やはり俺の学園コメディは馬鹿すぎる。   作:Mr,嶺上開花

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一章終了記念
ちなみに二連続投稿です


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これはまだ比企谷八幡と雪ノ下雪乃に由比ヶ浜結衣が高校一年の時に行われた企画である。


閑話 お悩み相談ボックス

 

 

11月。先月よりも一段と寒くなり、それまではカーディアンで登校していた生徒もブレザーを手放せなくなっていた。因みに俺は初めからブレザー派だ、ポケットに物が入るから便利なんだよなブレザーは。外側と内側、両方にポケットが二つずつあるし、小物系は割となんでも入る。何なら文庫本だって入っちゃう、ブレザーは凄いんだぞ。

 

さらに道を歩けばマフラーをしている人も見かけ、もうそんな時期かと黄昏たりする。後は「寒いから手、繋ごっか」とか言っているカップルに砕け散れと念を込めたりもする。それで一回も別れたカップルは居ないが。むしろ俺が念を込めたおかげで長続きしているのかと思ってしまう程だ。もしそうならこれを商売にしてやってくまでである。悪徳商法とか言われるからやらないが。世間の風はいつも冷たいのである。

 

 

 

そんな秋真っ只中、俺の所属する部活である奉仕部は当然どこかレジャーに行くわけでもなく、今日も今日とて一応奉仕部の部室と言う名目上にある空き教室のイスに雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣と並んで座り続ける。本当にこの部、依頼者が来ない限りかなり暇だよな。暇つぶし用の本とか忘れた日には地獄だ地獄。寝るくらいしかやる事がなくなるからな。

 

 

 

 

 

「…そろそろかしら」

 

隣のイスに座わる雪ノ下が小説を閉じながら言う。何がだよ、お前はカップラーメンでも作ってたのか?

 

「えっ?何のこと?」

 

ほれ見ろ、その隣に座る由比ヶ浜も頭にクエッションマーク浮かべてんじゃねえか。

 

 

雪ノ下は小説に栞を挟んで閉じて、バッグの中に仕舞いこう言った。

 

「先週設置したお悩み相談ボックスのことよ。すでに一週間経過していることだし、もう回収してもいいと思うのだけれど…」

 

いつの間にそんな物が設置されたんだよ。俺の記憶にはそんな物を作った覚えも、ましてや設置した覚えも無いんだか。だが由比ヶ浜だって知らないはず……。

 

「確かに結構時間経ってるし、お便りも沢山溜まってるかもしれないしね!」

 

お前もかブルータス。

いや、忠臣とかじゃないけど。

 

……にしてもだ。

 

「そんなものあるのか?俺は知らんけど」

 

どうせあるんだろうが一応聞いておく。

嫌な思い出だったから記憶に残っていない訳でもないし、ましてやゴミ記憶として俺の脳内にインプットされた訳でもない。むしろそのような記憶の方が俺は覚えていると自信を持って言える。何だったら昨日の晩飯のメニューだって普通に言えるぞ。…外食だったからだけどな。

 

 

 

「そういや先週設置した日に貴方は居なかったわね」

 

「ヒッキー何か予定あるとか言って先帰っちゃったし」

 

 

その2人の言葉を聞いて俺は合点がいく。確かあれは先週の火曜日だったはずだ。その日はそろそろ受験とか心配した方がいいのかなーと思い、俺は少し塾の下見がてらに体験授業を受けていたはずだ。ただ授業中も周りは私語で騒がしく、教師もそれを注意しないという最低な塾だった為にもう俺が行くことはないだろうが。やはり知っている人が居ないからと言って個人塾に行ったのが間違いだったらしい。時代は巨大予備校である。

 

 

「…まあ良いわ、早く回収しましょう」

 

 

 

 

 

その雪ノ下の言葉で俺たち三人はイスから立ち動き出す。ボックスは下駄箱のエリアに置いていたようで、そのおかげで奉仕部の部室から割と近いのもあって直ぐに部室に運び終わる。

 

 

 

 

「それじゃあ早く中を開けよ!」

 

何がそんなに楽しみなのか、由比ヶ浜は楽しそうに箱のふたを開ける。相談なんてお前、そんなの理系文系体育会系に任しとけば良いだろ。この学校にいるかは知らんが。

 

 

箱の中を覗くと、多くもなく少なくもなく紙が入っていた。5通か6通と言ったところだろうか。…意外と来るもんなんだな、この部活何の功績も上げてないのに。その上普段なんか駄弁って本読んで携帯弄って紅茶啜ってまた明日の、部活と言うよりかは寧ろ友達の家で寛いでる感覚で部活動をしてるのにな。いや、友達の家とか行ったことないから分からんけど。

 

 

「じゃあまずこれから読むわ」

 

そう言って雪ノ下は一枚、適当に紙切れを箱から取る。そして雪ノ下は書かれているその文を読み上げていく。

 

 

「えー、ペンネーム足利義輝さんからね」

 

 

これ実名じゃなくてペンネーム制とかラジオのお便りコーナーかよ。しかもその名前、どうかしなくとも材木座だよな。…あいつ何故か結構奉仕部に関わるよな。

 

 

「内容を言うわ。…我は一流ラノベ小説家を目指す者である、しかし最近はネタのバリュエーションが無くなって困っている、そんな所にちょうど良く貴様ら奉仕部のお悩み相談うんたらがあったから投稿させて貰った、だから手始めに何かユニークなネタを考えてはくれないか」

 

 

これは酷い。どう対処すればいいのか分からないレベルのやばさだ。あと雪ノ下の棒読みが更に相乗効果を発揮して残念な感じがビシバシと伝わってくる。

 

…まあネタを考えろと言われてもどうせこいつの事だ、適当にカッコ良さそうな設定盛り込めば勝手に納得するだろ。

 

 

「じゃあまず由比ヶ浜さん、何かどうぞ」

 

「へ⁉︎うーん………」

 

由比ヶ浜はその振りに、少し困ったように考え込む。

…まあそりゃそうなるよな。由比ヶ浜はそう言うのは得意そうじゃないし、そもそも材木座の感性と由比ヶ浜の感性自体似通ってる部分が全然無い。

 

しばらく唸り続けた後、由比ヶ浜は閃いたように声を上げた。

 

「…そうだ!ダックスフンドが主人公なんてどうかな⁉︎」

 

……これは予想外だ。

 

「正直それはちょっとないと思うのだけれど…」

 

「早速否定されたし⁉︎」

 

どうやら雪ノ下は意外にも俺と同じ意見のようだ。

ダックスフンドが主人公と言われると、犬つながりで教育テレビの英語を話すチャロ的な物と通じるところがある。

 

「ちなみにヒッキーは?」

 

「俺か?そうだな…」

 

由比ヶ浜にそう振られて材木座の好きそうな設定を考えてみる。…だが、あんまりこれと言った案は思いつかない。

 

「…そういや昨日テレビで日本全国旅行記って奴がやってたから、もう旅好きって設定でいいだろ」

 

「うわっ凄い適当だし……」

 

当たり前だ。何故あいつのそんな事の為に俺は真面目に考えなきゃいけないのだ、適当で良いだろ適当で。

 

 

「ゆきのんはどう?何か思いついた?」

 

次に由比ヶ浜は雪ノ下に意見を聞く。先ほどまで雪ノ下が司会を務めていたのに、いつの間にか由比ヶ浜がそれっぽくなってるな。…これが能動派と受動派の違いか?

 

「そうね…、猫……かしら?」

 

「猫?」

 

そう由比ヶ浜が聞き返すと、雪ノ下は頷く。

 

「例えば捨てられた猫を主人公が育てるとかどうかしら?」

 

「あ、それ良いかも!」

 

二人して材木座の好きそうなベクトルの真反対を思いきり突っ走る光景を横目で眺めながら俺は窓の外を見る。この会話に俺が加わる余地が無い以上、空気を貫くだけである。多分これエアーリーディング検定準二級の問題。

 

 

「ところでヒッキー、もう一個何かない?」

 

空気を読みまくって静かにしていると、再度由比ヶ浜がそう尋ねてきた。ここでどう応答するかが多分エアーリーディング検定一級の問題だろう。自称準二級の俺には分からないが。

 

 

改めて材木座が好きそうな設定を考えてみる。もう主人公が邪剣とか邪険とかの使い手で、ヒロインと上手くいかずに最後にはブラコンの姉に崖から殺されればいいと思う。

 

…思わず思考が危ない方へ偏ってしまった。

 

 

「というか適当な中二病的設定並べれば良いんじゃないか?後は自分で考えるだろ、作家目指してんだし。つかそもそも俺らがそんなネタを考える方が可笑しい」

 

先程から思っていたことだが、本当にこれに尽きる。なぜ材木座の為にそんな思考を絞らなきゃいけないんだよ。んなもん作家志望なら自分で考えろ自分で。

 

 

「…そうしたいのは山々なのだけれど、奉仕部という立場上それは許されることではないわ」

 

「なら適当な中二病ネタを考えて後は自分で考えさせれば良いだろ?例えばほらーー」

 

そう言って俺は机の上にある花に指を向ける。

 

「主人公は何か自然の植物を操る異能とか持っててある日学校の花壺でそれが明確になる、とかな」

 

「花壺………地味すぎない?」

 

「何言ってんだ由比ヶ浜、最近こういうのはほぼ出尽くしててこれくらいしかないんだぞ?寧ろこの発想に辿り着いた俺を褒めてほしいくらいだ」

 

「それを自分で言うのね…」

 

 

そして俺たち3人、というか俺が適任と太鼓判(と言う名の押し付け)をしてきた由比ヶ浜により、俺は仕方なしに材木座への返答を書いた。

 

 

 

 

 

【ペンネーム:足利義輝

 

本文:我は一流ラノベ小説家を目指す者である!しかし最近はネタのバリュエーションが無くなって困っている…そんな所にちょうど良く貴殿ら奉仕部のお悩み相談うんたらがあったから投稿させて貰った!だから手始めに何かユニークなネタを考えてはくれないか?】

 

 

【奉仕部からの返答

 

本文:誰かに意見を求めるのも良いですが、それより何倍も自分自身で書かれた方がより一層読者さんも親しみやすいと思いますよ。ネタがどうしても思いつかないのなら、たまには気分転換で遠出するのもいいと思います。寧ろ個人的には引きこもりがちで中二病な性格を改善するいい機会だと思うので是非考えてみてください。】

 

 

 

 

 

 

 

 

材木座への返答を書き終わると、早速雪ノ下は次の用紙を箱から出していた。

 

「じゃあ次ね……、ペンネームリア充爆発しろさんからね」

 

…中二病の次はオープン非リア充か。

ちなみにオープン非リア充とは非リア充感を自分の外側へ晒け出している、普通に残念なやつである。この命名は俺、案外分かりやすいと思ってもいたりする。

 

 

横を見ると、リア充である由比ヶ浜は乾いた笑いをしていた。恐らくコメントのしようがないのだろう。

 

 

 

雪ノ下はその残念なペンネームの人が書いた本文を読み始める。

 

「俺には彼女がいませんできません。確かに顔はそんな良くないし、学力も底辺クラスでこのままだと二年の振り分け試験でFクラス入り確定だと教師に言われるし、どうすればいいんでしょうか?

…だそうよ。先に由比ヶ浜さん、何か提案ある?」

 

 

そう言って雪ノ下は由比ヶ浜に意見を求める。と言うかこの場合は彼女がどうとかじゃなく、まずは勉強だろ。絶対的に。

 

 

「……彼女居なくても頑張れー、とか?」

 

「それは根本的なアドバイスになってないと思うのだけれど…」

 

やんわりと雪ノ下が由比ヶ浜の意見を否定する。確かにそれではアドバイスの焦点がずれているし、妥当なところだろう。俺個人としてはそのようなアドバイス放棄はとても魅力的だが。

 

 

「貴方はどうなの、ヒキガルル」

 

「おい、人を何処かの宇宙から来たカエルの名前みたいに言うな。つかお前あれ知ってるのかよ」

 

「ええ、昔姉さんが偶に見てたから。あの人は良く漫画とか買ってくるから」

 

「昔からそうなんだな、陽乃さんは」

 

すごい納得した、その理由。

恐らく雪ノ下のそこら辺の知識は全て陽乃さんから来ているのだろう。絶対あの人、部屋の中の見えない所にたくさん漫画隠し持ってるだろ。

 

 

「それでヒッキーは何かないの?」

 

「そうだな…」

 

俺はその非リア充について考える。

投稿者の求めているアドバイスは彼女が欲しい、この一点に尽きるだろう。だが生憎と俺には恋愛感性と言ったメルヘンチックなものは一切無く、寧ろ振られたくらいだから失恋テクニックくらいしか教えられない。あと失恋後のクラスで居場所が消える事とか。

 

つまり、そこから恋愛的な相談は俺には全く無理ということが分かる。そこで俺の意見を終えてもいいのだが、そのまま言葉に出しても絶対に雪ノ下と由比ヶ浜に却下されるだろう。それに由比ヶ浜なんか目をキラキラさせて、どこかの少女漫画の表紙を飾れそうなほどだ。

 

 

だから、俺は敢えて別の形に変えて考える事をしてみようと思う。

 

具体的には議題内容を恋愛ではなく、如何にして投稿者が女子と仲良くなれるかに変換するいう作業を行えば良いのである。それならば俺も逆の経験が豊富にあるので、逆説的に意見を述べることが出来る。

 

まず投稿者の容姿、本人曰く普通らしい。不細工とかじゃないだけマシだろう、普通くらいなら特に女子に変な行動を起こさない限り嫌われる事はない。因みに顔が良くとも変な行動をとっていると普通に女子に嫌われる。ソースは俺。中学の時に中二病な発言をしていたら次第に避けられるようになった。

 

 

もう一つ、もっと重要なのは成績だ。学生生活における学内での成績は必ず等号でその人の頭の良さに繋がる。それは大抵の学校だと点数が良いほど評価がよくなるからだ。これは大学の偏差値の評価も同じである。

つまり、学校のテストで悪い点を取りまくるというのは大きすぎる低印象になりうる。頭が悪くてもモテるのは大体顔が良いからだ、俺みたいな普通の人には無理な所業である。

だが、逆説的に成績を良くするということは周りの人間から好印象を受けれるという事だ。そこからの派生によってもしかすると女子と繋がる可能性もある。それが一番有効的で合理的だろう。

 

 

 

そこまで俺は頭の中で纏めると、言葉にした。

 

「取り敢えず勉強して知性を身につけろ。話はそれからだ」

 

「うわぁ…、ヒッキーそれは無いよ」

 

「いやお前よりはマシだろうが、非リア充を舐めすぎ。そんなコメントをもしギャルでビッチの由比ヶ浜から言われたら誰でもイラっとくると思うぞ」

 

「ビッチ言うな!」

 

そこで今まで無言で立っていた雪ノ下がこんな事を提案してきた。

 

「じゃあ彼女を作る為の勉強を始めたら、と言うのはどうかしら?」

 

「…それは割と理に適ってるな。うん、それだ、それにしよう」

 

「ヒッキーそれ面倒くさくなってきただけでしょ」

 

 

そんな事は無い、別に他人の彼氏彼女の事情とかアドバイスとか分からないし出来ないからそこらへんの均衡点で収めようと思っただけで決して超だるい帰りたいラブプラスしたいとか考えていた訳ではない。

 

 

「…でも、それは良いかもね!」

 

由比ヶ浜もその雪ノ下案に賛成する。なら別に俺の発言を批判しなくても良いじゃん、由比ヶ浜みたいな綺麗な女子に罵倒されたら八幡落ち込むよ(棒)

 

「じゃあ今回は私が纏めるわ」

 

「それ大丈夫か?毒ばっか書かないだろうな?」

 

雪ノ下が書くとなると不安になる点はやはりそこである。ソースは俺、メールとかすごい偶に雪ノ下から送られてくると、それに良く毒舌が練りこまれている。もしかして好きだから虐めちゃうとかいうアレですか?……それは無いか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ペンネーム:リア充爆発しろ

 

本文:俺には彼女がいませんできません。確かに顔はそんな良くないし、学力も底辺クラスでこのままだと二年の振り分け試験でFクラス入り確定だと教師に言われるし、どうすればいいんでしょうか?】

 

 

【奉仕部からの返答

 

本文:まずは彼女を作る努力では無く、その勉強をするのはどうでしょうか?あと普通の勉強もした方が身のためだと思います】

 

 

 

 

 

 

 

 

…流石雪ノ下、容赦無いな……。

俺は雪ノ下の書いた返答を脇の机の上に置く。

 

 

「これであと二枚になったわね」

 

雪ノ下がそう言って紙を箱から出す。

つかあの箱の中身4枚しかなかったのかよ。もう少しあるようにも見えたが…。

 

 

そんな疑問を持ちつつも雪ノ下は内容を読み上げる。

 

「ペンネームは…お姉さま大好きさん……からね」

 

「おい大丈夫か、何かむっちゃ合間あったけど」

 

そんな俺の言葉を無視して雪ノ下は読み始める。

 

「えー、私は今現在お姉さまと呼び親しんでいる方がいるのですが、……その方を…落とす、にはどうすればいいのでしょうか………」

 

…これはなんと言うか、アレか?アレなのか?レズビアンなのか?

冗談…だよな?

 

「…次のを引くわ」

 

「…そうだね…ゆきのんお願い」

 

流石の雪ノ下と由比ヶ浜でもこの質問には匙を投げる。ついでに俺も投げる。匙は投げるもの。

 

 

「…えー、ペンネームは助けて下さいさんからね」

 

「いきなりのヘルプ来た⁉︎」

 

またこれは衝撃が強い相談が来たな…つかこれお悩み相談だよな?決してお助け相談じゃないよな?

 

 

「本文は…えーと、私にはいつも私の事を「お姉さま」と呼んでくる同級生が居ます。それだけなら良いのですが、最近スキン…シップ…が激しくなってきていて…、彼女の事を同性…愛…者かと…、思ってしまうように…なりました。どうすればいいですか?

 

……………これってどう考えてもさっきのお便り相談の被害者…よね?」

 

「…多分…そうだね…」

 

「…俺もそうとしか思えんのだが……」

 

暫し空気が凍る。

…こんなお便りどうしろっつーんだよ。加害者側も被害者側もこの企画に応募するとか狙ってんのか?それとも「奉仕部変なのやってるー、イタズラしようぜー」みたいな軽いノリで投稿されたのか?もしこれが本当に偶然だったら俺たちはどうにも出来ないぞ?

 

 

恐らく雪ノ下も由比ヶ浜もこの二つのお便りをどうするか迷っているだろう、真剣な顔で固まっている。因みに俺の結論は出た。

 

「…保留だな」

「…保留…かしら」

「…ええっ!諦めるの早っ!」

 

 

俺と雪ノ下は同じ結論だったが、由比ヶ浜だけは違うらしい。まあ由比ヶ浜の事だ、出来るかどうかではなくどうやるかを考えていたのだろう。

 

 

「つか解決するわけないだろ。こんなパンドラの箱みたいなもん、開けたくも触りたくもないわ」

 

「…今回ばかりは彼に同じだかしら。加害者側に付いても被害者側に付いても、どちにしろ被害が来るのは間違いないわ…」

 

「…うーん、そういうもんなのかな…」

 

それでも由比ヶ浜は悩んでいる。確かに送られてきたお悩み(?)を無碍にするのはあまり褒められたことではないだろう。

 

「だが由比ヶ浜、お前同性愛者の知識あるのか?何かしらアドバイス出来るのか?」

 

 

「…だよね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【奉仕部からの返答

 

本文:私たち奉仕部にはそのような知識が無いのでお答えしかねます。しかし、何事も諦めずに説得する事が相手をそう思わせる第一歩だと思います】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これを二枚書いて、と。…よし、終わりだな」

 

結局奉仕部の面子などの問題もあり、どちらに出しても不自然の無い同じ回答を二枚書くことでこれは解決した。そして執筆はまた俺、由比ヶ浜もやれよと正直思っていたりいなかったりする。

 

 

「…じゃあこれで今日の部活は終わりにしましょうか」

 

「そうだね、もう良い時間だし」

 

時計の針を見ると既に6時を上回っていた。窓の外もいつの間にか暗くなり始めている。

 

 

「じゃあ帰るか」

 

バックのチャックを閉める。普段ならその前に本を入れるという作業もあるのだが、今日は訳のわからない相談に真面目に回答していた為に既に閉まっている。

 

 

 

「じゃあゆきのん、また明日!」

 

「…また明日」

 

雪ノ下は部室の鍵を教員室に届ける為に、部室前で俺たちと分ける。そうして由比ヶ浜と2人きり、前だったら緊張しまくってどもってるかもしれないが、最早慣れたもので全く何も感じない。

 

さっきの最後のお便りのせいか、無言で俺は自転車を引きながら、由比ヶ浜は普通に歩きながら家を目指す。…やっぱ俺たちにとってのパンドラの箱じゃんあれ。

 

 

「じゃあまたねヒッキー」

 

「…おう」

 

 

そう言葉少なく由比ヶ浜と十字路で別れる。11月の風はほんのり冷たく、俺の心を冷ましにかかる。きっと学園の前に咲く桜は高2に進級する春には満開になるんだろうなと思いながら俺は自転車を漕いだ。

 

 






少し文が乱雑になっていると思います。すいません…。

あと、この話から間が空くと思います。
文化祭……か……。

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