横須賀鎮守府の日常   作:イーグルアイ提督

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円卓の鬼神

~いそかぜ~

 

鎮守府を出てはや6時間、もうあたりは暗くなってきた。

 

<<そろそろ作戦海域か・・・内容を再確認するぞ>>

 

「了解」

 

<<今回は米海軍との合同作戦だ。制海権は現在深海棲艦にある。俺たちは米海軍との連合軍として参加する。まぁ、必要事項はこんなもんか?あとは’’生き残れ’’それが唯一の交戦規定だ>>

 

「ずいぶんとさっぱりした交戦規定ですね・・・・」

 

<<昔っからの伝統なんだ、仕方ない>>

 

「了解、そろそろ作戦海域ですね・・・総員、戦闘用意!」

 

「了解っぽい!」

 

いつの間にか改二?というものになった夕立さんは目を赤く光らせていた。

普通に怖いです。

 

「向こうが赤く・・・・戦闘海域に突入します!」

 

闇夜が赤く照らされている。

燃え上がる艦船の炎のせいだろう。

無線を合わせると・・・

 

<<左舷魚雷!!>>

 

<<連合軍統合本部より入電、連合軍海上・航空戦力はすでにその40%を損失!>>

 

<<くそっ!数が多すぎる!手におえん!!>>

 

<<増援はまだか?!>>

 

無線からは味方の助けを求める声や砲声が響いてくる。

 

「みなさん、これより戦闘海域・・・」

「よーし!花火の中に突っ込むっぽーい!!」

 

「あ、ちょっ!!」

 

夕立さんが最大船速で突っ込んでいく。

 

「あらら、行っちゃったわよ?」

 

「私たちも続きます!第六のみなさん、夜戦はお任せします!」

 

「なのです!」

 

「ypaaaaaaaaaa!!」

 

そんな声といっしょに・・・

 

「ひゃっはああああ!!私の時間だあああああ!!!この海を私色に染め上げるよー!!」

 

と、奇声を上げ突っ込んでいく川内さんの姿があった。

 

「みんな元気ね・・・」

 

「マイケルさんも行きましょう、攻撃開始です!」

 

「了解、さて・・・どれから狙おうかしら・・・」

 

「第一目標・・・・チッ・・・敵味方が入り乱れすぎて・・・」

 

レ-ダ-には100以上の光点がある。

狙おうにもどれが敵でどれが味方が今一わからない。

IFFで判別はできるものの、砲撃が行おうにも味方に当たる確率が高すぎる。

 

<<識別信号受信・・・!艦娘隊だ!!>>

 

<<来た・・・来たぞ!天使のお出ましだ!>>

 

味方の士気は上がっているようだ。

ここから見える限り・・・敵艦は30以上・・・味方艦は20を下回っている。

 

<<こちら対潜哨戒機ブル-ハウンド!現在、敵潜水艦の情報なし!>>

 

<<こちら空中管制機ヘビ-クラウド、了解>>

 

<<ベインブリッジより艦娘隊!敵戦艦を片付けてくれ!>>

 

「こちら いそかぜ、敵艦の位置情報願います」

 

<<いそかぜ、こちらヘビ-クラウド>>

 

「こちら いそかぜ」

 

<<そちらより6㎞、ベインブリッジの真横4㎞の位置に敵戦艦だ>>

 

「了解しました!トマホ-ク発射します!」

 

VLSを解放する。

発射弾数は・・・3発!!

 

「トマホ-ク、攻撃はじめ!!」

 

轟音を上げ、艤装からミサイルが放たれる。

 

<<ソロモンの悪夢・・・見せてあげる!>>

 

<<電の本気を見るのです!>>

 

皆次々と敵艦を沈めていく。

その中でも夕立さんの戦果が著しい。

すでに3隻沈めている。

しかも3隻とも戦艦だ。

主力を失いつつある敵艦隊は劣勢になってゆく。

 

<<あの駆逐艦娘なんてヤツだ・・・アイツが戦況をひっくり返してやがる>>

 

<<悪魔だ・・・>>

 

<<そんな生易しいものじゃない>>

 

たしかに・・・悪魔なんてものじゃない。

あれは・・・

 

<<ああいうのはな、鬼神って言うんだよ>>

 

<<鬼神・・・>>

 

そう、鬼神だ。

目を赤く光らせ敵艦を容赦なく葬っていく。

その戦いっぷりに私は見入ってしまった。

 

「すごい・・・」

 

同時に恐ろしくも感じた。

 

<<こちらハルゼ-!敵艦撃沈!>>

 

<<こちらUSSアンツィオ!前方をふさぐ艦、離れてくれ!>>

 

<<ぐっ・・・!こちらソ-サラ-1!被弾したベイルアウトする!>>

 

<<隊長!>>

 

<<こちらAWACSヘビ-クラウド、敵脅威レベル低下。あと少しだ、叩き潰せ>>

 

「敵艦・・・あと15隻!」

 

<<あと何隻?!>>

 

「あと15・・・いえ13隻です!」

 

<<了解!!>>

 

<<もういっちょ撃沈っぽーい!これで6隻目っぽい!!>>

 

「鬼だ・・・」

 

確認できた戦果だけでも戦艦を3隻以上沈めている・・・

 

<<あの犬耳少女・・・鬼だ・・・>>

 

<<円卓の鬼神・・・>>

 

夕立さんに新たな通り名がつけられそうになっていた。

 

「主砲、撃ちー方ー始めー!!」

 

私も負けじと主砲を撃つ。

目標は敵駆逐艦だ。

 

「命中・・・撃沈!」

 

<<こちらAWACS、当海域に近づく艦影を補足、動きが妙だ。警戒せよ>>

 

「増援・・・」

 

そんな事を呟いていると混線で相手側の声が聞こえてくる。

 

<<目標を射程範囲内に補足>>

 

<<雷巡チ級より各艦、槍を放て>>

 

槍・・・魚雷?!

でも距離はだいぶある。

当たるのか・・・?

 

<<こちらブル-ハウンド!魚雷音・・・高速接近!複数、複数だ!避けろ!!>>

 

「ブル-ハウンド!魚雷は何本ですか?!」

 

<<最低でも20!早いぞ!100ノット近く出ている!>>

 

「100!?キャビテ-ション魚雷か・・・・!!」

 

周囲に細かい泡を発生させ抵抗を減らし、航空機並の速度で水中を進める魚雷・・・

ス-パ-キャビテ-ション魚雷・・・かつてユ-ク軍が開発していた魚雷だ。

なぜ深海棲艦が・・・

 

<<魚雷・・・どこなのです!?>>

 

<<雷跡が見えないっぽい!!それに早いよ!!>>

 

<<ぬあああああ!!!こちらシャイロ-!!被弾した!!船殻に亀裂!浸水発生!!>>

 

<<無理だ!避けきれない!!>>

 

<<弱音を吐くな!取り舵いっぱい!!>>

 

<<バカッ・・・!僚艦にぶつか・・・うわっ!!>>

 

<<メーデ-!メ-デ-!!こちらUSSレイクエリ-!僚艦と衝突!!機関部に浸水!!航行不能!航行不能!!>>

 

友軍と衝突する艦も出てくる。

すると・・・

 

<<あ・・・!!電、避けて!!>>

 

<<え・・・?>>

 

無線だけで状況がわからない。

だが・・・電さんに魚雷が迫っているのはすぐわかる。

 

「避け・・・!」

<<面舵いっぱい!!>>

 

レ-ダ-上で電さんと一隻の米軍艦が重なる。

 

<<くっ・・・!!>>

 

<<あ・・・あ・・・>>

 

<<こちらUSSサンプソン。嬢ちゃん、無事か?>>

 

<<あ・・・え・・・ぶ、無事・・・なのです・・・>>

 

状況はきっと被弾しそうになった電を米軍艦が庇ったのだろう。

 

<<無事か・・・よかった。こっちはスクリュ-軸をやられた・・・航行不能だ、総員退艦する!>>

 

<<わ、私のせいで・・・>>

 

<<この艦は最期に女の子を護れたんだ。本望だろうさ、救助頼むぜ天使ちゃん>>

 

<<りょ、了解なのです!>>

 

「みなさん!無事ですか?!」

 

<<なんとか・・・>>

 

<<無事っぽい!>>

 

良かった・・・

あとは敵艦に向けて攻撃を行わないと・・・

 

「マイケルさん!トマホ-ク撃てますか?」

 

<<撃てるわ、敵艦隊ね?>>

 

「はい!攻撃開始してください!」

 

<<了解、攻撃はじめ!>>

 

「撃ちー方ー始めー!!」

 

その攻撃を行ったすぐあとだった。

もう一度混線で敵の情報が聞き取れた。

 

<<全艦、もう一度だ、放て!!>>

 

<<敵高速魚雷発射!>>

 

<<こちらヘビ-クラウド、敵増援機確認・・・速い!>>

 

「敵機まで・・・チッ・・・!!」

 

混線で敵航空隊の無線も聞こえてきた。

 

<<・・・ロト1より各機、野犬狩りだ、艦娘を沈めるぞ>>

 

<<了解っ!>>

 

あの艦載機しゃべれるんですか!?という突っ込みが発生したが気にしない。

とりあえず・・・アポト-シスで迎撃してみよう。

 

「司令官!アポト-シスでの敵機迎撃を進言します!」

 

<<了解、ちょっとまて>>

 

私はいつでも撃てるように敵機の通過予想地点をロックオンしておく。

 

<<許可する!味方に当てるなよ!>>

 

「了解!」

 

次の瞬間、真っ赤に塗装されたミサイルが発射される。

炸裂位置はぎりぎり味方に届かない程度だ。

 

<<こちらヘビ-クラウド、友軍艦艇さらに沈没。戦力50%>>

 

<<敵は!?敵の戦力は!?>>

 

<<敵戦力・・・30%以下に減少、あとひと踏ん張りだ>>

 

<<了解・・・了解!!>>

 

戦力が削られていく。

いつまで持つか・・・

しかしその間にも夕立さんはさらに敵艦船を撃破、もう10隻以上撃沈している。

通り名は完全に円卓の鬼神で決定らしい。

 

「敵艦船・・・あと4隻!」

 

<<敵脅威レベルさらに低下。敵は撤退を開始、B7Rの制海権を確保した>>

 

<<やった!やったぞ!!>>

 

<<ざまぁみろ!!深海に引きこもってやがれ!!>>

 

<<ヘビ-クラウドより艦娘隊、補給艦が3時間後に当海域に到着する、補給が完了後、エメリア軍ミサイル駆逐艦マリ-ゴ-ルドと合流しグレ-スメリアに迎え。また、この後エメリア軍の空中管制機ゴ-ストアイが貴艦隊の指揮をとる>>

 

「こちら いそかぜ、了解しました。お疲れ様でした」

 

補給艦が来るまで待機か・・・

 

「いそかぜさん!お疲れっぽい!」

 

「はい、お疲れ様・・・って何持ってんですか?!」

 

「ぽい?」

 

夕立さんは撃沈した敵艦のツノ?のような物を握りしめていた。

 

「なんでそんなもの持ってるんですか?!これ戦艦のじゃないんですか!?」

 

「殴ったら取れたっぽい!」

 

「戦艦殴り倒したんですか!?」

 

「うん、弾装填中だったから右ストレ-ト入れたら沈んだっぽい!」

 

「どんな威力なんですか・・・」

 

「試すっぽい?」

 

「やめてください死んでしまいます」

 

さすが円卓の鬼神・・・とか思っていた。

てか円卓の鬼神って・・・司令官の昔の通り名ですよね。

二代目ですか・・・

そんな会話をしていると・・・

 

<<なぁ、艦娘の嬢ちゃん>>

 

「?なんですか?」

 

<<このあとよ、俺たちの船でパ-っとどうよ!>>

 

「・・・下心が声色から漏れ出てますよ、USSゴンザレスのクル-さん」

 

<<あ、テメッ!!何作戦中にナンパしてんだ!>>

 

<<げっ・・・砲雷長・・・>>

 

<<お前、便所掃除2週間な。ちなみに第三ブロックの>>

 

<<ちょっ!!あそこ臭くて有名な場所じゃないですか!!しかもなんか出るってみんないうし!>>

 

<<ちょうどいいじゃないか、便所はキレイになるし幽霊は見れる。最高だな>>

 

<<地獄だ・・・・>>

 

そしてプツリと無線が切れた。

 

「あ、あはは・・・向こうも大変ですね・・・」

 

「まぁ、仕事中にナンパしたし、自業自得じゃない?」

 

私はUSSゴンザレスの名も知らないクルーに心の中で合掌しおしゃべりしながら補給艦を待っていた。

 

 




夕立=鬼神って感じがする俺氏。
ちなみに俺の所の夕立はまだ改二じゃないっぽいいいいいいいいいいいい!!!

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