妖精の翼 ~新たなる空で彼は舞う~   作:SSQ

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今日はいつもは絡みのない娘との話です。



第33話 飛行停止

502JFWに帰頭後少佐に帰ったことを伝えた後、医者に傷のあとを見せに行った。

「ふむ、表面は治っているが皮膚の下はまだ完全には治ってないね。」

「しかし飛んでいる間は特に問題はありませんでしたよ

。」

「まぁ、そうだろうね。うーんと、君がウィッチであることも考えて・・・・。今日を含めて飛行停止三日ね。」

は?飛行停止処分だと・・・?

「なぜです?理由を聞かせてもらっても?」

「まだ血管やその他の組織が完全には治ってないんだ。その上飛行中に高Gがかかることで変に癖がついてしまう可能性だってある。傷の状態を見たところ三日もあれば完全に治るだろう。

四日目の朝、気象ブリーフィングが終わったら再び来なさい。そこで延長するか原隊復帰にするか判断するから。ただし、無茶な運動は禁止。君、毎朝走っているようだけどそれもだめだからね。」

そういって医者は俺の診断書に赤いインクで“飛行停止”の判子を押した。

診察室から出る。最前線じゃ常にウィッチの数が足りないって話じゃなかったのか?

その足で再び少佐の元に向かう。

「さっきドクターから電話がかかってきた。三日間の飛行停止だそうだな。」

「自分としては不満です。」

「まぁそういうな、ドクターの言い分は最もだ。しばらく大尉は飛べないがもちろんその間は働いてもらう。下原が言っていた扶桑のことわざ、働かざる者食うべからず、だ。」

「もちろん、わかっています。」

そう返事をすると、書類の束と判子を渡された。

「この書類に判子を押してくれ。君の所属、階級で考えて閲覧してもよい物を渡したから気にせずやってくれ。今日中に、出来れば夕食前に終わらせてくれ。ただし、この部屋からは持ち出すな。」

ほかの机がないので近くのいすを持ってきて少佐の机の反対側に陣取る。

それからはひたすら四角の中に納まるように判子を押す。

 

これは?502JFWの予算案か。

・・・・なんで基地にある全ての給水塔の電気代が502で負担することになっているんだよ。こういうのって区画ごとじゃないのか?

まぁ、少佐が見てOK出したのだからいいのだろう。

それにしてもストライカーユニットの修理代ってうちが一部負担なんだな。壊したウィッチの所属する軍と502で7:3くらいか。

とはいうものの、この額はなかかな無視できないがな。

事務書類をまとめる仕事はいつも報告書をかいているためかスムーズに進んで夕食前には終了した。

夕食をみんなで済ませたあと部屋に戻ろうとしたら熊さんに話しかけられた。

「怪我はどうでしたか?」

「飛行停止処分三日だ。その間飛べないなんて最悪だ。」

「バーフォードさんは飛ぶのが好きなんですか?」

「あぁ。空はいい、自由に飛んでいる間は嫌なことを忘れられる。」

熊さんは微笑みながら“そうですね。”と同意してくれた。彼女が共感してくれたことはうれしい。

ただ、何となく飛ぶという奴もいたり、空が嫌いなのに飛ぶ奴もいたりするので素直に飛ぶことが好きな人に会えるのは意外と少ない。

「ルマールもありがとう、君のおかげで入院するような怪我も、三日待てば飛べるようになるまで回復していたみたいだ。」

「もう、お礼ならたくさん受け取りましたよ。」

「それでも一応な。」

コーヒーを飲もうと台所に行こうとした瞬間

「「お土産は!?」」

ウィルマと伯爵が走ってきた。

「ない。買う暇なんてなかった。」

「「そんなー!」」

同じポーズをとりながらorz状態になった。

お前らいつの間にそんな仲良くなったんだよ?

「フン、怪我するなんてだらしないな!」

「いつも何か壊している奴なんかに言われたくないな。」

「なに!?」

ガタッと音を立てて椅子から立ち上がった。管野は相変わらずで安心した。

「まぁ私は今まで一度も怪我をしたことなんてないしナ!」

「エイラは未来予知があるからでしょ?」

「サーニャ!それは私の実力のうちであって別に能力にたよっているわけでは・・・。」

「大尉、怪我したの?サルニアッキ食べる?」

「ニパ、なぜ怪我からその飴につながるのかがわからない。」

「バーフォード大尉、今回もユニットを壊さなくてよかったです。」

「曹長、いつも俺が壊しているようにも取れる発言はやめてくれ。」

「でも、壊したでしょ?」

「一機だけだしまだ全損はしてない。」

十五分くらい皆と話していたら少佐が近づいてきて無慈悲な宣言をした。

「さっきの書類が予定より速く終わったみたいなので追加だ。」

「了解です。」

もちろん所属が違うとはいえ、ここでは逆らえない。

こういう展開になるのだったらもう少し夕食後まで書類を少し残しておけばよかった。

判子を押す仕事をひたすら続けてながら途中、少佐にいろんなことを聞かれたがのらりくらりとかわして結局仕事が終わったのは2500だった。

そのまま部屋に戻って普段着のままベッドに倒れこんで就寝した。

 

次の日

走ることは禁じられていたので体を伸ばそうとしたのだが医者に止められた。

広いリビングではなく自分の部屋でやればよかった。

飛べないのに気象ブリーフィングを受けて天気を確認する。

朝食もいつもよりも味気ない気がする。

少佐からの命令で今日は曹長の手伝いになった。

曹長の仕事は主にデスクワークだが時々基地の外に出て行う仕事もあるので今日はそれも手伝うことになった。

「それで?曹長は今日なにをするんだ?」

「最近弾薬と食料の補給が減りましたので、別のところから譲ってくれないかというお願いと昨日ニパが“また“壊したので壊れたのを渡すのと代替機の受け取りに行きます。道案内はするので、運転できますよね?」

「わかった。」

「なら結構です。それとこれが外出許可証となりますので、守衛に渡してください。身分証は持ちましたね?持ってないと出られても入れませんから。」

いつも通り外出規定に書いてある持ち物を全て鞄に入れて宿舎から出る。

よく考えたら俺ってこの基地から一度も地上から出入りしたことがないんだな。

こちらの駐車場は来たことがないがさすが東欧戦線の主力基地だけあってたくさんの車両が止まっている。空から見たときは米粒が整列しているように見えたが実際には結構大きな車が多数いた。

「それにしても502JFWは他の部隊と比べても郡を抜いて目立っているよな。」

「あなたがそれを言いますか?大尉と比べたら私なんて小さな存在ですよ。」

「冗談じゃない、曹長も十分目立っていると思うぞ。」

「そうですか?」

「今エースと呼ばれているような奴らをたくさん育てたそうじゃないか。」

かつてハルトマンの長機を務めたこともあり様々なウィッチを育ててきた、教え上手な面がある。彼女の活躍を見れば十分昇進も可能だが幹部養成課程を修了していないためこの階級である。

そう報告書には書かれていた。

「表では知る人ぞ知るという扱いでも軍内部では誰もが知っている、それなら十分じゃないか。俺なんて基本表には出ない上に軍内部にも不快に思っている奴が多いのも事実だからな。」

「表?」

「報道規制って奴だよ。ウィザードなんてよくわからない奴が出てきたらもう大騒ぎだろ?民間人には教えないんだよ。というか本音は女性ウィッチが新聞の一面とかで目立ったほうが華やかだからだろうな。戦場に咲く花っていうやつか?どっちにしろ目立つのは嫌いだからな。それに敵は少ないに越したことはない。」

そう、各国の情報機関は既にある程度情報を集めているだろうが報道機関には一切の情報の公開すらされていない、というか統合軍が隠したがっている。

露見したら面倒くさいことになりそうだからな。

まぁ、仮に報道されたとしても今は戦時中だから一時的に話題になるだけですぐ忘れられるような気がする。

「大尉も大変ですね。私も本来ならウィッチになれなかったんですよ。ヒスパニアでの怪異の影響で私でも入隊できるくらい基準が引き下げられたので。」

「そういえば曹長、身長低いよな。」

「私からすれば伯爵と大尉は大きすぎるんですよ。私より年下の癖に。」

「身長が低いと不便か?」

「えぇ、何かと。ですがそのおかげで一撃離脱戦法に集中できたので結果としてはよかったのかもしれませんね。センスが必要なドッグファイトにはいまだ慣れません。」

そういって車に乗る。どちらかといえばトラックか。ニパのユニットを乗っけているし。

基地を出てしばらく無言になる。曹長は何かの書類を読んで、チェックやサインをしている。

「そこの曲がり角を曲がって道なりに30km進んでください。」

「わかった、飛ばすぞ。」

しばらくスピードを高めに運転すると一気に開けてたくさんのトランクが積み重なった場所に出た。

「ここが集積基地なんですよ。扶桑から送られてくる物資はまずモスクワに送られてその後各地の東欧に送られます。そしてバルトランドやここペテルブルグに送られる荷物はこの集積基地に送られます。もちろん502の荷物のおよそ60%はここから来るんです。あ、そこにとめてください。」

しばらくすると責任者らしき人が来てその人にニパのユニットを引き渡す。

いつものことなのかユニットを見るなり苦笑いになったがすぐ持って行った。

代わりのユニットをトラックに載せる。

「これで終わりか?」

「いえ、ここからが勝負です。」

勝負?そういうと、もう一度車で移動して今度は別の場所に来た。

「ここは?」

「主に弾薬などを集積している場所です。バルトランドに送られるような奴ですね。はい、さっさと手伝ってください。」

そういうと車に乗せるよう言われた箱を載せる。

「誰も責任者が来ないようだがいいのか?書類は?」

「そんなもんありませんよ。」

なんだそりゃ、と思って曹長を見ていると何かを箱に書いていた。

「おい。」

「なんですか?」

曹長がはさも当たり前のように荷物の宛先をバルトランドの空軍基地から502に書き換えていた。送り先は扶桑の軍事工場か。

「それって横領じゃないのか?」

「今は戦時中です。荷物がネウロイに襲撃されて届かないことなんてよくあるんですよ?それにたとえば“宛先を書く人が間違えちゃった”とかね。私としては大変、心が苦しいのですが捨てるわけにもいかないので大切に使わせてもらっています。」

曹長はニコニコしながら教えてくれた。楽しむのをモットーとしているも以前に話してくれたが少し違うんじゃないのか?

その後食料もありがたく貰い受けたので車はほぼ満載になった。

もうここではもらうものがなくなったのでで集積基地を出る。

「フフッ、大漁大漁♪」

「どうなっても知らないぞ。」

「大丈夫ですよ、いつも平気でやっていることですし。司令部も黙認してくれています、たぶん。それにこうでもしないと予算が足りないんですよ!主にあの方たちのせいで!」

「それはご愁傷さまです。」

「ちなみに大尉のユニットってどれくらいのお金がかかるんですか?」

「スピットファイアのほうか?」

「いえ、ジェットストライカーユニットのほうです。」

たしか、ゼロ戦の価格が一億五千万くらいだと考えてて・・・・それにメイブは限定数しか作っていないはずだし。

「よくわからないが、とにかく高いぞ。2000倍はいくかも、いやもっと高いかも。」

「えっと、つまり大尉のユニット1機で私たちのユニットが2000機以上買える・・・?」

「まぁ、それ以上買えるかもしれないな。本当の価格は開発局の奴等しか知らないだろうがな。」

曹長が卒倒しそうになる。

そしてがしっと俺の左腕をつかんでくる。

「絶対に!!!壊さないでくださいね!!壊したらただじゃおきませんよ!給料から天引きしますから!」

「わかったから!曹長、運転中だ!」

「あ、ごめんなさい。」

というか、曹長は給料も管理しているのか?

あれ、俺の給料ってどこから出ているんだろう?502に配属になったとはいえ、ブリタニアからじゃないのか?

「それは怖い。まぁ、ジェットのほうは絶対に壊さないから安心してくれ。」

「スピットファイアのほうは壊す気でいるんですか!?」

「好きで壊しているわけではない!」

「でもあれのせいで余計頭を下げなければならなかったんですよ!東欧司令部長官には“はっはっは、彼もブレイクの素質を持っているのかも知れんな。”なんていわれる始末ですよ。」

「それは、悪かったな。」

そのままいったん基地に帰り荷物をおろす。

そして今度はいろいろなところに届けねばならない書類を少佐から受け取って再び基地を出る。

まずはサンクトペテルブルグ中心部にある司令部に報告書を提出しに行く。

司令部到着後、駐車場に車両を止めて建物に入る。

「ここが東部方面統合軍総司令部か、管轄がでかい割に建物は小さいな。」

「西はここペテルブルグ、東はウラル山脈までと広大ですね。ちなみにここの指揮下にある統合戦闘航空団は502のほかに503があるんですよ。」

「503か、あまり噂を聞かないな。うちは良い意味でも悪い意味でも有名だからな、もしかしたら埋もれてしまっているのかもしれない。」

「でも報告を見る限りうち同様激戦区みたいですね。」

「それじゃあ、いわばこっちは問題児であっちは模範生徒って感じか。」

「ですかね。」

受付に書類を提出しに来た旨を伝え、どういうわけか副司令官に会うことになった。

なんでもあちらが会いたいらしい。

副司令官室に案内され五分ほど話をしたがこれといった話題はなかった。

純粋に話をしたかったらしい。書類を渡して退室くる。

「なんか拍子抜けでしたね、副指令が会いたいっていうから何か大尉が私の知らないところでしでかしたのかと思いましたよ。」

「苦労しているんだな、曹長も。それで、次は?」

「お昼にしましょう。」

時計を見ると現在時刻は1225、時間的にもちょうどいいな。

「いいお店を知ってますか。行きませんか?」

「別にかまわないが、仕事が残ってるんじゃ・・・。」

「大尉っていつも職務、仕事ばっかりですね。せっかく基地の外に出れたんですから羽伸ばそうとは思わないんですか?」

「思わない。」

はぁ、と曹長がため息をつき、そして左手を腰に当て、ビシッと右人差し指でさしてきた。

「いいですか、私は基本なんでも楽しんでいこうというのをモットーにしています。確かに軍人としてやるべきことはしっかりやらなければならないとは思いますが、たまには休息も必要です。私たち軍人はいつ死ぬかわからないんです。だったら今を楽しく生きましょう。」

そんなこと考えてもみなかったな。死にたくなければ自分を強くする。

そんなことしか考えていなかった俺にとって彼女の考えは斬新というか驚きだ。

「わかったよ、でどこに案内してくれるんだ?」

「こっちです。以前、少佐に連れて行ってもらったんですよ。」

10分くらい歩いたところにあるすこし大きめのお店に連れて行かれた。

「何名様ですか?」

「二人です。」

「では、こちらへ」

ちいさなテーブル席に案内された。

「カールスラント料理か、故郷の味を思い出すのか?」

「えぇ、よく家族で食べていた食事を思い出すんです。なに頼みますか?」

「よくわからないから、全部任せる。」

「わかりました。」

曹長が注文後、しばらくしてソーセージやジャーマンポテトなど数種類が運ばれてきた。

「曹長は俺が知らない間にいろんなことしていたんだな。」

「補給関連は誰かが必ずやらなければならないことですしね、少佐はだめだし他の人はそんな余裕ないし必然的に私がやらなければならないんですよね。」

「専門の人を採用するわけにはいかないのか?」

こういうものって補給兵とかそういう奴がやる仕事だと思ってた。

「補給関連はウィッチのことをよくわかっている人がついたほうがいいですしね。」

確かにそうだ、勝手を知っている人が補給担当であれば安心できるし。

むしろブレイクウィッチーズが成り立っているのは曹長のおかげなんだよな。

だからいつもあんなに怒っているのか。

「すまないな、曹長。迷惑掛けて。」

「今日おごってくれたら許してあげます。」

「わかった、それで手を打とう。」

よし、っとガッツポーズをして

「店員さんー!追加オーダーお願いしますー。」

「おい、待て。」

「いいじゃないですか、私の懐は痛まないし。それにこれ高いけどすごくおいしいんですよ。」

ここのお店って家族と食べていた料理って言うから家庭料理専門なのかと思ったらちゃっかり高級食材を使ったものもあるのか。

まぁいいか、曹長にはいつもお世話になっているから。

「今日だけだからな。それと、これでこの前、模擬戦で中破したことはチャラだから。」

「仕方ありませんね。あっ、いいこと思い付きました。次ユニットを壊したら今度は2回にしましょうか?」

「なら、なおさらもう壊せないな。」

「そうです、壊さなければ大尉も怪我を負わない、私も書類を書かなくてもいい、他の人も余計な資材を使わなくて済む、つまりみんながハッピーになれるんです。」

なんだその幸せスパイラル理論みたいな奴は。

最後の料理を食べ終わると食後のコーヒーとデザートがきた。

「いつの間に頼んだ?」

「気づかなかったんですか?」

「あぁ、カールスラントの料理名はあまり知らないから何言っているのかわからなかった。」

「なら仕方ないですね。ゴチになります♪」

まぁ、いいか。ちゃんと二人分頼んであるみたいだし。

 

「今日はありがとうございました。ご馳走になります、大尉。」

ちゃんとお礼をするときはしっかりクールだよな。

本当にオンオフを切り替えるのが上手だ。

「別にいいさ、曹長とこうしていろんなこと話す機会ができたからな。」

「ならよかったです。そろそろ行きましょうか。」

「あぁ、そうだな。」

そのままレジに向かい会計を済ます。

意外とかかった費用は高くはなかった。

「さて、そろそろ仕事を再開しましょう。まず司令部に戻って車と取りに行かないと・・・。」

「あれ、パウラじゃん?どうしたの?」

声がした方向を向くと知らない奴がいた。

「あ、サラ。久しぶり、報告書を届けに行くついでの昼休み。」

曹長の知り合いか。

「なるほど、ここおいしいもんね。そちらの人は?彼氏?」

「違いますよ、ブリタニアからきた502のウィッチ、まぁどちらかといえばウィザードですかね。」

「・・・男のウィッチ?うそ、都市伝説だと思ってた。」

ども、と会釈する。

「まぁ、仕事一筋のパウラに彼氏なんて出来ないだろうねー。」

「失礼な、それはサラだって一緒でしょ?」

「確かにね、出逢いなんてほとんどないし。」

結局3分くらい曹長と話していなくなってしまった。

話していた内容も世間話程度だったし。

「彼女は?」

「昔同じ部隊にいた人です。私がいろんなことを教えた一人ですね。」

「パウラっていうのは?」

「・・・私のあだ名です。ラテン語で小さいを意味する゛パルトゥス゛から来てるそうです。」

それは、曹長にぴったりだこと。

「そういえば、曹長って本当に教師みたいだよな。指示棒持ってるし。」

「あれはブリーフィングのとき指しやすいから持っているだけですよ。」

「眼鏡かけたら完全に先生だな。いや、すでに何人も教え子がいるんだから既に先生か。」

「まぁ、実際私は教育係ですからね。教えた子が成長していくのは見ていてうれしいですし。」

もう教師の貫禄まで出始めているみたいだ。

「というか、俺よりも撃墜数は上だろ?本当に何でも出来るのに何で曹長なんてやってるんだよ。」

「まぁいろいろあるんですよ、私にも。」

その後、オラーシャ海軍基地や各通信施設に司令部から渡された書類を届けて今日の外回りは終わった。

基地に戻り全部終わったことを少佐に報告する。

「そうか、ご苦労様。補給物資は不安だったから助かった。それと大尉もなれない外回りをありがとう。」

「いえ、久しぶりの外出で羽を休めることが出来たので良かったです。」

「まぁ、明日も曹長の手助けをしてもらうことになるが頼んだぞ。」

「「了解。」」

司令官室を出て終わりかと思ったらまだ仕事はあるらしい。

設備点検や各自のユニットが正常に動くかの点検の報告書も回収しに行く。

最初に見回りをしなければならない場所に向かう途中、緊急発進警報が鳴った。

午後のこの時間の担当はB隊だ、本来ならば俺はユニットに乗って指揮をとらなければならないのに。

離陸のために滑走路に向かう三人が俺を見つけたのか手を振ってきたので敬礼して返す。今日、指揮を撮っているのは伯爵か。不安だ。

全員が無事離陸したことを見届けてから自分の仕事に入る。設備点検や特に冬場は重要な水道管に亀裂がないか等を確認する。

 

一時間ほどした後、B隊が帰ってきた。

双眼鏡で機影を見ると二つしかなかった。車の音がしたので振り返ると猛スピードでエイラの姉が乗った車が基地から出て行った。

それが意味することを理解した曹長が崩れ落ちた。

「また落ちたの!また伯爵!?」

伯爵の心配をするより先に面倒くさい仕事がまた出てきたことに対する恨みの言葉が出てくるところを見るともはや当たり前になっているのかと思ってしまう。

そして最後の見回りで格納庫に入った曹長をさらに突き落とす事実が待っていた。

ニパがまた壊したらしい。

それも今日受け取ったばかりのユニットを。

「二パー!出てきなさい!」

ああいうの鬼というんだろうな。そんな形相をした曹長が全力でニパのいるであろう宿舎に走っていった。

しばらくするとニパの悲鳴が聞こえてきたから恐らく捕まったのであろう。

報告書を出すのを忘れていたらしくて少佐も知らなかったらしい。

一日に二機破損するという事態に曹長の怒りがしばらく収まることはなく、戻ってきた曹長を俺が手伝ってるときもずっと“まったく、いつになったら学ぶのやら”とか愚痴をもらしていた。

またひとつ曹長の新たな面に触れた気がした。




曹長って仕事のときはクールだけど他のところでは明るいというあまり見かけない人なんですよね。だからちょっと難しい。
いつもクールとか常に明るいって子はよくいるし、今作の中にもいますしね。


しばらく戦闘が続いてまったくないのが久しぶりってくらい?
フミカネさんが書いた502だけでは性格は読み取りにくい・・。
何かおすすめがあれば教えてくれるとうれしいです。


ご指摘、感想、評価は常時受け付けています。


うわきじゃないよ?
(これからもひとりの娘に注目した話を入れてきたいなーと思ってます。)


修正
(前)
「よくわからんがスピットファイアの200倍以上じゃないのか?」
「200倍!?」
(後)
「よくわからないが、とにかく高いぞ。2000倍はいくかも、いやもっと高いかも。」
「えっと、つまり大尉のユニット1機で私たちのユニットが2000機以上買える・・・?」
「まぁ、それ以上買えるかもしれないな。本当の価格は開発局の奴等しか知らないだろうがな。」
ほか、一部訂正。

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