妖精の翼 ~新たなる空で彼は舞う~   作:SSQ

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何とかこれからも前回投稿から一ヶ月以内には投稿するようにします。


第36話 戦いと新たな影

ノバヤ・ラドガ集積基地まであと5分のところを飛行していると黒い煙が見え始めた。

やはり間に合わなかったか。本気を出せば俺だけもっと速く到着することは出来たが、そんなことでこいつの本気を見せるなんてことはしたくはなかった。

周りに人がいるのに本気を出すのはもっと深刻な事態のみにしたい。

さて、基地のほうだがしたの奴等もがんばっているようだが、旗色が悪い。

 

「502JFWからノバヤ・ラドガへ、状況はどうなっている?」

『こっちはネウロイの攻撃を受けている!あと何分で着くんだ!?こっちはそんなには長くは持たない!!速く助けてくれ!』

「あと5分、いや3分持ちこたえてくれ。」

『わかった、3分間は保って・・・』

通信途絶か、送信アンテナが破壊されたか通信機があった場所ごと消失したかのどちらか。

どちらにせよ、状況はかなりまずい。

しかし、通信ができなくなったのは少々面倒くさいな。

せめてどちらの方角から進入するかを知らせたかった。

俺たちをネウロイと誤認されて対空砲でお見舞いされたくはない。

まぁ、出来なかった事を嘆いても仕方ない。

 

「いいか、もうすぐ基地が見えてくる。だが地上の奴らは俺たちのことを知らない可能性があり、こちらに発砲するかもしれない。戦闘を開始すれば気づいてもらえるだろうか最初のうちはとにかく回りに気を配れ。散開後は各員自由戦闘で一人当たりのノルマは5機。状況を考えて手当たりしだい落しまくれ。」

「どうやら大型はいないみたいだね。大半が小型か、不幸中の幸いだね。ところで隊長、私はこんなものを持っているんだな。」

そういって伯爵が腰から小型拳銃らしきものを取り出した。

「じゃーん、フレアガン。中に信号弾を詰めているから戦闘開始直前に発砲すればいいよ!」

「そんなもの、なんで持ってるんだよ?」

「少佐と別れる前にくれたんだよ。何かしらの問題が発生して基地との通信が不可能になったときに使えって、絶好の機会だね!」

「さすがだ、伯爵。いつもこんな風に気を配れる奴だったらよかったのにな。」

「何か言った?隊長?」

「いいや、なんでも。」

 

そしてネウロイを射程圏内に捕らえる。

俺は先ほど伯爵から渡されたフレアガンを上に向けて発砲する。

小さな光球が上へ昇って行きしばらくして爆発音とともに緑色の煙がそらに広がった。

しかし、しばらくしても地上では対空砲が火を噴いていることを見るとまだこちらには気づかないのか。気づいたとしてもやめたくはないのかも知れないな。

どちらにせよしかたない、ネウロイを標準に捕らえるのに必死なのだろう。

 

「いくぞ。」

「「「了解。」」」

地上を見るにすでに30%は破壊されている。壊滅とは言わないが戦線の後退や戦力の低下は必至だな。

とにかく一機でも落して被害を減らさないと。

まずは小型を狙う、あのサイズなら一撃だな。

スコープで狙い

-発砲

機体を弾丸が貫いて一回で撃墜できた。

左旋回をして次に目に入った中型を狙う。

こちらがネウロイよりも高い位置にいるため、この有利な状況は逃せない。

-発動

世界がゆがんで見える中でコアの位置を正確に捕捉する。

こいつは二発は必要だな。

 

ふと、視界の左端で小さな何かが見えた気がした。

ネウロイにしては小さすぎる。

確認したいのは山々だが、加速しているのは思考だけであって体はそのままであるため眼球を動かして直接見ることはできない。

少し考えて、攻撃を中止して回避することを考える。

 

-解除

世界が元の速度に戻るほのと同時に左側にシールドを張る。

直後、爆発が起きて体が横に吹っ飛ばされた。

シールドを張っているとはいえ、かなりの衝撃波が襲ってきた。

おそらけ空中で炸裂するタイプの砲弾の先端にVT信管でも搭載されていたのだろう。

怪我はないみたいだが頭がくらくらするが、もしシールドを張っていなかったら今頃ミンチになっていただろう。

『バーフォード!大丈夫!?』

「ウィルマか、問題ない。戦闘は続行できる。お前も気をつけろよ。」

『無茶はしないでね?お願いだよ?』

「お互いな。」

ったく、こんなところでは死ねないというのに。味方の誤射なんかで死にたくはない。

 

その後もなんとか体中の痛みをこらえながら攻撃して何とか4機落した。

5機目を狙おうとした途端、敵編隊が撤退していった。

帰っていったのは見たところ8機、全員で32機落せたか。

気がつかなかったがいつの間にか対空砲火もやんでいた。

「全員無事か?」

「無事ですけど、魔力が限界です。基地に戻れそうにありません。」

「仕方ない。各員、追撃は中止だ。いったんこの基地に着陸して迎えでも呼ぶか。」

「残念ですけど今の私たちではその選択肢しかありませんね。」

「B隊はどうだ?」

「無理っぽいな。」「限界ですね。」「私も。」

なら、被害状況の確認もかねてこの基地にお世話になるか。

あちらも俺たちをかまっている暇なんてないだろうけどそのうち応援も来るだろう。

「全機、一旦降りるぞ。」

そういうと全員ついてきた。こういうときどこでも着陸できるストライカーユニットは便利だな。

着陸して5分ほど待っていると兵士が2人、車に乗って走ってきた。

「502JFW所属のバーフォード大尉だ。現状は報告できるか?それとこいつらを少し休ませたい。」

「わかりました。おい、食料と毛布を。」

「了解!」

一人が敬礼して車に乗って走っていった。

「それで?状況は?」

「基地の40%が消失しました。それと人員の半数が死亡しました。実際には死んだか、軽症がほとんどです。重傷者はあまりいませんが現在治療中です。幸いにもここには医療品がたくさんありますからね、医者も軽症だったので迅速に治療できました。」

「基地能力の修復にはどれくらいかかるか?」

「線路はそんなに被害を受けていなかったので一週間ほどで輸送は再開できます。ただ、置かれていた荷物の被害が甚大です。弾薬が置いてあった場所に攻撃を受けて一気に吹き飛びましたからね、また今回と同様の攻撃を受けたら補給も滞っている現在なら簡単に壊滅ですね。今回消費したものを含めて、昼夜問わず全軍を動かしたとしても復旧には最低でも一ヶ月はかかるかと。ペテルブルグもそれなりの被害を受けた模様ですがあちらも撤退してくれたおかげで助かったそうです。」

「わかった、ご苦労。」

「もう少しで皆様に食料などが届くと思います。それでは自分はこれで。」

彼は別のところに歩いていってしまった。

40%が破壊された上に貯蔵されていた弾薬に引火か。

502には優先して補給してくれるだろうが全体的に見れば補給は厳しくなるだろうな。

結果を見れば表向きは勝ったが被害を見れば負け、戦術的敗北といったところか。

今攻められたらひとたまりもないがネウロイもこれだけ大規模な攻撃をしたのだからしばらくはこないだろう。

10分ほどすると毛布や食料を持ってきてくれたのでありがたくいただく。

それと少佐に一旦補給基地に着陸したので迎えを寄越すように要請したのだが混乱しているため不可能ということなので魔力が回復しだい帰頭ということになった。

日の入りまであと一時間ほどだがそれから完全に暗闇になるまでは少し余裕があるので何とか今日中には帰れるだろう。

扶桑海軍の奴らは固まって休んでいたので指揮官に声をかける。

「日の入りまであと一時間だがここから帰れるだけの魔力は回復しそうか?」

「とりあえず高カロリー補給食をもらえたので何とか帰れると思います。ペテルブルグまで戻れれば扶桑の人たちもいると思うので問題ないと思いますが最悪お世話になります。」

「そうか、ならぎりぎりまで休んでいてくれ。」

「わかりました。」

そういうと彼女も輪に入っていった。

俺も少し休むか、既にB隊の奴らは寝ていたので俺も近くにあった毛布を取り座ったまま目を閉じる。

 

そして一時間後、少ない時間だがある程度は魔力が回復したので帰頭することにした。

もともと区画ごとに荷物を置いてあったため多少地面は凹んでいるが一直線の道があるためそれを滑走路代わりに使う。

「補給品など、世話になった。」

「いえ、こちらこそ助けに来てもらって本当に感謝してます。」

「ならいい、全機帰るぞ。」

そういって加速すると、この基地の生き残りが手を振っていた。

伯爵などは振り替えしていたが俺は興味もなかったので軽く敬礼し、そのまま離陸してペテルブルグに進路を取る。ただそこまで距離は離れていないためすぐだ。

 

そして辺りがだいぶ暗くなってきたところで扶桑海軍の奴らが離脱することになった。

彼女たちもその足でリバウに向かうらしい。

「魔力も問題なさそうなのでこのまま帰頭します。それとバーフォード大尉、今作戦では指揮お疲れ様でした。」

「精鋭ぞろいのあなた方のお目にかなったかな?」

「ええ、十分ですよ。それにわれわれ扶桑海軍ウィッチ航空隊にも引けをとらないかと。」

「買いかぶりすぎだ。」

おれがスピットファイアを使っていたらまた結果も変わっていただろう。

結局はこいつのおかげでもあるんだがな。

「謙遜はするものではないと思いますが。そういえば、私としたことが名乗っていませんでしたね。」

そういえば、こいつの名前聞いてなかった。

「そうだったな。改めて名乗ろうか。ブリタニア空軍所属のフレデリック・T・バーフォード大尉だ。」

「扶桑海軍“飛龍”、第四制空隊隊長の春山真澄大尉です。私たちの実力はどうでしたか?」

「文句のない働きだった。さすがだ。」

「あら、うれしいです。それでは、またどこかの空でお会いしましょう。」

「あぁ、お互い死なないようにな。」

 

そいって分かれる。

俺も彼女たちにも知らないうちに助けられていたのだろうか、精進しないと。

「お疲れさん、隊長。」

「お疲れ様です、バーフォード大尉。」

「お疲れー。」

「おい、そういうのは帰ってユニットを脱いで一段落してから言ってもらいたいな。」

「お、あれですか?作戦は基地に帰って報告書を提出するまでが作戦、ってやつですか?」

「そんなの聞いたことないぞ。」

結局こんな風に雑談をしながら基地に帰った。

 

「B隊はただいま帰頭しました。」

「あぁ、ご苦労だった。」

基地到着後、そのまま司令官室にいる少佐に帰ったことを伝えるために顔を出した。

この基地もネウロイの攻撃を受けて二本ある滑走路のうち南側が使用不可能となっている。

そのため現在、ペテルブルグの破壊された対空砲陣地の修復の次に高い優先度という位置づけで作業計画を立てているとのことだ。

またいつもユニットを置いている格納庫は問題なかったが航空機をしまっていた格納庫が二つ潰れて中に入っていた航空機ごと潰れてしまったらしい。

こちらの修復も優先順位は高い。

ちなみに現在最優先で行われているのはインフラの復旧で空軍基地だというのに電気が通ってない。

司令官室もランプに火をつけて照らしている状況だ。

報告によると明日には回復するとの事、人海戦術を用いて徹夜で復旧工事を行っているそうだ。

ただ今日のごたごたで中間管理職以上の奴らはしばらく寝れない日々が続くだろうと思うとその該当する奴らには同情してしまう。ただでさえ暗いのにご苦労なこった。

 

 

少佐たちは俺たちが離脱した後そのまま援軍に合流して戦ったそうだ。

これほどまでに大群同士の空中戦はいままでにあまり例はないらしい。

ましてやここ数年はネウロイと均衡状態を保っていたため司令部もかなり混乱してしまった。

緊急時のマニュアルも存在したが結局一部では守られることなく動いてしまった部隊もあるらしい。

日々の訓練も突発的な事件に対応できないんじゃ意味はない。

そして今一番少佐の頭を悩ませているのが司令部からの抗議書だった。

少佐に命令したのはあくまでもペテルブルグの防衛であって集積基地の防衛は貴官の主任務ではない。大尉の行動は明らかな命令違反である。

などなどたくさんの文句が書いてあった。

なぜ、広域の探査能力を持つ大尉が事前に把握できなかったのか?

もっと早く捕捉できたはずである、理由を説明せよとか知るかよ。

それ、サーニャにも同じこといえんのかよ?

「どうせ、理由を説明しろ、というのは間接的な出頭命令でしょうね。東欧司令部としても俺の情報を隠し続けているブリタニア空軍に嫌気がさしてできるだけ集めたいと思っているんでしょう。抗議文の送り主が司令長官の名前しか書いてないところからも推測できますし。」

「ならどうするんだ?おとなしく従うのか?」

「まさか。」

ではどうしようか、何か黙らせるでかい爆弾はないものか?

「司令長官はカールスラント人でしたっけ?」

「あぁ、それがどうした?」

頭の中で電球が光った気がした、ひらめいた。

「俺にいい考えがある。」

 

 

-東欧司令部司令官室

私は焦っていた。本国からブリタニアの魔術師のことを探るよう指令が出されていた、そのため私兵や持ちうるあらゆる情報網を使って探ってみた。

だが出てきたのはブリタニアが公表した情報程度だった。

502に来ればきっと何かわかるだろうと楽観視していたあのときが懐かしい。

格納庫には常に彼の母国の警備兵が24時間体制で巡回していてその上彼自身がユニットの整備を行ってしまうためどんな素材を使っているのすらわからない。

資料によると部品はブリタニアからの輸送機によって直接運ばれているようだ。

どこかを経由してくれれば確認することが出来たのだが。

502にいるわが国のウィッチからの報告からは現在試験運用中のあのジェットストライカーよりも数字で見れば性能は低いようだ。

現に我がカールスラントよりも先に最前線に配備したという事実を作るためだけにろくな試験もせずに配備した失敗作という意見もある。

だがそんなはずがないのだ。

明確な根拠はない。ただの私の勘に過ぎない。

確かにブリタニアの空軍は最近大きな人事異動や新部隊の創設など動きがあわただしい。

そして親部隊の司令官でもありブリタニア空軍の司令官が推薦してきた人物とそのユニットが間に合わせのはずがない。

自信があるから送り出してきたのだと私は考えていた。

皇帝陛下もそのお考えに賛同しており、閣下みずから私に報告をするようおっしゃった。

だからわかっている以上の情報が得られないことに焦っていた。

そこにこのペテルブルグへの大規模攻撃だ。

下手をすれば私の責任問題になる。いや、被害の報告書を委員会が見ればかならずなるだろう。

保身の材料がほしかった、この司令官の任を解かれても本国で働けるよう便宜を図ってもらえるような何かを。

だから私はどんな手段を使ってでも彼から聞き出そうと思い、召喚要請をだした。

抗議文を送った数時間後に502から返信の封筒が届いたので私は急いであけた。

なんせ自分の将来がかかっているからな。

だが、私はそこに書かれている一文を読んで顔が真っ青になった。

なぜ、この名前を知っている?

私を含めてカールスラントでも知っている人間はほんの一握りだというのに。

そこには

 

“「V-2ロケット」進捗はどうでしょうか?”

 

と書いてあった。

そして、彼がなぜこんなことを書いてきたのかわかってしまった。

まるで手紙が“お前が何を考えているのか全てわかっているぞ。”といってきているような気がした。

足元が崩れるような感覚に陥り私はなにをすばいいのかすらわからなくなってしまった。

 

 

-502JFW基地

V-2ロケット、この世界では対ネウロイの巣や地上型ネウロイやその中間基地を徹底的に破壊するために現在開発中のロケットのことだ。

ジャックから送られてきた報告書によると

性能はあまり変わらないが搭載できる弾薬等から海軍の砲撃が届かない内陸部に存在するネウロイへの攻撃が期待できるらしい。そのため主な戦略としてはV-2でネウロイに大打撃を与えて修復される前にウィッチや航空機が止めをさす。というのが構想されているらしい。

ただ都市という大きな目標になら簡単に狙えるがネウロイの巣という小さな目標にどう誘導するかが一番の問題となっているそうだ。

まぁ、こいつが実用化されればカールスラントの名声は回復するだろう。

そのため国家機密に指定されている。

ここ最近周りが俺のメイブを探ろうと騒がしかったので脅しということで“ブリタニアはV-2を知っているぞ”というメッセージを伝えたわけだ。

上手く通じているといいが。

 

そんなことを考えながら俺たちは晩飯を食べていた。だが皆一様に疲れた顔をしていて一部の奴らは食べながら寝ている。

「みんなお疲れのようですね。バーフォード大尉は平気なんですか?」

「疲れているし、寝たいさ。だが食べないと魔力の回復が遅くなるらしいしな。曹長は?」

「少佐が仮眠するようにといってくれたので少ししたら楽になりました。それと聞きました?東欧指令長官が倒れたらしいですよ。」

「司令部なんて俺たちと比べれば仕事をしてないだろうに。こっちは死人が出ているのにのんきなことだな。」

「それもそうですね。」

俺はまさか自分が送った手紙が元で倒れたなんて予想だにもしていなかったがな。

さて俺も軽く晩御飯を食べてさっさと寝るか。

 

 

こうして長い一日は終わった。

502は一人の欠員も出すことなく無事帰ってこられたのは幸いだった。

だが今回の件は世界に大きな影響を及ぼすだろう。

上の奴らが教訓を生かせるのか不安だがそこはジャックと相談でもしてみよう。

 




実は零と半沢直樹の中の人は同じ。


評価、感想、御指摘等があればお願いします。
一話挟んでまた上下かも。

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