横須賀鎮守府の日常   作:イーグルアイ提督

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いそかぜの悪夢

~いそかぜ~

 

「リンク17解除、対水上戦闘・・・用意!!」

 

「水上戦闘用意」

 

「水上戦闘、ハ-プ-ン攻撃始め、目標「うらかぜ」。発射弾数2発」

 

CIC内に響く鐘の音・・・戦闘が始まる音・・・

正直言ってこれが私の初実戦。

目標は・・・味方の艦。

やめてと叫ぼうにも声が相手に届くはずもなく、システム的な邪魔もできない。

今CICの中にいるのは某国の対日工作員とそれに同調する海上自衛隊員・・・

 

「目標位置 33°13'N 138°41'E」

 

「ハ-プ-ン発射用意・・・よし」

 

着々と味方に対して発射されるミサイルの情報が入力されていく。

今の私は強盗に襲われて縛られた人質みたいなものだ。

何もできない・・・たとえ出来ても殺される。

そんな状況だ。

 

「ハ-プ-ン発射始め!!」

 

何で同じ日本人を攻撃できる。

もうここまで来ると私は相手が迎撃してくれるのを祈ることしか出来ない。

 

「一番発射用意・・・撃てぇ!!!」

 

軽く船が揺すられ、ハ-プ-ンが発射される。

レ-ダ-にも表示される。

もうそこからはほとんど記憶がない。

呆然と画面を見ていたのは分かっている。

うらかぜは一発ハ-プ-ンを撃墜するも2発目が命中・・・轟沈した。

乗員の生存者はほとんど居なかったそうだ。

 

「・・・いそかぜ・・・ユルサナイ・・・」

 

「ひっ!?」

 

何度となく私の前に頭から血を流したうらかぜが現れる。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・!」

 

「・・・どうして・・・撃ったの・・・ユルサナイ・・・絶対ユルサナイ・・・」

 

そして うらかぜ はゆっくりと私のほうに歩いてくる。

・・・全身ボロボロの姿で。

 

「やめて・・・いやあああああああああああああ!!!」

 

うらかぜ は錨のような物を私に振りかざす。

 

「・・・・いそかぜさん!!」

 

「やめ・・・あ、え・・・?」

 

「ど、どうしたのです!?ものすごいうなされてましたけど・・・」

 

「ハァ・・・ハァ・・・すいません・・・昔の夢を・・・」

 

「昔?」

 

「いえ・・・何でもありません・・・悪い夢です・・・」

 

ふと起き上がると病室だった。

 

「あれ・・・なんで私こんな場所に・・・」

 

「あ、えっと・・・廊下で倒れてたらしいですよ(棒読み」

 

「そう・・・ですか・・・」

 

「元気ないのです・・・大丈夫ですか?」

 

「大丈夫・・・だと思います・・・」

 

「あの、あとで司令官さんが任務があるので司令室に、と」

 

「分かりました」

 

とりあえず歩けそうなので立ち上がる。

あの うらかぜ の顔がまだ頭に残っている。

もう何度目だろうか・・・この夢をみるのは。

たまに千里馬艦隊事件の夢もみるが・・・

 

「司令官、入ります」

 

「お、来た来た。今日任務に行ってほしいんだけど大丈夫か?」

 

「任務・・・ですか・・・」

 

「海上護衛なんだけど・・・タンカ-を守ってくれって依頼が入ってて」

 

「分かりました。編成は?」

 

「お前と・・・あとは雷と響の3人だな」

 

「了解しました」

 

「あ、そうそう」

 

「?」

 

司令官は一枚の書類のようなものを取り出す。

 

「これ、お前積んでなかったろ?」

 

「これ・・・?」

 

それは・・・

ハ-プ-ンだった。

 

「ハ、ハ-プ-ン・・・・・」

 

「お前さん、ハ-プ-ン積んでなかったしな。この際・・・」

「い、いや・・・」

 

私の脳内にあの光景がフラッシュバックする。

 

「いそかぜ・・・ユルサナイ・・・ユルサナイ・・・!!」

 

「うわああああああああああ!!!」

 

「い、いそかぜ!?大丈夫か!!」

 

「いやああああああああああ!!!!」

 

「おい!!」

 

そこからの記憶がない。

気づけばまた病室だった。

 

「お?起きたか。大丈夫か?」

 

「・・・はい」

 

「いったいどうしたんだ?」

 

「作戦は・・・」

 

「え?」

 

「作戦には・・・参加できます・・・」

 

「いやまぁ・・・そりゃ護衛任務は明日だから大丈夫だけど・・・」

 

「すみません・・・」

 

「いったいどうしたんだ?あんなに錯乱して・・・」

 

そうか・・・司令官は知らなかったんだ。

 

「・・・お話します・・・」

 

「無理はするなよ」

 

「はい・・・」

 

私は過去にあった話をする。

・・・いそかぜ事件の話を。

 

「・・・でもそりゃ、先代のお前だろ?何で・・・」

 

「私は・・・その いそかぜ を引き上げて作られたんですよ・・・?もちろん、そのときの記憶だってあります」

 

「そう、だったな」

 

「司令官・・・」

 

「おわっ!?」

 

思わず抱きついてしまう。

泣きながら。

 

「私は・・・怖いんです・・・ずっと夢にでる うらかぜ が・・・それに・・・また味方に砲口を向けてしまいそうで・・・」

 

「・・・」

 

司令官は黙って頭をなでていてくれた。

 

「すみません・・・もう少し・・・このままで・・・」

 

「ああ」

 

少したったら落ち着いてきた。

いつまでもこのままではいけない。

 

「すみません・・・そろそろ明日の準備をしてきます」

 

「ああ、明日は頑張れよ」

 

「はい!」

 

「あ、そうそう、VLS発射型のトマホ-クあるんだが・・・それなら大丈夫か?」

 

「はい、それなら・・・」

 

「んじゃ工廠で装備して試し撃ちでもしてきなさいな」

 

「はい、ありがとうごさいます」

 

私が病室を出ようとしたとき、何だかものすごい笑顔なのにドス黒いオ-ラをまとった電さんとすれ違った。

小声で許さないみたいなこと言ってた。怖い。

 

「あ、電。明日俺ちょっと出張に・・・あれ、何でそんなに笑顔なんですの?何でそんなに青筋浮かべてるんですの!?」

 

「・・・司令官さん、ちょっと裏まで来やがれ、なのです」

 

「え、待って・・・あ、ちょ、その関節はそっちに曲がらっ・・・ぎゃああああああああああああ!!!!」

 

「なのです♪」

 

「ちょ、まっ・・・」

 

メキョッとか言う音が病室から聞こえてきたが怖いのでそそくさと工廠に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌日~

 

「テ、テ-トクゥゥゥゥゥ!!!!」

 

そんな金剛さんの絶叫で目が覚める。

驚いて声のしたところへ向かうと・・・

 

「し、司令官・・・」

 

花壇に頭だけ埋まり逆立ち状態の司令官の遺体(?)があった。

何故、頭だけ埋まってしかも体は気をつけの状態で固定されてるのか謎過ぎる。

 

「と、とりあえず引き抜きましょう!!」

 

「そ、そうネ!」

 

引き抜くと・・・

 

「・・・死んでる」

 

「テ-トクゥゥゥゥゥ!!!!」

 

死んでいた。

 

「そ、そうネ!メディックを!!」

 

「でもそんなのどこに・・・」

 

ふと上を見上げると・・・

 

「え・・・誰あれ・・・」

 

パラシュ-ト降下してくるグラサンつけた黒人米兵が・・・

彼は降り立つと救急箱のようなでっかい箱を司令官の横にほうりなげ除細動器のようなもので・・・

 

「クリア!!」

 

司令官の体に押し当てる。

すると・・・

 

蘇生 100

分隊蘇生 20

 

とかいうテロップなようなものが出てきた。

意味が分からん。

でも司令官は復活したようだった。

 

「うっ・・・お、俺は・・・」

 

「テ-トクゥゥゥゥ!!!」

 

「おわああ!!」

 

「死んじゃったと思ったヨー!!!!」

 

「おれ自身死ぬかと思った・・・」

 

いえ、死んでましたアナタ。

瞳孔開いて心臓止まって呼吸止まってました。

 

「ゴリ・・・すまない」

 

ゴリと呼ばれた黒人米兵は親指を立てて走ってどっかに行ってしまった。

 

「・・・司令官・・・昨日電さんに何されたんですか・・・」

 

「・・・言うな・・・」

 

司令官は青ざめていた。

目撃者によれば終始、ものすごい笑顔の電さんがボコボコにした司令官を埋めてさっきの状態にしたとか・・・

怖い。

 

「仲直りは出来たんですか?」

 

「・・・あとでしてくる・・・」

 

そういいながら司令官は電さんのいる寮に向かっていった。

・・・・ていうか、さっきの除細動器で復活したのはいいけど外れた関節とかまで元通りになってません!?

そんな話を金剛さんにすると・・・

 

「ああ、あの米兵さん、ヘッドショット食らおうが戦車に轢かれようがトマホ-クの直撃食らおうがあの除細動器と救急パックで一瞬で治療できるって凄腕ネ」

 

「え、ええええええ・・・・」

 

凄腕とかいう問題じゃない。

とりあえず私は装備を整え、司令室に向かう。

 

「司令官、入ります」

 

入ると・・・

 

「し、司令官さん・・・あの・・・本当にごめんなさいなのです・・・」

 

「あ、うん・・・大丈夫・・・誤解解けたならいいの・・・」

 

泣きながら司令官に謝っている電さんがいた。

・・・誤解であそこまでされたのか・・・

 

「あ、いそかぜ、今日の作戦は1200までに出発、タンカ-に合流してくれ」

 

「はい、分かりました」

 

「特にこれといって説明することはないからな・・・頼んだぞ!俺はちょっと近場のブラック鎮守府を殲滅に・・・あ、いや視察に行くから司令官代理は電だから」

 

「了解しました」

 

雷さんや響さんを探さないと・・・

 

「あ、二人なら待機室にいるから」

 

「了解です」

 

さて・・・気合入れて頑張ろう。

私は待機室に向かって歩き出す。

・・・まだ私の頭の中には傷だらけで血まみれの うらかぜ の顔が残っていた。




投稿遅れてすんません!
こんかいはよく出来たと思うお!
BFネタ分かる人がいるかな・・・?

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