妖精の翼 ~新たなる空で彼は舞う~   作:SSQ

31 / 60
お久しぶりです。
実に5か月ぶりの更新となりました。
それではどうぞ。

502人物紹介を作りました。
目次の一番上から2つめをご覧ください。


第28話 認められること

「模擬戦、ですか?」

 

着任した翌日、少佐に呼び出され司令官室に顔を出した矢先に言われた。

「あぁ。昨日来たばかりで申し訳ないが1000にクルピンスキー中尉と管野少尉と一緒に飛んでもらうことになった。君たち2人も合わせて2on2で戦ってもらうことになるな。構わないかな?」

構わない?つまり命令ではないということか?

まぁ、俺としても演習だとしても経験が詰めるので断る理由はないしな。

隣に立っているウィルマに顔を向けるとうなずいてくれた。

彼女も構わないみたいだ。

「もちろんです、少佐。」

「そうか、ありがとう大尉。この模擬戦は後で戦う2人の強い要望でな、くれぐれも注意してくれ。」

「?」

注意、だと?

何をするんだ?いつも通り飛ぶというのに、等と考えていたらウィルマが助け船を出してくれた。

「ほら、クルピンスキー中尉と管野少尉って"ブレイクウィッチーズ"で有名じゃない?だからだよ。」

「その通りだ、軍曹。まぁ、正直言えば君たちの実力がどれ程のものかというのを知りたいというのもあるな。書類だけじゃわからないこともあるからな。」

「なるほど、わかりました。では準備にかかるので失礼します。」

「あぁ。頼んだぞ。」

そう言って退室する。

「昨日見た限りではそんなには気性は粗そうには見えなかったんだが実際はどうなんだろうな?」

「まぁ、少佐が忠告してくれたってことはそれ程って事なんじゃない?」

「わかった、善処しておこう。そう言えば、スピットファイアはもう届いたのか?」

「今日の0830に来るって書いてあったからもう来ていると思うよ。どうして?」

「愛機を壊したくはないからな。」

思わず彼女も苦笑いをして

「成る程ね。」

同意してくれた。

 

ー格納庫ー

ちゃんとスピットファイアは届いていたので受け取りのサインをして無事引き渡しを終えた。

あとは模擬戦にむけて調節をするだけだ。

といっても部品が所定の位置に付いているか、エンジンは起動するかなどの簡単な事ばかりとなるが。

しばらく弄っていると後ろから声がした。

「これがスピットファイアMk2ですか。うちの部隊では初めての機材ですね。」

振り向くとそこには

「熊さんか。」

「熊さん、やっほー。」

502の戦闘隊長、熊さんことポクルイーキシン大尉がいた。

「聞きましたよ。これから"あの2人"と模擬戦をやるんですね?」

「あぁ、噂は聞いているがどういう戦い方をするのかさっぱりわからん。何かアドパイスってあるか?」

「アドバイスですか、、、。」

そういうと考える人のようなポーズを取った。

「特にはありませんね。」

ないのかよ。

「ただ、何しでかすか解らないのでそこは気を付けておいた方がいいかもしれませんね。」

「なるほど。助言ありがとう。参考にさせてもらうよ。」

「お役に立てたなら幸いです。では、私はこれで。」

そう言うと、彼女は格納庫から出ていってしまった。

扉がしまる音がして、静寂が訪れる。

「なぁ、ウィルマ。」

「ん?」

「熊さん、何しに来たんだろうな?」

「そう言えば、そうだね。お話ししに来ただけかもね。」

「そうかもな、それじゃあ再開…………」

ガチャ

また格納庫の扉か開く音が聞こえたのでそちらを見るとそこにいたのは、

「熊さん?どうしたの?」

「………本来はナオのユニットを修理するためにここに来たのですが皆さんとお話ししたら忘れてしまって、、、。」

顔を少し赤らめながら彼女はそう言った。

少しおっちょこちょいな所があるのかもしれない。

結局3人でユニットを弄りながら話をして時間を潰した。

 

0945

ドタドタドタドタ

段々足音が大きくなってくる。誰だ?

バーン!!

扉が大きな音をたてて開いたと思ったら例の2人がいた。

「今日の模擬戦、絶対勝つ!!」

「男のウィッチか、どんななのか気になるな。」

クルピンスキー中尉、通称伯爵と管野少尉、通称ナオがいた。

というか、やけに力入ってるな。

「熊、ユニットありがとう。」

「いえいえ。」

というか、他国の軍人が自国の兵器を触っているけどいいのかよ。

俺は立ち上がって"注目!"といって全員の意識をこちらに向ける。

「それじゃあ、全員揃ったことだし始めるか。ウィルマ、地図かして。」

「どうぞ。」

「ありがとう。それじゃあ、ブリーフィングやるよ。」

そして今回の模擬戦に関する項目の確認を始める。

訓練空域、そこまでの飛行経路、天気、時間、勝率条件などの情報を全員で共有する。今回は1発でも食らったらアウトというルールらしい。

最初はなんか言ってきたが俺が一応一番階級が高いのを知っているためか直ぐおとなしくなった。

こうして、全ての準備が終わった。

 

1000

滑走路28Rから定刻通りに離陸後進路を南にとり、訓練空域まで向かう。

今つけているのはスピリットファイアMk2、ウィルマと同型機である。

それにしても、初めてのレシプロ機での戦闘訓練とだけあって少し緊張している自分がいる。

なんせ、愛機とは全くといっていいほど勝手が異なるからだ。

速度、上昇限界、加速度、旋回性能、どれを取っても同じものなどありはしない。

これから先スピリットファイアを使っての実戦だってあるだろうから今のうちからこいつになれておく必要がある。

だから、この模擬戦だけでこいつができる限界を知る必要がある。

しかし、今までは様々なサポートをつけて飛んでいたがこいつにはそんなものはもちろん無い。

これがウィルマやウィッチーズ達の見ている世界か。

メイブのサポートが無い今、本当の実力が試されると考えると楽しみでもあり、不安でもある。

そう考えているうちに訓練空域に近づいてきた。

ちなみに全員がMG42(模擬弾)だ。

いつも狙撃銃を使う身としては慣れないが仕方ない。

後ろを振り向き、3人に顔を向ける。

「ブリーフィングでいった通りだ。6000まで上昇後、降下。4500で散開後、開始だ。いいな?」

「「「了解。」」」

そして全員が上昇を始める。

 

4000を過ぎた辺りだろうか、突然後ろで

ガチャン

という音がした。

勘でヤバイと感じたのでとっさにウィルマに散開のハンドサインを送る。

左急旋回をしてその場を離れると元居た場所を模擬弾が貫く。

「伯爵!打ち合わせ通りだ!そっちは頼んだぞ!」

「任せろ!」

(くそ、奇襲か。全く、ルールもあったもんじゃないな。)

伯爵がウィルマに向かい、管野が俺の後を追う。

始まってしまったものは仕方ない。この借りは勝って返す。

後ろに付かれているが、それにしてもあいつよく撃ってくるな。

残弾を気にしているのだろうか。

しかし、これはなかなか不味い状況だな。

普通のウィッチであれば空を飛びながら後ろに向かって攻撃することは可能だろう。

しかし、俺の場合はそうはいかない。

今まで前に撃つことしかしてこなかっただけに後ろを向きながら攻撃をするということが俺にとっては非常に難しい。

只でさえレシプロ機に慣れてない上に今回は機関銃なので弾速が違う。

いつも通りに狙っても外れる。だからその調整もしなくてはならない。

チャンスを伺いながら回避行動をする。

 

そして管野が弾切れになったときを狙って

ー能力発動

周りがゆっくりと動く中、正確に狙いを定めて

解除ー

攻撃。

右肩から左腹にかけて斜めに模擬弾が飛んでいくもシールドによって阻まれる。

外れか。彼女達にとっては生命線だろうが、今の俺にとっては邪魔物でしかない。

 

それにしてもあいつ

速い。

右急旋回ごそのまま急降下、そして急上昇したあと左旋回なんて動作をしても平気でついてくる。

それに段々距離が縮んできている。

俺は遠距離を、管野は近距離を得意とするためこれは不味い状況だ。

おまけに残弾気にせず撃ってくるもんだから進路も制限される。

どうしたものか。

このままでは埒があかない。

 

、、、仕方ない。いつも通りいくか。

「ウィルマ、仕掛ける。出来るか?」

「ちょっと厳しいかも。なかなか振りきれなくて。」

あっちも劣性か。

「俺がそっちにいくから合図をしたら"クロス"だ。そちらがやり易い位置まで誘導する。わかったな?」

「了解」

ウィルマの方に行くために上昇する。

追いかけてくるのを見た後、また速度を上げる。

相変わらず撃ってくるが左右に揺らして回避する。

そして進路が交差し、ねじれの位置にいるウィルマに合図する。

 

「今だ!」

 

その瞬間、俺が伯爵を、ウィルマが管野を攻撃する。

彼女たちも昔はやっただろうが個の実力が高い今はあまりやら無いであろうロッテ戦法。

狙いを定める瞬間に再び能力を使ってより正確に狙いを定める。

先ほどの攻撃で感覚掴めた。あとは撃つだけ。

発射。

俺の放った11発のうち3発が命中し、伯爵は撃墜判定となった。

 

一方ウィルマの方は問題が発生していた。

管野がウィルマの攻撃にとっさに反応して反撃したのだ。

結果ウィルマの攻撃は外れるし、逆に被弾してしまった。

両者とも1人ずつ減り残り2人となった。

 

そして、管野がついに弾切れを起こした。

そりゃあんなにばらまいてたら直ぐなくなるよな。

あとは冷静に狙いを定めればなんて考えていたらこちらにも問題が発生していた。

左エンジンのユニットの出力が急激に下がったのだ。

振り切ろうとして行ったあの機動にユニットが耐えられなかったらしい。

新品だからか?

まぁ、メイブと同じ感覚で出力を上げたり下げたりしたら悲鳴をあげるのも当然か。

飛ぶのには問題ないがこれでは戦闘は厳しいな。

お互い継続するのにも無理があるから潮時か。

まだ後ろを飛んでいる管野に声をかける。

「おい、管野しょ、、、、」

 

 

 

振り向いた直後、管野が猛スピードで俺に頭突きをしてきた。

一瞬気を失いそうになるが堪える。星が見えて気がしだ。

そして、管野は俺の銃を掴み

「貸しやがれ!まだ弾余ってるんだろ!」

「はぁ!?」

こいつは何を言っているんだ?

取らせまいと力を込める。

「男のウィッチの癖に女々しいんだよ!」

その瞬間なにかが切れた気がした。

結局のところ、俺はこの世界では異質というわけか。

こいつが当たってくるのは異様ともいえるやつに拒絶反応を覚えているからか。

ワイト島みたいなやつらは所詮少数派に過ぎないということなんだな。

ならば、その拒絶とやらを力で覆してやる。

幸いにも演習中だしな。

 

だから俺は右のストライカーユニットで回し蹴りをした。

それも回転数をあげて速度を増したやつをだ。

それに対して管野は銃から手を離し回避した。

彼女のほんの数mm先をユニットが通りすぎて行く。

「調子に乗るなよ、小娘が。」

「へっ、やっと本気になりやがって。銃なんて使わないでかかってこいよ。」

「ハッ、簡単に死ぬなよ。」

 

結局このまま近接格闘を続けてしまい、俺のユニットから黒い煙が出始めた頃撃墜された2人に止められようやく終わった。

 

 

 

今となってだがあのときの俺は冷静さを欠いていた。

昔の同僚がみたら笑うだろうな。

特殊戦の奴等だったら?と思ったがやめた。

あいつらはそもそも他人に興味を持たないから気にすらしないだろうな。

まったく、ダメだな、俺は。

 

ー502JFW 1130 指令官室ー

「で、何か言いたいことはあるかな?大尉?」

「いえ、なにもありません。少佐。」

遠くから黒煙が見えたらしくて何事かと確認に来た曹長に説明したらそのまま指令官室につれてかれて今に至る。

中破1、小破1という報告に少佐は明らかに怒ってる。

「まさかさらに一人ブレイクウィッチーズが増えるとは思いませんでしたよ、大尉。」

「それだけはご勘弁を、曹長。」

結局少佐と曹長の審議の結果、今回は"訓練中の事故"不問となった。ただ、次やったら正式にブレイクウィッチーズの仲間入りにすると言われた。

「もう、懲りたら反省してくれよ、大尉。」

「は、失礼します。申し訳ありませんでした。」

もう一度頭を下げ、指令官室をでる。

 

 

「お疲れさま。」

外にはウィルマが待っていてくれた。

「済まなかったな。巻き込んでしまって。」

「平気だよ。それにしても、今日のリョウはらしくなかったね。あんなになんというか気性を荒くしているのは初めてだよ?どうしたの?」

「………自分の不甲斐なさに気づかされたんだよ。俺もまだまだだな。」

「ふーん。 だったら。」

ウィルマが両手を取って正面に立ち、俺の目をじっと見ながら言った。

「一緒に、成長しようよ。ね?まだまだ知らないことだってあるんだし。次にいかせばいいじゃないの。」

「……そうだな。」

「そうそう!ほら、いこ。報告書を書かないといけないし。」

2人で歩き出す。

「ウィルマ。」

「ん?」

「ありがとう。」

「……いいってことよ。」

 

 

彼女と出会って変わったな、俺も。

さて、行くか。

まだ、認められなくたって構わない。

なら認められるだけと成果を出せばいい。

こうして、ようやく502のメンバーとして動き出す。

まだ戦いは始まってすらいないのだから。

 

 

 

 

 

 

別の場所にて

熊「それで、管野少尉はバーフォード大尉のことを認めてないの?」

 

管「は?何で?」

 

かくかくしかじかウィルマ軍曹から聞いたことをはなす。

 

管「いや、そんなことないぞ、ただどれくらい強いのか知りたかっただけだし。」

 

熊「それじゃあ、大尉の勘違い?」

 

管「じゃないの?今度はまた本気で戦ってもらいたいな。ユニットを使ったら近接空中戦闘は楽しかったしなー。」

 

熊(………ただの戦闘狂ないの?ならバーフォード大尉は怒り損?)

 

つづく。




改めましてお久しぶりです&お気に入り登録保持ありがとうございます。
とりあえず一段落ついたので投稿しました。

ながく更新してなかったので内容を思い出すためにもう一度読み直してみると、
なんか読んでるこっちが恥ずかしくなるような事が書いてあって反省しました。
暴走タグつけておいてよかった。
なんか厨2病ノートを見返しているような気分。
内容を変えることなく台詞を変えるところがあるかもです。

また、以前と設定が違うぞ!
と気づいた方がいらっしゃったらご指摘の方、よろしくお願いします。

とりあえず、これからも(さすがに以前のように毎日は無理ですが)更新していきます。
次は3/20までには投稿します。
最後になりましたが、これからもよろしくお願いします。




間違い修正しました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。