うさぎ帝国   作:羽毛布団

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皆様ご機嫌麗しゅう。第三話もやっていきます。

さて、この話を書き終えた私の感想を、ここに綴っておきたいと思います。


こ れ 本 当 に ご ち う さ ?


まさかのシリアス。誤解の無いように申し上げますが、この物語の基本はギャグです。ただ、一番のギャグ要因たるココアちゃんがまだ街に来ていないので……。(言い訳)

と、とにかくシリアスはこれっきりにしたいと思います!!


君の答えは──

 初めてのサーカス公演から早一週間が過ぎた。この街の雰囲気にも、公園での暮らしにもだいぶ慣れてきた頃だ。住めば都と言うが、うさぎが入ればどんな場所でも大抵都である。うさぎってすげー。

 

「よっ。調子はどうだ?」

「あ、リゼ。おかげさまで快調だよ」

 

 リゼとはこの一週間の間で更に仲良くなった。どうやら学校の帰り道にこの公園があるらしく、予定が無い時はわざわざ会いに来てくれる。いつものベンチに二人で腰掛けて、他愛もない会話に花を咲かせていた。

 

「それにしても、まさかお前がサーカスをやってるなんてなぁ。初めて会った時には想像もしなかったぞ」

「まあ、そんな事一言も言わなかったからね」

「しかも、かなり見事な出来栄えだったじゃないか。うさぎにあそこまで統率のとれた動きを仕込むとは……お前は指揮官に向いているな!」

「あ、ありがとう……?」

 

 ところでこのリゼ。ミリオタというか、彼女のお父さんが現役の軍人らしく、話をそっち方面に繋げることが多い。随分女子高生らしからぬ趣向である。

 

「あはは……あ、そういえばリゼ。僕の事、学校で話したりした? 前にリゼと同じ制服の子たちが沢山来てくれたんだけど」

 

「んー、確かに話の合間程度に喋ったかもしれないが、それだけだぞ? お前の実力だと思うけどな。私のバイト先でも、お客さんが噂していたぞ。すっかり有名人じゃないか」

「……あんまり有名になり過ぎても困るんだけどね」

「ん? 何故だ?」

「あ、いや。こっちの話」

 

 疑問の視線を投げかけてくるリゼに内心で冷や汗を掻きながら、僕は目を逸らす。繁盛するのは非常に喜ばしいことだけれども、あまりに顔が広まり過ぎると僕がホームレスであることさえ露呈しかねない。それだけは避けたい事態である。

 

「……ところで一つ気になったんだが、いいか?」

「うん? どうしたの改まって」

「お前さ、私が来る前には既にここに居るよな。しかも毎回だ……学校はどうしてるんだ?」

 

 リゼは僕の目を真っ直ぐに見つめ、問いかけてきた。

 こ、これはまずい! 連日公園にしかいないことに不審を持たれた!どうにかして誤魔化さなければ!

 

「学校が終わったら直ぐにここに来てるんだ。一刻も早くうさぎと戯れたいからね、うん」

 

 よしいいぞ! 理由としては申し分ないし、矛盾もしていない!

 

「私服のままなのにか?」

 

 僕の精神に小ダメージ!

 

「せ、制服のない学校なんだよ!」

「この辺りにそんな学校はなかった筈だが……というか、平日の昼間にもサーカス開いてたらしいじゃないか」

 

 僕の精神に中ダメージ!

 

「も、もう春休みなんだ!」

「春休みは明日からだ」

 

 クリティカルヒット! 僕の精神は折れた。

 

「…………」

「さあ、何を隠している? 全部吐いてもらおうか!」

 

 堪らずに沈黙していると、僕に随分いい笑顔で迫ってくるリゼ。どうやら彼女の中の軍人魂を燃え上がらせてしまったらしい。厄介な。

 

「お、怒らないで聞いてね。あと誰にも話さないでくれると嬉しいなぁ……なんて」

「つまり、重要機密情報ということだな! そういうことなら任せろ!」

 

 あ、この子扱いやすい。

 かくして、僕はリゼに事の顛末を語ることとなったのであった。

 

 

 

 

□□□□□□□□□□

 

 

 

 

 

「はあ!? お前家がないのか!?」

「し、しーっ! 声が大きいよリゼ!」

 

 おい、重要機密はどうした。

 

 あれから数分。当然全てを洗いざらい打ち明けるわけにはいかず、肝心なところはぼかしてあるが、自分が今家を失って公園に住んでいることと、サーカスでの収益で食い繋いでいることは教えた。そもそも違う日本から来たなんて言っても信じて貰えないだろうけど。

 

「お、お前……私と初めて会った時、三日前に来たとか言ってなかったか? それまではどうやって生活していたんだ?」

「あー……」

 

 これまた言い辛い部分を突いてきたな。違和感がないよう、適当に捏造して話そう。

 

「実はさ、親に借金があってさ。ついに払えなくなって、家を売り払われたんだ。両親とはその時に離れ離れになっちゃってさ。自分達といると迷惑がかかるからって、片道分の交通費を握らせて、それで辿り着いたのがここってわけ」

「……」

 

 リゼは黙したままだ。騙してる罪悪感が半端ない。僕だって、友達がこんな事情を抱えてると知ったらこうなる。

 

「……その、親とは連絡とれないのか?」

 

 リゼがおずおずと聞いてきた。僕はすぐさま答える。

 

「知ってる電話番号に粗方かけてみたけど、全く通じなかったよ」

 

 これは事実だ。どうやら前の世界の番号はここでは意味を成さないらしく、虚しい機械メッセージが流れるだけだった。

 

「会いたいとは、思わないのか……?」

「……」

 

 今度は、僕が口を閉ざす番だった。

 両親ともう一度会いたいかと問われれば、当たり前だが会いたい。急に姿を眩ました僕を必死になって探しているかもしれない。ショックを受けて、仕事や家事が手についていないかもしれない。考え始めればキリがないが、向こうの様子がわからない以上不安は募るばかりである。

 

「……会いたいさ。でも、多分もう絶対会えない」

「……」

「どこにいるかも全く不明だし、連絡はとれないし、向こうもきっとそれを望んでいない」

「……そんなことない。親なら、絶対子供に会いたいはずだ!」

「それは正しいかもしれないけど、そうすることは、彼らの決意を踏みにじることになる」

「……っ!」

 

 ……リゼは悔しそうに俯き、口を閉じた。その悔しさは歯痒さからくるものか。彼女は優しいから、何もできない自分を責めているのかもしれない。

 しかし、殆どは嘘であるのがこの話の悲しいところだ。両親に借金なんてないし、僕と両親を妨げるのは物理的な距離じゃない。実際はそれよりもっと理不尽で残酷な壁が間を隔てているわけなのだが……。

 

「大丈夫、寂しくはないよ。うさぎたちがいるし、リゼとも友達になれたし」

 

 いくらうさぎが大好きな僕でも、うさぎが沢山住んでいるこの街でも、人恋しさはどうしようもなく感じるものである。それを埋めてくれるリゼに、千夜ちゃん。サーカスを楽しんでくれる人たち。彼女らの存在は何よりも──暖かいものだ。

 

「なあ、上白」

 

 唐突に顔を上げて、決意を固めた表情で僕を見つめてくるリゼ。あまりの真剣さに、意識せず背筋が伸びてしまう。

 

「うちに住まないか?」

「げほっ!?」

 

 咽せた。盛大に。

 

「ど、どうしてそうなるの!?」

「自慢するわけじゃないが、私の家はそれなりに広い。住み込みの使用人の為に用意された離れの建物だってある。今更居候が一人増えたって問題があるわけじゃない」

「大問題だよ!?」

 

 女の子の家に住むって、それだけで大問題だ。というか離れ!? 使用人!? リゼってもしかしてかなりのお嬢様なんじゃないだろうか。父親が軍人というだけあってあり得ない話じゃなさそうだ。

 

「いや、それは流石に悪いよ!」

「だが、このままずっとここに野宿するのも問題だぞ?」

「そ、そうかもしれないけど……ここでの生活にだって十分慣れたし、お金の工面もなんとかなりそうだし!」

「だが、安定して得られるわけじゃないんだろう? いつか必ず低迷期が訪れる筈だ。それに、父の伝手でお前の両親を探してやれるかもしれない!」

「うっ……」

 

 さて、不味い状況になってきた。

 確かに彼女の家に居候させて貰えるのは、常識とか対価とか諸々の問題を無視すれば渡りに船といったところではある。だが、嘘を語った上にお世話になるのは流石に心苦し過ぎるし、僕の両親はどれだけ捜索したって見つかる筈ないのだから、そんなことに手間をかけさせてしまうのは心が痛い。とはいえ、断るにはそれ相応の理由が必要になってくる。今更「それは悪い」じゃ彼女も引き下がらないだろう。

 

「……考えさせて」

 

 答えに窮した僕の口から出たのは、その場しのぎの発言だった。

 

「いいだろう。だが、日が落ちる前にもう一度ここに来る。その時までにはきっちり結論を出してもらうぞ」

 

 存外、リゼは簡単に引き下がってくれた。彼女なりの配慮だろうか。

 

「いいか、逃げるんじゃないぞ! 心苦しいからお断りします、なんて答えたら引き摺ってでも連れて行くからな!」

 

 そう言うと、リゼは走って公園を後にした。大方、家族の説得に向かったのだろう。

 

「あー、どうしようこれ……」

 

 これは予想だにしていなかった展開だ。まだ知り合って間もない僕を、ここまで心配してくれるなんて思ってもみなかった。いや、今の話を客観的に耳にすれば相当気の毒な話なのは理解できるが、開口一番「うちに住まないか?」とは随分男前なことだ。本人の前で口にすれば殴り飛ばされるかもしれないが。

 

「あ、あの〜……」

 

 気を悩ませうんうんと唸っているといきなり声を掛けられた。サーカス以来時々こういうこともあるので特段驚きはしない。

 声の発生源に目を向けると、金髪碧眼で、お嬢様を全身で体現したような、ザ・お嬢様!とでも表現できそうな雰囲気の女の子が目の前に立っていた。とりあえず話を聞いてみる。

 

「ええっと、何か用かな? もしかして、うさぎサーカスの話?」

「い、いえ! サーカスはいつも楽しく見させてもらっているんですけど、今はそうじゃなくて……!」

 

 む?どうやらサーカスは関係ないらしい。だとしたら何故僕に声を掛けてきたのだろうか?

 女の子は言い辛そうに視線を忙しなく動かし、ついに意を決したように僕へ告げる。

 

「て、天々座先輩のことなんですけど……」

「リゼの?」

 

 先輩ということは、この女の子はリゼの後輩なのだろうか。そういえば、制服が同じだ。どうして気が付かなかったのか。

 

「はい、ええっと……」

「あ、僕は佐藤だよ。佐藤 上白」

「さ、佐藤さんはもしかして……先輩とお付き合いされているんですか!?」

 

 ………………うん? なにかよくわからない言葉が飛び出してきたな。

 

「ごめん、もう一回お願い」

「先輩と、お付き合いされているんですか?」

 

 先輩とお付き合いされているんですか?いるんですか?いるんですか……ですか…………!?

 

「は、はははははは、はいぃぃっ!? どうしてそうなるのっ!?」

「ち、違うんですかっ!?」

「いや、先ずはなんでそう思ったのかすっきりきっぱり問いただしたいところなんだけどっ!?」

「さ、さっき痴話喧嘩しているところを、その……偶然見てしまって」

 

 ち、痴話喧嘩って……! 確かに第三者にはそう見えたかも知れないけど──ってそうじゃない!

 

「も、もしかして話の内容も……?」

「いえ、そこまでは……」

 

 よ、良かった。どうやら致命的な部分は聞かれていなかったようだ。よく考えれば、内容がわかってしまえば痴話喧嘩とは思わないだろう。

 兎に角、このままでは不味いので誤解を解いておく必要がある。僕は女の子に、要点を隠して成り行きを説明したのだった。

 

 

 

 

 

□□□□□□□□□□

 

 

 

 

 

「そうだったんですか……」

 

 シャロちゃん──女の子の名前は桐間 シャロと言うらしい──は、納得したように呟いた。

 彼女に話したのは、リゼとは少し前に知り合って仲良くなったが別に付き合ってるわけではないこと、彼女と譲れない部分で揉めちゃったこと。今日の日の入りまでには結論を出さないといけないこと。この三つである。当然それ以外は全て伏せたし、詳しい内容は何一つ語っていない。

 

「あの、先輩と揉めたって、どういう感じでですか?」

「うーん、彼女は僕を手助けしてくれようとしたんだけど、僕は罪悪感とか申し訳なさとかで遠慮しちゃってさ。とりあえず保留にはしたんだけど、また後でどうするか聞きにやってくるみたいなんだ」

「な、なるほど……」

 

 うーん、と唸るシャロちゃん。殆ど接点もない僕の為に頭を回してくれているようだ。ちょっと、この街いい人多過ぎでしょ。

 

「あの、ですね。参考になるかわからないんですけど……」

 

 考えが纏まったのか、シャロちゃんが口を開いた。

 

「私、ちょっと見栄っ張りなところがあって……学校がお嬢様学校なので、全然そんなことはないのに、無理にお嬢様っぽく振舞ったりしちゃうんです」

「……」

「それで皆誤解して、私のことすごいお嬢様だって思うんですけど、家に帰ってから後悔するんです。またやっちゃったなぁ、って」

「……」

「本当はタイムセールに行ったりとか、アルバイト掛け持ちとかしてるのに、そういうのも全部隠して……バレないようにするのはやっぱり面倒だし、騙してるみたいで嫌なんですけど、でも相手に軽蔑されたくなくて、そのままズルズルと引きずっちゃって……」

 

 ……あれ? これ、シャロちゃんのお悩み相談になってない?

 

「えっと、だから、素直でいればいいと思います!」

「……素直に?」

「私はなかなかそうできないから偉そうには言えませんけど、素直に、ハッキリと「こうしたい!」って言えば先輩ならわかってくれると思います!」

「それが、理由や根拠の薄い曖昧なものだったとしても?」

「それでも、佐藤さんの意思がちゃんと伝われば頷いてくれると思います」

「……あははっ、そうだね。ハッキリと、どうしたいか伝える、ね」

 

 確かに今日、僕はリゼの厚意を受け取らなかっただけで、きちんと自分のしたいことを言葉にしたわけではなかった。

 はっきりと言葉に変えて、自分の意思をぶつける──些細な事だけど、とても重要なことだと思う。

 

「──ありがとう、シャロちゃん。なんとかやってみるよ」

「い、いえいえ! 私の方こそ自分の悩みを垂れ流しただけ、みたいになってすいません!」

 

 あ、自覚はあったんだ。

 

「じゃ、じゃあ私はバイトの時間なんで、そろそろ失礼します! サーカス、また楽しみにしています!」

 

 シャロちゃんはそう言うや否や、すぐさま僕に背を向けて走り出した。ちょっと顔が赤くなっていたから、自分の言ったことを思い返して恥ずかしくなったのだろう。

 

「……」

 

 僕は考える。自分がどうしたいのか。その為に、リゼに何を伝えればいいのか──。

 

「よしっ!」

 

 シャロちゃんに貰った勇気を胸に、僕はリゼの到着を待ち続けた。

 

 

 

 

 

 

□□□□□□□□□□

 

 

 

 

 

 

 

 夕刻。茜色に燃え上がる夕陽を背に、彼女は──リゼはついにやってきた。

 僕と対峙するリゼの表情には、微塵も撤退する気は見受けられない。

 

「時間だ。答えを聞こう」

 

 リゼが口を開く。某有名アニメ映画の台詞であるが、意図したものなのだろうか。

 

「リゼ。君の気持ちはすごく嬉しい。会って間もない僕を本気で心配くれているのも理解してる」

「……」

「でも、僕はここに残るよ」

 

 淀みなく、彼女の瞳を真っ直ぐ見返して、僕は告げた。

 

「……何故だ?」

「ここはさ──もう僕の家なんだ。うさぎと一緒に食事して、一緒に寝て、サーカスの練習をして……屋根がなくても、ベッドがなくても、うさぎたちとの──リゼとの思い出だって全部ここにあるんだ」

「……野宿の経験がないお前が今まで無事に過ごしてこれたのは、運が良かったからだ。これからもそれを続けられる保証は、どこにもないんだぞ」

「解ってる。でも、僕はここに住むさ。ここに、住みたい」

 

 リゼはまだ難しい表情を崩さない。

 ……仕方ない。あんまり言いたくはなかったが、この際包み隠さず、素直に胸の内を語ろう。

 

「それに、さ」

「うん?」

「男の子が女の子に助けられたままなんて、格好悪いじゃないか」

「────」

 

 リゼはポカンと口を開けて、次の瞬間──笑った。

 

「ぷっ、あははははっ! そうか、格好悪いか!」

「え、あ、うん」

 

 え? そんなに面白かったの? 彼女のツボは随分わかり辛い。

 一頻り笑ったあと、リゼは苦笑しながら言った。

 

「仕方のない奴だ……私も親父に話をつけてきた後だったのに、どうしてくれる?」

「き、気が早いよリゼ……」

 

 行動派の彼女らしいといえばらしいが。

 

「はあ、まさかこんな強情な奴だったとはな」

「え、それリゼだってそうじゃ──」

「何か言ったか?」

「──いえなにも」

「ふん……私はまだ諦めたわけじゃない。何か問題があれば、今度こそ覚悟しておけよ」

 

 ……やっぱり強情じゃないか。

 

「よし! こうなったら、私がきっちり野営の心得を仕込んでやる! 厳しい訓練になると思うが、簡単に音を上げてくれるなよ!」

「え、リゼ、どうしてそういう話に──」

「今はリゼではなく教官と呼べ! 言葉の最後にはサーをつけろ!」

「リゼ、サーは男性に対する敬称だよ」

 

 そうしてリゼによくわからない知識を、日が完全に暮れるまで詰め込まれた僕は、無事にこの場を乗り切ることができたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

□□□□□□□□□□

 

 

 

 

 

 

 

 その日の晩、私はとある場所へ電話をかけていた。

『もしもし、リゼさん? どうかしましたか?』

「チノか。ちょっと相談があるんだが、時間は大丈夫か?」

『リゼさんが私に? 珍しいですね。今ちょうどお風呂から上がったところなので、構いませんよ』

「ああ、すまない。早速だが、ラビットハウスで新しくバイトを雇うことはできないか?」

『バイト、ですか? うちもそこまで余裕があるわけではないので、何とも言えませんが……』

「実はな。何も言わず雇って欲しい奴がいるんだ。なんなら、私の給料を少しそいつに回してくれてもいい」

『……年末年始の忙しい時ならともかく、今すぐとなると……とりあえず父に相談してみますが、その人はどんな方なんですか?』

「私が前に話した、うさぎを使ってサーカスをやってる男のことは覚えているか?」

『ええっと、確か近くにいるだけでうさぎが集まってきて、うさぎとお話もできるとか。その人が何か──』

「相手はそいつだ」

『──すぐに男性用の制服を用意します。背格好を教えて下さい』

「……」

『リゼさん?』

 

 ……父と相談するんじゃなかったのか?

 そんなこんなで話はトントン拍子に進み、電話の相手──チノとの通話を終えた私は、ベッドに仰向けになって寝転がり、目を閉じた。

 

「家に住まわせるのは諦めたが、このくらいのお節介は焼かせてもらうぞ」

 

 私の言葉は他の誰にも聞き止められる事なく、虚空へと溶けて消えていった。

 

 




読了有難うございます!

今回はシャロちゃんのご登場です。まさかの相談役ポジション。シャロちゃんもリゼちゃんも基本的に真面目なキャラなので、シリアスでも案外すんなりと話が進みました。早くココアちゃんにシリアスブレイクして貰おうと思います。

お分かりかもしれませんが、次回で漸くチノちゃんの出番となります。原作では見られなかったチノちゃんとうさぎたちの絡みも、頑張って書いていきたいと思います。

では。

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