絵里編はこれでいったん停止になります。
今回は主人公の掘り下げ&有紗の過去&絵里の話で、長くなりました。
結構詰め込んだので…今回は結構文量があると思います。
急ぎ投稿故、あとで修正するかもです
斉藤 有紗
「ありがとうございました~」
「ハーゲンダッツです!」
「あれ?許さないんじゃなかったっけ?」
「許さないけど、ハーゲンダッツは食べるんです♪」
「…まったく」
「えへへ~♪」
お兄さんといると、自然と笑みがこぼれてしまう。楽しくて楽しくてしかたない。でも、昨日の夜から様子がおかしい。やけに攻撃的というか…意地悪だ。家の前につくと、見たことのある女性がいた。
「ここに居たんですね、連絡がないので心配したんですよ?」
「誰ですか…?」
「…えせ関西弁のあんたか。悪いな、携帯見てなかった」
お兄さんの雰囲気が変わり、口調が鋭くなった。
「えりちとは結局どうなったん?」
「どうもこうも、二度目無いって盛大に振られた」
「…そっか」
えりちって…絵里さんのこと?でもどうしてお兄さんが…それに振られるって…
「これでもういいだろ、二度目はないんだ。それもこれもあんたが押し付けてきたのが…」
口調に熱がこもって来たところで、お兄さんは私に気付き、大きなため息を吐いた。
「…この話は別のところでしよう」
私が迂闊に口を挟むことができないような険悪な雰囲気。それでも、私はお兄さんに話しかける。
「絢瀬先生と何かあったんですか?」
「…いや、何もないよ」
「嘘です」
「…」
「お兄さんは嘘をついているように見えます。もし…もし絵里さんに関係あるんだとしたら、今日の先生は笑っていなかったことに関係していますか?…絵里さんはいっつも楽しそうに踊るはずなのに…今日はずっと悲しそうでした」
だって、そんなに苦しそうなお兄さんは、いままで見たことがないんだから
「…何もなかったわけじゃない。ただもうどうしようもない事だから、あとは時間が解決してくれるはずだ」
私の胸まで締め付けてくるような、無理やり取り繕った笑顔。
「そんなの…お兄さんらしくないです」
「…いや、これが俺なんだよ、有紗はまだ知らなかっただけだ」
「違います!二年間…初めて会った時から、ずっと見てたんですから!私が…私が初めてこの家に来て、学校とか…友達とかで悩んでいた時だって、お兄さんは遠くからでも気にかけてくれてました。覚えていますか?あの日のこと…」
「あの日…?」
「お兄さんは忘れてるかもしれないけど…私が中学一年の時、友達もできなくて、馴染むのに精一杯だった時…言ってくれたじゃないですか、後悔ばっかりの人生はしないほうがいいって!」
きっと…お兄さんは覚えていないだろう。私が今…こうして笑ってられるのは、あの日があるからなんだから
~回想~
学校に入学して、ついに4ヶ月が経った。私は中学一年になったばかりだったけど…私は未だに学校に馴染めず、ついには通うこと自体が嫌になり始めていた。
弘樹さんのお兄さん、つまり私にとってのお父さんの養子になった私は、日本で生きていくための教育を受けた。最初は意味が分からなかったが、日本に来て意味があったのだと実感した。
でも、ロシアの出身である私は、彼女たちからしてみれば「外国人」なのに、私は母国語を話すことも、書くこともできない。この腰まで伸びているこの長い黒髪も、外国人らしさを感じさせない要因の一つなのかもしれない。
最初の一ヶ月。私に話しかけてくるクラスメイトもいたけど、そこには温度差があった。
今思えば、壁を作って当たり障りのない返ししかしない私に、彼女たちは話しかけにくいと思っていたんだと、勝手に思っていた。
そんな毎日を繰り返し、次第に学校を休み始めていた。
積み重なった息苦しさが爆発し、一週間の中で、私は学校で過ごす時間より部屋にいる時間の方が多くなっていた。
いつも通り、お母さんもいなくて、家には誰もいなかった。
「落ち着く……」
自分の部屋のベッドに転がり、物音一つしない静かな部屋で目を閉じる。落ち着きのない学校とは正反対の空間が、心を満たしていくように感じた。
「この時間が…ずっと続けばいいのに」
そう願って、私は眠りについた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
コン コンッ
「起きてるか?」
目が覚めたのは、誰かの声と、ドアをノックする音。身体をベットから身体を起こし、答える。
「はい、起きてます。えっと…」
この人…たしか一緒に住んでいる、お父さんの弟だったっけ
「母さんから連絡があった。ここ最近、学校休んでるんだって」
「部屋には入らないでくださいね」
「わかってる、俺だってそんなことをする気はない」
「…じゃあ、どうして来たんですか?」
「別に、ただどうしてかな~って思っただけだよ」
彼がドアの前に座るような音が聞こえた。
「学校なんて、行く意味が分かりません。あんなところ…息苦しいだけです」
「俺もよく思ってたよ。君…じゃないな、有紗と同じ中学の1年の時だ」
「…何の話ですか?」
「おっさんの独り言だよ、そのまま聞き流してくれていい。」
「…」
「毎朝一緒に通っていた幼馴染がいてな、家が近い事もあってか、俺とその子は中学も、高校も一緒の学校に通ってた。中学校を卒業するまでは朝一緒に登校して、部活に入ってないから一緒に帰っていたと思う。いつだったっけな~…そうだ、さっきも言ったけど、俺とその子は同じ高校に入って、同じクラスになった。ただ、彼女は部活に入って成果を上げて、俺は友達とふざけながら帰路についていたこと。そのころには一緒に帰らなくなった」
「…話が読めません」
「独り言だからな、長いもんだよ」
なんなんだろうこの人…いいや、聞き流して、もう一度早く寝よう。
「学生の頃ってな、周りが見えているようで、案外ぜんぜん見えてないんだよ」
「…」
目を瞑り、寝ようとした瞬間、彼の言葉が心の中に刺さってきたような気がした。そして彼はドア越しに、語り掛けるように言葉を続ける。
「うちの高校って強豪校でな。特に彼女が所属してた弓道部は全国行くくらい凄いところだったんだ。そんな彼女を見て…練習についていくのが必死だったって勝手に思いこんで、友達と帰って距離を置くようにしたんだ。正直寂しいな~って思ったし、こっちから一緒に帰ろうって言おうとも考えたこともあった」
(一緒に帰ろう?)
そういって言ってくれたクラスメイトの女の子達…名前も憶えていないけれど、私はその子たちのことを思い出した。あの時はきっと…仲良くようと思ってくれていたはずなのに。
「友達といる以外の時間は勉強に打ち込んで、寂しさを埋める努力をした。そんで高校の卒業式の時、俺は彼女に告白した」
「…どうなったんですか?」
「振られたよ。言うのが遅かったって」
彼は“ひとりごと”を、淡々と話し続ける。
「そのあと、俺と彼女は別々の大学へと通って、それ以降は連絡を取ってない。以上、おっさんの甘酸っぱい青春物語だ」
「…何が言いたいのか、ぜんぜんわかんないです」
「そうか。でもこんな後悔ばっかりの青春を送りたくないなら、もうちょっと落ち着いて周りを見てみるといい」
(一緒に帰ろう?)
そういっていた女の子の手を…私は断った。ただ一言だけ「ごめんなさい」と言って。
「…ごめんなさい」
「…どうした?」
「独り言です。勝手に…聞かないでくださいっ…!」
気が付くと、声が上擦り、目頭が熱くなった。
「そっか、それじゃあ何も聞こえない」
時間は覚えていないけれど、あの日、私は日が暮れるまで泣き続けた。
~回想終わり~
「そっか、有紗には話しちゃったんだっけ…でもな、あれは作り話なんだ。お前を不登校にしないように…」
目を逸らして、相手を見ないようにする。こういうときのお兄さんは、十中八九嘘を付いている。
「それも嘘です。お兄さんは気付いてないかもしれませんけど、嘘をついているときはちょっとした癖があるんですよ?」
「…まじか、そんな癖があるのか」
「当たり前です。あの日からずっと…私はあなたを見てたんです」
「…」
「お兄さんは、解決してるんじゃなくて、見ない様にして、忘れているようにしているだけです」
気が付いたときには、私は自分の思いを口走っていた。
「そんなの駄目です、忘れちゃ駄目なんです。今伝えなきゃ…届かない想いってあると思うんです!」
「…ほな、うちは行くで。えりちも待っとる」
希さんが歩き始めても、お兄さんの足は止まったままだ。
「行ってください。お兄さん」
手に持っているビニール袋を奪い、少し意地悪な笑顔を兄に向ける。
「…行ってくる、そうだ。振られてくるかもしれないから、ハーゲンダッツは待っていてくれ」
「ハーゲンダッツ、帰ってくるまで待ってます♪」
そういうと、お兄さんは走って希さんを追いかけた。
東條 希
有紗ちゃんをまっすぐな表情を見て、懐かしいあの時間を思い出した。
あの時の…えりちもそうやったけ、あんな真っ直ぐな子が…今もおるんやね。
「薄ら笑いはやめといた方がいいですよ、魔女っぽいです」
少し昔の思い出に浸っていると、いつの間にか彼が隣にいた。
「いや…あんな子がおるなんて…正直驚いたわ」
「まさか姪っ子に説教されるとは思ってませんでした」
彼とあってすぐ近くの場所に、タクシーを待たせておいた。自分の力でここまで連れてこようと考えていたけど…これはあの子のおかげだ。
「神田明神まで」
行先を告げ、後部座席に乗り込む。彼が乗り込むと、車が走り始めた。
「先に聞いておきたいんやけど、どうして追いかけてきたん?行っておくけど、簡単にうちはえりちを預ける気はないで」
「…あんためんどくさい性格してるな」
「答えは?」
「…まだ一回しか会ってないし、正直よくわかんない。だけど、振られるにしても理由もわからないまま「ごめんなさい」で終わりたくないってだけだ。それに有紗の先生なんだから、俺のことなんか忘れてしっかりしてもらわないと困る。なあなあで終わって…苦しい思いをしてなんて終わり方は嫌だ」
(弘樹は面倒くさくて、その癖に頑固。きっと一筋縄じゃいかないくらい、めんどくさい性格なんだ)
そう浜辺で語る彼女の顔は、どこか寂しそうにだったのを覚えている。
「…うちもそうやけど、斉藤さんも十分面倒くさい性格やわ」
考えすぎかもしれないけど…きっとそれは建前。本音はきっと…えりちに重荷を背負わせないためにはっきりとしておきたい…ってことなんやろうね。
「今度はこっちの質問。急遽変更してまで、なんで絵里さんを紹介したんだ?絵里さんは本当なら別の人と会うみたいだったし」
「詳しいとは言えんけど、ある人から頼まれたんよ。あなたを助けてあげてほしいって」
「俺が助けを求めてるみたいな言い方なんだけど?」
「きっとその人には…あなたが苦しんでる風に思えたんちゃう?」
「…そんなことない。誰だ?そんな適当を抜かした奴は…」
視線を逸らし、困ったように頭をかく。
「さみしがり屋のくせに意地っ張り、相手のことを気にして、自分に素直になないまま過去を引きずって、自分を抑圧してしまう不器用なところとかもそっくりや」
こういうと、えりちはいつもこう返してくる。
「…そんなわけないだろ」(…そんなことないわ)
なんていいながら、また視線を逸らして、この話から逃げようとする。
「そういう所で嘘を付くのも…本当に似とるね」
「…だから違うって」(だからそんなことない!希のバカ!)
逃げきれないとわかると、怒ったような声で返してくる。怒ってはいるけど、決して相手を傷つけるようなことはしてこない。
あぁ、やっぱりこの人は親友(えりち)と一緒なんだと、私は思った。だからこそ、きっと彼女は私に頼んできた。
(弘樹はきっと引きずってるだろうから、助けてあげてほしい
「私の大切な友人の話、聞いてくれる?」
「……わかったよ」
「その友人と私はね高校からの友達だった。彼女は生徒会長になって、スクールアイドルをやって、今でもあの時が一番充実した毎日だったと思ってる。高校を卒業して、同じ大学に入学した。その友人は社交的で明るくて、次第に友達も増えていった。事件が起きたのは…3年生の頃だったと思う。うちがこのことを知ったのは…もうすでに事件が起きた時だった。ことの発端は…同じ学部の、とある男子学生が彼女に告白した時かららしい」
「らしい?」
「どうしてそうなったのかは…うちにも話して貰えなかった。昔からそういう頑固なところはあったけど…今回はうちにも話してくれん」
「だから大学の時に言葉に詰まってたのか。言い方は少しあれになるけど…彼女ほどの容姿の持ち主なら男には困らないだろうし、告白されたときの対処方法だってもうわかってるんじゃ…」
「…もし、知らない女の人が「好きです、大好きです!」…ってすごく強く言い寄られたら、斉藤さんはどう答える?」
「…赤の他人だったら、断ると思いますよ」
「じゃあ…断っても泣きついてきたり、いい寄って来たのだとしたら、どう応える?」
「……つまり、絵里さんは断りきれなかったってことですか?」
「そういうこと。いろいろな人から話を聞いた限りだと、その人がすごく言い寄ったらしい。何ヶ月かそういう関係が続いていたって」
「…自分勝手な人ですね。何ヶ月かってことは…つまり別れたんですね」
「察しがよくて助かります。私も…このことはあまり話したくないんです。えりちのことだから、きっと言い出せなかったんだと思う。でもその優しさが、きっとお互いの傷を深くした。私はその時大学の講義の関係で忙しくて、えりちの異変にも気が付いてやれなかった…ほんと、親友として、友達として、情けない…!」
自分を責める言葉なんて、意味がないのもわかっている。傷を受けたのは私じゃない、絵里なんだから。
「それでもうちは……私だけは気付いてあげるべきだった…!」
これは本音だ。隠しようもない、自分の本心。あの時から…私は何も…!
「…俺には何にも言えないけど、絵里さんは希さんを嫌ってはいないです」
「適当なこと言うと…怒るよ?」
「おあいこじゃないですか?初対面に近い人といきなりデートさせて、希さんの方がよっぽど酷いです。しかも振られるってわかってたとか…悪質すぎて俺が怒ってもいいくらいですよ?」
根に持っていたことに少し驚いたが、当然のことだ。彼の言っていることは正しい。
「…本当にそうだね、その通り」
「でも、適当なことは言ってないつもりです。相談所話してた時も、希さんと話してた時もそう。希さんについて話すときは、絵里さんは踊ってる時よりも楽しそうに笑うんです。だから嫌ってなんかないと思います。だから笑っていてあげればいいんです……そういえば、口調、関西弁じゃなくなってますよ?」
言われて気付いたが、いつの間にか口調が戻ってしまっている。
「…うちを惚れさせるつもり?」
「残念、俺は有紗と絵里さんで頭がいっぱいです」
「シスコン?」
「断じて違う」
「ロリコン?」
「うふふ……大人の魅力、見せてあげようか?」
彼の腕をつかみ、わざと腕に胸を当ててみる。
「さっきまでいい話だったのに…いろんな意味で台無しだよ」
彼はほとほと呆れるようにため息ついた。
「お客さん、そろそろ」
運転手の人がそう呟くと、神社が見える位置まで近づいていたことに気付いた。
「案内はここまでや。えりちはきっと御社殿の前にいる」
車が停車したすぐ先には、長い階段ある。そこを昇りきってすぐの御社殿。私は話があるといってえりちをよんでおいてある。もうそろそろ着く頃合いだと思うけど…
「わかった」
彼はタクシーを降りて、神社に向かって歩き始めた。
「カードで占ってあげようか?」
一段一段、ゆっくりと上っていく彼に話しかける。
「すいません、俺占いとか信じてないんで」
「そうか、それじゃあまたいつか」
「もう二度とごめんです……そうだ、灯里(あかり)にありがとう、もう大丈夫だからって伝えておいてください。それじゃあ」
「…やっぱり、気付いてたんやね」
そういって、彼はどんどん階段を登って行った。私は彼から目線を外し、ポケットに入れてあったタロットカードを一枚引いた。
「魔術師…「物語の始まり」…か」
私のよく知る彼女は、きっと傷つけることを恐れて、彼を突き放した。そうすれば、お互いの傷も浅くて済むから。
「そっか、そうだよね。でも私は…」
きっと絵里は、今日も思いつめた顔でもしていたんだろう。相手傷つけたんじゃないかって思いながら、精一杯笑顔で取り繕って、周りに心配かけないように笑い続けて。
でもね絵里、それじゃあ絵里が幸せになれないんだよ。きっと今日のことも、この前のことも、絵里にとっては迷惑なのかもしれない。だとしても…私はあなたに幸せになってもらいたい。
「親友としてもう一度…あなたを助けてあげたい」
―それが、私の望みなんだよ、絵里-
斉藤弘樹
長い長い階段を上り終え、彼女がいるという御社殿のほうに歩いた。言いたいことは決まってる。うまくいくかはわかんない。それでも…
「どうしてここに…!?」
「絢瀬さんの親友に呼ばれたんだ。ここに来いって」
「親友」と聞いて察したのか、彼女は後ろに下がる。
「…何してるのよ希…私はそんなこと望んでなんか…!」
「望んでないのは、きっとあの人もわかってると思う」
彼女は後悔しているような、深い深いため息を吐いて…反対方向の出口に向かって歩き始める。
「さような…」
「待ってくれ!」
行こうとしている、手を掴み、その場でとどめる。
「離して!もういいの!あれで終わったんだから!きっとあのまま続いたって…傷つくだけよ…!」
静かな神社に、彼女の悲痛な叫び声が響く。
「絵里さんからしたら、俺はあんたに心の傷を与えた奴と同じに見えるかもしれない、でも、それでも俺はあのもやもやしたまま終わるのだけは嫌だ!」
「どうしてそれを…!?」
「全部…希さんから聞いた。相手のことを考えすぎて…言い出すタイミングが見つからなかったって」
絵里さんの手の力が抜け、今まで背を向けていた彼女はこっちを向いた。もう帰ろうとはしていないと思い、俺は手を離した。
「聞いたんだったら…どうしてここに来たの…?」
「正式に…お断りされに来ただけだ」
「へ…?」
「あのまま終わるのだけは嫌だった。だから今、ここで今の思いを伝えるために来た。ここで振られたからどうこうする気もないし、言い寄るつもりもない」
「どういうつもり…?」
「…この間みたいな別れ方じゃなくて、はっきりと終わらせたい。そうすれば絵里さんも、俺も、もやもやないで終わらせられると思った」
たしかに意味不明だけど、これで彼女も心に残ることなく終えられるはずだ。そしたら…俺ももう一度だけ、歩き出せるはずだから。
「…だから、俺と結婚を前提に付き合ってくれ!」
一世一代…とも言えないし、社会人みたいな華々しいプロポーズとも言えない。学生みたいな、下手な告白。しかも振られる前提の告白。
「私は…」
彼女からのこの言葉で、昔に思い出と、この騒動も終わるはずだから。
~~~~~~一週間後~~~~~~~~
(そっか…私のこと、気付いてるのか)
電話越しの相手は今回の騒動の黒幕 大園 灯里(おおその あかり)今は結婚しているため、志田(しだ) 灯里となっている。
彼女の結婚式の後、私は砂浜で、彼女に幼馴染である 斉藤弘樹の話を聞いた。一緒に通っていたこと…高校で告白されたこと。結婚式にも来てくれなかったこと。
彼のことを話す彼女は…とても悲しそうな顔をしていたと思う。
きっと…まだあの時のことを引きずってしまっているのかもしれない。そう思った彼女は、絵里と、彼を合わせることを提案してきた。
私と絵里と同じ通って大学いた彼女は、絵里の初めての友達で、あの事件のことも知っている一人だ。だからこそ、見知らぬ他人に任せるより、彼ならどうにかしてくれる。そう思ったらしい。
「うん、本人はとっくに気付いてると思うよ」
(…希、もしかして話した?)
「な~んにも話してないで」
(嘘つき~!…まあいいや。二人どうしてる?)
「ごめんごめん。今日は二人で出かけてるんやったと思うけど…」
(そう…でもよかった)
「…うん、うちもよかったって思ってる。」
あの後、彼から一回だけ彼から連絡があった。内容を簡潔に言ってしまえば、あの告白が上手くいったということらしい。
えりちを問い詰めても、答えてはくれなかった。
それでも、彼女は笑っていた。取り繕った笑顔ではなく、心の底から、楽しそうな笑顔だった。
「あの笑顔は…きっと嘘なんかじゃない。えりちはきっと…前に進めたんやと思う」
(…そっか。本当によかったね)
「…うん。本当によかった」
(これで私も…前に進めるから)
だから、私も笑っていよう。彼女は…きっと自分の意志で前に進んだんだから。
よんでくれてありがとうございます!
絵里編は「秒速5センチメートル」に影響されて書いた感じです。
なので、本編の中では一番シリアス多めだと思います。
ほかのメンバーはもうちょっとわかりやすい設定にしますね。すいませんm(__)m
ご意見、ご感想、評価など、心からお待ちしてます!
後日修正の可能性有