妖精の翼 ~新たなる空で彼は舞う~   作:SSQ

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独自解釈が入ります。


第35話 ペテルブルグの戦い

諸君、ミッションの概要を説明する。

現在ネウロイの大群がここサンクトペテルブルグに侵攻中である。

敵の数は大型が20、中型が35、小型が70の計125機の大編隊である。

縦一列中央に大型機、それを護衛する形の中型機、さらにその周りに小型機が張り付いている編成である。これだけの数いるためか進軍速度は遅い。

また敵はルートβを使って侵攻している。迂回するルートを使っているとはいえ、時間には余裕がないと思ってもらいたい。

次に防衛線について説明する。

本来であれば第一次防衛ラインの担当であるオラーシャ、カールスラント両軍の該当航空隊がすでに迎撃に当たっているはずだがネウロイの攻撃を受けて基地ごと消滅したとの報告が入っている。

そのため第一次防衛ラインはすでに突破された、と見るべきだろう。

最前線の基地を破壊した新型ネウロイはすでに偵察隊によって撃墜されたとの事だ。

どのような方法で壊滅させられたかは現在調査中であるが今はそれよりもやるべきことがある。

第二次防衛ラインで敵編隊を迎撃隊するため502JFWを主力とした臨時ウィッチ航空隊を編成した。

オラーシャ空軍より9名、カールスラント空軍より10名、扶桑海軍より8名、それに502JFWの12名の計39名がグンドュラ・ラル少佐の指揮下のもと、防衛に当たる。

ただ時間がなくて思うような数が集まらなかったため第二次防衛ラインが突破されるのも時間の問題だろう。

そのためバルトランド、スオムス、オラーシャ、扶桑、カールスラントの各軍が応援に駆けつけてくれることになった。この援軍は最終防衛ラインでネウロイの迎撃に当たる。

君たち502JFWの主な任務はこの援軍が到着し、準備が整うまで出来るだけ時間を稼ぐことにある。

我々司令部では最新のネウロイの状態を知ることはできない。

そのため第二次防衛ラインの戦闘を含めて臨時ウィッチ航空隊の指揮は少佐に全て一任するものとする。

扶桑海軍を含めて全ての参加航空ウィッチ隊は東欧戦線司令部の指揮下に入っているため司令部から少佐に該当部隊の指揮権を委譲する形になる。

少佐には39名の指揮を任せることになる、負担はかなり重いものになるだろうが君以外に現在任せられる者がいないのが現状だ。すまない。

ここサンクトペテルブルグが陥落するような事態になれば欧州奪還は振り出しに戻ってしまうだろう。

よって、ここはなんとしてでも死守しなければならない。

背水の陣だ、命に代えてでも守る覚悟で挑んでくれ。

諸君の健闘を期待する。

以上だ。

 

 

-東部方面統合軍総司令部総司令官より502JFW指揮官への状況報告及び指令通達に関する通信

報告書「第三次ペテルブルグ防衛戦に関する報告書」より抜粋。

 

 

 

 

「下原、サーニャ落ち着いたか?」

現在第二次防衛ライン死守を司令部より命じられたため俺たち偵察隊は本隊と合流するために急行していた。ランデブーポイントは指定されていたが既に本隊の場所は捕捉しているため予定よりも早く合流できる見通しだ。

「えぇ、先ほどは申し訳ありませんでした。」

「ごめんなさい。」

「確かにあんなのを見たら呆然とするのもわかるがこれからはとにかく体だけは動けるようにしてくれ。ボーっとしている間に撃墜だけはされたくないだろ?」

「「はい。」」

「なら平気だな。この話は終わりにしよう。それで魔力のほうは平気か?これからドンパチにぎやかな戦闘が続くが。」

すこしそこが気になっていた。魔力切れで墜落してもしばらくは助けは来ない、ペテルブルグが陥落するような事態が起きれば救出隊だって撤退するだろうから生き延びられないだろう。

「問題ありません。夜間飛行で長距離は慣れていますし。」

「私も大丈夫です。あ、本隊が見えてきました。」

下原には見えているようだが俺とサーニャには捕捉は出来ても肉眼では捕らえることが出来ない。さすがは遠距離視の能力持ちだな。

 

しばらくして本隊と合流できた。

「少佐、状況は聞いていますね?どうやって時間稼ぎをするつもりですか?」

「とりあえず、大尉は全員にネウロイの詳細な編成と配置を教えてくれ。」

「わかりました。まず、中央に大型ネウロイが・・・・・・。」

そうやって少佐や他の隊員に詳細な説明を行う。

「なるほど、わかった。ありがとう大尉。さてこの大変な事態をどう対処すべきかな。」

「少佐らしくないですね、いつもなら笑って作戦を説明しているのに。」

そういったのは熊さんだった。彼女は昔の作戦で少佐のことを良く知っているのかも知れんな。

「まぁ、確かにいつもならな。今回は緊急な上に司令部が全て私に一任してきたということは責任まで押し付けてきたということだ。まったく、制服組というのはいつも自分の保身しか考えてない。下のことを考えてもらいたいものだな。」

「そういう少佐は?」

「私はもちろんいつも部下のことを考えている、主に三人でな。」

そういって少佐は笑った。かるく冗談をいえるくらいには落ち着いたかのか。

「それでこそ、少佐ですよ。さてどうするか決めましょうか。」

「その件について、ひとつ提案があるのですが。」

そういうと二人がこっちを向いてくる。

「聞こう。話してくれ。」

「はい、先ほど説明したように敵編隊は縦に長い形です。それに中央部に大型の中でもさらに一回り大きい個体があります。奴らがどのような指揮系統の下で動いているかは不明ですが大型は先につぶしておくべきでしょう。そこで敵編隊を前衛、中衛、後衛と三つに分類して攻撃しましょう。

つまり俺、少佐、熊さんがそれぞれ指揮を取って同時に三つの場所を攻撃するのはどうでしょうか?

俺はもともと攻撃を専門とした部隊の一員なので前衛を攻撃することによって編隊を混乱させて進軍スピードを遅らせます。

少佐が中衛を攻撃しましょう。もともと少佐は優れた指揮能力を持つとの事なので敵中枢と思われる場所を叩いてください。

熊さんが後衛を攻撃してください。俺と少佐が進軍を遅らせられれば後ろは詰まるはずなのでとても狙いやすいはずです。

俺がB隊と扶桑海軍を、少佐がカールスラント出身なのでカールスラント軍を、熊さんはA隊に加えて、オラーシャ出身なのでオラーシャ軍を指揮すればスムーズに行えると思います。

どうでしょうか?これが俺が思いつく最も効率のいい作戦だと思いますが。」

「私もこれはいいと思いますよ。自分と同じ出身ならよりスムーズだと思いますし。」

すこし考えた少佐が決断する。

「よし、それでいこうか。みんな、聞いてくれ!」

そして少佐は俺が彼女に伝えたときよりもはるかにわかりやすい言葉で全員に作戦を伝える。

 

「・・・・という作戦となる。これよりバーフォード大尉率いる部隊をAチーム、私が率いる部隊をBチーム、ポクルイーシキン大尉が率いる部隊をCチームと呼称する。なにか質問は?」

・・・・・・。

「よろしい。この防衛戦は今後の欧州戦線、もとより今後の人類とネウロイとの戦いを左右する重要な戦闘になるだろう。だが、そんな気負わなくてもいい。今は目の前の戦いに集中してくれ。全員で生き残って少しでも援軍のためにネウロイを減らそうじゃないか。

さて、準備はいいか!?」

「「「「了解!」」」」

少佐はさわやかな笑顔でそんな風に全員に言った。

あたりを見てみると先ほどより格段に顔がこわばっている奴が減った。

どんなに厳しいときでも笑顔を忘れないとは聞いていたがこんなときもちゃんと忘れないとはさすがだな、伊達に司令官をやっていないってことか。それにしても、

「これほどの淑女があつまると壮観だな。」

地上から見れば40個近い飛行機雲がV時型に飛んでいるのが見えるのか。

「?なんか言った、隊長?」

「いいや、別に。」

しばらく飛ぶと黒い点がたくさん見えてきた。

「敵機目視、Cチームは離脱しろ。Good luck」

「了解です、少佐。幸運を。」

Cチームが離脱する。いったん高度を上げてA,Bチームがいい具合にかき混ぜたところでCチームが叩く。

「Aチームが上、Bチームが下についてそれぞれ編隊を組め。」

そういうと扶桑海軍所属のウィッチがルマールと伯爵の後ろにつく。

遠くて顔は見えなかったがそのウィッチは前に飛龍の偵察ウィッチだった。

「あんたらが扶桑海軍”飛龍“所属のウィッチ隊か。噂の二航戦とやらの実力を見せてもらうぞ。」

「そういうあなたがブリタニアの魔術師?噂には聞いていたけどね、実力はそこそこと聞いているけど使えるのかしら?」

「そこいらのぼんくらよりはね。ま、実力はこの戦いで証明して見せよう。」

「それじゃあ、楽しみにしてますよ、大尉殿。」

「お互いにな。足は引っ張るなよ。」

「誰に言ってるんです?二航戦を甘く見ないでください。」

 

そして同時に攻撃するためにBチームが離脱する。

あとはタイミングを合わせるだけだ。

俺たちが担当する前衛の内訳は大型3機、中型6、小型多数といった具合だ。

「よし、よく聞け。俺たちAチームの任務は敵前衛を叩くことによって敵全体の侵攻速度を遅らせることと、それによりB、Cチームがスムーズに敵を叩けるようにする手伝いだ。まぁ簡単に言えば手当たりしだいネウロイを墜とせ。そうすれば敵さんも混乱してくれて自動的に進軍速度も落ちる。戦闘に関しては一度全員で急降下して攻撃。反転後、B隊は俺とともに大型を優先して攻撃、扶桑海軍は自由戦闘だ。わかったか?」

「「「「了解。」」」」

 

 

『ラルだ、バーフォード大尉。準備しろ。攻撃は10秒後。アウト。』

そうして俺は右手を掲げる。

「敵機が多い、対空砲火には気をつけろよ。

それでは諸君、

 

 

 

 

 

 

派手に行こう。」

 

戦況を引っ掻き回す、それが俺たちの役目だ。

体をひねり一気に高度を下げる。後ろも遅れることなくついてくる。

そして小型ネウロイが迎撃のために高度を上げてきたがそれは他の奴らに任せて大型を狙う。

駄目だ、一番装甲が厚い部分にコアがありこの急降下だけでは落せないか。

他の中型を狙い

-攻撃

運よく一撃で落せた。

次!

近くの中型に発砲。

コア露出。

 

追撃しようとするも別のネウロイからの攻撃で中断される。

とにかく一機でも落したいが敵の攻撃もなかなか激しくて思うように狙えない。

シールドも一応張るがメインは回避だ。

先ほど攻撃したネウロイの修復が完了する前にもう一度攻撃して

-撃墜

全機がネウロイの編隊とすれ違う。

そして反転、一機も落されることなく一撃離脱は完了した。

後は自由戦闘だ。扶桑海軍の8機が離脱して攻撃を開始する。

 

「B隊、よく聞け。一番先頭の大型ネウロイのコアは機体中央部の盛り上がっている場所の下にある。そこに火力を集中させろ!」

しかしルマールと伯爵が攻撃するも大型ゆえに修復スピードが速いのかなかなか露出しない。

これは予想外だな。

「ルマール、伯爵、攻撃をいったん中止。しばらく待て。俺が攻撃したら再開してくれ。」

銃を背中に回して万が一ということで持ってきた、以前もらった扶桑刀に切り替える。

刀に魔力が流れるよう意識を集中させる。

刀が青く光りはじめたのでユニットの速度を一気に上昇させて大型に急接近する。

いくら魔力を流した扶桑刀とはいえ、特別な能力を持っているわけではないので大型のネウロイをコアごと両断することは不可能だ。

なので俺は、

 

「ハァ!」

 

盛り上がった部分だけを削いだ。斜めに切断して本体から切り離された部分が直ぐに消え、コアの明かりが少し見えるくらいにまで削ぐことができた。

そして俺がネウロイから離れた絶妙なタイミングで伯爵とルマールが攻撃してコアを完全に露出させて破壊した。

「よっしゃ、ナイスだよ!ジョゼ!」

「伯爵も、ほら次行きますよ!」

 

ふと後ろを見るとちゃんとウィルマも着いてきてくれてた。

彼女も俺に近づいていた小型ネウロイを撃墜したりとしっかりサポートしてくれていた、さすがだな。

「次だ、今いた奴の奥にいる大型を倒す。コアの位置は、面倒くさいな。コアが2個あるタイプだ。それぞれ両翼の付け根にある。

同時にやるぞ。

ウィルマと俺が右翼を、伯爵たちが左翼を、頼んだぞ。」

そういって二手に分かれる。

翼の付け根にあるためさっきのより装甲は薄いが片方がしくじるとコアが復活する恐れがあるため同時に、正確に破壊する必要がある。

まぁ、いつも通りにこなせばいいだけの話だが。

大型機からの攻撃を分散させるために伯爵たちが上から、俺たちが正面からそれぞれ攻撃する。

「行くぞ、スタンバイ。」

他のネウロイからの攻撃をかわしつつ、左からの攻撃は俺が、右からはウィルマがシールドを張り分担して防御することで出来るだけ被弾のリスクを減らす。

そして

「いまだ!」

「了解!」

ウィルマが少し上昇、俺が少し降下して正面から上下にクロスするように射撃を行いコアを破壊した。

すれ違った直後に爆散したところを見るとあっちも何とか破壊したみたいだ。

 

そして、それから10分ほどひたすら攻撃していると弾切れになった。

他の隊員からも残弾なしや残りわずかの報告が出たので他のチームも含めていったん離脱する。

敵編隊の38%を撃墜、なかなかいい出来だと思う。これで、援軍のやつらが上手くやってくれるといいが。

 

そしてB,Cチームも合流。最初の編成に戻り戦闘空域を離脱する。

小型数機の追撃があったが距離を離すと戻っていった。

「ラル少佐だ、敵勢力の約4割を撃墜した。残弾がなくなったので補給を行いたい。」

『了解した。エリアG(ゴルフ)にて4機の輸送機が飛行中だ。そこで弾薬などの補給を行え。』

なるほど、空中給油ならぬ空中補給か。

考えたな。まぁウィッチだからこそ出来る業か。

 

該当空域まで行くと輸送機が飛んでいたので平行して飛ぶ。

すると輸送機のドアが開いてロープをつかんで先端が機体の下になるよう指示される。

しばらく待つと弾薬や食料が入った籠が流れてきた。

事前に対応する弾薬はいってあるので対応した補給物資が送られてきた。

全ての受け渡しを終了して今度は端を機体よりも上に上げることで籠が機内へと戻っていった。

 

いったん休憩を取ることになった。だが着陸は出来ないので空を飛んだままだが。

それと簡単な軍用携行食糧と水を摂取する。魔力は食べ物を食べればある程度回復するらしいが本当なのだろうか?まぁ燃料を食べ物に置き換えれば納得はいくが。

 

さっきよりも少し数が減った気がしたので編隊の機数を数えてみたら35機だった。

「少佐、残りの4機は?」

「あぁ、B,Cでそれぞれ2人が駄目だった。こっちは一人は近すぎ過ぎて他のウィッチが撃墜したときの爆発に巻き込まれてそのまま落ちていった。助けようにも手が回らなかった。もう一人は正面からの攻撃を防いでいた時に後ろからネウロイの攻撃を受けてな、直撃だから何も残らなかった。二人とも新人で、先月から前線に配置されたばかりだったから今回のような大規模戦闘を行うには経験が足りなかったな。Cチームのほうはわからない。」

「なるほど。まぁ運がなかったな。」

「あぁ、そっちは損害はなかったようだな?」

「そうですね、扶桑海軍の奴らはずいぶんと実戦なれしていたみたいです。おかげで射線に入ってくるような奴もいなかったし、やりやすかったです。

敵さんもそんなに連携を組んで攻撃をしてくるなんてことはありませんでした。」

「だが、それも時間の問題だと?」

「さすが少佐、よくわかっていらっしゃる。」

「以前大尉に散々聞かされたからな。」

そう、一番心配しているのはその点だ。

各軍の上層部の奴らは戦略というのを良くわかっていない気がする。

それは時代背景もあるだろう。

前にいた世界では同じ1940年代でもまったくといっていいほど戦争の状況は異なる。

同じ兵器でも運用思想が違ったりするがこの点に関してはそれ程問題ではない。

 

果たして上の奴らは戦略というものをわかっているのだろうか?

相手のことを出来るだけ調べて、相手の裏の裏をかいて勝利する、そんな経験があるのだろうか?

長年ネウロイとの戦争で隙をつかれるという経験が果たして何回あったのだろうか?

俺が心配しているのはそこだ。

今回だってここの主力のほとんどを集結させている。

そうすれば必然的に手薄なところが生まれる、そのことを理解して集めているのか不安だ。

 

ふと、疑問が浮かんだ。

なぜ、ネウロイはこのタイミングで攻撃を仕掛けてきた?

ガリアのネウロイの巣が壊されたことによる報復?

いや、ネウロイは、冬は活動が低下するはずだ。

ならなぜ、奴らが苦手とするこの冬の時期に攻撃を仕掛けてきた?

そこである仮説が思い浮かぶ。

 

仮にネウロイが、冬が苦手なのは以前は何らかの問題があったから必然的に襲来する数が少なかっただけで今はもう改善されていたとしたら?

 

そうしたらどうなる?

冬は人類側は防衛が手薄になるだろう。来るべき夏に備えて準備を開始しているとはいえ、どうしても手薄になる部分がある。

もし、予想していない時期にネウロイの大群が主要都市に侵攻したらどうする?

戦力が低下しているため少しでも補おうとするため様々な場所に散らばっていたものが一箇所に集中する。

そうすれば必然的に重要度が低い場所が手薄になる。

だが重要度が低いとはいえ、軍を維持するためには必要な場所だったりする。

たとえば、補給基地とか線路とか。

扶桑からの支援物資はシベリア鉄道を使ってモスクワに送られその後、中継基地を通ってからサンクトペテルブルグに送られる。

主な輸送手段は列車だ。

列車は線路がなければ動かせない。

そして人間は食べ物がなければ生きていけない、飛行機がなければネウロイとも戦えない。

そう、ネウロイが人間に勝つ方法は何も直接人間を殺す必要はない。

補給路をたってしまえばいい、そうすれば後は勝手に死んでいく。

 

「少佐!何か大きな地図はないか?」

「どうした、いきなり?」

「まずいことになっているかも知れない。サーニャ!下原!索敵を行え!主にエリアN(ノヴェンバー)、I(インディア)、E(エコー)を重点的に!」

「な、サーニャに何・・・。」

「エイラは黙っていて。了解です、大尉。」

ガーンと泣きそうな顔になっているエイラをほっておいて索敵にはいる。

「いったいどうした、大尉?」

「とにかく、大きな地図はないですか?何でもいいんです!」

少佐は輸送機から大きな地図をよこすように指示する。

あせるな、落ち着け。

かなり大きめな地図が送られてきたので伯爵とルマールに端を持たせて広げる。

少佐と曹長を呼んで俺の考えを地図を使いながら伝える。

「よく考えたらおかしかったんですよ。なぜこのタイミングに侵攻するのかって。ネウロイは冬が苦手なのにって。」

「ガリアの巣が破壊されたことに危機感を覚えたからじゃない?」

「確かにそうかもしれない。だがな、いかんせんタイミングが速すぎる。まだガリアの巣が破壊されてから一ヶ月近くしかたってないんだ。それなのにこんな短い間にこれだけの戦力をなぜ出せる?まぁ、もしこれだけの規模を簡単にネウロイの巣がぽいぽい出せるのであればまたそれはそれで大問題だがな。

俺はこの攻撃は以前より計画されていたものだと考えています。そうでもしなきゃ125機なんて出せませんよ。」

「なるほど、大尉の言いたいことはわかりました。それで?」

「つまり俺が言いたいのは計画されていた攻撃にしては不可解な点がいくつもあるんですよ。それを含めてある結論が思い浮かんだんです。」

 

さりげなく他のオラーシャやカールスラントのウィッチも聞いているがそいつらも含めてまだ全員よくわかってないような顔をしている、少佐を除いて。

「その結論ってなんですか?」

「これは陽動なんじゃないかって思うんです。なぜ遠回りのルートβを使う必要がある?すでに奴らの手によって第一防衛ラインの脅威は排除されている。もしペテルブルグを本気で陥落させたいなら直線コースのルートαを使えばいいのに。実際、ルートαでこられていたら援軍は間に合わずに、ペテルブルグも陥落していた可能性があります。

そこで思ったんですよ、敵は西側に主力をひきつけておきたいんじゃないかって?」

いつの間にか来ていた熊さんが手を挙げて質問する。

「それに何の意味が?」

「熊さんらしくない。さて質問だが東側にある軍の重要施設といったら何がある?」

そこで少佐と曹長の声が重なる。

「「補給基地!」」

「そうだ、正確にはそこからモスクワまで延びる軍用路線だがな。」

「それって・・・・!」

「もう気がついたな?

結論から言えばさっきまで俺たちが相手にしていたのは囮だよ。敵の主目標はサンクトペテルブルグなんかじゃなくてそこから東に行ったところにある大規模集積基地のノバヤ・ラドガじゃないか?

ここは弾薬や食料がたくさん保管してあるし。」

俺の指摘に黙ってしまった。

あたりにはエンジン音だけが響く。

「それにルートγで侵攻するネウロイはいつもエリアS(シエラ)のチュドボ上空で進路を転換する。だがもしここで進路を変更せずに直進した時、たどり着く場所は・・・。」

そういって俺は地図を指差しながらたどっていくと

 

「ノバヤ・ラドガ。」

「そうだ、ここが敵によって壊滅してみろ。復旧にはかなりの時間がかかるだろう。それにここから送られる荷物はペテルブルグに送られてくる60%を占めているんだ。仮に今回を乗り切ったとしてもこれから夏になりさらに攻撃の頻度が増すようになったら補給が追いつかなくなる。本来であればペテルブルグの次に防衛すべき場所だ。

たが、集合命令を出したお陰でここの担当ウィッチもここにはいないはずだ。

誰か現在の送られてきた援軍はどこにいるかわかりますか?」

そういうと曹長が手を上げて地図を指示棒で叩きながら教えてくれた。

「エリアL(リマ)の最終防衛ラインに向かっているそうです。

でも大尉、これはあくまでも予想ですよね?ネウロイがそんなこと考えているとは思えないのですが。」

確かにそうだ。これはあくまでも俺の予想でしかない。

だが俺にはどうしてもネウロイが低知能な奴らだとは思えなかった。

だから奴らは絶対にここを狙うだろうという確信があった。

 

 

 

「なぜそういえる?なぜネウロイは頭が悪いといえるんだ?勘か?なら捨てたほうがいい。勘というものは自分が経験してきたものをベースに導き出されるものだ。戦場に出て6年も満たないような奴の勘なんて信用できるのか?。」

「それはッ!」

曹長の反論をさえぎるようにサーニャが報告してくれた。

「いました!エリアN(ノヴェンバー)とエリアI(インディア)境界付近をヴォルホフ川にそって北上中です!

大きさは不明ですが40機近くいます!ノバヤ・ガドラ到着までそう時間はかかりません!」

「よくやった、サーニャ!さて、少佐。さっきの話ですが、この行動を見るからに今サーニャが発見したネウロイの行き先は明らかです。そして我々に余り時間は残されていません。ご指示を。」

少佐は先ほどとは違いすぐ判断してくれた。

「この部隊の指揮は全て私に任されている。バーフォード大尉、君にノバヤ・ガドラ防衛を任せる。Aチームは彼の指示に従ってなんとしてでも防衛してくれ。残りは私についてペテルブルグに向かっている編隊を排除する!」

「了解です、少佐。しかしここからではいかんせん距離があってネウロイのほうがどうしても速く着いてしまいそうです。」

「その件に関しては私が司令部を通じて集積基地に警報を出してもらう。だがそこの護衛ウィッチもペテルブルグ防衛に回っているためあまり期待は出来ない。一秒でも早く着くようにしてくれ。」

「了解、生きてたらまた詳しく話しましょう。」

「あぁ、お互いな。」

そういって離れる。

B隊の面々と扶桑海軍の奴等が集まって来たので通達を行う。

「さて、さっきのやり取りを聞いていたと思うが敵のネウロイにも少々出来る奴がいたようだ。俺たちの任務は今、丸裸になっている大規模集積所を敵から守ることにある。悪いがもう一度手を貸してもらうぞ。」

「わかりました。補給基地がなくなると私たち扶桑海軍としても大変ですから。最悪扶桑に帰れなくなる、という自体も考えられますからね。手助けします。」

「感謝する。それじゃあ、急ぐぞ!」

「「「「了解!」」」」

この戦いがこれからの戦争にどう影響してくるのか、どちらにせよ今後大きな改革が必要になるのは間違いないだろう。

俺たちは一気に速度を上げて目的地へと急ぐ。

 




これからも更新が遅れるかもしれません。


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