にがんばってもらうしかないからな。

中尉は俺の腰から手を離し、魔法を解除した。

「ありがとうございます。少し楽になりました。大尉の怪我したところはどうですか?」

「あぁ、さすがだ。問題ない。」

「そうですか、他に何か問題とかありますか?」

「大丈夫だ。ありがとう、助かった。」

「いえいえ、それではまた明日からもがんばりましょう。おやすみなさい。」

そういうと彼女は去っていった。

さてと、どこで寝ればいいんだろうか?

近くの奴に話を聞くと、寝袋が支給された。ベッドは病人に渡しており足りないんだとさ。

仕方ないので格納庫で一夜を過ごすことになった。

 

ウーーーー!

ぐっすり寝ていたのにまた警報音に起こされた。

ガバッと寝袋からおきてすぐに抜け出しユニットのAPUを作動。

その間に寝袋をたたんで武器類を装備する。

そしてユニットを装着してチェックリスト確認開始。

時間を確認すると0310だった。もうこの頃には眠気もなくなっていた。

まったく、戦場っていうのはこんなにも忙しいものなのか。

これが連日続いたら持たないぞ・・・。

「シルフィードよりコントロール。まったく、すばらしい朝だな。敵情報と離陸許可を寄越せ。」

『その通りだな、シルフィード。お客さんは東から4機接近中だ。他のナイトウィッチも現在交戦中につき助けは出せないそうだ。シルフィードがいて助かった。離陸を許可する。誘導路、滑走路は昨日と同じだ。頼んだぞ。』

「了解した、通信終了。」

格納庫から誘導路を通り、滑走路に向かう途中に基地内から放送が聞こえてきた。

“当基地は現時刻を持って警戒態勢に移行。総員持ち場に着け。”

あわただしく人が動く中、通信が入ってきた。

『大尉、待ってくださいー。』

「だれだ?」

『トルキオ中尉です。すぐ行くので待っていてくれませんか?』

「無理だ。来るなら、先に行くから急いでついて来い。」

『そんなー!パパ待ってー。』

俺は無言でそいつとの回線を切った。

こいつだけは、絶対に待ってやらない、俺はその瞬間にそう心に誓った。

 

結局、こいつが来る頃には俺が3機撃墜してしまっていたので最後の一機をこいつに任せて俺は先に帰投した。

基地に着いたのは0420、そのまますぐに仮眠を取り再び起きたのは0548。

すぐに身支度を整えて、合同気象ブリーフィングに参加。

朝食をとり格納庫に止めてあるメイブの機体を整備。

0700から続々とウィッチ隊が離陸する中、俺は0830に離陸。

地上や味方ウィッチ隊からの救援要請をうけそれぞれ援護に向かう。

特に地上部隊の援護だとかなり感謝されてこちらも悪い気はしない。

だが、司令部からの命令はいまだ徹底抗戦。

一度休憩や弾薬補充のために基地に戻ったのだが、ロマーニャ公国空軍所属のウィッチ一覧の掲示板の×印が出撃したときよりも増えていた。

果たして、ここまでしてヴェネツィアを取り戻す意味があるのだろうか。

こういう掲示板を見ると彼女たちの死を無駄にしないようにせねば、と思ってしまう。

 

再び戦場に行き、救援を受け助けに行く。

基地に戻ったのは1710、今日は7時間空にいた計算か。

撃墜数は8。

「お。」

今計算してみて気がついたのだが、撃墜数がついに100を超えた。

「すごいですね。」

「ん?」

後ろを振り返ると504の戦闘隊長、竹井大尉が俺の書類を覗き込んでいた。

「あまり人の書類を覗き込むのはいいとは思えないぞ?」

「あ、ごめんなさい。撃墜数のところがふと目に入っていつもよりも桁がひとつ多かったので。それにバーフォード大尉なら見られてはまずい書類はここでは読まないと思いますし、その書類にも部外秘の判子が押されていなかったので。」

たしかにそうだがこれがその規則に当てはまらない書類だったらどうするんだろう?

「まぁ、いいか。3桁にはなったが502の連中と比べたらまだまだだからな。そういえばそっちの状況はどうだ?」

そういうと、竹井大尉は少し落ち込んだ様子を見せた。

「あまり、よくありません。今日もまた負傷者が増えて戦力がさらに低下しています。幸い死者は出ていませんがいつ出るのかわかりませんし。全滅してしまった隊も少なからずあるようです。」

彼女の視線の先には昼見たボードがあった

まったく、×の数が増える事はあっても減る事はないんだよな。

と、少しどんよりした空気になっていたら外が騒がしいことに気がついた。

「なんだか知っているか?」

「さぁ?私には?」

二人して首をかしげていると近くのウィッチがなにやら話しているのが聞こえた。

「あの、“アフリカの星”が来ているんですって。」

「それってハンナ・ユスティーナ・マルセイユ大尉のこと!?」

「えぇ、なんでも504の隊長に助けられたことがあってその恩返しで来ているそうよ。」

「お話できないでしょうか?」

「無理でも、一度見てみたいわね。」

そのウィッチは急いで外に出て行ってしまった。

名前は聞いたことがある。

アフリカの第31統合戦闘飛行隊で戦闘隊長をやっている奴だ。スコアは200を超えているスーパーエースの一人だ。アフリカすっぽりだしてこっちに来たという事はあちらのほうは比較的落ち着いているのだろうか。

「竹井大尉は会いに行かないか?」

「私は別に、部下の怪我の確認に行かないと行けないので。」

「そうか、戦闘隊長も大変だな。」

「本来は隊長の仕事なんですけどね。あの人もやることが多いので私が代わりをしています。」

そうなのか。この調子だと以前のペテルブルグ防衛戦のときも少佐と曹長は大変だったんだろうな。

と、視界の端でなにやら集団が動いているのが見えた。

なにやらサインを求めているウィッチがいるがやんわりと断っているみたいだ。

「人気者は大変なんだな。」

「そうですね。あ、それではバーフォード大尉、そろそろ時間なので。また夜の会議で。」

「あぁ、お疲れ様。」

そういって竹井大尉と別れる。

さてと、俺もユニットの整備と銃のクリーニングをしないとな。

適当に小さなテーブルを引っ張ってきて武器の分解を始める。

 

しばらく綺麗なタオルで汚れを拭いていると急に手元が暗くなった。

顔を上げると一人の金髪少女が立っていた。

ずいぶんと身長が高い。俺と同じくらいあるんじゃないか?

俺はすぐに顔を戻して、作業を続ける。

「あんたが噂に聞く“東欧の魔術師”か?」

「あぁそうだ。」

へぇー、といいながら彼女は俺の正面に座る。

どうやら彼女は俺の都合に関わらず何かを話す気でいるらしい。だか

「それと、ひとつ言わせてくれ。俺は好きでその名前を広めているわけじゃない。」

「それじゃあ、誰が名づけたんだ?」

「伯爵だ。」

どうせ言ったってわからないだろう、と思いながらその名前を言うと意外な反応が返ってきた。

「あぁ、クルピンスキー少尉か。」

「知っているのか?」

「もちろん。同じ部隊にいたからな。」

少尉って言ってた事はおそらく502に来る前に一緒の部隊だったのかもしれない。

そういうと彼女は右手を腰に当てて自らの名前を名乗る。

「はじめまして、魔術師。私はカールスラント空軍所属ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ大尉だ。」

「魔術師と呼ぶのはやめてくれ。俺はブリタニア空軍所属フレデリック・T・バーフォード大尉だ。アフリカの星が俺に何の用がある?」

 

「バーフォード、私はあなたに会いにきた。会いたかった。」

 

その言葉に思わず手を止め、彼女の顔を見てしまう。

告白染みた言葉だと一瞬思ってしまったがすぐそれが間違いだと気がついた。

彼女の顔は笑っていたがまるで獲物を見つけたときのような笑みだった。ちゃっかり呼び捨てになっているし。

「そりゃどうも。スーパーエースが俺なんかに会って何をしたいんだ?」

そう、会いたかった理由がいまいちよくわからない。

まだ俺は目立った功績なんて挙げていない。しいて言うなら歩いて帰った程度だ。

それなんかも人類の役になんてたたない。

彼女の目に付けられる要素なんて見当たらなかった。

「バーフォード。昨日撃墜したネウロイの数は?」

「昨日の昼間に落したのは12だ。」

「それだけじゃないだろ?」

「・・・夜間に7で合計19だ。それが?」

俺がそういうと彼女は腕を組んで俺をじっと見てくる。

しばらくお互いの目を見ていたところ彼女がポツリと漏らした。

「気に食わない。」

「は?」

「私は1日に落したネウロイの数の最多が17だった。私はそれを誇りに思っているしそれで表彰されたこともある。だけど、そのスコアが塗り替えられたことが気に食わない。

もちろんスコアはいつか更新されるものだろう、けどそれが私じゃなくて他の人だったのが気に食わない。

だからここに来た。私のスコアを破った張本人がどんな人なのか見たくて。」

「それは光栄だな。」

自分の都合でここに来たとも取れる言葉に対して皮肉交じりに答えてやると鼻で笑われた。

こいつ・・・。

だが、新聞のアフリカ版でよく目にする名前の彼女がいま目の前にいる。

気にならない、といえば嘘になる。

「はぁ、マルセイユ。ここにいたの?」

「ケイ!」

そういうと一人のウィッチが歩いてきた。

少女と言うよりは幾分大人びている。いままで出会った中では一番年長じゃないだろうか?

「はじめまして、バーフォード大尉。マルセイユの上司で扶桑海軍所属の加東圭子少佐です。うちのマルセイユが迷惑かけていませんでしたか?」

『そりゃもう、ちゃんと捕まえて置いてくださいよ。』

俺が扶桑語で話すと一瞬少し驚いた顔をして、こちらにあわせてくれた。

『はい、ごめんなさいね。目を放した隙にすっとどこかにいなくなってしまって。

アフリカの星なんていわれていますけど実際はグーたらですからね。』

『違いない、っと忘れていました。言わなくても既に知っているとは思いますが一応自己紹介を。俺はブリタニア空軍所属フレデリック・T・バーフォード大尉です。』

『よろしくね、大尉。あ、それとマルセイユには気をつけて。たぶん何かにかけてちょっかいかけてくるかもしれないから。

あなたがマルセイユの記録を超えたと聞いたときの彼女の反応はすごかったから。

ロンメル将軍から話を聞いた瞬間突っかかりそうになっているのをみんなで必死に止めたんだから。』

俺は苦笑いをしてしまう。

『先ほどの会話でなんとなく想像ついてはいました。』

「おい、ケイ!私のわからない言語で私の悪口をいうな!」

やはり雰囲気でわかってしまったか。

「それでは、加東少佐。また後ほど。」

「えぇ。それじゃ。またあなたの話も聞かせてね。」

そういうと2人は去っていった。向かった先から推測するに司令官室だろう。

とにもかくにも彼女らが援軍として来てくれたなら戦力としては十分だろうな。

 

今日は晩飯を食べようとしていたら加東少佐がやってきた。

「ここ、いいかしら?」

『えぇ、かまいませんよ。』

『別に私に合わせなくてもいいのに。』

『他の国の言語って言うのは時々話さないと忘れちゃうんでこういった機会があれば話すようにしているんです。迷惑でしたか?』

『いえ、そんな事はないわよ?むしろこっちのほうが楽と言うか懐かしいというか。

ま、迷惑じゃない事は確かね。』

それなら良かった。

さて、加東少佐もここに来て話をしにきたって事は何らかの意図があるのだろう。

俺自身としても昔の隊長さんや下原から聞いていた“扶桑海三羽烏”の一人とコネクションがもてるならそれに越した事はないし。

『ところで、マルセイユは放置してもいいんですか?』

『ま、あの調子を見る限り問題ないと思うわ。』

そう少佐が指差す方向を見てみるとたくさんのウィッチに囲まれながら自分の武勇伝を語るマルセイユがいた。

気持ちもわからないわけでもない。憧れのスーパーエースの一人と話せる機会が出来たんだからそれを逃すはずがない。

『本人も上機嫌だししばらくは放置しても大丈夫かなって。それに私も疲れるし。』

なるほど。それもそうか。

『だから、ちょうどあなたが暇そうにしていたから来たと言うわけ。

それで、話に付き合ってくれるかしら?』

『もちろんです。話せない事もありますがそれ以外なら。』

そこから少佐の話につきあった。

ジェットユニットの乗り心地、男一人だとどんなことが大変なのか、前に撃墜されてネウロイの巣近くから歩いて基地に戻ったときのこと、欧州、特に東欧の戦況はどうかなどを話したのだった。

『ペテルブルクでの戦いは1日だけとは聞いていたけど結構激しかったのね。』

『えぇ、幸い死傷者は少なかったんですけどね。アフリカではどうなんですか?

502並の激戦区とは聞いていますが?』

『確かに大変なんだけれど、たいていマルセイユが撃墜しちゃうからね。もちろんライーサや真美、マティルダ・・・、あの人も入れておくか、もがんばってくれてはいるんだけどね。』

そんなにマルセイユはアフリカですごい戦果を上げているのか。

アフリカのネウロイはガリアのやつらよりも手ごわいと聞く。

そりゃ、新聞にアフリカの星って書かれるわけだ。

『物資も足りないし、ロンメル将軍に言って優先的に回してはもらっているけどそれでも足りないものは足りない。』

『その気持ちはわかりますよ。前の防衛戦で物資集積基地が攻撃を受けて一時期は弾薬だって来なかったこともありますし。

うちの曹長がいなければどうなっていたことやら。』

『やっぱりどこも大変なのね。』

『むしろ楽なところがあるならぜひ教えてもらいたいですね。』

『『はぁ。』』

二人同時にため息をついてしまう。

『“書類を主敵とし、余力を以ってネウロイと戦う”とはよく言ったものよね。』

『そうですね、俺は隊の隊長やっていますけど隊員がよくユニットを壊すので上司の苦労は良くわかりますよ。』

『あー、“ブレイクウィッチーズ”だっけ?どんな感じなのかしら?』

『今年だけで9回は破損させていますよ、それもそのうちの半分は単に装甲板の交換とかそういうのではなく修理工場に持っていかないと治らないレベルです。そしてそのレベルの破損が起きるたびに俺たちは修理申請書類や代替機申請を行うんですよ。』

『すごいわね。一人当たり4ヶ月で3機も壊すなんて。マルセイユも良く壊すほうだけど一年に1,2機だし。それでも戦果はちゃんと上げているんでしょ?』

『ん?』

『え?』

・・・どうやらお互いの認識に齟齬があるようだ。

『・・・ちなみに9回破損させたのはクルピンスキー中尉一人で、ですよ。他の2人は別のチームなので詳しくは把握しておりませんけど管野少尉は中尉の7割くらい、カタヤイネン曹長はその半分くらいです。そう考えると合計17回は修理出していますかね。』

『・・・嘘でしょ?』

『本当ですよ。これでも一月下旬に防衛戦があった以降ネウロイの行動が沈静化したおかげで少ないほうらしいですよ。』

しかし、出撃回数が減っても何故か壊すユニットの数に現状変化が見られないのがブレイクウィッチーズの怖いところでもある。

『・・・上には上がいるのね。それにバーフォード大尉も苦労しているのね。』

『えぇ、ここは彼女らの書類のことを考えないでいいので少し楽だったりします。』

『それは私も同じね。』

意外と加東少佐とは話があう。お互いじゃじゃ馬が下にいると苦労話が理解できてしまう。

夕食のパスタもすっかり冷めてしまった。

『それにしても、魔術師なんて聞いたときはどんな人かまったく想像できなかったけどいざ話してみると面白い人でよかったわ。』

『それは“扶桑海三羽烏”の一人に認めてもらえたと捉えてもいいんですか?』

『そうね・・・。腕もいいならぜひとも・・・。』

 

ウーーーー!

警報!

その音と共に食堂も急に騒がしくなる。

「少佐、失礼します。」

俺はすぐに立ち上がり“スクランブル!”と叫んだ上で走り出そうとする。

「大尉!」

加東少佐に呼び止められ、一瞬走るのをやめる。

俺が振り返るといつの間にか少佐は立ち上がっており、俺に敬礼していた。

『武運を。』

俺は軽い敬礼をして格納庫に走る。

 

格納庫に入り速やかにユニットを起動、離陸体勢に入る。

ふと、辺りを見渡してみると今朝と様子が少し変わっていた。

誰かが手を回してくれたのかわからないが俺が夜間出撃をする際の手助けになるような情報が既に黒板に掲示されていた。

最新の気象情報、滑走路付近の風速と風向き、敵方向、数、速度が書かれていた。

これを読んでおけば、管制塔と通信する時間や手間も少し減る。

いつもは俺が外していたユニットロックを整備兵が手伝ってくれて出来るだけ早く離陸できるようなシステムが出来ていた。

おかげでいつもより30秒は早く離陸が出来る。

「シルフィードよりコントロール。今日も素敵な夜になりそうだな。手順は今朝どおりでいいな?」

『こちらコントロール。そうだ。プレゼントは気に入ってもらえたかな?』

「あぁ、最高だよ。すぐ離陸する。」

『了解した。すでに誘導路からは人員は退避済みだ。トルキオ中尉とランデブーポイントで合流後、共同で撃墜してくれ。Good luck.』

またトルキオ中尉か・・・。

 

離陸後、敵進路と交差するコースを取る。途中、ランデブーポイントでトルキオ中尉と合流する。

「遅いですよ、大尉。」

今朝、置いていったことをまだ根に持っているのか。

「俺は基地から来ているんだ。中尉には一人でネウロイを落す覚悟くらい見せてもらいたいものだな。」

「いいましたね?大尉?なら私が一人で撃墜しますから!」

「ほう、それは楽しみだ。」

報告だと敵は中型2機、ナイトウィッチならいけないわけではないだろうな。

レーダーでも敵の反応は捉えている。中型2機、報告と間違いはない。

やがて視認できる距離になり、戦闘準備を整える。

「大尉は見ていてください。私も出来ることを証明して見せます。」

中尉がそういった瞬間、ネウロイ2機がこちらに進路を変更してきた。

真正面で捉える形になった。

「行きます!」

ところがネウロイの見た目に変化がおきた。

まるでハッチが開くかのようにネウロイの装甲が開いた。

やがてそこから小型ネウロイが中型1機につき6機出てきた。

小型射出後、中型は格納していた場所を切り離して小型機編隊の真ん中に護衛されるように配置された。

合計14機の編隊が俺たち2人に襲いかかろうとしていた。

「それじゃあ、トルキオ中尉。あとよろしく。」

「た、た、大尉!?!?」

「だってさ、さっき“私に任せてください!”って言ってたじゃん。」

「ごめんなさいごめんなさい!今は何回でも謝るので今回だけは助けてくださいお願いします!」

はぁ、仕方ないな。

「貸し、ひとつな。」

「はぁ。まさか、見返してやろうと思ったら逆に変なことになっちゃった・・・。」

「ほら、なにぼさっとしている!くるぞ!」

「はい!了解!!」

俺と中尉は敵編隊にまっすぐ突っ込んで行った。

 

Another view side Katou major

 

大尉が出撃してから1時間以上がたっただろうか。

残念ながら夜間ウィッチと違って私たちは今空を飛ぶ事は出来ない。

ある程度明るければ、それこそ満月であれば、戦う事はできるんだけどね。

だけと今日の空は真っ暗。

こんな状況で飛ぶなんてしたら暗くてでネウロイを見つけるどころか自分がいまどこを飛んでいるのかすらわからなくなる。

一度飛んだことがあるけどあれは恐怖以外何者でもなかったな。

そんななか、何時間も飛ぶ夜間ウィッチは本当にすごいと思う。

なーんて考えていると基地内に放送がはいってきた。

『シルフィードより報告。敵ネウロイ14機を撃墜、味方損害なし。また基地より半径200km圏内に敵影なし。これにより、現時刻をもって当基地の警戒態勢は解除。準警戒態勢に移行しろ。繰り返す・・・。』

へー、最初は中型2機って話だったけどいつの間にか14機になっている。

聞く話によるとバーフォード大尉は昨日も単独で7機落しているからおそらく今日もそれくらいは撃墜しているだろな。

そういえば、マルセイユは?

彼女を探すがどこにもいなかった。

はぁ、また探さないと・・・。

 

しばらく歩いていると正面からマルセイユが歩いていた。

「まったく、どこいっていたの?」

「ケイか。すこしレーダー室に行っていた。」

「レーダー室?そんなところでなにしていたの?」

そしてマルセイユの話を聞いてみると面白い話しが聞けた。

バーフォード大尉がどういう動きをするのか少し気になったのでレーダー画面を見せてもらえば何かわかるかと思いレーダー室にいたらしい。

部屋にはなぜか簡単に入らせてもらえたらしいが、問題はレーダーに大尉の反応がなかったことだ。

警報がなった直後、時間にして大尉が離陸した直後にすぐレーダー室に入り、観測を始めたらしい。絶対に映る はずの反応がない。

まさか、実際には行っていないのか?という仮説も思い浮かんだが無線の報告や地上班の報告からも出撃し、戦闘を行っているのは確かだ。

観測員の話を聞くとこういう風にレーダーに映らない、または反応が薄いという報告がナイトウィッチからも上がっているらしい。

結局どんな飛び方をするのかはトルキオ中尉とやらの話しから得られたへんな話以外はわからず仕舞いだった。

そういう顛末だったらしい。

 

レーダーに映らない?それもナイトウィッチの反応にも引っかからないなんて事あるのかしら?

あ、もしかして。

「もしかしたら、バーフォード大尉の固有魔法って隠密なのかも。」

「隠密?何だそれは?扶桑のニンジャとやらか?」

「まぁ、そうしておこうかしら。とにかく、レーダーやナイトウィッチの反応に引っかからないというのが彼の固有魔法ゆえだとしたら説明がつかない?」

「ふむ、なるほど。でもそんな固有魔法なんて聞いたことないぞ。」

「彼は、魔術師なんだし私達ウィッチの常識を当てはめるのを少しおかしいかもしれない。」

そう思うと俄然、彼に興味がわいた。

どうやらマルセイユも同じようだった。

 

Another view end

 

 

帰ってくる頃には既に会議は始まっていた。

さすがに俺一人を待っていてはくれないんだろうな。ユニットと武器を置き、急いで会議室に向かう。

会議室のドアを開けると音に反応してかほぼ全員の顔がこちらに集中する。

「遅くなりました。」

「ご苦労だった、大尉。後で戦闘の報告してくれ。それでは続ける。」

俺は昨日と同じ場所に寄りかかり、会議の話を聞く。

 

内容は意外なことが通達された。

ネウロイの巣からの敵の襲来数は日に日に増えて、こちらの戦力は補給が来ないのでどんどん減っている。

このままでは奪還どころか防衛すら怪しくなってくる。

味方の消耗率が司令部の予想をはるかに上回っていたらしい。

そりゃそうだろうな。ろくに地上部隊を援護も出来ないんだから当たり前だろう。

いくら空がメインだって言ったって地上部隊だって重要な戦力なんだ。

それを軽視している以上、失敗するのも当たり前だ。

この状況を鑑みて司令部は本日2230を持って全軍に対して撤退命令を出した。

俺たちの明日からの任務は撤退する味方の防衛となる。

そのため全ウィッチ隊の再編成が行われることになった。だが増援部隊は継続して遊撃隊のように動く手はずになった。

そして・・・。

 

次の日。

いまだヴェネツィアに残り撤退を行っている部隊を安全圏内まで逃がす撤退戦が日の出と共に幕を開けた。

ユニットの最終チェックをしていると後ろに気配を感じた。

「どうしたんだ?」

俺はいつもと変わらず作業をしながら声をかける。

「バーフォード大尉。あなたの飛び方、見せてもらうぞ。」

「・・・なんだいきなり?そんなにスコアを抜かれたのが悔しかったのか?」

「もちろん。」

振り返るとやっぱり彼女は笑っていた。

「その割には笑顔じゃないか。」

「私のスコアを抜いた奴がどんな飛び方をするのか気にならないほうがおかしいじゃないか。もしかしたらライバルになるかもしれないだろ?」

「君のライバルか、面倒くさそうだな。」

「そういえるのも今のうちだ、待ってろよ!絶対また追い越してやるからな!」

そう叫ぶと隣の隣に設置したあるユニットに足を突っ込んで離陸体勢に入った。

俺はこのときは知らなかったが、彼女は昨日の夜俺についての収穫がなくてもやもやいていたらしい。だから今日こそは、と張り切っていたとの事。

 

時計を見るともうそろそろで作戦時刻だった。

ユニットの確認もこれで十分だろう。さてと、俺も行くか。

エンジン始動。離陸態勢に入る。

『作戦行動中の全ウィッチに通達する。これより作戦開始となる。君たちの任務は昨日とは違い防衛だ。勝手が違うからくれぐれも注意してくれ。Good luck.』

司令官がそう激励の言葉を述べるとすぐに管制塔から離陸の指示が飛んできた。

それじゃ、はじめますか。

『コントロールよりシルフィードへ。貴機の離陸は3番目だ。滑走路14Lを使用しろ。第25飛行隊へ・・・。』

 

 

ヴェネツィア上空での戦いはさらに激しさを増してきた。

ネウロイも手を緩めることなく、逆にここで地上部隊を殲滅すべく大量のネウロイを投入してきた。

次々に入ってくる敵発見報告と攻撃命令をよく聞きながら黙々と作業をこなしていく。

 

大きな動きがあったのは1156だった。

敵の大部隊がウィッチ防衛網を突破したとの報告が入ってきた。全てのウィッチ隊が戦闘に集中している隙をついた形だ。まるで物量作戦だ。いつからネウロイは数に者を言わせて戦うようになった?っていつものことか。

増援部隊にこれを殲滅するよう指示が入る。

大型を含む20機を越える大編隊だ。

俺が攻撃圏内に到着する頃には既に戦闘は始まっていた。

あれは、マルセイユか。

そりゃ増援部隊に攻撃指示が入ったんだから戦っているのは当たり前か。

動きを少し見ていたがあれはすごいな。

まるで攻撃する先にネウロイが自ら向かっているように見える。

実際にはマルセイユがネウロイの進行方向を予測して偏差射撃しているだけのはずだがそれを忘れさせるほどの完璧な射撃だった。

ただ、少し危なっかしい飛び方をしている気がする。早く援護に入るか。

「シルフィードengage.」

まずは大型を除く中型と小型を先に殲滅する。既に4機落されているから残りは16機。相手に不足はなし。

素早く近くを飛んでいた小型2機を撃墜してマルセイユの援護に回る。

来たか、と言うかのように一度俺のことを一瞥するとすぐに戦闘に集中し始めた。

中型が俺の背中から迫ってくる。

俺は速度を上げて一気に引き離して、急旋回。体を上げて射撃体勢を取る。

発砲。

狙いは中型ネウロイ。

弾丸は正確に着弾した、が撃墜ならず。

昨日は落とせたのに。

理由は俺のミスかネウロイの変化かわからないが撃墜仕切れていない。

速やかに追撃して先ほどの弾丸が破砕した部分に着弾、撃墜。

くそ、また2発使わないと落せなくなったのか?

まぁいい。次!

次の敵を探そうとふと顔を動かしたとき、マルセイユの後ろに一機つこうとしているのが見えた。

彼女は前方の中型に集中しているのか気がついた様子はない。

あの馬鹿!

ああいう状態に陥りやすいタイプに俺は心当たりがあった。

常に2機で行動しているやつらの1番機だ、常に背中を守ってくれる奴がいるやつほど一人になったときもいつもの癖で背中が留守になりやすい。俺も何回か経験がある。

言葉で警告している暇はない。

俺はすぐに出力を上げて彼女とネウロイの間に割り込む進路をとる。

間に合え!

ネウロイがレーザーを発射した瞬間、本当にぎりぎりで彼女の背後でシールドを展開できた。

すぐにシールドの隙間から射撃を行う。

運が良かったのか、コアがほんの少し先ほどのより表面に近いところにあったおかげで弾丸がコアまで到達し、ネウロイを撃墜した。

「背中がお留守だぞ、アフリカの星さん。」

俺はリロードしながら彼女に声をかける。

「すまない、助かった。」

彼女は追いかけていたネウロイを撃墜した後でそういってきた。

背後に気配がすると思ったらいつの間にかマルセイユが俺の背後に背中と背中を合わせるかのような体勢で飛んでいた。

これでお互いの死角はほぼない。

「スーパーエースがらしくないじゃないか。」

まるで苦虫をかんだような顔をしながら俺に言ってきた。

「いつもはライーサがいたから、すっかり警戒を怠っていた。」

ま、予想通りだな。

「何なら背中を守ってやろうか?」

「冗談じゃない。2番機を別の人に任せたなんてライーサに言ったら泣かれそうだ。ただ援護してくれるというのならありがたい。」

まったく、見ていられないな。ひやひやする。

「残り半分だ。援護してやるから間違っても怪我するなよ。そこらのウィッチに殺される。」

「誰に言っているんだ?私はハンナ・ユスティーナ・マルセイユだぞ?」

鼻で笑われたよ。さっき被弾しそうになっていたくせに。だが俺はすぐに気持ちを切り替え、今は目の前のネウロイに集中する。

「「行くぞ!」」

この場限りの共闘が始まった。

 

マルセイユの後ろにつき、援護をする。

彼女が狙っているネウロイは俺基本、手出ししない。

手助けなんていらないだろうし、手出ししたら横取り!とか言われそうだしな。

だから彼女の死角から襲うネウロイを優先して攻撃する。

大型は一機、こいつさえ注意すれば後は俺たちならそれ程苦労しないはずだ。

やはり、先ほどのミスを挽回するかのようにさらにスピードを上げていた。

彼女の動き、敵の配置、全てに注意を向けながら俺は飛ぶ。

 

気がついたら残り大型1機になっていた。されど1機。

「案外たいしたことないな。」

まったく、どの口が言うのか。

「最後の大型のコアがある場所は一番中心部だ。俺がこいつを全叩き込むから止めは任せたぞ。」

銃を軽く叩きながら聞くとマルセイユもすぐ反応する。

「了解した。任せろ。」

その言葉はすごく頼れる一言だった。

新しい弾糟に変えて、準備を整える。

「go!」

速度を上げて一気に距離を詰めて至近距離から12.7mm弾5発を出来る限りの速度で反動を制御しながら連射する。

残弾がなくなったところにすかさずマルセイユが機関銃をフルオートで全弾叩き込む。

だが

「硬い!」

コアに到達できなかった。

 

大型ゆえに修復速度も速い。

「どけ、マルセイユ!」

しかしまだ手段がなくなったわけではない。

最後の手段その1の扶桑刀がある。

もっていた銃を腰に回して抜刀。

音速ほどの速度をもって

 

斬る。

 

なんとか刃がコアを切り裂いた。

そして

爆発。

 

予想していたのよりもはるかに大きな爆発で俺は吹き飛ばされる。

シールドを張ったつもりだったがシールド展開速度よりも爆発速度のほうが速かったらしく右手に激痛が走る。

上下左右もわからないほど回転していたがふとやわらかい感触が体を覆った。

「おい!平気か!?」

「あぁ、マルセイユか。助かったが少し平気じゃないな。」

右手に力が入らない。血が止まらない。

あぁ、ミスったな。破片で切り裂かれたと思われる8cm程度の裂傷が出来ていた。

左手でマルセイユの手を借りながらそして、彼女に血が付かないように気を配りながら服を切って巻きつける。応急処置ですらないがやるに越した事はないだろう。

この傷も治癒魔法で治るといいな。

あ、まずい。意識が少し薄れてきた。

「マルセイユ、問題ない。お前は早く次のところに行け。俺は一旦基地に戻る。」

「そうか、気をつけろよ。仮にも臨時とはいえ、援護してくれた奴がしなれると私としてもあまり気分がいいものではない。」

「わかった。努力する。」

そういえば、マルセイユはよく俺と受け止められたよな。

下手すればユニットにあたって怪我する危険だってあったのに。

「本当に大丈夫か?」

「平気だって言っているだろう?マルセイユ、お前はいま俺と違ってここに必要な人間だ。お前を必要としている人がたくさんいるんだから早く行け。」

そういうと、少し心配そうな顔をした後にうなずいて。

「気をつけてな。」

そういって東の方向に飛んでいった。

管制塔に負傷したことと一旦帰ることを伝える。

せっかくの服が血の色と匂いで台無しだ。着替え、もらえるといいけど。

速度を上げて基地に向かうがあと15分はかかる。

意識がどんどん薄れていく中、ついに

I have control.

制御を奪われ、気がついたら意識を完全に失っていた。

 

 

気がついた。

時計を見ると1758

ほぼ18時だった。服は病院服になっており誰かが変えてくれたのだろうか。輸血もされている。

「あ、目を覚まされましたか?」

看護師がやってきて俺の調子を確認してきた。

傷は動脈も傷つけており、出血量も危険な量だったらしい。

治療は一人では間に合わないとの事で2人の治療ウィッチが行ったらしい。

傷はふさがったが血が抜けているので今輸血している、との事だった。

本当は飛行禁止だが、状況が状況なので出撃は本人の意思に任せるといわれた。

俺はもう特に体の異常がなかったので退院することにした。

それにしても本当に治癒魔法ってすごい。変な癖も残っていないし傷もちゃんとふさがっている。

ただ、痕が残りまだ痛みも残っている。ま、これは仕方ない。

 

ブリタニア軍がいるが服があれはもうだめなので別なのを渡された。私服になってしまったが最近は少しずつ顔も覚えられてきているのでまぁ問題ないだろう。

部屋を出て、とりあえず格納庫に向かう。

しかし、少しふらふらするし痛みもある。

万全とはいえない、がおそらく今晩またネウロイが来れば俺も出撃するつもりだ。

今も夜間ウィッチの数は足りない。万全でなくても飛べるのなら出撃すべき、だろうな。

それにもし死ぬなら空の上がいい。

 

格納庫でユニットを確認する。

最重要の場所を空けられた形跡はない。

格納庫の扉が開く音がして顔を上げるとちょうどアフリカ組みが帰ってきたところだった。

「バーフォード大尉。」

「・・・加東少佐にマルセイユか。ちょうど帰ってきたのか。おかえり。」

俺がそういうと二人ともただいま、と答えユニットを脱ぐとすぐこちらに歩いてきた。

「怪我のほうはどうだ?」

「とりあえず、治療ウィッチががんばってくれて何とかなった。まぁ痕は残ってしまったがな。」 

そういって俺は腕を見せる。

「とにかく、戦闘には問題ない。なんだ?心配してくれたのか?」

「あぁ。」

マルセイユはそう言った。俺としては意外だった。

てっきり自分の身内しか気にしない性格だと思っていた。

「そんなに意外か?私を助けてくれた相手を心配するのが。」

「まぁ、な。」

失礼な奴だな、とマルセイユは笑いながら言ってくる。

どうやら冗談とうけとめられていたようだ。

「私だって礼儀をわきまえているさ。」

「ほら、嘘つかない。」

「ちょっとケイは静かに。」

「はいはい。」

ま、加東少佐はいつもグーたらといっていたから少佐の言いたい事はわかる。

「ゴホン。まぁ、それに大尉は私にとってもいなくなっても困る人だしな。」

へーと後ろで加東少佐がニヤニヤしていた。

「それってどういう存在なんだ?」

「前にも言ったと思うが私のスコアを超えたという数少ない人間なんだ。ようやく張り合える人が出来たというのに。足を引っ張る人ならともかく私を守ってくれてそして新しい目標でもある人をないがしろにするはずがないじゃないか。」

「つまり、俺はお目にかなったのか?」

「当たり前じゃないか。しいて言うならライバル?そんな関係かな?」

ライバル、か。よく考えたら俺にそんな関係の奴はこの世界にはいなかったな。

というか、今朝言っていたことを認めてくれたってことか?

502のやつらはライバルと言うよりは仲間って感じだしな。

「悪くないな。」

「だろ?だからすぐに超えてやるから簡単に死なないでくれよ?」

「抜かせ、近いうちに誰もが絶対に超えないようなスコアを出してやる。」

そんな俺らを見て少佐は意外な顔をしていた。

「マルセイユとそんな話を出来る人がいるなんて本当に珍しい。」

「ちなみに他に誰かいるのか?」

「えっと、エーリカ・ハルトマンとか。」

そんな化け物と同列に扱われているのか?それは光栄だが、怖いな。

 

「そうだ!どうせならお互いのユニットにサインでもしたら?」

加東少佐が突如そんな事を言い出した。

「あ、それいい!」

マルセイユのサインねぇ、あまり本人はしないらしいからもらえるならいいのかも知れない。

というか少佐、“お互いがサインしている写真をどこかに売りつければ何か言い情報と引き換えに出来るかも。”とか言うな。聞こえているぞ。

マルセイユも乗り気でもうユニットの塗装に使われる塗料をいつの間にか準備していた。

「どこに書けばいい?」

「隙間にならどこでもいいぞ。」

「それじゃ、翼でいいか。」

マルセイユは両翼に書いてくれた。

「それじゃあ、バーフォード大尉も。」

ユニットにサインなんて初めてだな。筆記体で書くと喜ばれた。

加東少佐が写真を取るといってきた。

両人のユニットを前におき、マルセイユの隣に立つと肩を組まれた。

「・・・なんだよ?」

「まぁ、いいじゃないか。」

「いいと思うわ。それじゃ、3、2、1」

パシャ!

それは俺がこの世界で初めて取られた写真だった。

 

次の日も味方の防衛戦が続いた。

司令官からは要請を減らそうか?と聞かれたが断った。

素直に病人扱いされるのがいやだったからだ。

昨日と同様に遊撃隊として動くがマルセイユと共に戦う機会が意外と多かった。

形としては2人に同じ場所での要請が送られ、現場で合流するという戦い方だったがやはりすごく戦いやすかったことを憶えている。

彼女が危なくなったら俺がカバー、俺の後ろについていた奴は回避のために振り切ろうとしたらいつの間にかマルセイユが攻撃をしていた。

今日もスコアを越えられる事はなかったが彼女の勢いを見ていると本当に明日にでも超えてきそうな勢いがある。

そんな戦い方を俺たちは続けていた。

 

いつの間にかヴェネツィアについてから6日がたった。

部隊の撤退も順調に進んでいるみたいだ。

俺は単独でCAP(Combat Air patrol、戦闘空中哨戒)を行っていた。海上には一部地上部隊の撤退支援のために多数の艦艇が展開しており、俺やマルセイユを含めて数人のウィッチがネウロイの襲撃に備え、上空待機している。

ただ、さすがに襲来するネウロイの数も減ってきておりこの艦隊に襲ってくるネウロイ編隊の数も一日に2,3回程度になってきた。そのため、この空は非常に穏やかだった。

ふと遠くに目をやった。この高度からだと遠くにアフリカ大陸が見える。

あそこでも人類とネウロイが戦っているのだと思うとつくづく昔いた世界での第二次世界大戦を思い出すな。

ピピッ、ピピッ。

一瞬の空白を置いて通信が入ってきた。

『コントロールからシルフィードへ。緊急発進要請(Scramble order)、方位0-0-3、貴機からの距離は65km、高度3500m付近にてネウロイの攻撃を受けたとの報告が入った。扶桑の二式飛行艇で佐官も乗っている。至急援護に向かえ。他のウィッチも向かっているとの事だが時間がかかるようだ。急いでくれ。』

「了解した。すぐ向かう。」

佐官が乗っているとあれば救援要請を無視するわけにもいかないので俺は進路を変更、すぐに0-0-3に転進する。

まったく、他のやつらが向かっているなら何で俺も向かわなければならないんだ?

俺がどれほど使えるかは知っているはずだから、相手も問題ないと判断したのだろうか?それならいいんだが。

とにかく行くか、そう思いながら俺は速度を上げた。

 

しかし飛んでいる間に問題が発生した。

飛んでいるうちに敵の反応が消失したのだ。

ネウロイ反応が消失する直前にウィッチの反応があった。

すぐ近くを飛んでいたウィッチはかつて同じ空を飛んだことがある宮藤だと判明した。

ったく、ウィッチが同乗しているなら救援要請なんて出さずに自分たちで処理してしまえばよかったのに。

そんな愚痴もどうせ届かないだろうなと思いながら敵消失につき任務終了を報告しようと思ったがふとGarudaからの警告が目に留まった。

レーダーからは確かに機影は消失しているのだが、Garudaはいまだ敵がいると告げていた。

どこだ?どこにいる?

通常レーダー、空間受動レーダー共に敵影確認できず。

まだだ、まだ終わっていない。

ネウロイがまだそこにいる、俺は直感でふたたび前進を続けた。

狙撃銃のスコープの倍率を最大にして敵を最後に確認したところへ向けて覗き込む。

しばらくして俺はようやくGarudaの言っている意味がわかった。

コアは完全には破壊できてはいなかった。

破片状になったコアが再び集まりだし、ひとつのコアになり、ネウロイが姿を現した。

こちらのレーダーもコアが復元された辺りでようやく敵影を映し出し始めた。

まさか、コアを復元するとはな。これではレーダーで観測できないわけだ。

再び宮藤が戦闘を始めたが俺はここでその戦闘の行方を見守ることにした。

かつて、ワイト島時代、あの仕事をなしとげた彼女がここにいない間にどれだけの腕を見せるのか単純に興味がわいたからだ。そして、彼女へ向かう多数のウィッチもレーダーに捕らえている、俺の出番は不要だろうな。

だから俺は記録モードをオンにして状況偵察を行い、見守ることにしたのだった。

 

大型かつ復元するような相手だがさすがエースぞろいの501だ。集まりだしてから10分ほどで撃墜してしまった。

そしてなにやら無線で話しているのだがさすがにそこまで聞く必要もないと思い、俺は今度こそ進路を戻そうとしたら無線で呼び止められた。

『そこでさっきからずっと私たちを見ていたウィッチ、もう姿を現したらどうだ?』

相対距離で8kmはあるはずだが、確認してみるとこちらを見ている奴が一人いた。

片方の目が紫色に輝いている、あれは魔眼か。ということは坂本少佐だろうか?

最初は無視しようかと思ったが下手したら追いかけてきそうな迫力があったのでこちらから向かうことにした。

距離が10mのところまで近づくとようやく全員の顔がわかった。

「「大尉!?」」

「イッルにサーニャか、一週間ぶりだな。」

502で一緒だった2人にまず驚かれた。その驚く2人を見て他の奴も驚くという不思議な光景が同時に起きている。

「大尉はここで何してんダ?ロンドンにいるんじゃなかったのカ?」

「いろいろあってな、今はヴェネツィアの防衛の任についている。サーニャ、502に変化は?」

俺がサーニャのほうを向くとサーニャは人差し指をあごに当て少し考えるそぶりをしながら答えてくれた。

「えっと、私たちに召集の命令が降りたのが5日前なんですよ。大尉がいなくなってから私たちが出発するまでの間のことでしたら、特に変化はありませんでした。伯爵も“また隊長は出張か~”とか言っていましたし。」

いまのサーニャの伯爵の真似が意外と似ていてすこし驚いた。

それと伯爵、という単語に反応したカールスラント人が2人いた、あれは中佐とバルクホルン大尉だっけか。なにかいやな思い出でもあるのだろうか。

「そろそろいいか?」

蚊帳の外にいた少佐がようやく介入してきた。

ただ、出足をくじられて少し残念そうだった。

「かまわない。」「いいゾ。」「はい。」

「バーフォード大尉だったかな?ガリア以来だな。」

「そうですね。」

「なぜ、私たちをずっと見ていた?助けもしないで。」

ま、そりゃ気になるよね。

命掛けて戦っているそばでじっと見られていたらな。

「手出しは不要だと思ったからです。それに・・・。」

「それに?」

「あなたたちに興味があったから。世界最高峰レベルの空中戦がどのようなものかと思って。」

なんせ300機撃墜を達成するようなやつらがいるんだ。

俺としてはほめ言葉の意味合いを含めたのだが、一瞬いやな顔をされた。

なにか気にでも触れたのだろうか?

「それで、ご期待には沿えたかしら?」

少佐の後ろからミーナ中佐が現れ、そういってきた。

まるで坂本少佐を守るかのように。

そういえば、欧州のウィッチは異性との接触を認めない傾向があるらしいが、それを意識してか?

「えぇ、だから期待していますよ。ストライクウィッチーズの皆さん。俺ではヴェネツィア奪還は無理だった。だからあんたらにそれを託したい。」

「え?」

俺にいきなり頼まれたのがそんなに不思議だったのか中佐は変な声をだして驚く。

だが、俺の言ったこともすぐ理解してくれた。

「頼みます、中佐。」

「わかりました、必ず。」

中佐は敬礼して俺に答える。

「それでは、長居するのもなんなので。またどこかの空で会いましょう。」

「えぇ。」

そういって俺は背中を向けようとすると

「あの!」

声をかけられた。

声の主は

「・・・・。」

リネット・ビショップ曹長だった。というか階級証を見る限りウィルマより階級上じゃん。姉としていいのかよ。

「どうした?」

「・・・・・。」

なぜか顔を少し赤くしながらもじもじしていたので声をかけるが何も返答をしてくれない。

「おい?」

「・・・・。」

もう一度俺が声をかけると顔は相変わらず赤いままだが、ついに何かを決心したのかキリッとした目で俺を見つめて、

 

「お義兄さん!」

 

ヴェネツィアに来て、そして俺にとって2度目の爆弾が投下された。

いや、人がいる前でその名前で呼ぶの!?

501のやつらのほとんどは何が起きているのかわからない顔をしているが502にいて事情を知っている2人は違った。

イッルは大爆笑、サーニャは顔を背けて少し笑っている。

こいつら、自分たちが関係ないことをいいことに楽しんでいるのか。

ウィルマの奴、リネットと手紙をよくしているらしいからおそらくあったときはよろしくとでも言っていたのだろう。だからこんなことになったのか。

「・・・なんだ?」

さすがに、なんだ?妹よ、とは言えないので普通に返しておく。

しかし内心ではすごく動揺している俺がいた。

「お姉ちゃん、元気ですか?」

「あぁ、うちのムードメーカーとしていつも盛り上げてくれているよ。」

「それは、お姉ちゃんらしいです。元気にしているならよかったです。」

こうして、ウィルマの妹に会えたのだからひとつ聞いておきたいことがあったのを思い出した。

「そういえば、ウィルマとよく手紙のやり取りをしているよな?何かおれの事言っていたか?」

俺がそういうとリネットまた気まずい顔をした、そんなこと言われても困るといった顔だ。

「いつもお義兄さんのことばっかり書いていますよ。大体7割はお義兄さんのことです。あとは近況報告とかです。見ているこっちが恥ずかしいのでお姉ちゃんに言ってもらえませんか?」

ウィルマーーー!お前って奴は・・・。

というか兄とか連呼しないでくれ、恥ずかしい。

そこで再び中佐がこの状況がわからない勢を代表して聞いてくる。

「その、2人はどういったご関係で?」

「はいはい!私が説明しよう!」

そこでエイラが手を挙げてみんなの注目を引く。

「イッル!」

だが、てめぇは駄目だ。お前は伯爵と同類だろ?知っているぞ、どうせ誇張して説明するに決まっている。

俺が彼女をにらみつけてわかっているな?と目で問いかけると。

「・・・はい。」

シュンとしぼんでしまった。

さて、必然と俺に視線が集まり説明責任を果たさなければならないのだが・・・。

『シルフィード!どうした?何があった?』

ナイスタイミングだ!

「いや、なんでもない。敵か?」

『あぁ、基地に向かっている奴がいる。念のため向かってくれないか?』

「了解した。」

そうして俺は彼女たちを見渡して

「というわけだ、俺は行かなきゃいけないが・・・。リネット、後は任せたぞ。エイラだけにはさせないでくれ。わかったか?」

「あ、はい。わかりました。」

「ありがとう。それじゃな、これからもよろしく。」

俺は逃げるようにユニットの出力を上げて空高くにとんだ。

レーダーにネウロイの姿を捉える。

さてと、これからは仕事だ。切り替えないとな。

ヴェネツィアの空は今日も忙しい。

 

7日目

司令部は戦闘の終了を宣言した。

ネウロイからの襲撃もかなり減った。

敵もおそらく消耗したのか以前のような大編隊ももう来なくなった。それに501が再編され、ここの防衛に当たる以上もはや俺たちがいる意味もなくなった。

俺も状況報告のためにロンドンの空軍司令部への報告命令が来た。

トラヤヌス作戦前に書類上で所属していたウィッチも今では78%程度になった。

作戦の代償はロマーニャ公国にとって自国の優秀なウィッチの喪失とすぐ近くに大規模なネウロイの巣が出来るというかなり高くつくものになってしまった。

501が優秀だといえ、504の悪夢がある以上決して安心できるものでもない。

だが、増援部隊をこのまま駐留させるわけにもいかないのでこうして戦闘の終了が宣言された。

俺たち増援部隊は本日1000を持って当基地を離脱、各自の基地に帰投することになる。

 

さて、こちらの話になるが俺の記録をマルセイユは抜く事はなかった。

何とか勝ち逃げできた。だがそのことでマルセイユにはねちねち言われた。

そして時刻は0945ここに集まっていたウィッチも各地に散らばり自国防衛の任務に就く。

だから、こうやって集まるのも最後になる。

ここでは本当に色々なやつらとあったな。

竹井大尉、マルヴェッツィ中尉ら504は先ほど話したが2人も大変だったらしい。

特に治癒魔法を使える中尉は疲労困憊だった。

本当にお疲れ様だな。

 

「あ、大尉も帰っちゃうんですか?」

「えっと、502ですか?」

声をかけてきたのはエレナ少尉とトルキオ中尉だった。

「いや、502に帰る前にロンドンだそうだ。なんでも報告をしてもらいたいそうだ。」

「へー、大尉も大変ですね。」

「あぁ。必死に戦って疲れているのに今度はお偉いさんとお話とは、憂鬱でしかない。」

「そう、ですね。」

「まぁ、大尉もがんばって!」

「がんばってください!!」

「お前らもな、これから夜間ウィッチは大変だぞ?」

「え?」「はい!」

そんな対照的な二人とQSLカードを交換する約束をして分かれた。

 

「バーフォード大尉!」

「マルセイユ大尉か。いいのか、他のやつらとは?」

「まぁ、平気だ。それにしても、今日でお別れだな。何とかスコアを塗り替えたかったんだがな。」

「あと2機まで迫ったのに。惜しかったな。」

「あぁ。だが待っていろよ!今年中に絶対に塗り替えてやる。」

「ペテルブルクでその記事が一面にのった新聞が届くのを待っているよ。」

そういって握手する。

「はーい!みなさーん集まってー。」

そう叫んでいるのは加東少佐。またあの写真をどこかに売りつけるのだろか?

マルセイユに引かれて最前列の真ん中に並ばされる。

「ここに俺がいるのはいいのか?」

「いいんじゃないのか?なんていったってこの基地の守護神じゃないか。」

マルセイユがそういうと周りのウィッチの口を揃えて似たようなことを言ってくる。

「守護神?」

「そう、守護神。」

「そうですよ!確かにマルセイユ大尉もすごかったですけど、バーフォード大尉もすごいじゃないですか。昼間の戦闘だけではなく夜間の戦闘もちゃんとこなして。よく体が持ちましたね。」

「この基地で一番活躍したのは誰?って聞いたらたぶん全員がバーフォード大尉って答えますよ。」

「そうです!あのジェットストライカーユニットの音も最初はうるさいと思っていましたけど日がたつにつれて安心するようになっていましたし。

戦っているときもあの音が聞こえたときは安心した。」

「あ、それ私も!」

この基地でそんな印象を受けていたなんてすごく不思議だった。

「参ったな。注目されるのはあまり好きじゃないんだが。」

「今日くらいはいいんじゃないか?ほら、写真を撮るだけなんだし。」

「そうですよ!ほら並んで!」

「はい、撮りますよ!」

少佐が大声で叫び最後まで生き残ったウィッチが一同に集まる。

「はい、チーズ!」

 

パシャッ!

 




よく詠唱するタイプの魔法ってありますけどあれってプログラミングみたいですよね。
詠唱とコードを同列にみるとなんか親近感がわきます。
エイラの呼び方が変わっている理由は次の話で書きます。

たくさんのお気に入り登録、感想、評価ありがとうございます!
これからも頑張りまする。

ご指摘、ご感想があればよろしくお願いします。

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