最終回はきっとみんな笑ってるよね?
〜不知火〜
「夕立、右の林を警戒してください。何かいます」
「分かってるっぽい」
夕立は50口径機関銃を林に向けたまま警戒している。
確実に何かがいる。
《こちらノーマッド61!もうまもなく上空に到着!》
「了解しました。林に何かいます、こちらで警戒対処します」
《了解!》
ヘリの音が大きくなる。
もうすぐ近くまで来た時だった。
林から不意打ちのようにロケット弾が発射された。
RPGだ。
《右にRPG!》
ヘリはぎりぎりで回避した。
「見つけた!」
夕立はバックブラストを確認した場所一帯に機関銃を撃つ。
《こちらノーマッド61!地上に複数の兵員!ガンズ、RPGだRPG!やられる前に殺れ!!》
真上のヘリから機銃掃射が始まった。
夕立も合わせて機銃掃射を開始した。
《こちら吹雪!大丈夫ですか?!》
「こちらで片付けます、でも急いで」
《了解です!》
《こちらノーマッド!あらかた片付いた、隊員を降下させる!》
ヘリは少し移動してホバリングを開始した。
《よし、降下地点だ!》
《ロックンロール!》
《GoGoGo!!》
10名の隊員がファストロープを伝って降下してくる。
ものの一分で展開が完了した。
《マジック、こちらノーマッド。これよりCSARに移る》
《マジック了解。まだ周囲にRPGを持った敵が潜んでいるかも知れない、注意せよ》
《了解》
降りてきた隊員達はすぐに私の周りに集まった。
「ハンマーだ、よろしく・・・って言っても同じ鎮守府だがな」
「はい、よろしくです。今のところ敵の攻撃は軽微です。でも念のため周囲の警戒を怠らずに。吹雪隊の到着後、私たちは先行して建物に突入、その際に数名付いてきてください」
「了解、では隊を分けよう」
「お願いします」
吹雪達の到着まであと5分程度。
上陸は吹雪と伊19らしい。
大丈夫だろうか。
「もう1度内容を再確認します。この研究所のような場所の調査及び施設の制圧です。研究施設にはなるべくダメージを与えない事が重要な事項です」
「了解っぽい」
「夕立、射撃はなるべく3〜5発ずつの連射で設備にダメージを与えないように」
「うぅ〜・・・了解っぽい・・・」
「外なら好きなだけ撃ってください」
夕立は撃ちまくれないのが少しお気に召さないらしい。
作戦内容を再確認してるとようやく吹雪と伊19が合流した。
「お待たせしました!」
「お待たせなのね!」
「お疲れ様です。これより突入します」
「あれ?この人達は?」
「ウチからの増援です」
「よろしく。ハンマーだ」
吹雪達の武装は2人とも四四式騎兵銃だ。
まぁCQB向きではあるか・・・
「行きましょう、夕立、残弾数の把握は確実に」
「了解っぽい!」
わたしたちは施設に前進を開始する。
「不知火さん、その銃ってどこから持ってきたんですか?」
「これは元々ウチの装備です。年代的にもこっちの装備が主流だと思うのですが・・・」
敵は自動小銃でこっちはボルトアクションライフル・・・戦争末期じゃないんだから・・・
と心の中で呟く。
「ハンマー隊は施設の上からお願いします」
「了解した」
ハンマー隊は側の階段を登っていく。
「突入します」
ドアに手をかけるが当然と言うべきか鍵がかかっている。
「当然ですよね」
「どうしますか?」
吹雪は困った顔で言ってきた。
だがこういう事は想定内、ドアブリーチ用の爆薬を持ってきている。
「吹き飛ばします」
「いきなり派手にいくのね」
「鍵を破壊するだけです」
爆弾を取っ手にかけて両脇に張り付くように指示した。
「破壊」
爆薬を爆発させドアを吹き飛ばした。
私と夕立が突入し、続いて吹雪達が来た。
「クリア」
「クリアっぽい」
「敵影無し・・・なのね」
施設内は少し薄暗く、薬品のような臭いがした。
「この臭い・・・なんか危ないお薬っぽい・・・」
「ですね」
「不知火さん、あっちに下に降りる階段が」
「了解、下に行きましょう。ハンマー1聞こえますか?」
《こちらハンマー1》
「我々は地下に降ります。そちらも上階の捜索が終わったら地下へお願いします」
《了解》
《こちらノーマッド61、撃墜された搭乗員を救助。目立った怪我は無さそうだ。これより周囲を警戒する》
《マジック了解》
ヘリが無事に救助を終えたようで一安心だ。
上空ではまだ突発的に空中戦が起きているようだ。
「地下施設って何か嫌な雰囲気なのね」
「そうですね」
「きっと捕らわれた女の子がエロ同人みたいな事されてるのね!」
「・・・・」
「ぽい?」
夕立は分かってないようだった。
「エロ同人みたいな事ってどんな事っぽい?」
「エロ同人みたいな事っていうのはね・・・」
「わー!わー!」
「吹雪、大声出さないでください」
「だ、だって・・・」
「敵がいたら・・・」
呆れ気味に前を向いた時だった、壁にチラッと銃口が見えた。
「コンタクト!!」
次の瞬間、敵が撃ってきた。
「伏せるっぽい!」
階段だったために逃げ場がない。
私は伏せる時に壁際に敵の姿を確認したので素早く反撃した。
敵は壁の向こうにいるから当たってるのか当たってないのか分からない。
だが私が数発射撃した後に撃ってこなくなった。
「やったっぽい?」
「分かりません」
私はゆっくりと階段を降りる。
下からは少しだがうめき声のようなものが聞こえた。
当たった?
「・・・」
階段を降りきって曲がり角に着く。
私は拳銃に持ち替えてゆっくりと出た。
そこには肩と足に被弾したヲ級がいた。
側には深海棲艦特有なのか異形のライフルがあった。
ヲ級は撃たれた肩を抑えて恐怖に染まった顔でこちらを見ている。
出血自体は大したことない。
「どうしましょうか」
私はそばにあった銃を蹴飛ばして遠くにやる。
ヲ級は歯をガチガチと鳴らせながら何も言わずに恐怖に染まった顔で見上げてきていた。
私の銃口はずっと彼女に向いている。
「素直に言えば助けます、仲間はどこに居ますか?」
ヲ級は恐怖で喋れないのか涙目で震えながら首を振る。
「・・・そうですか」
銃を構え直して頭を狙う。
ほかの仲間の位置を知らないなんて有り得ない。
「素直に言えば助けると言ったんですが、聞こえませんでしたか?」
私はゆっくり引き金に指を掛けた。
その時いきなり羽交い締めにされた。
「やめてください!本気で怖がってます!」
「・・・敵に同情するんですか?」
吹雪だった。
私は冷たく言い放つ。
「私は約束しましたよ。素直に言えば助けると」
「でもこんなに怯えて・・・」
吹雪はヲ級を指さそうとした時だった。
ヲ級はさっき蹴飛ばした銃に手を伸ばそうとしていた。
夕立がそれに気づいてヲ級の腕を踏みつける。
「何してるっぽい?」
機関銃の銃口がヲ級を捉えていた。
「妙な真似は止めた方がいいっぽい」
「・・・イク、この子をヘリの位置まで連れて行ってください」
「り、了解なのね・・・ほら、行くの」
念のため手を縛って連れていく。
「吹雪はここでイクの到着を待ってください。夕立、行きます」
「了解っぽい!」
2人で先に進む。
少し調べたところこの施設は地下1階までしかないようだ。
「何かここ・・・変な臭いっぽい・・・」
夕立が一つの部屋を指さして言う。
確かになんだか変な臭いがする。
「よし、行きましょう」
ドアに鍵はかかってない。
中からは何かが動く音がした。
「突入」
ドアを蹴破るのと同時に夕立が先行して突入、続いて私が行く。
不意だったのか中にいた敵は満足に準備出来ていなかったようだ。
1人、また1人と撃って行く。
「クリア」
「クリアっぽい」
倒れているのはタ級やヌ級だった。
タ級が指揮官クラスだろうが、頭を撃ち抜かれて既に息絶えていた。
聞こうにも聞けない。
《こちらハンマー1!3階でこの研究所の責任者らしき男とその付き添いの深海棲艦を確保した!》
「了解」
辺りを見回すと何かのポッドのようなものが沢山ある。
ここがその深海棲艦の研究室なのだろうか。
「夕立、ポッドを開けられますか?」
「え・・・これあけるっぽい・・・?」
「当たり前です」
中身の事なんて想像したくもないが開けて中身を見るのも任務だ。
「中に何もありませんように・・・」
夕立は恐る恐るポッドのロックを解除して扉を開ける。
「う・・・やっぱり開けなきゃ良かった・・・」
中には何か半液体状の物が人の形を作ろうとしていた。
このポッド内で深海棲艦が作られていたのだろう。
「あれ?このスイッチって・・・」
夕立が壁に付けられたスイッチに気づいてそれを押した。
するの部屋の奥の壁が開いた。
奥には階段が見える。
「まだ地下がありますね・・・念のためハンマー隊の到着を待って行きましょう」
「了解っぽい」
その数分後に吹雪と伊19が到着した。
「あの子の様子はどうでした?」
「ひどく怯えてたけど、怪我も大したことないし大丈夫なのね。そっちの航空機に乗せたの」
「了解しました」
《こちらハンマー、上階で確保したHVTをヘリに乗せた。これよりそちらに向かう》
「了解。マジック、聞こえますか?」
《こちらマジック》
「舞鶴の部隊の到着予定は分かりますか?」
《もうあと10分ほどで到着予定》
「了解しました。到着後は施設周辺の安全確保を指示しておいてください」
《了解》
残弾を確認しているとイクが興味深々にポッドに近づいていた。
「このポッド・・・もしかして中身は・・・」
ジュルリと涎をすする音が聞こえた。
たぶん中でR18なことを想像していたのだろうがそんないい話はない。
「中は見たら後悔しますよ」
「そんなに凄い事になってるの?」
「グロイ意味では凄いことになってますね。めちゃくちゃ臭いですし」
「うぇ・・・」
イクは汚いものにでも触ったかのような顔をしてその場を離れた。
そんな事してるウチにハンマー隊も到着した。
「この下に新たな施設を確認しました、ここに突入します」
「了解」
「吹雪とイクはここでこの部屋の安全確保をお願いします」
「了解です!」
「では行きましょう」
ゆっくりと階段を降りていく。
下にはもう一つの扉があった。
これは電子ロックみたいだ。
「パスワードが無いとダメですか」
「ふむパスワードか・・・それならここにあるぞ」
ハンマー隊の1人がC4爆薬を取り出す。
それならこのドアを簡単に吹っ飛ぶだろう。
「では扉から離れましょう、お願いします」
「了解」
鼓膜が破れそうになる爆発音を感じた。
下を見るとドアが無くなっていた。
「行きましょう」
素早く中に突入する。
その時、たぶん全員がその状況を信じられなかっただろう。
中には日本海軍の制服を着た男が立っていた。
階級は中将だった。
周りには鎖に繋がれた艦娘達がいた。
そして男の周りには取り巻きのように深海棲艦が。
男はまさか扉が吹き飛ばされるなんて想像もしてなかったんだろう。
こちらを見て硬直していた。
「なっ・・・!」
男が拳銃を抜く前に取り巻きの深海棲艦を撃つ。
私がその間に男に体当たりして押し倒した。
「クソッ!離せ!!」
「動かないでください。じゃないと額でタバコ吸えるようにしますよ」
だが男は私を振りほどこうともがく。
拳銃のグリップ部分で男の鼻頭を思いっきり殴打した。
「ーーーーー!!!」
鼻を抑えて声にならない悲鳴を上げていた。
「夕立、その周りの連中は何人か生かしておいてください」
「了解っぽい」
ハンマー隊の人は鎖に繋がれていた艦娘を解放していた。
私は男の胸ぐらを掴む。
「・・・胸糞悪いですね。今からあなたの歯を全部折って飲ませてやりたいですが生かしておいてやります。どうせ後で殺されると思いますが」
「クソ・・・海軍の連中は昭和で頭が止まってると思ってたのに・・・」
「残念ですが、私達の司令官は元々アメリカの特殊部隊の人ですので」
両手を縛ってハンマー隊に身柄を渡した。
捕まえた深海棲艦はタ級とヲ級だけだった。
他はみんな死んでいた。
「拘束されていた艦娘達は大丈夫ですか?」
「何かひどく衰弱してるけどまだ何とかなりそうっぽい」
「了解、回収のヘリを要請しましょう」
証拠になりそうな書類や写真などを撮って外に出た。
〜提督〜
《マジックより全部隊へ。作戦の成功を確認した。敵の奇襲に警戒しつつ帰投を開始せよ》
「ふぅ・・・一安心って所だな」
「そうですね・・・誰も怪我しなくて良かったのです」
「そうだな」
「にゃっ!?」
電を抱き寄せて頭を撫でた。
「な、なんでいきなり撫でるのです!?」
「んー、何となく。強いて言うなら一安心したからかな?」
「そ、そうですか・・・」
電は顔を真っ赤にしていた。
その時不知火から連絡が入る。
《司令官、不知火です》
「聞こえるぞ。お疲れ様」
《はい。あの、報告なのですが》
「んなモン帰ってからすればいい。帰り道には気をつけろよ」
《いえ、緊急の報告です》
「ん?緊急?」
何やら嫌な予感がする。
《施設内で日本海軍の将校を捕縛しました》
「捕縛?保護じゃないのか?」
《いえ、深海棲艦に協力している様子でした。まるで実験材料のように艦娘達が鎖で繋がれていました。》
「・・・嘘だろ」
《今、ノーマッド61に研究所の責任者といっしょに乗せて帰投中です》
「了解した」
「どうしたのです?」
「ちょっと不知火から深海棲艦について報告でな」
「もしかして製造方法分かったのです?」
「まぁそんな所かな?電、ちょっと済まないが席を外してもらっても大丈夫かな」
「はい、戻っていい時に連絡してくださいなのです」
電はたぶん俺の嘘に気づいただろうが気にしないようにしてくれていた。
海軍の将校がなぜそんな所にいる・・・
俺は電話を大本営に繋げる。
「・・・」
《もしもし?》
「横須賀鎮守府だ」
《お!大佐か!どうだ作戦は》
「成功しました。あと報告なんですが」
《報告?》
「施設内で海軍将校を捕縛しました」
《なっ!?どういう事だ!》
「分かりません、ただ深海棲艦と共に居て、実験材料のように周りには艦娘が鎖に繋がれていたそうです」
《・・・分かった、こちらでも調べてみる。この事は内密にな》
「了解しました」
電話を切った。
あのクソ野郎から全部吐かせてやる。
「ノーマッド、提督だ。聞こえるか」
無線機を取ってノーマッドを呼ぶ。
《こちらノーマッド61。感明よし》
「到着までどのくらいだ?」
《あと2時間弱です》
「了解。確保したクソ野郎は生きてるか?」
《少しボコった程度ですが生きてます》
「了解、まだ殺すな」
《了解》
無線機を置いて電にもう帰ってきていいと連絡した。
「顔を見たら殺しそうだ・・・」
深海棲艦の製造方法くらいなら別にこんな怒りは感じていない。
その開発責任者を連れてこられた所で普通に製造方法を聞いて終わりだ。
だが今回は話が違う。
身内が何故その場に居たのか。
何としても吐かせないと。
「司令官さん、入ります」
「あいよ」
「どうでした?」
「んー・・・まぁ・・・」
「まぁ何となく嫌な事あったって予想がつくのです」
「飛びっきり嫌な事だがな・・・」
ため息を付きながら電が入れてくれたお茶を飲んだ。
〜2時間後〜
ヘリの音が聞こえる。
ノーマッドが帰ってきた。
「ハンマー、研究所の責任者は別室で尋問しろ。クソ野郎は俺に渡せ」
「了解」
「くれぐれも条約に違反しないようにな」
「それは提督に言えますけどね」
そう言ってハンマー隊の隊員は研究所に居た科学者らしきものを連れていった。
「お前はこっちだ」
「離せこのクソッタレ!俺が誰だか分かってんのか!!」
喚く中将を連れて倉庫に行く。
中にはジェームズが待っていた。
「こいつ?」
「そうだ」
「ふーん・・・」
「なんだよ姉ちゃんが俺に尋問しようってのか、ご褒美だな」
「軽口叩けるのも今のうちだ。今すぐ殺してやりたいがまだ生かしておいてやる事に感謝しろ」
きっと今の俺は電が見たら泣きそうな顔をしているだろう。
中将を椅子に縛り付ける。
「お前・・・俺は中将だぞ!上官にこんな事していいと思ってんのかクソッタレ!」
「うるせえんだよ」
思いっきり腹を蹴飛ばす。
「司令官、私がやるから帰ってていいよ」
「そうか・・・任せた」
「オイ!お前は自分の手を汚したくないからって女の子に尋問させるのか!」
俺はそんな罵声を受け流しながら倉庫を出た。
代わりに保護された艦娘達を受け入れる準備をする。
とりあえず執務室でお茶でも出してやろう。
そう思いながら執務室へ向かった。
何か微妙な出来な気がする