今回はことり回です。
二年生組の中だと、なんだかんだで一番ストーリーの展開はあるかな~と考えています。
前書きが長くなるのもあれなので、今回はこれで。あとは、後書きに書いていこうと思います。
今回出てくる服ですが、「スクフェス 画像」で検索し、SR(3月編)のことりを発見しました。(ちなみに私はスクフェスはやってません)
拙い文章ではあると思いますが、温かい目で見てください。
朝 ―08:30―
出社すると、俺の嫌いなちびデブの上司が俺に飛びついてきた。
「はあ!?」
「よくやった!よくやったぞ!」
気持ち悪い!離れろって!…と言いたいが、仮にも上司なわけだから、そんな言葉を使うわけにはいかない。言葉を飲み込み、作り笑顔で質問を投げかける。
「…えっと、なにがあったんですか?俺は今日でクビなんじゃ…」
いつのなら、「ふんっ…自分で考えろ」と、嫌味っぽく言うのだが、今日は違った。
「そんなことを言うんじゃない!やれば出来るじゃないか!」
「え…!?」
昨日までの上司とは人格が変わったみたいな掌返しに、動揺を隠すことができない。
「いいから!今すぐ応接間に行きなさい!」
「え…?あ…はい」
気持ち悪いくらいテンションの上司が離れることができ、ようやくストレスから解放された。指示された通りに応接間につながる廊下を歩いていると、いつも短いと思っていた距離が、凄く長く感じた。
なにが…“やれば出来る“だよ。俺は今日…クビになるはずなのに……まさか、まさかな
昨日の南 ことりさんが契約をしてくれた…ということなら、この状況も納得はいく。だけど、それはありえない。昨日俺は彼女に向かって…
考え事をしているうちに、応接間のドアの前についてしまった。
まあ…どうにでもなれ
ドアをノックし、「失礼します」と言って応接間に入る。
ん…?あれって…
そこには紺色のYシャツの上に白色のスーツ、ブラウン色の瞳と、透き通ったベージュ色の髪とワンドアップの髪型…
「あんた…どうして!?」
応接間のソファーに座っているのは…「南 ことり」だった。
「おはようございます。また、会いましたね♪」
彼女は部屋に入った俺に気付くと、無垢な少女のように、優しく微笑んだ。
あれ…昨日は怒ってたんじゃ…??
彼女は荷物をまとめてソファーから立ち上がり、俺の前で止まった。
「それじゃあ行きましょう」
というと、彼女は応接間の扉を開け、廊下に出て歩き始めた。
「え?ちょ…!」
「ほら、早く早く♪」
なんの陰りもない笑顔で俺の方を向き、こっちにおいでと言わんばかりに手を招いていた。
状況は読めないが、とにかく話を聞くしかない。そう考えた俺は、彼女の後ろに付いていった。
「あの…どこへ…」
彼女はお構いなしに歩き進めながら、俺の質問をスルーし、質問を質問で返してきた。
「荷物はもってますか?」
「…はい、今持ってるのが全部です」
「わかりました」
そして俺がさっきいたフロアに入って到着し、彼女は扉を開けて中に入った。
「それじゃあ、約束通りに彼をお借りしますね♪」
「!?」
そう言い放った彼女は扉を閉め、さっさと出口に向かって歩き始めた。
一体…なにがどうなってるんだか…
会社の入り口の自動ドアを抜けると、彼女はようやく足を止めてくれた。
「あの…訳がわからないんですが…借りるって一体?」
「う~ん…それじゃあ、今日は少し案内してもらってもいいかな?♪」
聞いているのか、聞いていないのかわからないが、彼女は軽やかに俺の質問をスルーした。
「あの…まあいいや。どこを案内すればいいんですか?」
「う~ん…」
今どこにいくかを考えているのか、彼女は少し考える素振りを見せた。
案外無計画なのか…?
「あの…」
思いついたのか、何故か彼女は俺の右手を両手で握った。
「あなたにお任せします♪」
「は!?」
彼女は思いついたわけではない、全部俺に投げてきたのだ。しかも…俺と彼女の身長を比べると、彼女のほうが一回りくらい小さい。この体勢だと…俺は必然的に上目遣いで見つめられることになる。
「…!?」
「駄目…ですか?」
ブラウン色の瞳を輝かせ、少し艶めかしい声色で訴えてくる。…わざとやっているのか、はたまた天然なのかわからないが、あざとい。
「っ…!?」
出会ったばかりだし、彼女を特別に意識しているわけではないが、こんなことをされて断ることなんてできない。
「…わかりました」
「よくできました♪」
そういうと、彼女はようやく離れてくれた。
案内か…いったいどこへ…
今まで行ったところを思い出し、考えてみたが…思い当るところがなかった。それに何をしていいかもわからない。
「洋服とかのお店を回ってくれると嬉しいな~♪」
彼女は俺から視線を逸らし、独り言のように呟いた。
あぁ…なるほど
「わかりました」
まあ…途中でわざとはぐれて…いや、彼女を一人にするのは危険か
「それじゃあ、お願いしま~す♪」
そういうと、彼女はおもむろに自分の手と俺の手を重ねてきた。
「ちょ!?」
「?」
手を繋ぐのがさも当たり前のように。彼女は首を傾げて「?」不思議そうな表情をした。
「いや…なんで手を繋いでるんですか?」
「だって、さっき逃げようとか考えたよね?」
「!?」
なんでわかった…!?
「やっぱり…だから逃がしません♪」
彼女の柔らかい手の力が少し強くなり、しっかりと掴まれてしまった。俺は彼女から逃げられないことを悟った。
「逃げませんよ…ちょっと考えただけです」
「よろしい♪」
そういうと、彼女はとびきりの笑顔を向けてくれた。少し気恥ずかしいけど…逃げられそうもない。
「…いきますよ、南さん」
「ことりです」
「?」
「次、名前を呼ぶ時は、ことりって読んでくださいね♪」
さっきと変わらない笑顔を向け、遠回しに俺に拒否権はないことを伝えてきた。
「…わかりました。ことり……さん」
「よろしい♪」
仕事であることを忘れ、俺は彼女にあった服を売っている店を案内した。
夜 ―17:35―
俺は付いてきたことを物凄く後悔しながら、中型の紙袋を6つ、両手で持っていた。断じて俺の服ではない。これは彼女の…ことりさんの服だ。回ったお店は18件。彼女は俺が選んだ服のほとんどを購入していた。その荷物持ちは…当然俺になる。
他の店舗と同じように、店内に入り、店頭に置かれている全ての洋服を見ていく。時間はかかるが…何故か手を抜く気にはなれなかった。
~20分後~
「いいのはあった?」
「はい」
手にしたのは、上は肩などにピンク色のラインが入っている紺色のジャケットと無地のシャツ。下は花柄で、薄ピンク色のロングスカートだった
「どうですか?」
取ってきた服を少し眺めた後、彼女は笑顔で
「ありがとう♪」
と言った。どうやら気に入ってくれたらしい。
彼女は機嫌がよさそうに歩き、会計をしてお店を出た。…ようやく俺は、彼女との仕事(?)を終えた。
屋上に上り、疲れ切った足を休める為に備え付けのベンチに座る。一息つき、オレンジ色に輝いている夕日を忌々しげに睨み付けた。
まったく…なにしてるんだか…
「…つかれた~…」
「はい、これ。今日はありがとう♪」
心からの悲鳴が知らず知らずのうちに出ていたらしく、ことりさんにも聞こえていた。彼女は空いている俺の隣に座り、午後の紅茶のミルクティーを飲んでいた。
俺は彼女が買ってきてくれた缶コーヒーを受け取り、蓋をあけて一口飲む。なんとなくだが、このコーヒーは身体中に染みわたっていくように感じた。
「ふぅ…」
「朝の質問の答え、聞きたい?」
「え…?」
隣を見ると、今までにないほど真剣な眼差しで、彼女がこっちを見ていた。
朝の事…そうか
「はい。教えてください」
「昨日、“あなたは夢を掴めない人もいる”と言った。でも…あなたはまだ諦めきれていない。ちがうかな?」
そうだ。俺はまだ諦めきれてなんかいない…なりたくてもなれなかったから、仕方なくデザイナーを支える仕事に就いた。それでも…どうしても諦めきれない夢だった。
「…はい。子どもの頃から手先が器用で、家庭科が得意でした。そして高校生の時、ステージで輝く人たちを見て…凄い憧れたんです。でも、俺は彼女達みたいに輝くことは出来ない。だから、彼女達を思いっきり輝かせるための衣装を作ろうって思って…頑張ってた時期もありました」
自分語り なのかもしれない。でも、彼女の前で嘘をつくことは出来なかった。
「…うん」
「でも…駄目だったんです。何度も何度も考えて、やり直して、徹夜して。やっと出来上がったデザインも…結局は駄目でした。諦めきれないまま、惰性で今の会社に入って、言われたことだけこなして…そこでも駄目で、もう次の就職先を考えてるところだったんです」
―君は…平凡だ―
審査員に言われた、あの時の言葉。あの言葉は、完全に俺の心を折ってしまった。
「結局俺は…“夢”を叶えるなんて出来ないんです。……すいません、語っちゃって。今日の夜には、上司に辞表を提出しようと思います」
荷物を掴んでベンチから立ち上がり、少し前に進んで、彼女に背を向ける。
「もう…いいですか」
「駄目」
帰ろうと歩き始めた俺の足を、彼女の言葉が止めた。
「あの時のあなたの瞳は…まだ諦めていなかった。今日だってそう、あなたは私の服を選んでいるとき、真剣だった」
「…それが…なんだっていうんです。所詮、俺はその程度だって…」
彼女は再び俺の言葉を遮り、話に割り込んできた。
「私も…夢を諦めたことがある。高校二年生の時、私は先生の招待を断って…スクールアイドルの大切な友達の所に行った。でも、三年になってスクールアイドルが解散した後…そのしわ寄せが来た」
「断ったって…」
「一度申し出を断った以上。相応の実力がない限り、先生は認めてくれなかった。だからもう一度弟子入りするために、何度も何度も、数え切れないくらい衣装デザインを送っては断られて…諦めそうになったことがあるの」
「え…?」
今の話を聞くまでは、天才だと思っていた。圧倒的な才能があり…努力なんてしていないように思っていた。だけど…実際は違った。
ただの企業と、有名なデザイナーに弟子入りするのとでは訳が違う。しかも…実力で認められなくてはならないのだとしたら、途方もない努力をしたはずだ。
「でも、穂乃果ちゃん…大切な友達がね、何度も支えてくれたの。夢を諦めちゃ駄目だよ…って。だから、あなたにも諦めないでほしい、もし…本当に駄目だって思うんだったら、ことりがあなたを引っ張るから!」
彼女の言葉は胸に刺さり、少しずつ、心の中にあった黒い靄が消していった。
「俺は…」
もう一度…もう一度だけ、あの時のように頑張れるなら…!
「もう一度、お願いします!」
そして…もう一度だけ頑張ろうと、決意を固めた。
最後まで読んでくれてありがとうございます!
ということで、ことり回でした~。
文章化しようとすると…やっぱりことりって難しいですね。
私の中の勝手なイメージですが、ことりって頭の良い方だと思うんです。突っ走る穂乃果と、それを危険だから止める海未、そして衝突しそうになった二人を止めることり。
このことを考えると、人の心の変化とか、そういうのを読み取るのが上手なんじゃないかと考えてました。
今回もですが。なんというか…ことりちゃんの可愛さを表現出来ているのかの自信がないです。なので
違うな~
って思ったら、指摘してくれると助かります。
今回の話ですが、アニメ一期の留学騒動と、解散後の一年間について触れました。
ここの部分は、少しだけオリジナルの設定を加えました。
初めて一期を見た時
ん?
ってなって、二期でも留学騒動についてはあんまり触れていなかった気がします。
そこで、ことりが将来就職するとしたら
音ノ木坂学院理事長コース、デザイナーコース、まったく関係ないところに就職するコース。
など…いろいろなパターンを考えてました。
決め手になったというか…やりたかっただけですが
本文の最後の方、ことりが主人公を説得するシーンです。
あれは、μ'sの時は穂乃果がみんなを引っ張っていました。時間が経って、今度は立ち止まっている主人公を、ことりが引っ張ってあげるのもありかと思ったんです。
そうすると、デザイナーになるにあたっていろいろ問題が発生するのではないかな~と考えました。
これ以上長くなるのもあれなので、今回はここまでにします。
後書きながくてすいません!
ご意見(ご指摘)・ご感想、心よりお待ちしております。
わざわざ最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
それではノシ