横須賀鎮守府の日常   作:イーグルアイ提督

103 / 131
うらかぜの裏

~いそかぜ~

 

ミサイルが・・・

発射されたミサイルの白煙を見ながら茫然とする。

 

「くっ・・・もう射程圏外・・・」

 

もうあとは鎮守府の防空装備に頼る以外ない。

無線からは攻撃部隊が敵施設を破壊したと言っている。

作戦自体は成功・・・だが、ミサイルは行ってしまった。

 

「もっと早くレ-ダ-で気づいていれば・・・」

 

自分を責めてもどうしようもない。

攻撃部隊は続々と撤退を開始している。

今は司令官を信じて味方を援護しないと・・・

 

「赤城さん、撤退を援護します」

 

<<了解しました、でも・・・>>

 

「ミサイルは司令官が何とかしてくれます、急いで撤退を」

 

<<・・・了解しました>>

 

レ-ダ-を注意深く確認して敵の動きを確認する。

施設自体は完全に破壊され、ミサイルの脅威はなくなった。

潜水艦隊も同じだ。

 

「まだ敵影は無し・・・」

 

その時、司令官から無線が入る。

 

<<いそかぜ、聞こえるか?>>

 

「司令官?はい、聞こえます」

 

<<イチかバチかの賭けを行う。強力な電磁パルスが起きるから注意してくれ>>

 

「何を・・・」

 

<<宇宙空間で核を爆発させてミサイルを爆風に巻き込む>>

 

「・・・そんな無茶苦茶な・・・」

 

<<無茶苦茶だろうがやらないと日本が終わる、とにかく撤退を急いでくれ>>

 

「了解」

 

迎撃ミサイルじゃなくて宇宙空間で核弾頭を爆発させて迎撃なんて・・・

まるで60年代・・・

 

「今は信じなきゃ・・・」

 

そう自分に言い聞かせ、レ-ダ-を再び確認する。

しかし、レーダ-には敵艦隊の艦影が表示されていた。

 

「やっぱり・・・赤城さん聞いてください、敵艦隊が出現しました。攻撃可能な艦載機は艦隊の護衛を行わせてください」

 

<<敵・・・!了解しました!>>

 

レ-ダ-には多数の機影も表示される。

敵には空母もいるようだ。

 

「敵艦隊より艦載機発艦中!迎撃機を急がせてください!私も向かいます!」

 

<<了解しました!>>

 

距離は約200㎞・・・

早く赤城さんたちを逃がさないと・・・

増速して敵艦隊に向かう。

 

「さぁ・・・来るなら来い・・・!」

 

向こうにはレ-ダ-持ちが居るのかこっちに向かう艦載機が多数いた。

艦載機の量を見るに・・・ヲ級か・・・

 

<<メビウス1交戦!>>

 

<<クーガ隊、交戦>>

 

艦載機隊は敵と接触、交戦を開始した。

私はいつでも撃てるように準備するが空中の目標が多すぎる。

どれが敵でどれが味方か分かるには分かるがすべてを補足できない。

 

「私に向かってくるヤツらだけでも落してやる・・・!」

 

接近してくる目標2機をロックオンする。

 

「シースパロ-発射!」

 

ミサイルを発射、同時に電子戦闘を開始する。

せめて敵の目から隠れないと・・・

 

「最低でも100機以上・・・クソッ・・・多すぎます・・・!」

 

そんな時、アンドロメダから通信が入る。

 

<<いそかぜさん、及び攻撃艦隊全隊へ。緊急入電です。ただちに攻撃を中止して撤退してください>>

 

「撤退!?攻撃を受けているんですよ!!」

 

<<敵にあの艦が居ます!撤退を急いでください!護衛の戦闘機隊が向かっています!>>

 

「アンドロメダさん!ジョ-クもほどほどにしてください!!攻撃を中止なんてできません!」

 

<<ジョ-クで戦争を終わりにできるか!攻撃をやめて撤退しろ!>>

 

突然司令官の声に変わる。

 

「撤退ならしています!!でも敵が多すぎて・・・!」

 

<<今お前らの居る場所は敵勢力圏と味方勢力圏の境目にいるんだ!そこからすぐに日本海軍の勢力圏に入れる!>>

 

「でも敵が多すぎます!それに・・・あの艦をほっとけません!!」

 

<<いそかぜ!これは命令だ!!ヤツらは俺たちの勢力圏まで追ってこない!>>

 

「赤城さんたちだけでも逃がして私が応戦します!」

 

<<おい、ふざけるな!!お前ひとりでどうにかできる相手じゃない!>>

 

「攻撃されているのに背中を見せて逃げるなんてできません!!私だけでも撤退の援護をします!」

 

<<いそかぜ!お前分かっているのか!!撤退しろ!命令だ!!>>

 

「くっ・・・この・・・!!」

 

無線機の電源を乱暴に切る。

赤城さんたちはもう日本海軍の勢力圏に入った。

司令官の言う通り敵もこれ以上赤城さんたちを追うつもりはないらしい。

だが、他が私を狙ってくる。

それに敵にはあの深海棲艦が居る。

・・・ミサイルを装備した艦が。

 

「これ以上進まれると赤城さんたちがやられる・・・」

 

だったら私が盾になってでも進行を止める。

敵はもう目と鼻の先だ。

私はミサイルを敵の空母に発射する。

発射されたミサイルをあの艦は無視し、空母に命中。

敵空母隊は壊滅した。

 

「無視した・・・?いや・・・」

 

何かを指示し、護衛の艦を撤退させ、私のほうに向かってくる。

 

「やぁ、また会ったね。私を大破させるなんて」

 

「・・・」

 

「無視なんてひどいな」

 

「・・・あなたと話したくない」

 

「あ、そう」

 

そういうと敵はすぐに砲を向けてくる。

 

「撤退命令出てるんだってね?全部聞いてたから分かるよ。ねえ、早く行ったほうが身のためだよ?」

 

「お前を・・・沈めたら逃げます」

 

「怖い怖い・・・まぁいいや、逃げないんだったら交戦しないと」

 

「最初からそのつもりです!」

 

不意打ちで砲を発射する。

だが、狙いも適当なうえ、相手に動きを読まれたようだ。

簡単に避けられた。

 

「うっわ・・・本当に撃っちゃうかな・・・」

 

私はすぐに距離を取り砲を速射する。

確実に命中コ-スだった。

 

「エイムが甘いっ!」

 

「え・・・?」

 

敵は飛んできたボ-ルを避けるかのように全弾躱した。

 

「イージスなんでしょ?これくらい当てないと、盾になんてなれないよ」

 

「うるさいッ!!」

 

私はバカにされたのが悔しいのか避けられたのが悔しいのかよくわからない気持ちでいっぱいだった。

半ばヤケクソ気味で砲弾や機銃弾をばら撒く。

 

「お~怒った怒った、さすがにここまでやられたら撃たなきゃね」

 

敵も距離を取り反撃してくる。

敵の装備は現代の護衛艦をベ-スにしていると思われる装備・・・

私と装備があまり変わらない。

 

「クソッ・・・!」

 

距離が1キロないところでの砲戦・・・

装甲が無いに等しい私は避けるので精いっぱいだ。

何とか距離さえ取れれば・・・

そう思い、後ろにCIWSをばら撒きながら距離を取る。

 

「アハッ、逃げた逃げた」

 

敵は笑いながら追撃とばかりに砲撃をしてくる。

私は自分でも不思議なくらい焦っていた。

それはたぶん・・・私にとって初めての事だからだろう。

同じ、ミサイルを搭載した水上艦艇と戦うことが。

過去の・・・艦だった時はまた違う。

 

「アポト-シスで・・・いや、この距離じゃ・・・!」

 

私は苦し紛れにミサイルを2発発射する。

 

「可愛がってあげる」

 

敵は気味の悪い笑いを浮かべながら砲弾を撃ってくる。

だが、あえて当たらないようにしているようだ。

 

「クソ・・・クソッ・・・!!バカに・・・しないで!!」

 

CIWSをばら撒くが艦に効果は薄い。

ミサイルは撃っても落される・・・

こうなったら・・・自分も含めてになっちゃうけど・・・

 

「うらかぜ・・・」

 

今度こそ最後になるだろうと恋人の名前を呟く。

そして一つのミサイルのVLSを開いた。

 

T-Pex

 

約6000度の熱を発生させるこのミサイルで焼き払ってやる。

被害範囲に自分もいるが・・・

 

「苦し紛れのミサイルは効かないよ」

 

敵は何のミサイルかは分かっていないだろう。

 

「あのビリビリミサイル?もうあの対策しちゃってるんだよな~」

 

対電磁パルス防御能力を手に入れているのだろう。

でも・・・この高熱なら・・・

 

「アハッ、何かしゃべってよ」

 

「・・・・終わりです」

 

「アハ、だよね~。でも君可愛いから・・・沈めるのもったいないな」

 

電さんによく似た顔で笑うが、その顔はあの天使のような笑顔じゃない。

もっと・・・醜いものだ。

 

「・・・・・天使とダンスでもしてな」

 

「え?何?」

 

私はミサイルを発射する。

このミサイルも迎撃されても炸裂し効果を発揮する。

 

「アハッ!残念でした!」

 

敵は迎撃を行う・・・が。

 

「・・・!?」

「まんまとかかりましたね」

 

青白い光が私たちを包む。

 

「さようなら、うらかぜ」

 

一瞬、熱による痛みのようなものを感じたが、すぐに何も感じなくなる。

敵は悔しそうな顔をしながら光に包まれた。

 

 

~提督~

 

あの爆発・・・T-Pex!

 

「赤城!状況はどうなっている!」

 

<<艦載機からの報告だと・・・>>

 

心臓の鼓動が痛いくらいに早い。

いそかぜ はあんな爆発で沈むようなタマじゃない・・・と信じたいが・・・

 

<<・・・確認!洋上にいそかぜさんが居ます!>>

 

「・・・良かった・・・了解だ」

 

<<あの・・・でも・・・>>

 

「どうした?」

 

<<艤装が・・・>>

 

「・・・」

 

たぶん・・・もう使い物にならないだろう。

あの熱だ、艤装のシステムや装備はすべて壊れているだろう。

・・・艦娘を引退する道しかない。

 

「はやくアイツを連れ帰ってやってくれ・・・」

 

<<・・・了解しました>>

 

無線を置いて深いため息をつく。

 

「あの・・・バカ・・・」

 

だが・・・作戦は成功・・・したと信じたい。

基地の完全破壊には成功したがまたあの艦には逃げられた。

あの戦闘能力・・・これからも遭遇の可能性があったらすぐに撤退が必要になるだろう。

 

~いそかぜ~

 

目が覚めたらベッドの上だった。

 

「あれ・・・?天国ですか・・・?」

 

上半身を起こすとベッドに うらかぜ がもたれかかって寝ていた。

生きてる・・・

 

「いたッ・・・」

 

体にいたるところが痛む。

この痛みは火傷のようだった。

手鏡で自分の姿を確認する。

 

「顔は・・・奇跡ですね・・・被害がないなんて・・・」

 

顔は傷一つなかったが手足が包帯でぐるぐる巻きになっていた。

そんな事をしていたらうらかぜが目を覚ました。

 

「ん・・・ふぁぁぁ・・・」

 

「あ、えと・・・おはよう・・・ございます・・・」

 

「ああああ!!!目ぇ覚ましたぁぁぁ!!!」

 

そういって私に抱き付いてくる。

 

「あの・・・怒ってないんですか・・・?」

 

「え?怒ってるよ?すごく」

 

「・・・・」

 

「・・・艦娘として引退だってね」

 

「え?」

 

「艤装・・・完全に壊れちゃって、修復は無理なんだって」

 

「・・・そうですか」

 

「ホント馬鹿だよ・・・まぁ、いいよ。こうやって生きててくれたんだから」

 

「・・・」

 

うらかぜは笑顔でそう言ってくれた

 

「それにしてもよく寝てたね」

 

「え?」

 

「3日寝てたんだよ?」

 

「え・・・?3日もですか・・・」

 

「もう大変だったんだから・・・」

 

そんな話をしていると司令官が入ってきた。

 

「お、やっと起きたかバカタレめ」

 

「司令官さん!!いきなりバカタレは失礼なのです!」

 

「・・・・すみません」

 

「いそかぜさんは謝らなくても大丈夫なのです!」

 

「でも・・・命令違反・・・」

 

きっとその事で怒られる・・・

そう思っていた。

 

「命令違反で怒られる・・・って顔してるな」

 

「・・・はい」

 

「そんな終わった事じゃないよ、今日聞きたい事あってな」

 

「なんですか?」

 

「いやその・・・本人居る前でなんだが・・・うらかぜについて・・・」

 

「はぁ!?私!?」

 

「え・・・」

 

なんか拍子抜けだった。

なんの事なんだろう・・・

 

「いや・・・うらかぜのヤツ・・・敵の通商破壊作戦に行ったんだ」

 

 

 

~うらかぜ(回想)~

 

<<これより、敵の輸送船攻撃に向かう、各艦へ。病院船が紛れているから気を付けろ>>

 

「・・・・」

 

「了解なのです!」

 

「了解しました」

 

<<おい、うらかぜ>>

 

「・・・何」

 

<<はぁ・・・いそかぜが負傷して落ち込んでるのは分かるが・・・頼むぜオイ・・・>>

 

「・・・」

 

私の頭はいそかぜの事でいっぱいだった。

今は、私とアンドロメダ、電さんの3人で通商破壊に向かっている。

またその艦隊にいる病院船の拿捕だった。

でも・・・今はそんな事どうでも良かった。

いそかぜを傷つけた深海棲艦に対する怒りでいっぱいだ。

 

「アンドロメダより全艦へ、敵影確認。攻撃準備に移行してください」

 

「分かったのです!」

 

「・・・了解」

 

「・・・大丈夫なのです・・・?」

 

「・・・うん、大丈夫」

 

「・・・・」

 

電さんは心配してくれているようだった。

さすがに八つ当たりするほど私は捻くれていないが・・・

 

「敵・・・もうやっちゃお」

 

「え、ちょ、待って・・・」

 

「発射」

 

敵の旗艦らしき艦にミサイルを発射する。

 

「まだ攻撃命令だしてません!!どれが病院船か分かるんですか?!」

 

「・・・別にいーじゃん」

 

「よくないですよ!!」

 

そんなやり取りしてる間にミサイルが命中、増速して目標に向かう。

 

「病院船以外撃てばいいんでしょ」

 

「そうですけど・・・!」

 

速射砲で病院船以外を狙っていく。

 

「うらかぜさん!撃ち方やめてください!!もう航行不能なのです!」

 

「・・・でもさぁ、ほっとくと敵に弾薬届いちゃうじゃん」

 

「捕まえればいいのです!お願いなのです・・・」

 

「・・・・」

 

だが、電さんが助けようとした艦は弾薬に引火したのか爆沈した。

 

「・・・・・・あ・・・・」

 

電さんは爆発に様子を茫然と見ていた。

 

「病院船見っけ」

 

「あ・・・や、やめ・・・」

 

「あなた、深海棲艦の病院船だよね」

 

「そ・・・そうだから・・・い、命だけは・・・」

 

無残にも仲間を沈められた病院船は震えていた。

見た目は深海棲艦よりは艦娘寄りの容姿だった。

 

「ねぇ・・・あなたってさ」

 

「な、何ですか・・・?お願いだから・・・撃たないで・・・」

 

「私の撃った敵を直す医者だよね」

 

「え・・・?」

 

「だったらお前も敵じゃん」

 

私はそのままトリガ-を引く。

 

「なっ・・・」

 

「う、ぐ・・・ああああああああ!!!」

 

「あ・・・避けないでよ」

 

砲弾は腕に命中した。

敵は腕を押さえて苦しんでいる。

その時、頬に鋭い痛みがはしった

 

「な、なにしてるのですか!!」

 

「何って・・・敵じゃん、コイツ」

 

「敵って・・・この子は病院船なのです!!」

 

「病院船だから?ここは戦場だよ」

 

「だからって・・・!」

 

横目で病院船を見る。

痛みで泣いていた。

 

「大丈夫ですか?すぐ診てあげます」

 

「なんで・・・なんで撃つんですか!いそかぜさんの仇とか言うんですか?!」

 

「別に・・・でもほっとけば いそかぜ を傷つける敵になる」

 

「でも・・・海上自衛隊はそんな簡単に人を傷つけるのですか!?」

 

「・・・アンタが何を知って・・・」

 

「私には確かに未来の事なので分からないのです!でも・・・今まで人命を救ってきた組織じゃないですか!」

 

「・・・私はその組織に・・・沈められたけどね」

 

「あ・・・」

 

電さんは申し訳なさそうな顔をした。

 

「電さん、もういいです。これより帰還します。うらかぜさん・・・処罰は覚悟してください」

 

険悪なまま港への帰路についた。

 

 

~提督~

 

「・・・な話があった」

 

「あ、あっれ~?そんな事あったっけな?」

 

「あったわ!!国際問題スレスレだからな!!」

 

「も、もう十分に反省したじゃん!!」

 

「はぁ・・・・もう・・・で・・・こいつって病んでるとこんなヤツなのか?」

 

うらかぜ怖い・・・

 

「い、いや・・・私にも・・・」

 

「・・・いそかぜ、これから うらかぜの監視よろしくな・・・」

 

「あ、はい・・・」

 

そういえば病院船はどうなったんだろう。

 

「あの、病院船はどうなったのですか?」

 

「ああ、看護スタッフになってもらったよ。まぁ向こうはブラックでいい加減亡命したかったが気が弱いんでどうにもならなかったそうだ」

 

「・・・・無事でよかった・・・あ、うらかぜ。ちゃんと謝りましたか?」

 

「謝りましたよ・・・菓子折りもって・・・」

 

「よろしい」

 

体は痛むけど・・・またここに帰ってこれた。

でももう私は艦娘じゃない。

これからは鎮守府のスタッフとして頑張ろう。

 

 

 




投稿遅れて本当にごめんなさい!
ネタが思い付かなかったんです!
でも最近なんか微妙なような・・・
はっ・・・そうだ!コマンド-ネタしてないからだ!←

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。