「・・・いかんさん!司令官さん!」
「んあ・・・」
「もう9時なのです!起きるのです!」
「ふあああああ・・・あれ・・・もうそんな時間・・・?」
「そうなのです!デ-トに寝坊なんて、おこなのです!」
「す、すまん・・・」
俺としたことが二度寝していた・・・
とりあえず起きて顔を洗う。
「司令官さん、ご飯はどうするのです?」
「ん~・・・ホテルの朝食でもいいが・・・今から出かけてどっかで食うのもいいかな?」
「私は出かけるに賛成なのです!」
「おっし、んじゃ出かけようか」
「なのです!」
電は鼻歌を歌いながら荷物をまとめている。
まとめるといっても女の子らしいバックにいろいろ詰めているだけだが。
俺も準備しとくかねぇ。
「財布と・・・ケ-タイと・・・」
あと護身用に拳銃も・・・
「あれ、なんで拳銃持っていくのです?」
「ああ、まだ町が解放されたばっかりだろ?警察の目が隅々まで届いてるとは言いにくいしな」
「なるほど・・・」
「まぁ、撃つ事はないだろうけどな。一応だよ」
弾数的に少し不安だが、知り合いから納入した9mm拳銃を専用のホルスタ-にしまう。
予備弾倉は3つ。
「さて、出かけるか」
「なのです!えい!」
「おぅ!?」
「えへへ・・・恋人繋ぎ?なのです!」
電は満面の笑顔で腕をからめてくる。
可愛い。
ホテルを出て歩いていると声をかけられた。
見たところ海軍関係者のようだ。
「イーグルアイ大佐・・・かな?初めまして」
「え~っと・・・どちら様?」
「僕は今度からグレ-スメリア鎮守府に提督として配属になる、マ-カス・ランパ-トだ。シャムロック・・・まぁそう呼んでくれないかな」
「シャムロック?」
「ああ、僕が空軍時代だったときのTACネークさ。今は、この通り怪我で飛べなくなったんだけどね」
「へぇ・・・俺と同じ空軍パイロットだったのか」
「僕はガル-ダっていう飛行隊の2番機だったんだ。一番機は・・・今もどこかで飛んでいるんだろうな」
シャムロックはそう言いながら空を見上げた。
まるで大切な物がそこにあるかのような目だった。
「タリズマン・・・」
「タリズマン?」
「隊長機の名前さ」
「隊長機か・・・俺も長らく隊長機を務めていたからなぁ・・・ホント、飛行隊の仲間ってのは家族みたいだよな」
「まったくだ」
そう二人で笑いあった。
「あ、そういえば司令部から言われたんだけど、艦娘を4人ほどこっちに派遣させるんだって?」
「ああ、まだ誰を派遣するかは決めてないけどな」
誰を派遣するか・・・本当に悩む・・・
そんな事をしていると前方からフラフラの雷が帰ってきた。
今の今まで救助や応急治療をしていたのだろう。
「ふあああ~・・・つ、疲れた~・・・」
「おっと・・・大丈夫か?」
「しれーかん・・・もっと私に頼っていいのよ・・・」
「今の状況で頼れるかッ!!」
「はわわわ!!大丈夫なのです!?」
雷は俺に倒れ掛かってきた。
「はぁ・・・お疲れ様」
「えへへ・・・いっぱい助けたんだからぁ・・・」
「あ~・・・シャムロック、すまないがコイツを自室に運び込んでやれないか?」
「モニカ・・・」
「シャムロック?」
「ん、ああ・・・すまない、わかったよ」
モニカとつぶやいていたけど・・・なんだ?
「シャムロックさん、モニカって呟いてましたけど誰なのです?」
「ああ・・・聞こえてたんだね。僕の娘だよ・・・その、雷って子によく似ててね・・・いや、本人かと思うくらい似てたよ」
「どんな子なのです?」
「えっと・・・写真が・・・」
シャムロックは一枚の写真を取り出す。
「これがモニカだ」
「確かにそっくりなのです・・・」
ただ、似てはいるが雷のように元気ハツラツ!みたいな感じではなく、おっとりした感じだ。
「今娘さんは?」
「・・・死んだよ」
「し・・・」
「エメリア・エストバキア戦争でね・・・僕は国を守り・・・家族を失った・・・エ-スパイロットが、身内すら守れないなんて・・・」
「・・・ごめんなさい、なのです」
「いや、いいんだ。君たちに非はないよ」
「でも・・・」
「いいんだ。なんだが・・・こうやってそっくりな子と会えてちょっと嬉しかったんだ」
「そうなのですか・・・」
俺は何も言えずにいた。
俺も過去に空爆で家族を失った。
相手は・・・友軍の戦闘機だった。
家族が隠れていた建物の近くに敵の対空車両がいた。
それに誘導爆弾が直撃、爆発で建物が崩壊した。
思い出したくない過去だ。
俺もその上空を飛んでいたんだから。
「大佐、すまない時間を取らせてしまって」
「ああ、いやいいんだ」
「じゃあまた。あと・・・雷ちゃんを送り届けておくよ」
「ああ、お願いする」
シャムロックと別れ、町に向かう。
「さて・・・朝飯をどうすっかな」
「ん~・・・あ!あのカフェとかどうなのです?」
「お、いいな。行こうか!」
「なのです♪」
カフェに入り、軽い食事とコ-ヒ-を注文し席に着く。
俺たちはテラス席に行った。
少し寒いが空が快晴で差し込む日差しが暖かい。
「む・・・美味いなこのサンドイッチ」
「私のクロックムッシュもおいしいのです!」
「どれ、交換してみるか?」
「はい♪じゃ、あ~ん」
「あ~・・・え?」
「あ~ん、なのです!」
「あ、あ~ん・・・」
「おいしいのです?」
「うまッ!!なにこれうまッ!!」
中のホワイトソ-スは美味い。とにかく美味い。
外にかかっているチ-ズも香ばしい・・・
俺もこれ頼めば良かった・・・
「司令官さんのサンドイッチもおいしいのです!」
「だろ!でも電のクロックムッシュも美味かったな・・・」
「えへへ・・・」
電はちょっと照れるような顔をしてコ-ヒ-をすする。
「はうぅ・・・苦いのです・・・」
「ははは、ミルクとか入れたほうが苦ァァァ!!!!」
なにこれ濃い。すごく濃い。
しかもめっちゃ苦い。
でも香りはいい・・・
「ん・・・でもこれ後味がいいなこれ!美味い!」
「た、確かに・・・でも苦いのですぅぅ・・・」
苦いのを我慢して飲んでいる電を眺めながら俺もコ-ヒ-を飲んだ。
「さて、次はどこ行くかねぇ」
「あ、私お城行きたいのです!」
「そういえば昨日も言ってたな」
「はい!」
「んじゃ行こうか!」
近くのバス乗り場からバスに乗りお城に向かう。
その途中バスの中でそのお城に関するエピソ-ドが流れた。
笑顔を武器に敵を屈服させた王様の話だった。
「もうすぐ着くな」
「降りる準備なのです!」
バスの中から町の様子を眺めていたが思ったほど治安は悪化していないようだった。
深海棲艦による破壊は少なく町の状態も良かった。
「到着なのです~!」
「間近でみると・・・でかいな~」
電と手をつないで城に入る。
中の美術品などを見ていると奥に金色の王様の像が見えてきた。
あと隣に何かの看板があった。
「ん?なんだあの看板」
近寄ってみてみると・・・
「・・・金色の雷像って・・・」
どうやら応急救護や救難に回っていた雷が黄金の像として建造されるらしい・・・
というか、仕事早いなエメリアの連中・・・昨日今日の話だぞ・・・
完成図にはいつもの明るい笑顔で袖をまくる雷のポ-ズが書かれていた。
「お姉ちゃん・・・」
「お姉ちゃん人気者だな・・・」
「なのです・・・」
なんだか妙な気分だったが・・・
まぁいいか。
城を出てまたバスに乗り街に戻る。
「そろそろ昼飯時だな」
「もうそんな時間なのです?」
「ああ、12時前だよ」
「早いのです・・・」
「まだ時間はたっぷりあるさ」
俺たちはその後もいろんな場所を回り、ホテルに帰ってきたのは夜の10時前だった。
「ぷはー・・・あのレストランなかなか美味かったな」
「なのです・・・食べ過ぎたのです・・・」
「あの美味さでバイキングなんだもんなぁ・・・」
「しかも安いと来たので・・・」
「とりあえず風呂入るか」
「あ、お背中流・・・」
「今日は大丈夫ッ!!」
マッハで風呂場に入る。
「むぅ~・・・・・」
とりあえず体を流し、スッキリしたので外に出る。
「電、お次どうぞ~」
「ありがとうなのです!」
電は俺と入れ違いに入っていった。
「今のうちに派遣で残す艦娘のリスト作っとかないと・・・」
風呂場からは電の鼻歌が聞こえていた。
「とりあえず・・・雷は残すべきかなぁ・・・」
エメリアの英雄のようなもんだしなぁ・・・
あとは・・・
「戦力的にいそかぜ と うらかぜを残したいが・・・こいつ等残したらシャムロックの胃が溶けてなくなりそうだから・・・いや、引き離したら俺の明日の命が保障されん・・・やめとこう・・・」
そんな事を呟きながら仕事をしていた。
「お先なのです~」
「おかえり~」
「司令官さんなに作ってるのです?」
電がタオルで頭を拭きながらのぞいてきた。
シャンプ-のいい香りがする。
「派遣艦娘のリストだよ」
「期間はどれくらいなのです?」
「そうだな・・・まぁ・・・半年間は・・・」
「長いのです・・・」
「そうだな・・・まぁ、まだ期限はある。とりあえず今日は寝よう・・ふああああ・・・」
「えへへ、お疲れですもんね」
「歩き疲れた・・・」
「じゃあ、今日はもうお休みなさいなのです」
「ああ、お休み」
「だいすき・・・ちゅっ」
「俺もだよ。ああもう・・・可愛いやっちゃなぁ・・・」
俺はそのまま電を抱き枕のように抱き寄せて眠りについた。
~一ヶ月後~
日が経つのは早いもんだな・・・
俺はグレ-スメリア鎮守府に来ていた。
今日は派遣艦娘をシャムロックに引き渡すときだ。
「すまんな、雷、暁」
「いいのよ!レディ-にはこれくらい寂しくなんてなふええええええん!!!」
「泣いてんじゃねーかよ・・・」
「お姉ちゃん、半年間のお別れ・・・ですね」
「半年間なんてあっという間よ!司令官のことよろしく頼むわね!」
「な・・・!私の旦那さんだから大丈夫なのです!」
「えっへへ」
派遣した艦娘は暁、雷、飛龍、蒼龍だ。
戦力はこれでなんとかなるだろう。
「じゃあシャムロック。あとは頼んだよ」
「ああ、大佐。しっかりと預かった」
俺はそのままシャムロックと派遣した艦娘たちと別れ、空港に向かった。
あとは一緒に来た艦娘たちと一緒に横須賀鎮守府に帰還するだけだ。
「電、寂しくないか?」
「ふぇ・・・寂しく・・・ないのです・・・ぐすっ」
「よしよし」
やっぱり寂しいらしくちょっと泣いていた。
俺はその頭をゆっくりと撫でているといつの間にか寝てしまったようだ。
「あら・・・寝たか」
飛行機はもう滑走路に到達・・・離陸滑走を開始した。
ここから横須賀まで10時間程度だ。
俺も一眠りしよう。
そう思い眠りの世界へ落ちていった。
今回は上手い事かけたと思うよ!
ちょっと今後の話につまりそうだったから無理やりグレ-スメリア編終わらせてすんません!