やはり俺の学園コメディは馬鹿すぎる。   作:Mr,嶺上開花

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すいません、今回はバカテスト無しです。

…というわけで、深夜テンションで書いた11話ですがどうぞ。


11話 相談と日常と乖離現象

放課後、俺はこんな埃まみれでバカまみれのクラスに残る理由もなく家へと直帰していた。普段ならこれから雪ノ下と由比ヶ浜の居る奉仕部へと強制出勤しなくてはいけないのだが、今日は何と雪ノ下から今日の活動の取り消しを伝えるメールが届いていたのである。何でもAクラスは文化祭準備を既に始めているらしく手が離せないとの事らしい。そして、しかし明日はやるので覚悟していてください比企谷君とも書かれていた次第だ。なんで俺名指しにされてるのに一斉送信メール送ってきたんだよ。やだ、俺の部活内カースト低すぎ?

 

 

1年と1ヶ月の間、ずっと乗り続けている愛用の自転車の鍵を解除してサドルに跨る。そしてペダルを漕げば前へ前へと進み出す。

 

校門を潜り抜け、少し広い一車線の車道である緩やかな坂を駆け下りる。下り坂のおかげで合間合間にブレーキを使いつつも一切ペダルを漕がなくても良いのは本当に助かる。

…ただ朝は必ず登らなきゃ行けないんだよな、ここ。そこは八幡的にマイナス1ポイントだったりする。だから遅刻確定の時間になるといつも諦めてゆっくりとこの坂を登る。そのせいか後で平塚先生にお小言からの拳を貰うのは既に通例化しているのである。

 

 

 

そうして漕ぐこと15分、俺は家に到着する。

 

 

鍵を使い家に入ると、出迎えたのは電気が付いてない為に少し薄暗くなっている玄関だ。まあ何事も節約は大事だしな。例えば労働力とか。友達を多く作ると外面を取り繕った会話や無駄な動作などで体内に備蓄する様々なエネルギーを浪費する。つまりそれを防ぐには友達を作らなければ良いのだ。

すなわちそのような行動で多くの消費エネルギーを削り節約している俺は最新ハイブリッド搭載型男子高校生と言えるだろう。違うか。違うな。

 

 

 

 

 

 

「小町帰ったぞー」

 

 

「あ、お兄ちゃんお帰りー」

 

 

リビングのドアを開けると既に小町は料理を作っているようで、香ばしく肉が焼ける匂いがこちらまで匂ってくる。そうか、今日はハンバーグか。

 

 

「というかお兄ちゃん今日は直帰なの?」

 

 

「ああ、雪ノ下がクラスの文化祭準備で忙しいから今日は部活無かったんだ」

 

 

「へぇ?…そうだ!小町今度お兄ちゃんの文化祭行っていい?」

 

 

「ちょっ、おま、止めたほうがいいぞマジで」

 

 

俺のクラスがAクラスだったら渋りながらも仕方なく割り切っていたかもしれないが、何しろFクラスだ。ド底辺だ。ほぼ男所帯だ。そんな場所に小町を送り込むとか常識的に考えられん。

 

 

 

「えー、じゃあ雪乃さんのクラスなら良いー?」

 

 

「ああ、そこならまだ良いぞ。だが俺のクラスには来るなよ、絶対にだ。巨大な地震が来ようとも千葉県が滅亡しかけても来たらダメだからな!」

 

 

Fクラスの、特にFFF団とかいうあの連中。あいつらならまず間違いなく小町も狙うだろう。そうなってしまったら俺は小町レーダーで奴等の小町に対する不審な輩の行為を一つ一つ監察しなくてはいけなくなるのだ。

 

 

「おろろ…お兄ちゃんがそこまで言うのも珍しい…。…じゃあ一人では行かないとかじゃダメ?」

 

 

そう小町に言われたので俺は考える。だが、それはつまりは誰かに付き添いを頼むという事だ。小町も既に交友のある雪ノ下や由比ヶ浜はクラスの催しがあるだろうし除外、というか奉仕部での企画運営の準備もあるからクラスが暇でも無理だけどな。

 

 

他知っているのといえば前同じクラスだった連中だ。例えば葉山や三浦、海老名さんなどが当てはまる。当然除外だが。そもそも俺あいつらとそんなに仲良くないし。戸塚もクラスで忙しいから除外で良いと思う。確かCクラスだっけか、畜生どうして俺は戸塚と違うクラスなんだ…!そのせいで今じゃメル友みたいな関係になりつつあるじゃねえかよ、本当に神様とか居るなら一発殴らせろ。

 

 

更に他を考え、川……なんとかさんを思い出す。確か川なんとか沙希って名前だったはずだ…なんとかの部分は思い出せんが。

そういやあいつ、弟居たよな?義兄さん義兄さんって呼んでくるあの。…確か川崎…大志だったか?ああ、姉は川崎沙希か、全部思い出した。すぐ忘れそうだが。

だが何か癪に触るんだが…具体的には川崎の弟に頼むのはどうにも負けを認めた気分に陥る。

 

 

 

「…つかクラス内に誰か友達とか居ないのか?例えば女子で柔道と空手とか嗜んでる奴とか」

 

 

「何で武道経験者限定なの?」

 

 

「小町が男を連れてたらその男にレーザーポインタを浴びせないかんからな。何かしたら発砲も辞さん」

 

 

小町は絶対に誰にも渡さない…!絶対にだ!

そんな心意気で言うと、小町に溜息をつかれ呆れられた。

 

 

「お兄ちゃん気持ち悪っ……

…あそうだ!大志君がまだ残ってた!じゃお兄ちゃん、小町ちょっと用事できたから!」

 

 

「あ、ちょ、おい!」

 

 

 

小町はささっと何故かキッチンに置かれていた携帯を掴み取ると凄まじい勢いでリビングから脱出していった。…結局川崎の弟に頼ることになるのかよ。そう思うと何故か物凄い敗北感が。脳内では「お義兄さん!」と呼ぶ大人になった川崎の弟を想像し、すぐ様振り消す。止めてくれ、あいつにそう呼ばれたくない。…そもそも誰にもそう呼ばれたくないが。

 

 

「…つうかこれは俺がやらなきゃいけない訳なのか?」

 

 

目の前には火を付けて焼き途中の小町お手製生焼けハンバーグが。フライパンの中でジュージューと油をたてる音を立てているその姿に誰しもが思わず空腹感が湧かされてしまう一品だ。

 

 

 

…まあ、どうせすぐ帰ってくるんだろうしその間くらいはやっておくか

 

 

そう心の中で呟き、フライパンの取っ手を握る。

 

 

 

その後1時間帰ってこなかったのでその日の晩飯はほぼ俺製になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、放課後。

 

 

「比企谷君、少し頼みたい事があるんだけど良い?」

 

 

俺は部活に行くため荷物をまとめていると、背後から吉井に声をかけられた。少し頼みたい事とか何、その課長が平社員に言う残業確定宣告みたいな発言。それで課長はそのまま飲み屋に直行する、現代社会の暗闇である。

 

「断る。部活の準備も忙しいからな」

 

取り敢えず頼まれたら断る、頼まれなくとも断る。もしかしたら場の流れで「…じゃああいつにも一応言っとく?」みたいに言われている可能性もあるからだ。ソースは俺、それに気付かず承諾したら露骨に舌打ちされた。

 

「…そこを何とか!お願い!」

 

そう言って思い切り頭を下げてくる吉井。そこまで誠意を見せられると流石に戸惑ってしまう。

 

「…まあ話を聞いてからだな」

 

…八幡知ってるよ、話を聞いた後は必ずやらなきゃいけない雰囲気になることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして場所は変わり、屋上。何故頼みごとでここまで移動するのか分からない。何?告白なの?だったら海老名さんのところ行ったほうが良いぞ。海老名さんならそっち系の人の知り合い居てもおかしくない、寧ろ倍プッシュで居そうな雰囲気醸し出してるし、だから俺の方来るな。

そんな明らか様に見当はずれだろう考察を立てていると、真剣な顔をした吉井の方から話を持ち掛けてきた。

 

「…実は、このままだと姫路さんがこの世界から消えそうなんだ」

 

すまん、少し何言ってんのか分からない。それとも何だ?思い残すことが何もなくなって天使でビーツな展開とかが俺の知らないところで始まったのか?…待て、そうなると天使役は戸塚になるじゃないか。天使ちゃんマジ天使。

 

「とにもかくにも、もうちょい内容を詳しく説明はできないのか?」

 

そう指摘すると吉井は困り顔でたどたどしく説明していく。

 

「えーっと、まず姫路さんのお父さんがこのクラスの環境は姫路さんには合わないって言ってて転校を提案しててでも姫路さんはそれに反発するために試験召喚獣大会で美波とFクラスを見直してもらうためにいい成績を残すけど雄二はそれだけじゃ足りないって言って…」

 

「少し待て理解できん」

一旦吉井の狙いが狂ったマシンガンのような説明を止めさせる。

 

…つまり纏めると、姫路の父親はFクラスの環境から転校を提案するが、姫路本人はそれを拒否。それにあたっての問題を解決する手段として試験召喚獣大会で同じFクラス所属である島田とペアを組んで良い成績を残すことにより、結果的に姫路の父に文月学園残留を認めてもらおう、という感じか。大体理解はした。

 

「まあ事情はある程度分かった。だがそれには問題があるんだが」

 

「それは雄二から聞いたよ。一つ目に学習環境、二つ目に教室の劣悪な環境、三つ目にレベルの低いクラスメイト…だったかな?」

 

俺は坂本の出したという三つ目の条件を頭に浮かべながら吉井の顔を凝視する。

ーーー確かに学力レベルの低そうな顔だ。

 

「まあ確かに、坂本の言う通りだ。…だがもう一つ、授業の質という問題もある」

 

「何か心の中でとぼされたような気が…まあ今はいいや。それで、授業の質っていうと?」

 

毎回思うんだが、何で皆心の中読めるの?もしかして悟ってるの?サードアイでも開眼してるの?

そんな事を考えつつも俺は吉井の質問に答える。

 

「俺らFクラスの大半は馬鹿な奴らで構成されている、即ち授業自体初歩的な内容になるのは自然の摂理だ」

 

「つまり?」

 

「ほぼ全教科の基礎、そして恐らく応用の大半をマスターしている姫路にはこのFクラスの授業は外面ではともかく、内面では退屈極まりないだろう。何しろ学習済みの内容ばかりなんだからな。つまりはこのままだと成績が平行線どころか右肩下がりにだってなる可能性は大いにある、それをきっと姫路の父は憂慮してるのだと思うぞ」

 

そう俺が言い切ると、吉井はそれに納得したようだった。にしても吉井ってこんな理解力高かったか?俺の中では語彙力で漢検6級にギリギリで受かるくらいだと思ってた。ゴメンな吉井、お前なら五分五分で漢検5級受かるぞ。

 

「それで、協力してくれる?」

 

「…まあ、出来る最小限の最低限の労力を使わない程度なら」

 

当然嫌々、という冠詞がつくが。なにしろ断ったのを公に晒されたならFFF団に何をされるのか皆目見当がつかない。ただ確実に言えるのはもしそうしたら生きてはいられるまい、という事実だった。…何で俺こんな裏社会より裏々しい場所で青春送ってるんだ?

 

「ありがとう比企谷君!」

 

…それにしてもこんなにも解かりやすい皮肉を理解できない…のか。

また一つ俺は吉井のバカっぷりを再確認した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ヒッキー!遅い!」

 

 

そうして屋上から戻り、奉仕部部室へ入室して一言目にそんな言葉が飛んできた。由比ヶ浜らしいストレートな表現、悪く言えばバカっぽい表現である。良く言えば………思いつかん。

 

「そうね、それは私も聴きたかったわ。何故最近部活に遅れて来るのかしら?」

 

おい雪ノ下、お前も乗っかるなよ。さもなくばもうカマクラを触らせてやらないぞ。

…まあどうせ雪ノ下だったら小町にも頼めるから俺が拒否っても意味ないんだがな。拒否権をくれ拒否権を。

 

「別に大した理由じゃないぞ?ただ西村先生の授業が最後の時限だと毎回20分以上は延長するから定刻に来れないだけだ」

 

俺は雪ノ下と由比ヶ浜にそう説明する…が、実際のところは、

授業中にFクラスの馬鹿が問題行為を起こす→西村先生激怒→反省(形だけ)→補修追加決定

とこんな流れだ。そうして取り敢えず前回は須川が授業中にゲームをしていたのがバレて、一ヶ月間西村先生が担当である6限の授業は全て延長の刑を食らっていたりもする。ついでに須川はゲーム機を没収、その流れで須川のみカバンの中身を検査され追加で漫画にDVDの没収がなされ、その後Fクラス全体(女子と木下を除く)で制裁を食らっていた気もする。つまりは俺に部活の遅刻を指摘するならば、それよりも須川に問題行為を起こすなと言った方が俺の遅刻率が減るというものである。

まあその翌日にも別の教師に携帯取られた須川には無理だろうが。

 

さらに補足するならば今日は別件だったんだが、特に言う必要はないだろう。うちのクラス(FFF団含め)の内部の事情だしな。

 

「へー、なんか大変そうだね」

 

「譲ってやろうか?由比ヶ浜」

 

今なら特典で暑苦しい男子校クラスの清涼剤になれるぞ、と心の中で呟いておく。まあ木下には勝てんだろうが。…いや待て、戸塚になら来て欲しい…!…だが戸塚にこんな臭い汚いゴミっぽいの3Kを体現したクラスに来てもらうのはかなり心苦しいというか俺には出来ない…そうか、俺が戸塚のクラスに行けばいいのか!

 

「別にそんな権利要らないし!」

 

「由比ヶ浜さん、この男聴いてないわよ」

 

…はっ!

ついつい戸塚について考え過ぎていた。そして、今分かったが俺の中では戸塚の方が木下より順位が高いらしい。やはり勝負の決め手は関係の長さという事だな。

 

「…で、何の話ししてたんだ?」

 

「…特に何の話もしてないわ」

 

「ヒッキー最低」

 

由比ヶ浜が俺をジト目で見てくる。…俺なんか言ったか?何も覚えていないんだけど……。いや、戸塚最高って事だけ覚えたわ。それでもう10年分の希望は賄える。

 

 

「…まあ別にいいだろ、そんな事よりも文化祭の準備しないのか?」

 

そう言うと、由比ヶ浜の隣で冷たい目線で俺を見ていた雪ノ下はそれを止めると一回小さく溜息を付いた。

 

「…まあいいわ、じゃあそろそろ始めま「ちょっと邪魔するぞー」……平塚先生、毎回言ってますけどノックをしてから入って下さい…」

 

雪ノ下が文化祭の準備開始宣言のようなものを言おうとすると、突然平塚先生が教室内に扉の音と共に入って来る。本当に邪魔してますよ平塚先生、主に雪ノ下の発言とか気分とか。

 

「悪い悪い、それより比企谷借りるぞ」

 

「え?ちょっ…!」

 

首の襟元を捕まれ、やむなく前を向きながら後ろに歩かされる。…いくら平塚先生でも流石にこれはないんじゃないですか?マジで。痛いし苦しいし…!

 

「少し待ってください、そこのゴ…彼をどうする気ですか?」

 

おい待て雪ノ下、今お前俺の事を『ゴミ』って言いかけたよな?

…最近本当に雪ノ下が俺の事をどう思ってるのか疑問に思う時が度々あるんだがどうすれば良いんだろうか?笑えば良いのか?…そしたら平塚先生に殴られるな。

 

「心配するな雪ノ下、ただの進路相談だ」

 

「いや、それはちゃんと書いた…つか首が苦しい………」

 

いつも吉井はこんな気分を味わってるんだな。今度なんか奢ってやるか…。

そんな事を考えながらも俺は意識が崩れていくのをゆっくり実感しつつ、静かに魔王によって引きずられていった。

 

 

 

 

 

 

気が付けば、目の前に平塚先生が座っていた。

 

 

「…お、漸く気付いたか比企谷」

 

「先生…ここは?」

 

「個別面談室だ。普段は解放されてないし、何より使用も許可されていないから知らなかっただろう?私もつい先日までは知らなかったからな」

 

そう言って平塚先生は机の上に置いてあるペットボトルのお茶を一口飲む。少し見回してみると、小さい部屋のようで畳6枚ちょっとくらいだろう。その中央に小型テーブルに加えて椅子が二つだけ、随分とシンプルな部屋である。

そして俺はその椅子の一つに、平塚先生は対面の椅子に座っていた。

 

「…それで、用件は何でしょうか?」

 

そう聞くと平塚先生は足を組みながら射抜くような視線でこちらを見る。

 

「…比企谷、ぶっちゃけた話君の両親から相談を受けているんだ」

 

「相談…ですか?」

 

あの超小町主義の二人が俺のことで学校に相談…だと?信じられん、何か裏があるんじゃないのか?

そう思考を走らせていると、平塚先生が口を開く。

 

「ああ、なんでも妹さんが心配されているとかで」

 

疑問はすべて氷解した。というかこの理由じゃなかったらこの相談を持ち掛けて来た人物が本当に俺の両親か裏付けを取っていたまでである。

 

「それで、どんな案件なんですか?」

 

そう聞くと、少しの間が置かれる。その後、覚悟を決めた顔で平塚先生はこう言った

 

「…比企谷。君は現状で転校を考えた事はあるか?」

 

「……はっ?」




修学旅行終わったよー
飛行機とかバスとかホテルの部屋とかで隣の人とめっちゃ気まずかったよー

だから俺ガイルとバカテス読んでた俺は悪くない

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