妖精の翼 ~新たなる空で彼は舞う~   作:SSQ

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ワイト島編と502JFWの中間はこれで最後です。


第26話 新たな旅立ち

取り敢えず、基地に帰り502周辺の地図を確認した。

502とネウロイの巣はそれなりに離れている。

502の主任務は北側からのカールスラントの奪還とスオムスに向かうネウロイの迎撃か。

それで、敵さんの懐に入るからユニットがバンバン壊れると。それゆえにブレイクウィッチーズなんて呼ばれるやつがいるのか。

誰がうまいことを言えと。

てか、ユニットを壊しても生きている辺り凄いな。

どうやって脱出してるんだろうな。

 

ユニット回収班?

マジかよ。そんな部隊にまで予算を回しているってところを見ると相当消耗が激しいのか。

こんなところでメイブを失うわけにはいかないな。

ジャックに頼んで予備のユニットでも送って貰うか。

ブリタニアのユニットと言えばスピリットファイアーかな?

そういえばTSQの奴等がテストしてるジェットストライカーユニットも気になるな。明日辺り試してみるかな。

今日はもうねるか。

 

と、突然警報。

ネウロイか。ガリアの残党か他の地域から来るようになったのか?

まぁ出撃回数が減っているところを見ると前者だと思いたい。

「ウィルマ!いくぞ!」

「はーい!」

格納庫に入ると既にゲートは空いていて滑走路の誘導灯が点灯し始めた辺りだった。

エンジン始動。武器を取る。

滑走路に進入。

《Garuda team,you are cleared for take off》

離陸開始。

なんか普通はTacネームとかは使わないらしいんだけど俺とウィルマの名前を言うと長いからVFA-21がgaruda teamということになった。というかした。

今日は満月なのでウィルマもついてきた。

「ウィルマ、夜間戦闘は平気なのか?」

「まぁなんとか。昔ね、人手が足りなくてやったことあるんだけど満月の時でも、全然平気だった。」

「わかった。でも油断するなよ。」

情報だと小型2機らしい。巣が破壊された今大型はおろか、中型すら来なくなった。来ても小型機数機だ。

だが、腐ってもネウロイ。詳しくはわからないがしばらくは訓練を終えたばかりのウィッチが迎撃に当たるらしい。

ちなみに今回は扶桑刀も持ってきている。一度は実戦で試してみたい。

「ウィルマ、右下だ。engage」

低空を飛ぶ2機を確認。レーザーを回避してほぼ急降下爆撃みたいに接近。抜刀、魔力を手から送ると青く光りだした。まるでライ○セーバーだ。

コアの位置を確認。

もう一度攻撃を回避して両手で構えて

「フン!!」

コアごとぶった切った。

そのまま通過して後ろで爆発を確認。

刀をしまう。

「また、つまらぬものを斬ってしまった…」

「いや、そもそもその刀実戦で使ったの初めてでしょ。」

ウィルマさん、突っ込みありがとう。

(゜o゜)\(-_-)

ウィルマも一撃で落としたらしい。

「ウィルマもさすがだな。」

「貴女の相棒だもの。これくらいしなきゃね。」

さて、これで帰るのも面白くない。

せっかく、寝ようとしたところを起きて出撃したんだ。

ん!いいこと思い付いた。

「ウィルマ、ちょっとこっち来て。」

「何?」

「ちょっと後ろ向いて。」

「?」

そして、たまたまズボンに入っていた布でウィルマに目隠しを付ける。

「え、ちょっと、リョウ!?」

ウィルマの腰に腕を回して抱き抱えて

「それじゃ行こうか。合図をするまで目隠しはずしちゃダメだよ。」

「教えてよ!何するの?」

「それはお楽しみに。

コントロール、敵は倒した。ちょっと散歩に行ってくる。」

『了解。楽しんで。』

既に管制官も俺たちの関係を知っているらしく、夜と言うことで特別に許可してくれた。ありがとう。

それでもぶつぶつ言うウィルマの小言を適当に受け流しメイブの出力を最大にする。

向かうは俺は見慣れたところでもウィルマは絶対に見たことがない場所。

 

 

15分後。

抱えているせいか少し時間がかかったがまぁいいか。

「ウィルマ、外していいよ。」

「リョウが外してよ。」

「無理、手が塞がってるから。」

「はぁ、わかった。」

ウィルマが目隠しを外した瞬間、ウィルマの体が一瞬ビクッとなった。無理もない。俺も初めて見たときは感動したもんな。

 

 

 

「…………………凄い。」

「ようこそ、宇宙と地球の狭間へ。」

高度22000m、この時代の技術では絶対に来れない空間。

高度が高いため地球が丸いことがよくわかる。

「あの光ってるのは全部町の灯り。」

「たくさん光ってるね。それに………星もよく見える!」

この高さになると、雲も小さく見えるほどだ。回りには何もない。いるのは俺とウィルマだけ。

「あっちに光ってるのわかる?あれが次の勤務地。」

「ほんの小さな灯りだけど、みえる。そっか、あんなところにも人が住んでいるんだね。」

「さすがに、暗くてネウロイの巣は見えないね。」

「え、明るいときは見えるの?」

「もちろん。注意深く見ないとわからないけどね。」

「いいな、今度は明るいときに連れてきてね?」

「いいよ、けど502じゃ無理っぽいな。」

「じゃあ次の出撃で。」

「本当はないのが一番だけどな。」

それっきり静かになる、聞こえるのはメイブのジェットエンジン音だけだ。

「ねぇ。」

「?」

「ワイト島解散の日に言っていたこと。真剣に考えてね。」

「結婚のことか?」

「うん、なんだったら明日にでも両親に紹介してもいいよ?」

「それは覚悟が決まってない。」

「私じゃだめ?」

振り向いて聞いてくる。

「まさか、そんなことはない。ただ……」

「ただ?」

「ウィルマの両親が納得するような戦果をあげてからにしたい。」

「そんなこと?」

「そうだ。仮にも俺は男のウィッチだ。得体の知れないものに娘をくれはしないだろう。なら一発で納得してくれるような物を示す。」

「そっか。まぁ考えてくれてるなら私はいいよ。嬉しい。」

体ごとこっちを向いた。

「なら、誓って?」

「ここで?」

「むしろ、ここ以上にロマンチックな場所なんてないと思うよ?」

「そうだな。

結婚しよう、ウィルマ。時期はわからないけど、それまで俺は死なないしウィルマを死なせない。何があっても守り抜く。」

「ありがと、リョウ。私もあなたを守るよ。」

そして、キスした。

 

「はぁ、なんかこんな凄い場所でこんなこと言われたら一生の思い出になるなー。」

「なら、それが絶対に忘れないようにする?」

「え、何するの?」

「こうする。」

俺はメイブのエンジンをアイドル状態にして、手を放した。

「え!ちょっと!」

必然的に2人とも自由落下を始める。

「どう!こんなの?」

「馬鹿!何するの!」

「これなら一生忘れない!」

「確かに忘れないけど、怖い!」

魔法を使ってるので息もできるし、問題ないのだがウィッチというのは無重力に慣れてないのかもな。

「楽しくないの!?」

「こんな体験したことないからわからない!」

 

高度が15000くらいになったところで

「こう、体を大の字にして!減速しよう!」

「こう!?」

「OK!そのまま!」

さらに降下、高度10000

「ウィルマ!エンジン始動!」

「わかった!」

こんな高さで始動するか不安だったが何とか動いてくれたらしい。こちらも始動。

もう一度ウィルマを抱えて降下速度をさらに減速。

そして高度3000。

無事いつもの高さにいつもの速度で戻ってきた。

「ご感想は?」

「もう、滅茶苦茶でわからない、けど。」

「けど?」

「一生忘れない。」

「ならよかった。」

こうして基地に戻る。

「またしよっか。」

「もうやだ。」

えー?楽しいのに、スカイダイビング。

 

次の日

ジャックに予備のユニットの事を話したらTSQの拠点がある別の基地に連れてかれた。ウィルマも一緒だ。

話し合った結果候補に上がったのは

・スピリットファイアMk,2

・ヴァンパイアF.1

となった。

まずはスピリットファイアから。

乗って離陸。

まずはじめに思ったのが、軽い。

機動性もなかなかいい。メイブより上じゃないか?

しかしいかんせん出力にかなり不満がある。

遅い。レシプロに速度を求めるのはまずいがな。

保留かな。

次はヴァンパイア

ジェットストライカーユニットということで乗ってみるとなんか魔力のわりに出力が比例してないな。いくら流してもそれに見あった出力が出ない感じ。

それに、機動性も悪い。

第1世代ジェット戦闘機だから仕方ないか。

 

結局選んだのはスピリットファイアだった。

予備とはいえ、毎日出撃するような事態になればメイブが持たん。

同じジェットストライカーユニットよりは機動性を重視した。

ウィルマは同じユニットに乗るということで喜んでた。一緒に飛んでるときも尻尾が動いてたから間違いない。

このユニットは今日そのまま502に送るらしい。そうしないと着任に間に合わない。

とりあえずジャックにはウィルマとのことも話しておいた。

聞くとジャックとウィルマの母親であるミニービショップとは知り合いらしい。

俺らには秘密にしておいたらしい。

だから、紹介も簡単に出来るが、その心がけはいいと思うということでその日まで待ってこれるとのこと。

あと、端末も返してもらった。

「かなり、便利だったんだがな。」

「暫く会えないんだ。それに俺だって使いたい。」

「なら、仕方ないな。」

端末はきれいな状態で無事俺の手元にかえってきた。

 

そして数日後。

「それじゃあなジャック。空軍とロンドンは任せたぞ。」

「あぁ、任せろ。」

502に行く日になった。武器と荷物を背負って502まで直行する。現状それが一番時間がかからない。

「ビショップ軍曹も元気で。リョウを頼んだぞ。」

「もちろんです。」

「よし、VFA-21に通達。本日より同航空隊は502JFW所属とする。以降は現地の指揮官の指示に従え。それと、生きて帰ってこい。これは命令だ。」

「行ってくる。」

「行ってきます。」

「じゃあな。」

離陸して進路を東にとり、速度をあげる。

海岸線がどんどん離れていき、こうしてブリタニアを離れる。

初めての出国だな。

しばらくは海上だが途中元501の2人と合流して502に向かうことになっている。

飛行開始から1時間。

レーダーに反応

IFFは、こいつらか。

ジャックは会えばわかると教えてくれなかったからな。

20分後、合流。

「俺達はブリタニア空軍所属、特殊戦術飛行隊、第2飛行中隊、第21飛行小隊所属のフレデリック・T・バーフォード大尉と、ウィルマ・ビショップ軍曹だ。よろしくな。」

「私はスオムス空軍、飛行第24戦隊第3中隊。エイラ・イルマタル・ユーティライネン少尉だ。よろしくナ。」

「お久しぶりです。オラーシャ帝国陸軍586戦闘機連隊。サーニャ・V・リトビャク中尉です。」

「まさか、お前さんと一緒になるとは。今度は同じ部隊だ。よろしく頼む。」

「はい、では行きましょうか。」

しかし、そう簡単にはいかない。

「サーニャ、ちょっと聞きたいんだがその大尉とは、どういう関係ナンダ?」

はっ?

「えっとね、エイラ。ダウディング大将とミーナ中佐が秘密に連絡を取っていたのは知ってるでしょ?」

「ウン」

「それを仲介してたのが私とバーフォード大尉。大尉が大将から書類をもらって夜間哨戒のときに渡してもらって私がミーナ中佐に渡してたの。」

1分くらい考えてサーニャにいくつか聞き始めた。

「…つまり、夜に会って話していたト?」

「うん。」

「私には秘密で密会してたノカ?」

「ごめんね、エイラ。絶対言うなって命令だったから。」

「私ともしてないような事を空でしてたト?」

「うん?」

「サーニャと大尉であんなことやこんなことをしていたト?」

「まって、エイラ。」

しかしエイラはもう止まらない。

なんか知らんが怒ってる。

(#`皿´)

感じだ。

すかさずウィルマにジェスチャーを交えてアイコンタクト。

(ウィルマ、手を貸してくれ!)

(リョウが蒔いた種でしょ?)

う、確かに命令だったがそうだ。

(ウィルマを連れていかなかったのは悪かった。けどあの時は呼ぶわけにはいかなかったんだよ。)

(そうだとしてもねー。)

ニヤニヤしてる。あ、こいつ今の状況楽しんでるな。

(貸し1つね。何でも私の言うこと聞いてね。)

(言われなくても。俺はお前の騎士だ。)

(言ってくるねー。1分時間をちょうだい。)

(任せた。こんなところで死にたくない。)

そういってウィルマはサーニャに小声で話しかける。

エイラは

「ユルサナイ、サーニャニチカヅクヤカラハユルサナイ」

なんて言って銃を構えやがった。

しかも初弾装填してる!

こっちも扶桑刀を構えて魔力を送る。

刀が青く光る。

一触即発の状態だが、ウィルマがこっちを向いてbってしてきた。

間に合ったか。

「エイラ。」

「サーニャ、私ハ、今トテモ忙シイ、邪魔ハシナ………」

そして、サーニャは胸の前で祈るように手を組んで首を右に15°ほど傾けて

 

 

 

 

「私のために争わないで。お願い。」

 

 

 

 

 

…………こいつ、何行ってんの?そんなことで

「サ、サーニャが、そういうんだったら、わ、ワカッタ。ごめんな、サーニャ!」

えーーーー、マジかよ。

エイラは銃を下げてサーニャに近づいていった。

俺はなんか拍子抜けして刀をしまった。

「何とか収まったね。」

「まぁな。てか、これからが不安だ。」

「あはは。」

ウィルマも苦笑いだ。

「さて、502に向かおう。時間も食っちまったしな。」

期待と不安がいい具合に混ざりあった不思議な感情が俺を支配していた。

 




次回辺りから長期連載休止になります。
詳しくは明日のあとがきを読んでね。
読んでくれてた人はありがとう!
暫くお待ちください。
けど、絶対用事が終わったら続き書きます。
5ヶ月くらいかな。

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