やはり俺の学園コメディは馬鹿すぎる。   作:Mr,嶺上開花

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ノリと勢いで書いた。後悔はしてない。


第一章 試験召喚獣戦争編
1話 俺と不幸と馬鹿連中


何事にも始まりと言う物はある。

例えばテストの時、自分の名前を書いて意識を高めて挑む奴もいれば、それまでの集中力を切らさぬようにそのまま問題に直行する奴もいる。

例えば本、小説でのこれらの始まりは決まって物語の場合はプロローグと言う名の伏線や予防線を張ってから出発をする。思想書などでは自分の考えや前提条件、具体例などを挟んでから本文に入る。これらはごく普遍的だが、とても重要な事でもある。そう、いつでも物事の始まりと言うのはとても重要な事であって決して蔑ろにしてはいけないのである。

 

それは俺の高校二年の始まりに言えた。過去形である。

 

 

俺の通う高校である文月学園には高校一年生の最後に振り分け試験と呼ばれる試験がある。これによって二年のクラスをA(優良)〜F(バカ)まで振り分けられるのだが、その日を俺は間違えてしまったのだ。それが振り分け試験より前の日だったら良かったのだが、俺が勘違いしてしまったのは試験の翌日。完全に詰みだった。将棋で表したら自分の王が既に相手の持ち駒に入ってるレベルである。

 

更にこれは俺の自己責任というのもあり、当然ながら俺は振り分け試験の予備日には参加出来なかった。文月学園は厳しいのである。…まあ予備日なんてものは名目上のスケジュールなだけでその実予備日で試験が行われたことは一度もないらしいと言う噂も密やかに流れているが。

 

 

つまり、俺は振り分け試験で一点も取らなかった=最低クラス入り決定は確定事項なのだ。

俺のこれまでの人生、黒歴史はかなり多めに作ってしまっているがここまで悲惨なミスは始めて経験した。正直に言えばそのミスが発覚した日に不貞寝を1日ほど敢行した。それで気が晴れる俺偉い。

 

そんな訳で、俺のクラスは先ほどから言っている通りFクラスなのだ。歴代の学年のバカの集まりだ。多分俺の知り合いもAクラスに居るだろうし、もう一人馬鹿な奴も居るがそれでも持ち前のコミュ力を使ってEかDで逞しく生き残ってると思う。

 

 

そこでもって締めくくろうと思う。

 

 

 

始まりは大切だ。人の第一印象を左右するのも始まりである。

 

ーーーだが、終わり良ければすべて良し、この考えもまた一考なのではないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は4月もまだ始まったばかりの日差しも穏やかな、春うららと呼ぶに相応しい天気である。通学路の脇に生えている桜も力強く花を咲かせており、今日が新年度なのだと感じずにはいられない。

そんな中、俺は朗らかな気分で居るのかと言うと全くそんなことはなかった。寧ろ反対も真反対、最悪な気分である。

 

その理由は俺は最低ランクのクラスに入ることが運命付けられているからである。花々しく咲いている桜の花ですら俺もあざ笑っているが如くに見えてしまう。

 

Fクラスと言えば歴代の文月学園では最高級のバカを扱うクラスである。正直な話、クラスメイトには期待出来そうにない。

加えて文月学園の成績累進方式により更にこのクラスの魅力は下がる。…元から無いような物だが。

この文月学園の成績累進は俺からして見てもとても異常なのである。一年時は教室は皆平等の設備なのだが、二年に上がると突然そのような制度が始まる。

これは、Aクラスになるほど豪華な設備になって行き、逆にFクラスの方へ下がって行くと設備が痛々しくなって行く酷い制度だ。

 

因みにAクラスは冷蔵庫や菓子、コーヒーメーカーなども置いてあるらしい。…Maxコーヒー合ったら譲ってもらうか。

後は個人用に一台パソコンを、イスはリクライニングシートをなどと至れり尽くせりである。良いな、俺もパソコン欲しい。

 

 

しかしFクラスの設備と言われると俺にも分からないのである。…まあどんなに調子が悪くてもFクラスにはならんだろ、と言うような余裕があったのも理由の一端を占めていると思うが、一番の理由はFクラスは殆どの確率で表沙汰にならないからだ。

 

高校受験時代の時に貰ったパンフレットにも二年時のAクラスやBクラスなどの良い設備のクラスの画像は付けられていたが、FクラスやEクラスを含む下位クラスの教室は紹介されていなかった。それは高1の振り分け試験の事前説明の際も同じで、上位クラスの画像しか公開されなかった。恐らく、前者は一種の経営戦略で悪いイメージを植え付けない為だと思われ、後者は生徒の士気を上げる為だろう。努力すれば良い設備で勉強出来ると思えば、試験に対して頑張る生徒は自然に増えてくる。

 

 

「はあぁぁぁ…」

 

 

自転車のペダルを漕ぎつつもつい溜息をついてしまう。本当に、なぜ俺は新たな新学期の時ばかり不幸な目に遭うのか。

 

 

思い出されるのは去年の今頃。

高校と言う新たな世界での生活に憧れを抱いてしまった俺は一時間前に家を出て、そして交通事故に遭った。正確には、飼い主のリードから離れてしまって引かれそうになっていた犬を助けたら俺が代わりにその車に引かれてしまっただけだが。俺は全治一週間の入院生活、当然ながら入学早々ぼっちが確定した瞬間でもあった。

 

その後飼い主とその時の車にいた奴がこの文月学園の生徒だと分かり、更には偶然の重なりもあって共に部活をすることによってその仲は修復された。いや、事実はそれだけじゃないが。全て話すと単行本10冊以上は確実に超えるのでこの場では割愛と言う素晴らしい単語を使い収めておくことにする。

 

 

そんな訳で俺には新年度の始まりに良いことが起きる可能性は無いと知っている。去年だって、病院運ばれた後暇潰す道具となく一日中ずっと暇だった。

 

 

なので俺にとって新年度とは厄日である。詰まる所用心しなければ必ず不幸は訪れてしまう。…何か自分で言っときながらアレだが、宗教臭いな。

 

 

 

自転車を漕いでると、校門が見えてくる。桜の色が綺麗だ、…多分。

見近かな場所にたくさん有ったりすると感覚が麻痺してあんまり特別に感じなくなっちゃうんだよな。来年も見れるからいっか、みたいな流れで花見もしないしな。

 

 

校門を自転車で滑らかに通過し、手前にある自転車置き場でマイチャリを鍵でロックする。これまで一年間学校のある日は毎日やってきた事なので迷いは一切ない。ただカチャッと音が鳴るまで閉めないと鍵はロックされないのでそこら辺は徹底していかなければいけない。

 

 

自転車がしっかりとロックされたのを確認して校舎の方へ向かう。確か事前説明だとこの道中の途中に生徒1人1人のクラス分けの結果を持つ教師が居る。

 

自転車置き場と校舎正面通路と校門の道が存在するT字路を曲がると、説明通り直ぐに1人の教師が見えた。

 

しかし、そこ教師の前には生徒がたくさん並んでいた。さっきスイスイと抜かしてきた生徒だろう。

 

…まあそりゃ振り分けの結果を渡す教師は1人しか居ないなら、並ぶしかないわな。

 

そう考えつつ列の最後尾に入る。当然暇だからと言って携帯は出さない、出そう物なら問答無用で没収されるからだ。文月学園は厳しいのである。

 

 

周りのリア充トークをBGMに聞き流しながら待つこと約10分、ようやく俺は1番前にやってこれた。普通にクラス割でも掲示板に張っときゃ良いのにな。

 

「おはようございます、鉄人」

 

俺は爽やか且つ丁寧に朝の時挨拶をする。

 

「相変わらず目が腐っているぞ比企谷。あとお前らは何度俺のことを西村教諭と呼べと言ったら理解出来るんだ…」

 

この諦めたように俺に振り分け試験の紙を手渡してくれる教師の名前は西村…なんだっけ?

ーーまあ良い。それでこの西村なんとか先生のあだ名が鉄人だ。これ重要、公務員試験にも出るぞー。

なんでもあだ名の由来はトライアスロンが趣味と言うところから出てきているのだとか…。俺は詳しいことは知らんけど。

 

 

「ほら、早く行け。あとが詰まっている」

 

「あ、はい。あざっす」

 

鉄人に急かされた俺は前へ進みながら紙袋の上部分を破って中身の紙を取り出す。その紙にはこう書かれてあった。

 

 

【F 物凄く頑張りましょう】

 

 

ーーー予想通りだな、最初の英文字は。だが最後の1文はなんだ、俺がそんなに頑張ったら世界が明日にでも滅びるまでである。

 

まあクラスも予想通りとは言え、完全に確定したので俺は下駄箱で上履きに履き替え教室に向かう。

途中、Fクラスのある旧校舎へ行くために新校舎を通った際にAクラスを少しチラ見したのだが、もう何か全ておかしいとしか言いようがなかった。劣等感を覚えるとかそんなレベルじゃないだろありゃ。

 

ーーーだって、ピカピカなんだぞ?この新校舎は少なくとも五年は使われているはずなのに、Aクラスの設備を見る限りどれも最新型の新品だ。恐らく前年度の分は学校で纏めて処分するか売るかでもしているのだろう。その中古俺らのクラスにくれよまじで。

 

 

そうしてFクラスに着くと、まず目にしたのが扉だった。何故かこのクラスだけ昭和風の木製で出来ているのである。しかも風化していて所々痛んでいたり腐っていたりするのが俺みたいな素人でも分かる。

 

…………これは中も酷そうだ。

 

 

そんな残念感を味わいつつも扉を開く。まだ中には誰もいないようだった。流石はFクラス、普通のクラスの平均的な登校時間になっても誰もいない。きっと五分前くらいにスーパーで半額セールを実施している時の主婦のおばちゃんばりの走り込みラッシュが来るのではないのだろうか?

 

そしてもう一つ、言いたいことがある。

 

 

…なぜ畳にちゃぶ台なんだ……。

 

この時代、一般的に教室と言えばフローリングの床に机と椅子が所狭しと汚くズラッと並んでいる場所を指すはずである。

畳で勉強とかここはどこの寺小屋だよ、今は何時代ですか?

 

しかもちゃぶ台とか、最早上にご飯載せて一回転させて返すために存在しているとしか思えない。学園長何を考えてるんだよ。

 

 

教室に入るとそのむせ返るような埃が俺を襲う。衛生管理はどうなってんだここ。誰かが健康危害とか起こしたら、普通に起訴して勝てるレベルの環境の悪さだろ。

我慢ならなかったので取り敢えず窓をガチャガチャと開ける。立て付けが悪いのか、何度も開かなかったので力づくで体重をかけたらやうやく開いた。正直ここまでやられると頭おかしいとしか思わざる負えない。

 

 

全部の窓を解放すると、俺は一番前右端の窓側の席に座る。何でもこのクラスは指定席では無いらしい。

事前説明の段階では、[座る席は教室に指示が書いてある]と説明されたが黒板には何もかかれておらず、また小さなコルクの掲示板にも紙は1枚も貼られていない。…朝から疲れた。

 

時計を見ると、HRが始まるまで残り20分にまで迫っていた。…がやはり俺以外誰も到着していない。もうやだこのクラス。

 

そんな俺のやさぐれた心を知ってか知らずか、やっと一人目のクラスメイトの到着を知らせるドアの軋んだ音が鳴った。

 

 

「おはようなのじゃ!」

 

 

…誰だよ?

 

その立ち姿に俺は全く見覚えがなかった。

 

髪は茶髪、髪は肩にかからない程度に伸びている。顔付きからして女子生徒だろうか?その割りにはなぜか男物の制服を着用している。何と言うか、見てると保護欲とかが溢れ出してしまう容姿だと思う。

 

まあそれは良いがそんな気軽に挨拶するなよ、友達かと思っちゃうだろ。

 

 

その当の本人は俺の姿を確認すると、周りを見渡した。そして誰も居ないことを確認したのか、俺に話しかけてきた。

 

「…む、まだわしとお主しかおらんのか」

 

何でジジ言葉で話すんだ?アレか、亀仙人とかに憧れちゃったのか?

…取り敢えずはこいつが変人っぽいのだけは理解した。

 

「ああ、そうだな。まあ後数分もしたら駆け込んでくるだろ」

 

「それもそうじゃな。わしの名前は木下秀吉、元1年B組じゃ。気軽に秀吉と読んでくれると嬉しいのじゃ」

 

 

何こいつコミュ力高すぎだろ。

二人きりとは言え自分から率先して見知らぬ相手に話しかけ、ましてや自己紹介してしまうとか上級者の上位、ハンター的に言ったらG級じゃないのか?

 

「あ、ああ。俺の名前は比企谷八幡、元F組だ。宜しく…」

 

絶対に俺には出来ない手だと思いつつも俺も木下の真似をして自己紹介する。

 

「にしてもお前、何で男子生徒の制服着てるんだ?男装…いやそれともその逆か?」

 

 

俺は瞬きをしながら目の裏にマイエンジェルである戸塚の姿を思い浮かべる。

その本名は戸塚彩加、輝いて艶のある銀髪に、可愛らしいその顔立ちは当に天使、いや女神だ。

その上性格も物優しく、荒んだ心でも一瞬にして穏やかに沈めてしまうくらいの癒し力がそこにはある。

そんな魅力的な戸塚だが、唯一残念な点は戸塚が男である所だ。もし女だったら即告白した後に振られたのに。結局振られちゃうのかよ

 

 

「お主⁉︎なぜその事が分かったのじゃ⁉︎」

 

この木下が驚いている様から、それが正解だったことが分かる。つまり木下は彼女ではなく彼と言うことになるな。ホントに世の中はままらない、何で青春の神様は男子の方に可愛い要素を詰め込んでしまうのか。

 

 

「いや、まあそれは同じような奴が知り…友達にいるからだな」

 

 

一瞬、何時もの癖で知り合いと言いかけたが何とか修正する。戸塚との関係は友達と定義付けても良いのでは無いのかと思ったからである。それが雪ノ下とかだと知り合い以上友達未満と言う面倒くさい関係性になってしまうのだが。

 

ちなみ雪ノ下と言うのは本名は雪ノ下雪乃、俺とは奉仕部と言う部活で共に働いている関係である人物だ。

成績優秀で才色兼備の完璧人間だから今頃はAクラスにでもいるのではないだろうか?…才色兼備はクラスとは関係ないか。

 

 

「お主、今度その人と会わせてはくれんか?きっとわしの苦労を共有できるはずなのじゃ!」

 

 

そう言った木下の目は輝いていた。そんなに同士が欲しかったのかよ。…まあ確かに気持ちは分からんでも無いが。こいつくらいの容姿となると、女子からの告白より男子からの告白の方が圧倒的に多そうだし。

 

…そう考えるとホントにすごい苦労してるな。

 

 

「ああ、そのうちな」

 

「頼むのじゃ!」

 

これで会話は終わり、なぜなら外から沢山のドタバタした足音が響いてきたからだ。てか埃が舞い散るから止めくれ。

 

 

そうして次に教室に入室してきたのは6人くらいのグループだった。

 

「あー、あっぶねぇ!…ってまだ10分あるじゃねぇかよ。急いで損したぜ」

「誰だよ?もう時間ねえよ!とか叫んでたの?」

「須川じゃなかったか?」

「おい須川、どう言うことだよこれは」

「ギルティ、ギルティ、ギルティ」

「…デッド・オア・アライブ」

「いやちょっと待てよ!俺は確かに自分の腕時計を確かめ…あ、10分進めてたの忘れてたわ」

「殺す」

「ジャッジ、ジャッジ、ジャッジ」

「デス・オア・デッド」

「おいちょっ、それどう言う意味…待て待て冷静になってお前らその右手に持ったカッターとか手錠とかロープとかを離せ…いや、ちょっと!今お前が持ってたこの手を縛って動けなくするためのロープを解け!…いや手錠をはめろと言うわけではなく、いやいやいや!カッターこっち向けんな前に突き出すな危ないから!いやちょっ⁉︎」

 

 

俺は意識をそらした。現実逃避とも言う。

今年から1年間こんな奴らと一緒のクラスにならなくてはいけないとなると、途轍もない目眩がした。

 

ああ、戸塚、会いたいよ戸塚。




八幡書くのはやっぱ難しい。

8月23日訂正:【〜試験の翌日、完全に詰み〜】→【〜試験の翌日。完全に詰み〜】に変更しました。

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