やはり俺の学園コメディは馬鹿すぎる。   作:Mr,嶺上開花

3 / 18
難産過ぎてかなり遅れた第3話です、どぞー


3話 バカと扇動と試召戦争

 

 

 

「え~...替えを用意してきます。少し待っていてください」

 

そう言って福原先生は教室から出ていく。その途端にざわつき始めるのは流石Fクラスといったところだろうか。その中で俺は沈黙を守ってちゃぶ台に肘を立てて外の景色を眺める。窓に映っている光景を見て今分かったのだが、俺の隣に座っていた木下がいつの間にかに消えている。授業中は騒がない立ち歩かないという教師との暗黙の約束知らないのだろうか?あの大人しそうな木下でもそうなのか…、これはこのクラスの担任である福原先生は大変そうだ。

 

そうして観察していると、福原先生が戻るのをまともに待っている奴が殆どいない。先ほどの朝のHR前のリプレイを見ているような錯覚にさえ陥るような気もする。あの中二病患者の材木座だって待つときは静かに待つというのに。…話し相手がいないという理由もあるが。もう犬みたくリーダーさんとか呼んできた方がいいんじゃないの?

 

 

 

 

そうしてしばらくぼんやりしていると先生が戻ってきたようで、自己紹介が再スタートしていた。

そこでは特筆するような事もなく、緩やかに時間が流れていった。というかむしろ自己紹介で特筆するような事が起きる方がおかしい。普通のクラスじゃ絶対起きない。

 

 

 

 

 

「坂本君、君が自己紹介最後の一人ですよ」

「了解」

 

福原先生に呼ばれて坂本が席を立つ。

坂本と言えばアレだ、朝に俺が冗談で学園長を起訴出来るとかそんなやり取りを木下としていたら乗っかってきた人物だ。その坂本は席から立つとゆっくりと教壇の方に歩み始めた。その姿には仄かに貫禄も滲ませているようにも思える。外面はそうなんだから、あとは中身もそれに着いてきてれば良いんだけどな。

 

 

「坂本君はFクラスのクラス代表でしたよね?」

 

福原先生の問いに頷いて肯定する坂本。クラス代表と言えば、そのクラスで1番成績が良かった生徒のことを指す単語だ。つまり坂本はこのド底辺であるFクラスの中で1番Eクラスの成績に近い生徒ということになる。

 

 

…やっぱり、どう考えてもお前ら50歩100歩だろ。俺の(数学以外の)点数には絶対届かないだろうに。一応模試とかだと結構行ってるし。(数学以外)。

代表という単語が出て点数の話題に移る野郎どもを尻目に、前に立つ坂本の方を見る。

 

「Fクラス代表の坂本雄二だ。俺のことは代表でも坂本でも好きなように呼んでくれ」

 

先程吉井と仲良くつるんでいたのでまた衝撃的な自己紹介をするかと思ったが、どうやら吉井とは違うらしい。…いや、むしろ吉井が例外中の例外なのか。

 

坂本は淡々とした口調でどうでも良さげに告げると、コホンと一息ついて話し始める。

 

 

「さて、皆に一つ聞きたい」

 

 

坂本は周囲に視線を巡らせながら、ゆっくりと口を開く。にしても妙な間の区切りだ、まるで自己紹介とは別の事をこれから話すようなーーー

 

 

そこで俺は周りの生徒の目が全員坂本に注目しているのに気づく。

…こいつ、軽い人身掌握をやってやがる…!

 

どう考えてもそうだ、だが別にそれは悪いことではない。洗脳とかではないからな。

でも何で今それをやるのか俺には分からない。この時間はただの自己紹介のはずである。そこで、そんな事をする必要性は皆無のはずだ。

 

 

そう考えつつも坂本の目を見ていると、不意に視線が動いた。その先にはボロい畳、ヒビの入った窓ガラス、壊れかけのちゃぶ台、綿の出た座布団と、ボロい教室中の設備へ移っていく。それにつられた周りもそれらをジッと黙って見ている。…何か厄介事にしか思えんのだけど。俺のつむじレーダーの観測予測でも、これからド級に面倒な事例が発生すると読んでいる。ド級なんて弩級戦艦だけで充分だ。金剛良いよ、かわいいよ。

 

 

「Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートらしいが…………不満はないか?」

 

 

坂本は沈黙を打ち切り、そのようなことを言い出した。この台詞、どう考えても戦争とかで士気上げる時に使ったりする類のものだ。外殻だけ見ればYesかNoで答える質問だが、この教室の悲惨な状況を鑑みると、最早演説と同類の効果があるはずだ。だから恐らくーー

 

 

『大ありじゃあっ!!』

 

 

ーーほらな、予想通りの最悪展開だよ畜生。Fクラス全員の魂からの叫びが出ちまったじゃねえか。

 

 

満足そうな顔をする坂本を見て、俺は狙ってやったのだと確信し、更にこれから何を仕出かすのかも大体の辺りをつける。

 

 

その正体は試験召喚戦争。略して試召戦争とも呼ばれる。

初めから説明すると、この文月学園では特殊な点が幾つかあり、その中でも他と比べて赤一点で目立つのがテストなのだ。この学園のテストは麻雀で言うと青天井ルールのような物で、簡単に言うと満点が無いという物なのである。つまり制限時間内で答えるだけ答え、その得点がテストの点数になる。

なので、例えばAクラスだと大体1科目で平均350点くらい取るのである。逆にFクラスでは60点50点が普通に罷り通る世界だ。

 

そして、更に文月学園にはもう一つ、クラス間に関する特別な取り決めがある。それが試召戦争なのだ。

 

 

それを説明する前にもう一つ、召喚獣に関しても言わなければならないことがある。科学とオカルトをごちゃごちゃぐちゃぐちゃした結果、召喚獣が出来たらしいが、ひとまずそれは置いておく。

 

召喚獣は第一に、教師の許可が無いと召喚出来ない。そして第二に、召喚の体力(HP)及び攻撃力はその召喚獣を召喚した生徒の点数に左右される。例えば数学で200点取ってれば200点というHPと、それに見合った攻撃力が手に入る。学力が完全にステータスに反映されるのだ。それはつまり頭が良いほど召喚獣も強くなるということになる。

 

 

そして、その召喚獣達を戦わせるのがその試召戦争だ。そこでは自分の持っている武器を使い、相手のクラス代表の召喚獣を倒せば勝ちという単純かつシンプルなルールである。

そして、他にも代表以外の生徒の召喚獣の点数が0点になると即座にその場で強制的に補修への参加要請が下るというルール、と言うか校則のような物もある。そうして相手のクラス生徒の召喚獣を倒し、徐々に補習室に放り込んで行くのがセオリーである。

 

 

 

そうして試召戦争に勝利すると、下位クラスの場合は上位クラスと教室の環境を交換することが出来る。また逆に、上位クラスの場合は下位クラスの教室の設備を下げることが出来る。基本はこのどれかを狙ってこのような戦争を起こすケースが多い。

 

 

 

そして、坂本もそれを望んでいるのならーーー

 

 

「だろう?俺だってこの現状は大いに不満だ。代表として問題意識を抱いている」

 

 

その発言を日切りに教室中から不満が爆発する。そりゃそうだ、この設備に肯定的になれるはずが無い。俺だってせめて最低でもDクラスレベルの設備は欲しい。

 

 

「皆の意見もごもっともだ。そこでこれは代表としての提案なのだがーーー」

 

 

….やはり試召戦争を仕掛けるつもりか。

 

そんな俺の考えは直ぐに甘っちょろいと思い知らされる事になる。

 

「ーーFクラスはAクラスに【試験召喚戦争】を仕掛けようと思う」

 

 

ーーそれもそのはず、まさか最底辺が頂点に挑むとは誰も想像だにしていなかっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

…まあ、しかし普通に考えたら絶対に勝てるはずがない。

 

「勝てるわけが無い」

「これ以上設備が落ちるのは嫌だ」

「姫路さんがいるならもう何も望まない!」

 

それはバカなFクラスでも流石に分かるようだ。若干1名妙なのも混ざってはいるが、これらの意見は正当なものである。それほどにもFクラスとAクラスには歴然とした差がある事は周知の事実なのだから。例えるならレベル1の装備で雪ノ下に挑むようなものだ、何かしようものなら直ぐに倍返しされてゲームオーバーだ。恐るべし魔王閣下雪ノ下。

 

それを坂本はどうにかして覆せるらしい。その証拠に坂本の口元は想定済みとばかりに不穏な笑みを浮かべている。

 

 

「いんや、勝てる要素はあるぞ」

 

 

ニヒルにそう言い切るFクラス代表。その断定の言い方に他のクラスメイトはどよめく。確かに普通に総合力を比較すると確実にAクラスには勝てない。なのに勝てる要素が存在すると聞いて、このバカな連中が盛り上がらないはずが無い。

 

 

「そうだな…まずムッツリーニ!」

 

坂本は初めに青髪の小柄な趣味な学園内で有名なカメラマンの名前を言う。その当の本人は「見え…見え…!」とか小声ではっきり呟きながら姫路のスカートの中身を撮影しようと超ロウアングルで構えている。それに気づいた姫路は高い声で軽く叫び声を上げると、撮影に諦めたようで立ち上がり、その際に自分が注目されていることにやっと気づく。

 

「………何?」

 

いやお前の方が何してるんだよ?

 

「こいつは皆の知っている通りでもあるが、自身の隠蔽スキルがとても高い上に保健体育だけを見ると学年1位だ。保険体育では他の追随は許さない」

 

 

ムッツリーニの言葉を完全に無視して話す坂本に、ムッツリーニはショボン顏で自分の席に戻る。あらかわいい、まあ戸塚の方が100倍可愛いが。というか戸塚より可愛い生物は果たしてこの地上に居るのか疑問なまでである。

 

 

坂本はムッツリーニから目線を外して赤色っぽい髪をポニーテールにしている、趣味が吉井明久を殴るさんに目を向けた。名前は忘れた。

 

 

「次に島田、あいつは数学の点数だけはBクラス並みだ」

 

 

その坂本の言葉で彼女の名前を思い出す。よし、俺の脳内危険リストの中に入れておこう。

 

そしてその次に坂本が目を向けたのは隣に座る木下だった。

 

「秀吉は知っての通り、演劇部のホープだ。演技力に関しては恐ろしい程に頼りになる」

 

 

なんと、木下は演劇部らしい。少し意外ではあるが、案外似合っているのかもしれない。いつもジジ言葉で話してるし。材木座のアレの話し方と比べりゃ全然マシである。

 

 

「流石秀吉!」

「結婚してくれ!」

「毎日味噌汁作ってくれ!」

 

周りからの言葉もすごく過激、と言うか最早殆どが告白じゃねえか。何だそれ、いつ日本では男同士が結婚出来る法律が出来たんだ?なら俺も戸塚と結婚出来るの?「お帰り八幡!」みたいな感じでそのヒマワリのような笑顔を向けてくれるの?何それ良いじゃん、促進してくれ。

 

 

そんな俺の思考の暴走に当然だれ気づくはずもなく、坂本は勝てる要素を上げ続ける。

 

「知ってる通り今やって来た姫路は毎回テストで学年5位に入っている。それに他にも俺だっているしな」

 

 

「坂本って確か小学校の時に天才って言われてたらしいぞ!」

「そんなやつがクラス代表とか…何か負ける気がしなくなって来た!」

「姫路さん可愛い」

「姫路さん俺とけっn」

 

 

未だにバカをしている奴も居るが、坂本の思惑通りに段々扇動が終わりつつある。そろそろ締めに入るのだろうか。坂本は少し間を開けてから、試験召喚戦争の切り札となるであろう名前を告げた。

 

 

「それにーーーー吉井明久だってこのクラスだ」

 

 

「吉井明久って誰だ?」

「そんなやつが居るのか?」

「どこが凄いんだ?」

 

その台詞に疑問を呈するクラスメイトが殆どだ。対する俺も同じ気持ちである。吉井の名前は先程の自己紹介で知っているが、実は途方もない強さの武術家だったりするのだろうか?

 

 

「こう言えば分かるか?あいつは学園で唯一の観察処分者だ」

 

その疑問に答えるように、坂本は言った。

 

観察処分者、それは俺も噂だけでは知っている。確か学習意欲に欠け、本人の点数も相当低い上に何かしらの重大な事件を起こした生徒に与えられる称号だ。

 

 

「それってバカの代名詞だよな?」

 

「ああ、その通りだ」

「もう少しオブラートに言ってよ!」

 

 

そんな観察処分者の吉井からツッコミが入る。オブラートも何も、完全に観察処分者になったのは吉井本人の責任なのだから別にそんな物はないのではないのだろうか?

 

 

「つまりは何にも役に立たない、と言うことだな」

 

「ああ、居ても役に立たないし居なくても別に困らない。そういう点ではこいつは相当な価値がある」

「それってただ期待されてないだけじゃん!」

 

 

吉井のツッコミはとてもキレが良いようだ。こういう奴が奉仕部に入って、俺に来る皮肉やボケをそいつに流せればいいのにな。

…まあ実際は奉仕部は存在感がない部活としては一級品であって、依頼は殆ど来ない事から入部者なんて夢のまた夢なのだが。

…勧誘するか?

 

そんな策略を考えて居ると、どうやら坂本の焚きつけ行為も最終段階に入ったようで、教室内の空気が熱気を帯びていて物凄く暑苦しい。

 

「とにかくだ!これだけの戦力が俺たちのクラスには居るんだ!

ーーお前ら、Aクラスに勝ちたいか?」

 

 

『おー‼︎』

 

 

「悠々自適にリクライニングシートに座りたいか?」

 

 

『おー‼︎‼︎』

 

 

「なら剣ではなくペンを取れ!そしてこのクラスのために身を呈してでも戦え!それがお前らポーン(兵士)に出来ることだ!」

 

 

『おぉぉぉ‼︎‼︎‼︎』

 

「やってやる!」

「姫路さんと秀吉が居れば100人力だ!」

「これで俺もAクラスだ!」

 

 

流石坂本と言うべきか、とても自然な形でクラス全体を試召戦争を勃発させる空気に扇動していった。

にしても本当にバカが多いな。この流れに着いて行ってないのは俺含め数人くらいしかいないぞ。Fクラスは特徴として全員扇動されやすいのか?

 

 

「手始めにまずはDクラスに今日の11:00からの試召戦争を申し込む。

ーーー明久、この事をDクラスに伝えに行ってきてくれないか?」

 

「確か試召戦争の使者って酷い目に遭うんじゃなかったっけ?」

 

「んな訳あるはずないだろ。ここは学校だぞ?暴力を容認するはずないに決まってる」

 

 

坂本は突然吉井に嘘10割で試召戦争の使者を頼んだ。

因みになぜ情報源がない俺がこれを嘘と断言出来るのかと言うと、簡単な話で去年の昼休みにその状況をたまたま目撃したことがあるからである。そこだけピックアップしたらこの学園、ただの不良校かもしれない。

 

…まあ、つまり試召戦争の使者役なんていうのはただの貧乏くじなのだ。吉井に黙祷。

 

 

「まあ、そう言う話だったら………うん、ちょっと行ってくる」

 

 

そう言って教室のドアへと歩いて行く吉井。世の中には知らない方が良いこともあるが、知っといた方が良いこともある物だと実感できる光景である。無知とは罪であるとは本当、この状況に得て非なる言葉だな。

 

ドアが完全に閉まったのを確認した坂本は、クラス全体には響かないくらいの声でこう言った。

 

「あ、そうだ明久。一つ言い忘れてた事があった。

 

ーーーあれは嘘だ」

 

 

「お前はブレないな」

 

ついそんな言葉を発してしまう。

 

吉井に聞こえないよう、かつ周りには聞こえるよう発言する辺りに悪意しか感じない。これで、この発言を聞いてなかった吉井が悪いとか後に言い訳する算段だろう。正直こいつ、俺以上に嘘とか屁理屈とか上手いんじゃないの?今からでも汚い大人社会に順応していけるんじゃないの?

 

 

「それじゃあ最後に一つ、全員この休み時間でノートの切れ端の紙とかに各教科の自分の持ち点を書いて教卓に置いておいてくれ。それを目安に部隊を編成する」

 

 

そんな吉井の、すぐ来るであろう悲惨な未来に合掌しているとそんな声が。本当に良く頭が回る。

 

 

「じゃあ解散だ!10:50に再度ここで集合!」

 

その発言を聞いたFクラスの連中はそれにうなづくと、直ぐに寛ぎ始めた。まあやること無いしな。今日は始業式だから授業もまだなかったし。

 

 

「比企谷、ちょっと良いか?」

 

そんな風に眺めていると、直接壇上から戻ってきた坂本に声を掛けられた。

 

「…何の用だ?俺にはこれから読書をすると言う崇高な予定があるんだが…」

 

「んなもん崇高とか表現すんな。それより少し屋上行くぞ」

 

「ちょっ、お前っ、引っ張んなくても自分で歩くから!コケる…!」

 

 

 

 

そうして坂本に半ば強引に引きずれられて俺は教室を後にした。そしてその時に少し思い出したのだが、いつから福原先生は居なくなったのだろうか?さっき坂本が生徒を焚きつけてた時にはもう存在感は感じなかったしな。つまりこの時間は自由時間、というか放課後なのか?

 

…本当にこのクラスは謎だらけである。

 

 

 

 

 

 

 

坂本と歩いて1分程度、俺は屋上に居た。この学校の屋上はいつも解放されており、周りも高い建造物がない為にとても心地が良い風が吹いており、また下を一望した時の景観も今の時期は桜のおかげでとても良い。因みにこれはこの学校に来てよかったと思う唯一の点だったりする。

 

 

「それで、何の用だ坂本」

 

 

そんな絶景ポイント、告白の名所としても学内では有名でもあるこの場所に連れ出したと言うことは何か理由が有るのだろう。

 

 

「そりゃお前も少しは察してんだろ?」

 

「…まあ、な。どうせDクラス戦での副司令やら代表補佐をやれとかそう言うことだろ?それならさっき断ったはずだがーーー」

 

「なら、お前は今回何の役割をするつもりなんだ?」

 

…なんだその質問。

 

「そりゃお前、一般兵とか工作隊とか沢山あるだろうに」

 

 

そんな俺の至極真っ当な意見に坂本はこう言い放った。

 

「ーーストレートに言おう。お前、少なくともAクラスに入るレベルの成績は有しているよな?」

 

 

「…何で個人情報が漏れてんだよ」

 

俺の心の中の文月学園の株は現在大暴落直前だ。

 

実際、俺は自分自身の成績を詐称しようと思って居た。もし俺の国語の点数を馬鹿正直に話したらブラック企業の社畜の如く使い潰される可能性が高いからだ。だから俺は得意科目はいつも平均120点位取っている物理や化学とかにして、文系科目と数学は苦手科目として話そうと思っていた。文系科目だと国語の点数は当然、社会関連の科目の点数も300点は超えている。因みに数学は純粋にいつも20〜50点くらいを彷徨っている科目だからだ。

 

 

しかし、坂本はまだ俺の試験召喚獣の点数を見てない段階で言い当てて来た。それにそもそも俺は今回の点数に反映される振り分け試験を受けていない。

それはつまり、一年時の何処かの時点での俺のテストの記録が坂本に漏れた事を意味する。

 

 

「お前、まさかと思うがその為に職員室にでも行って俺の成績表でも取ってきたりでもしたの?」

 

「いいや、とある筋から情報を入手しただけだ」

 

「…学生が情報屋と関わってるのかよ」

 

「大丈夫だ、情報屋も学生だから問題無い」

 

「今のお前の理論、マリーアントワネット並みに飛躍したぞ」

 

情報屋が学生ってどうなんだ?

と言うかそもそも情報屋は学生でもなれる職業だったか?

 

 

坂本はそんな俺の不信をスルーして、ニヤリと話しかける。

 

「まあともかく、俺はお前の成績がとても良い事を知っている。本来ならお前は一人で特別迎撃部隊にでも入ってもらってこき使いまくる気だった。

 

ーーーそこでだ、もう一度言おう。俺の代表補佐にならないか?」

 

 

その提案はまるで俺の心の中を覗き込まれたみたいに的確なものだった。こいつ、さっきから思ってたがFクラスには全く似合わない頭の回り方だ。相手の欲求と自分の欲求を見事に噛み合わせて、一見すると利害の一致に見える。

 

しかし、その実この提案は恐らくあまり俺には優しいものではない。なぜなら代表補佐になったとしても俺の成績が有る限りは戦力になり得るからだ。その分最低限の戦闘は行なっていかなければならない。

つまりは、どっちを選んだところで状況は変わらないと言うことだな。

 

 

「…降参だ。好きにしろ」

 

「そうか。なら決まりだな」

 

 

軽く、そう言った坂本はじゃあ帰るぞと言って屋上の扉の方へ歩き始める。俺もそれに続いて、鉄製の扉に手をかけたところで坂本からこんな声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

「ま、手始めはDクラス戦だ。この戦いはAクラスに辿り着くまでの階段でしかないからな、頼むぞ代表補佐」

 

 

 

 

 

相変わらず坂本の真意は分からない。何を考え、何を目論んでいるのかサッパリだ。

 

ーーしかしこのAクラス戦への勝利に対する情熱だけは本物なのだろう。そう俺は感じた。

 




比企谷君良かったね、代表補佐だってよ!
これで原作キャラと存分に関わり合えるね!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。