黄金の勇者   作:fw187

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冥王宮~邂逅と曙光

 冥闘士≪スペクター≫を統率する神々の長兄、冥王ハーデスが君臨する次元界。

 大地≪ガイア≫の底いや冥王星、或いは月の裏とも噂される領域≪テリトリー≫。

 百万の天球≪オールターネット・ワールド≫を貫く影の道、超次元回廊の彼方。

 冥界≪アナザー・ワールド≫の聖域≪サンクチュアリ≫、冥王宮≪ジュデッカ≫。

 闇色に輝く瞳と髪を持つ神々の長兄、ハーデスの憑依する身体は瞬と異なる。

 

 黒い冥衣≪サーブリス≫を纏い、地獄の閻魔帳≪ファイル≫を携える美男子。

 静粛を旨とする冥界の審判≪ジャッジメント≫、天英星バルロンのルネ。

 有罪≪ギルティ≫か否≪ノット・ギルティ≫か、判決を下す相手は城戸沙織。

 グラード財団の総帥と冥闘士、闘いの女神と冥王の宿る身体が真っ向から対峙。

 

 神々の大いなる意志≪ビッグ・ウィル≫が渦巻き、不気味な鳴動を響かせるが。

 玉座の傍に控える他の冥闘士達は手も足も出ず、完全に圧倒され沈黙している。

 神の威厳が漂う冥王の化身と女神の転生、無言劇の強烈な圧力≪プレッシャー≫。

 物質化現象を遂げた超重力の渦巻く、帝王の間に。

 不意に虚空が割れ、人影が現れた。

「女神よ、遅参仕りました。

 

 城砦宮アトランティスの策謀は暴かれ、海皇ポセイドンは覚醒を遂げた模様です。

 最強の海闘士≪マリナー≫、海将軍≪ジェネラル≫も新たな盟友となりましたが。

 我等と共に飛んだ筈ですが、途中で逸れたと見え行方不明であります」

 ジェミニ、アクエリアス、カプリコーン、ビスケス、キャンサーの冥衣ならぬ聖衣。

 ヴァルゴ、アリエス、スコルピオン、レオ、タウラスと共鳴し光の旋律が響き渡る。

 

 双子座サガ、水瓶座カミュ、山羊座シュラ、魚座アフロディーテ、蟹座デスマスク。

 乙女座シャカ、牡羊座ムウ、蠍座ミロ、獅子座アイオリア、牡牛座アルデバラン。

 究極の第7感覚≪セブンセンシズ≫、小宇宙≪コスモ≫を自在に操る勇者が10人。

 第3段階の聖衣≪クロス≫が燦然と輝き、黄金≪ゴールド≫の光が蟠る闇を照射。

 

 最強の海闘士≪マリーナ≫、七人の海将軍≪ジェネラル≫が纏う鱗衣≪スケイル≫。

 氷戦士≪ブルー・ウォリアー≫を含め、緑玉≪エメラルド≫の聖衣を装備する8人。

 海界≪シー・ワールド≫から転移した聖闘士は総勢15人、他の8人は姿が見えぬ。

 天馬星座、竜星座、白鳥座、鳳凰座、アンドロメダ座は青銅≪ブロンズ≫の聖衣。

 ペガサス星矢、ドラゴン紫龍、キグナス氷河、フェニックス一輝、アンドロメダ瞬。

 5人の少年達を見た女神は表情を和らげ、18人の勇者達に微笑を投げ掛けた。

 

「ありがとう、本当に良くやってくれました。

 カミュ、氷河、海将軍と氷戦士≪ブルー・ウォリアー≫の心配は無用です。

 彼等は海皇ポセイドンと共に戦神の本拠、火星≪アレス≫へ向かっています。

 火蜥蜴≪サラマンダ≫の棲む火星の聖域、火王星≪フレイム・ランド≫が目標地点。

 新たなる狂闘士≪バーサーカー≫、紅衣の戦闘士≪ファイター≫達と対決する為に。

 海皇は必ず戦神の呪縛を解いてくれます、貴方の弟を含む8人の勇者は大丈夫ですよ」

 

 神の化身と尊称される双子座サガも、女神の化身に内心を隠す事は出来ぬ。

 不肖の弟とアイザックを案じる双生児の兄、氷聖闘士の師弟が同時に頭を垂れた。

 続いて獅子座アイオリア、牡羊座ムウへ視線を移し圧縮思念≪パケット≫を投射。

 凝縮された思考の塊を解読した2人は顔を輝かせ、サガと同様に深く頭を下げる。

 

 第3段階の小宇宙を共鳴させ、莞爾と微笑む黄金聖闘士達。

 第1段階の青銅≪ブロンズ≫聖闘士達は意味が判らず、訝し気な表情を見せた。

「城砦宮の対決と同時に冥王、ハーデスの尖兵が聖域≪サンクチュアリ≫を襲ったのです。

 先代の牡羊座シオン、射手座≪サジタリアス≫アイオロス、ケフェウス座ダイダロス。

 亡霊≪ゴースト≫聖闘士として仮初の生命を与えられ、女神像の破壊を試みましたが。

 冥界の妖精≪フェアリー≫、調査蝶≪センサー・パピヨン≫の監視は遮断されました。

 星矢と紫龍の師、魔鈴と老師も各々の能力を活用し使命を果たす為に動いています。

 一輝と瞬と同じ場所で訓練を積んだジュネ、鋼鉄≪スティール≫聖闘士達も無事ですよ」

 

 言葉化された説明を受けた5人の少年達に、漸く納得と共感の笑顔が広がった。

 対照的に冥闘士達は顔を顰めるが、女神の圧力≪プレッシャー≫に抗し得ず沈黙を維持。

 

「先刻から彼の呪縛、催眠暗示帯域≪ヒュプノ・ブロック≫を走査していますが。

 解除≪リセット≫には、肉体接触≪タッチ≫が必要な様ですね。

 精神接触≪コンタクト≫では解除出来ない様に、二重の遮蔽が施されています。

 私は極楽浄土≪エリシオン≫へ赴き、彼の仮死状態を解く心算です。

 眠りを司るヒュプノス、死を司るタナトスは既に極楽浄土へ先行していますが。

 神々の長兄ハーデスの肉体を解放し味方に付けねば、事態の打開は望めません。

 天帝ゼウスの支配する領域≪テリトリー≫、天王星≪オリンポス≫の状況は不明。

 大いなる時の神クロノスが統べる時の封土、氷王星≪ヴァルハラ≫も同様です。

 此の場は貴方達に任せ、直ちに行動へ移ります。

 申し訳ありませんが、後を頼みます」

 

「御任せ下さい、女神の御言葉は全てに優先します。

 我等も可及的に追随致します故、後武運を御祈り申し上げます」

 新たに選任された教皇、双子座サガが代表して発言。

 神に近い男を始め黄金聖闘士10人の小宇宙が煌き、女神の意思に応える。

 雄大な小宇宙が瞬き、超時空転移術を発動。

 無限の時空を貫き女神の化身、城戸沙織の姿が消えた。

 

「女神へ追随すると大口を叩いていたが貴様等、何処へ行く心算だ!?

 我等が至高者≪ファイナル・マスター≫、ハーデス様に楯突く不届き者めが!

 海皇の助力を得たとは言え女神に仕える軟弱者が、よく此処まで来たと褒めてやるが。

 聖闘士≪セイント≫風情が此の先へ行く事は許さん、我等が成敗してやる!

 幸い此処は聖闘士の墓場、氷地獄≪コキュートス≫の隣だからな。

 生きた儘でも構わぬ、氷漬けにしてくれるぞ!」

 

「お前達は未だ、知らされておらぬのだな。

 俺自身も13年前からハーデス神の思念体に憑依され、服従を余儀無くされていた。

 憑依を解呪する際、神々が未覚醒状態に在ると女神は仰られていたが。

 海底神殿を巡る海将軍≪ジェネラル≫との対決を経て、全ては明白となった。

 神々の長兄ハーデスは側近を装う双子神に騙され、仮死状態に陥り利用されている。

 死を司る神タナトスが冥王ハーデスを偽り、お前達を踊らせている元凶なのだぞ」

 

 二重人格と疑われ闇色の髪と瞳に変化する偽教皇、神の化身が真実を告げたが。

 冥王に忠誠を捧げる冥闘士達は、聖衣≪クロス≫の着用者を敵視し聞く耳を持たぬ。

 信奉する主神が従属神に操られる筈は無い、聖闘士の詭計≪トリック≫に過ぎない。

 我等は離反工作を企む謀り事に乗せられる愚者に非ず、もっとマシな嘘を考えろ。

 

 第7感覚≪セブンセンシズ≫を超越する第8感覚≪エイトセンシズ≫、阿頼耶識。

 超第3段階の小宇宙≪コスモ≫も拒絶され、誤解を解く術は無い。

 冥界の至高者に仕える最強の冥闘士、次席指揮官≪セカンド・マスター≫。

 地獄の騎士達を統括する責任者、冥界の三巨頭≪ビッグ・スリー≫は姿が見えぬ。

 

 脈動する黒い光を放つ黒い宝石、魔剣の化身を思わせる黒い鎧を装着する冥闘士達。

 銀河文明の敵対者、闇黒鏡闘士≪ブラック・レンズマン≫の鏡衣≪レンズ≫か。

 強靭な硬度を誇る純粋炭素の結晶、黒金剛石≪ブラック・ダイヤモンド≫の如く。

 脈動する黒い光を放ち、邪悪な精霊の棲む黒い宝石≪ブラック・ジュエル≫の鎧。

 黒曜石≪オブディシアン≫を遙かに凌ぎ、冥界の聖衣とも言うべき冥衣≪サーブリス≫。

 艶やかな黒光りする冥衣が主の小宇宙に呼応、戦闘態勢≪バトル・モード≫に移行。

 

 無言の挑戦状を叩き付ける冥闘士に応じ、黄金≪ゴールド≫聖衣も形態を変化。

 第8感覚に応じ硬度8の宝石、黄金の光を放つ黄玉≪トパーズ≫が顕れる。

 脈動する黒い光を弾き貫通する黄金の太陽風、光冠≪コロナ≫を体現する聖衣。

 小宇宙に応じ形態転換≪トランスフォーム≫、第8感覚に対応する聖衣が燦然と輝く。

 

 冥界に残り冥王ハーデスの忠誠を誓う演奏の名手、琴座≪ライラ≫のオルフェ。

 黄金聖闘士に劣らぬと噂される白銀聖闘士を除き、冥衣を纏う地獄の騎士達。

 漸く女神の圧力≪プレッシャー≫、金縛り状態から解放された黒衣の冥闘士。

 屈辱と憤怒が物質化現象を励起、闇色の黒い炎が渦巻き燃え盛る戦闘意欲を表明。

 小宇宙と同調する聖闘士達の衣も輝き、輝ける闇を背景に宣戦布告の思考が閃いた。


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